LIVE SHUTTLE  vol. 28

Report

MISIA @河口湖ステラシアター 2016.5.4

MISIA @河口湖ステラシアター 2016.5.4
2001年からスタートし、全編生演奏にこだわり、数々の伝説を生んできたMISIAの「星空のライヴ」。
9回目となる今回は、5月3日から5日までの3日間、晴天の富士山をバックにした河口湖ステラシアターで、全日異なるセットリストで行われた。
総勢14名のミュージシャンと共に作り上げるその日だけのグルーヴと、MISIAの卓越したボーカル・パフォーマンスに酔いしれた贅沢な一夜の様子をお届けする。

文 / 平山雄一 撮影 / 田中雅也


MISIAのライヴを堪能するにはベストの会場と言われる“河口湖ステラシアター”で、5月3日から5日までの3日間、「MISIA 星空のライヴ Ⅸ PREMIUM LIVE」が開催された。全日、好天に恵まれ、今年のゴールデンウィークに行なわれた数多くのライヴの中でも屈指の好ライヴとなった。しかも3回のライヴはセットリストが異なっていて、観た人それぞれの良い思い出となったことだろう。

僕は2日目の5月4日のライヴを観た。前夜の強風が雲を吹き飛ばし、地元の方も珍しいというほどの富士の全貌が、快晴の河口湖の空を占めている。開演前のバックステージは爽快な天気を反映してか、ミュージシャンたちが昨夜の疲れを微塵も感じさせない様子でリラックスしている。毎日セットリストが違うのはかなりのプレッシャーのはずなのだが、かえって新鮮な気持ちでその日の演奏に向かえるのかもしれない。ライヴはそうしたムードそのままに、素晴らしいスタートを切ったのだった。

17時半を少し過ぎたころ、コーラスとストリングスを含む14名のミュージシャンたちが、笑顔でステージに入ってくる。ステラシアターのそそり立つような観客席を埋めたオーディエンスが、大きな拍手を贈る。低音の効いたバンドサウンドが流れ出す中、MISIAがゴージャスなウォーボンネット(ネイティヴアメリカンの羽根飾り)を付けて現われた。「みんな~、準備はいい?」と彼女が投げかけると、もちろん会場は大声で応える。
「陽のあたる場所」から「KEY OF LOVE~愛の行方~」へのメドレーは、仲の良い友達同士が「久しぶり」、「元気だった?」と挨拶を交わすような雰囲気で進む。おそらくMISIAの力は70%くらい。余裕をもって“今日の声の感触”を確かめているようだ。軽やかな声が、富士の裾野を駆け抜ける気持ちのよい風と響き合う。シアターの開いた屋根からは、青空がのぞいている。やはりこの場所は、MISIAにとてもよく似合う。

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“星空のライヴ”は、1998年にデビューしたMISIAが2001年にスタートさせたもので、バックはすべて生楽器で演奏される。折りからのヒップホップブームの中で、MISIAはデビュー以来、コンピュータのトラックを使ってライヴを行なっていた。それは当時の最高水準を行くものだったが、本格的なシンガーを目指す彼女にとって、優れたミュージシャンたちとのガチのセッションは、遅かれ早かれ必要なファクターだった。だから“星空のライヴ”は、本当に勉強になったに違いない。
しかし、そこはMISIAのこと。厳しい試練となるはずが、あっという間に生演奏でのボーカリゼーションをマスターし、優れたエンターテインメントに昇華してしまった。今では“星空のライヴ”は、MISIAファンのみならず、すべてのライヴファンの憧れの的となっている。この日も最高のメンバーをバックに、MISIAがリードしてライヴを進行していく。
その真価が発揮されたのは、5曲目「Escape」だった。2000年にシングルとして発表されたこの曲のオリジナル・アレンジはヒップホップ仕立てだった。それが柔らかなラテン風味にアレンジされている。つまり、“星空のライヴ”仕様なのだ。ベースのJINOのプレイが素晴らしいグルーヴを提供する。応えてMISIAはステージの階段に座って、丁寧に歌い上げる。オリジナルとはまったく異なるが、隠れた曲の良さを引き出すMISIAの歌唱が見事だった。

