Interview

連続ドラマW「パンドラⅣ AI戦争」主演を務める向井理。意欲作に挑んだ心構えと身を投じての感触を語る

連続ドラマW「パンドラⅣ AI戦争」主演を務める向井理。意欲作に挑んだ心構えと身を投じての感触を語る

WOWOWの「連続ドラマW」の原点として、高い評価を受け続けている「パンドラ」シリーズ。ガンの特効薬、遺伝子組み換え食品、自殺防止治療法、クローン人間と、時代ごとに意欲的なテーマに挑んできた同シリーズが、スタートから10年という節目にスポットを当てる“パンドラの箱”は、「AI=人工知能」。将棋やチェスなど、高度に知性を駆使するゲームでも人間を凌駕するようになったAIを医療に導入した世界で、人間はどのような未来を歩むのかを描いていく。題して『連続ドラマW パンドラⅣ AI戦争』で主演を務めた向井理に、本作とシリーズの魅力や、率直に感じたことを語ってもらった。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 荻原大志

鈴木はマッドサイエンティストではないので、ギリギリ実在していそうな人にしたいと思いました

青木泰憲プロデューサーいわく、『連続ドラマW パンドラⅣ AI戦争』では全幅の信頼を置いている役者さんをキャスティングしているとのことです。

青木さんご自身はもちろんですけど、台本をキャストでアテ書きされている井上(由美子=脚本)さんともコンセンサスをとっていらっしゃるんじゃないかと思うんですよね。お2人は何度も組まれているから、揺るぎない信頼関係があると思うんですけど、僕は青木さん、井上さんともにご一緒するのが2回目なので…意外というと失礼ですけど、こんなに早い段階でお声がけいただけるとは思っていなかったんですよね。そういう意味では、ラッキーだったなと思います。

青木プロデューサーによると、鈴木の物憂げなたたずまいが、向井さんにピッタリだそうです。

どうなんでしょうね。前回、お声がけいただいたWOWOWの連続ドラマ『アキラとあきら』で演じた役は違うタイプだったので。自分としては、いろいろな役を演じていく中で、自分自身がどういう人間なのか考えたことはそんなにないんですよ。ただ、以前に井上さんの作品でアテ書きされた役も、最終的には何を考えているかわからないという落としどころだったので、そういうふうに思われているのかな(笑)。

ただ、今回演じている「パンドラ」の鈴木に関しては、わりとまっすぐな人だという印象もあります。

そうですね、わかりやすい言動で人を動かすのではなく、淡々と結果を見せて「どうですか? ちゃんとできていますね。じゃあ、やりましょう」というような、論理的な人だと思います。情熱は内包しているけど、表面的な熱さとして出さないでいる人ですけど、そういうスタンス、僕はわりと好きなんですよね。

鈴木のバックグラウンドに関わってくる話でもありますが、AI=人工知能の“ミカエル”に対して絶大なる信用を置いている人でもあります。

僕は、ある種の信者だと思って鈴木を演じています。自分がつくったから愛着はあるんですけど、愛着と信奉のパワーバランスがいつか崩れて、もう盲目的に信じている。ただ、マッドサイエンティストではないので、一応、中立というか平均を保ってもいて。そこを踏まえて、ギリギリ実在していそうな人にしたいと考えています。ただ、第1話ではまずキャラクターをちゃんと見せる必要があるので、終始フラットなしゃべり方をして、ちょっと何を考えているのかわからない、という雰囲気を前面に出していて。でも、2話以降はなるべく、人間っぽく話そうという感じにシフトしているんです。

台本上では「金とか地位には興味ない。医者でありたい」という鈴木のセリフがありますが、そこに彼の芯があるようにも感じました。

人には、その年齢になるまでのバックボーンが必ずあるわけです。30代や40代の人であれば、現在の人格が形成されるまでに、いろいろな出来事があったわけじゃないですか。鈴木も、“実はこういう過去があって──”と、次第に明かされていくんですけど、その点と点が1本の線としてつながった時に、「だから、この人はこういうアプローチで目指しているんだな」と、バックボーンが見えてくるんですね。それは2~3話以降の話ですけど、そこまで観ていただくと、さらにドラマの奥行きも深まると思いますし、その後の…全6話で3部構成のようになっているんですけど、結末への期待も高まるのではないかな、と。

AIという、人に取って天使となるか悪魔となるかわからないものの対称的な存在として、原田泰造さんが演じる経験と勘にすぐれたベテラン外科医・上野医師が登場します。ただ、経験と勘もある種、人の中に蓄積されたデータベースの応用でもあるのかなと、ドラマでは描いているようにも思いました。

いわゆる、子どもが言う勘と大人が言うそれは、全然異なるものだと僕は思っていて。大人の勘というのは、経験則から導き出されるものなんですよね。たとえばですけど、「天気がいいけど、やたらと鳥が鳴き始めたから雨が降るかもしれない」みたいなのは、経験から知り得た情報に基づく勘であって。医師にしても…もしかするといろいろな症例を診てきた中で、急変するかもしれないと勘ぐることがあったとしても不思議じゃないわけですし、経験に応じて身につく能力でもあるのかな、と。鈴木は、その不確定な“勘”をもAIで科学的に数値化しようとしているわけです。

鈴木哲郎を演じる向井 理 『連続ドラマW パンドラⅣ AI戦争』より

なるほど、わかりやすいですね。

もしかすると見当違いなのかも知れないですけど、京都のある料亭のご主人が、アミノ酸やグルタミン酸といった“うま味”を数値化したのと似ているのかな、と思いました。日本食って海外で広まりづらいらしいんですけど、それは“うま味”というものが繊細すぎるところに起因しているのだ、と。それを「アミノ酸は何グラム、グルタミン酸は何グラム」と明確に数値化することで、海外の料理人にもわかりやすくして広める──というのと、鈴木がAIで医療に行うことで、さまざまな症例を可視化して多くの人を救おうとするというのは、何となく考え方が似ているような気がするんです。「たくさんの人に味を伝えたい」か、「たくさんの人を救いたい」かの違いに過ぎないのかなと、個人的には解釈しているんですよね。

では、鈴木を演じることで、向井さんの中にどのような思いが芽ばえたのでしょうか?

あくまで原点は医者なので、絶対的に多くの命を救いたいがためのツールとして、鈴木はAIを活用しているわけです。もちろんAIに懸ける思いは誰よりも強いんですけど、まずは医師であることを前提としていて。ただ…芝居の面で言うと、内科医は外科医とくらべると動きに派手さがないので、視覚的な見せ場があるのかな、と思った部分は正直あります。チーフ監督の河毛俊作さんも、「たぶん今まで医療モノで内科医が主人公になったことは、ほとんどないんじゃないか」とおっしゃっていて。なぜなら、オペがないからなんですよ。ある種、オペが医療ドラマの醍醐味ですし、オペのシーンもありますけど…僕じゃなくて(原田)泰造さんの担当なんですよ。オペの現場に立ち会えない分、モニタールームで見ていることで、そういったエンターテインメントな部分も描きつつ、今までにない──とにかく河毛さんはいつも、「今までに誰もつくったことのないドラマをやりたい」と、お話しされているので、僕も同じ思いで、これまでに演じたことのないキャラクターとして、でも実在していそうな人間として演じようと心がけました。

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