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圧巻だったのは、中盤の「逢いたくていま」だった。テレビドラマ『JIN-仁-』の主題歌となった2009年のヒット曲で、今は亡き名ドラマー青山純によってレコーディングされている。この日のドラマーTOMOが 青山を彷彿とさせるドラミングを繰り出すと、MISIAは渾身のボーカルで応じる。聴いている人の心を遠い旅へと誘うその歌声は、ベスト・バラードシンガーというありきたりな賛辞では足りないと思わせるほどの説得力があった。また随所で弦一徹のストリングスが、メロディに繊細な彩りを与える。
歌い終わるとMISIAは「この曲を歌うと、涙が出ちゃうの」。すると客席から「星が見えるよ」と声が掛かる。真上の空は暮れ色に染まり、いよいよ“星空のライヴ”は佳境に入っていく。

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重厚なバラードもいいが、生演奏によるダンサブルなナンバーも素晴らしい。空を指さしながら歌い出した「星の銀貨」で、MISIAは途中、踊りながらオーディエンスとのコール&レスポンスを楽しむ。オーディエンスは40代が中心で、みながよく踊り、よく歌う。彼らがMISIAの音楽スタイルを、丸ごと愛していることが伝わってくる。オーディエンスばかりでなく、ベースのJINOはドラム台に乗って、盛んにTOMOとアイコンタクトしながらリズムを盛り上げていく。こうした幾重ものコミュニケーションが絡み合って、音楽を通じて心を通わせるのが“星空のライヴ”の醍醐味なのだ。
本編最後は、ゴスペルタッチの「THE GLORY DAY」。イントロ代わりに、バンドマスターの重実徹がピアノで「アメージング・グレース」を弾くと、MISIAは重実を振り返ってにっこりと笑う。その日その日の演奏を楽しむ気持ちが、オーディエンスたちを大団円へと導いていく。熱く歌い切ったMISIAは、ステージ上に寝転んで、「最高!」と叫んだのだった。

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アンコールで登場したMISIAは、「なんて素晴らしい夜なんだぁ! こんな夜にぴったりの新曲を」と「Oh Lovely Day」を歌う。オーディエンスにとっては嬉しいプレゼントとなった。
「こういう夜があるから、やめられない。っていうか、幸せだよね。星、見えてる? みんなの願いがかなうように、今日はアンコールの最後にこの曲を選びました」と、最新アルバム『LOVE BEBOP』から「流れ星」。ラストナンバーも日替わりで、この夜だけの「流れ星」がピアノとストリングスから始まった。涼しくなってきた風に吹かれながら、優しいバラードが流れる。前夜は最後に「星の降る丘」を歌ったそうだ。
MISIAのこの日、最後の声に寄り添ったのは、弦一徹のバイオリンのトレモロの音だった。それは星の輝きのようにチカチカと揺れて、MISIAの声を優しくサポートしていた。

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先日リリースされた『MISIA 星空のライヴ SONG BOOK』は、初回の2001年から2015年までの8回の“星空のライヴ”から選りすぐりのテイクが2枚組CDに収められている。そのCDを聴いて“星空のライヴ Ⅸ”に足を運んだ僕は、MISIAがじっくり積み上げてきたもの、各回の“星空のライヴ”のオーディエンスから得たもののすべてが、この夜にあったと感じた。焦って近道はせず、楽しみながら寄り道をしてきたMISIAがたどり着いたのは、昼間見た富士山のように雄大な裾野を持つ音楽だった。
次の“星空のライヴ Ⅹ”を観たいと思う。また、久々にヒップホップのMISIAも観たいと思う。贅沢な一夜になった。

「MISIA 星空のライヴ IX 5月4日ver. 」セットリスト

01.陽のあたる場所〜KEY OF LOVE~愛の行方~
02.真夜中の HIDE-AND-SEEK
03.REMEMBER LADY
04.めくばせのブルース
05.Escape
06.地平線の向こう側へ
07.僕のきもち
08.白い季節
09.逢いたくていま

10.DEEPNESS
11.星の銀貨
12.LUV PARADE
13.THE GLORY DAY

EN1.Oh Lovely Day
EN2.あなたにスマイル: )
EN3.流れ星

ライブ情報

LAWSON presents 星空のライヴ IX PREMIUM LIVE

7月6日(火)・7日(水) 東京:NHKホール
7月12日(火) 愛知:日本特殊陶業市民会館フォレストホール
7月14日(木)・15日(金) 大阪:オリックス劇場

リリース情報

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MISIA 星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE

通常盤 [ 2CD ]
BVCL-710~711 ¥3,700+税

【DISC1】
01.あなたにスマイル:)
MISIA星空のライヴVIII MOON JOURNEY
2015/8/16 フェスティバルホール

02.真夜中のHIDE-AND-SEEK
MISIA星空のライヴVIII MOON JOURNEY
2015/8/16 フェスティバルホール

03.白い季節
MISIA星空のライヴVIII MOON JOURNEY
2015/8/15 フェスティバルホール

04.Color of Life〜Re-Brain
MISIA星空のライヴVIII MOON JOURNEY
2015/7/8 東京国際フォーラム ホールA

05.桜ひとひら
MISIA星空のライヴVIII MOON JOURNEY
2015/7/8 東京国際フォーラム

06.流れ星
MISIA星空のライヴVIII MOON JOURNEY
2015/7/7 東京国際フォーラム

07.僕はペガサス 君はポラリス
MISIA 星空のライヴVII 〜15th Celebration Thank you 15, Happy 16〜
2014/4/2 オーチャードホール

08.明日へ
MISIA 星空のライヴVII 〜15th Celebration Thank you 15, Happy 16〜
2014/4/2 オーチャードホール

09.幸せをフォーエバー
MISIA星空のライヴVII -15th Celebration- Hoshizora Symphony Orchestra
2014/2/16 横浜アリーナ

10.DEEPNESS
MISIA 星空のライヴVII -15th Celebration-Hoshizora Symphony Orchestra
2014/1/18 日本武道館

11.恋は終わらないずっと
MISIA 星空のライヴVII -15th Celebration-Hoshizora Symphony Orchestra
2014/1/18 日本武道館

12.THE GLORY DAY
MISIA 星空のライヴVII -15th Celebration-Hoshizora Symphony Orchestra
2014/1/18 日本武道館

【DISC2】

01.陽のあたる場所〜KEY OF LOVE 〜愛の行方〜
MISIA星空のライヴVI ENCORE 2010 International Year of Biodiversity
2010/7/31 舞洲“MISIA星空のライヴVI”野外特設会場

02.地平線の向こう側へ
MISIA星空のライヴV Just Ballade MISIA with 星空のオーケストラ2010
2010/ 2/14 横浜アリーナ

03.逢いたくていま
MISIA星空のライヴV Just Ballade MISIA with 星空のオーケストラ2010
2010/ 2/14 横浜アリーナ

04.そばにいて…
MISIA星空のライヴIV CLASSICS
2007/9/15 稲佐山公園野外ステージ

05.
MISIA星空のライヴIV CLASSICS
2007/9/15 稲佐山公園野外ステージ

06.つつみ込むように…
MISIA星空のライヴIII 〜Music is a joy forever〜
2006/8/27 山中湖シアターひびき

07.Everything
MISIA星空のライヴIII 〜Music is a joy forever〜
2006/8/27 山中湖シアターひびき

08.眠れぬ夜は君のせい
MISIA星空のライヴII CONSTELLATION MISIA 2003
2003/8/15 宜野湾海公園野外劇場

09.あの夏のままで
MISIA星空のライヴII CONSTELLATION MISIA 2003
2003/8/2 稲佐山公園野外ステージ

10.Escape
MISIA星空のライヴII CONSTELLATION MISIA 2003
2003/7/19 フェスティバルホール

11.Nocturne
MISIA星空のライヴI CONSTELLATION MISIA 2001
2001/10/7 河口湖ステラシアター

12.BELIEVE
MISIA 星空のライヴI CONSTELLATION MISIA 2001
2001 /10/7 河口湖ステラシアター

プロフィール

MISIA


長崎県出身。1998年、「つつみ込むように…」でデビュー。5オクターブの音域を誇る圧倒的な歌唱力で、ジャパニーズR&Bの先駆者と言われる。その後発表された1stアルバム『Mother Father Brother Sister』は、新人ながら300万枚のセールスを記録。以降、「Everything」「逢いたくていま」等、R&Bというジャンルを超えて、バラードの女王の名も確立させた。2004年には女性ソロアーティストとして初の5大ドームツアーを成功させ、その4年後には日本を含む台湾・上海・シンガポール・韓国・香港の5都市を含むアジア・アリーナツアーを敢行。2009年から2010年にかけて行われたロングツアーを含め累計250万人以上の観客を動員した。世界の子ども達への教育支援を目的に非営利団体”Child AFRICA”を設立するなど、世界を舞台とした社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

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