Interview

連続ドラマW「パンドラⅣ AI戦争」主演を務める向井理。意欲作に挑んだ心構えと身を投じての感触を語る

連続ドラマW「パンドラⅣ AI戦争」主演を務める向井理。意欲作に挑んだ心構えと身を投じての感触を語る

大切なのは終わり方ではなくて、「実際にこういう人たちがいたら、この先どうなったんだろう?」と思わせること

確かに、内科医の主人公というのはあまり記憶がない気がします。

ただ、過去に暴れている回想シーンを撮った時は、さすがにアクションものな感じがしましたね。しかも、ハイスピード・カメラで撮っていたりもして。ガラスが割れたり、結構派手だったので、「あれ、このドラマ…医療モノだよね?」と思ったりもしました(笑)。でも、今までの「パンドラ」シリーズを見ていても、それぞれ、ガンの特効薬をつくったり、遺伝子を組み換えたり、自殺防止の治療法を発明したりというベースはありますけど、その先に何があるのかが大事であって、「この世界からガンがなくなったら、どうなるのか?」といった壮大なクエスチョンを突きつけてくるわけです。
今回の『パンドラⅣ AI戦争』も、AIというものができたことによって内科医は必要なくなる、という話にもなってきますし、人の仕事を奪う技術って何なんだろう、という根源的なテーマになってもくるんですね。演者の視点からすると、目の前にあるテーマは医療の未来だったりもするんですけど、ドラマそのものは、もっと大きなテーマに迫っていくと思うので、そういう大きな視点で僕自身は楽しんでいます。

そうやって考えてみると、ドラマの中の出来事にとどまらない話でもあるんですよね。

そうです。実際、機械化が進んだことによって、人間が行う作業がことごとくロボットに取って代わられていますよね。昔は駅の改札も駅員さんがキップに鋏を入れていましたけど、全部ICカードでタッチになって、無人化が実現されてしまった。改札にいた人たちは違う部署に異動したのかもしれないですけど、もっとグローバルな考え方になると、離職する人、退職する人が増えて…その人たちはどこへ行けばいいのかという問題になってくるわけです。『パンドラⅣ AI戦争』も同じで、自分が専門的にやってきた内科医の作業がAIで事足りますと言われたら、どうなるのかを問うているところがあって。
極端な話、今後、医学部を受けるときに内科医を目指す人がいなくなる、といったところまで波及していく可能性もあるんですよね。特に、AI医療は現実的に行われているので、けっして絵空事ではないんですよね。AIそのものも今、第3次ブームらしいんですけど、この先どうなるのか誰にもわからないというところでは、不安になりますね。

今回の役に掛かるところで言うと、向井さんはパソコンや機械に詳しかったりするのでしょうか?

まあ、最低限のレベルという感じですね。大学のゼミで発表する時にスライドショーをつくったり、ワードやエクセルは大学生レベルでは使えてはいました。ただ、AIとなるとまた違ってくると思うんですけど、機械はそんなに苦手ではないです。

『連続ドラマW パンドラⅣ AI戦争』より

今回の鈴木哲郎を演じるにあたってAIについて調べたり、医療の知識を深めるようなことをされた、ということは?

AIに関しては何となく調べました。それこそ「AI」という映画がありましたけど、そもそもAIとは何だったんだろうと思うと、人工知能を搭載した何かとして実体化しているだけで、AIそのものはただのシステムなんです。いや、システムというか、考え方や概念といった方がいいのかな。だから、カタチになるものじゃないんですね。なので、つまるところ「これがミカエルです」というものがないんです。ドラマの中ではMRIみたいな機械に組み込まれているんですけど、実像はそうではなくて。そんなふうに実体がないものをわかりやすく具現化しただけなので、深く考えるほど、なおさらよくわからないものになっているという(笑)。知能って物体ではなく頭の中にある脳の回路なので、それを僕が演じる鈴木がミカエルの代弁をしてほしい、と河毛さんには現場で言われました。

なるほど。では、井上由美子さんをはじめとするクリエイター陣が10年間もシリーズとして作り続けてきた「パンドラ」という作品のメッセージを、向井さんはどう読み解いているのでしょうか?

さっきお話したことと重複しますけど、一貫して社会に何かを問いかけているシリーズだと思うんです。正直、民放の地上波ではなかなか描くのが難しいと言いますか…そこはWOWOWのストロングポイントだと思うんですけど、すごく社会的なテーマを掘り下げていると思います。井上由美子さんは、いい意味で見る者の心に爪跡を残すシナリオを書かれる脚本家さんだと思いますが、おそらく今回の「パンドラⅣ」も、安易なハッピーエンドでは終わらないと思っていて。大切なのは終わり方ではなくて、「実際にこういう人たちがいたら、この先どうなったんだろう?」と思わせることが、「パンドラ」シリーズのメッセージだと僕はとらえているんですね。
つまり、「AIが自分にもたらすものは何だろう?」という問いかけをしてもらうための、一つのファクターみたいなものなのかな、と。そこを踏まえて「もし自分がこの世界に存在していたらどうしただろう?」とか、「逆にこの世界が今の現実世界と一緒になったらどうなるんだろう」と、考えるきっかけになる作品になればいいなと思っています。

『連続ドラマW パンドラⅣ AI戦争』より

そういったテーマ性の面白さもありますが、生身の人間同士がぶつかりあうことで、何か渦巻くものが見えてくる面白さもドラマの醍醐味だと思います。今回は、ケレン味の担い手として渡部篤郎さんがいらっしゃいますが、共演されていかがでしたか?

お互いに全然タイプの違う芝居をしているんですけど、渡部さんは…誤解を恐れずに言うと、蒲生がいるというより、まさに渡部さんでいらっしゃるんです。でも、そこがいいんですよ。井上さんのアテ書きの面白さで、渡部さんのあの人間くさい──ちょっと茶目っ気があって、でも昔ちょっとワルいことをしてたんだろうなっていう野性味もあって、年齢を重ねて丸くなったけど、ギラギラした目はまだ残ってるっていう…蒲生代表っぽさがダブるんです。そこは井上さんの選球眼と言いますか、人間のそういう表面的じゃない部分、もっと奥の部分もご覧になっているからなんでしょうね。そう思うと、すごく面白くて。
…で、渡部さんと僕は全然違うお芝居をすると、いい意味で違和感が増幅していくんです。2人のシーンが多いので、結構カオスですよ(笑)。まったく相容れない2人がずっと喋っているわけですから。でも、水と油のような人たちなのに、なんで手を組んでいるんだろうと思うと、逆にお互いの信念の強さが見えてきたりするんですよね。あるいは、2人の生き方が似ている部分であったり。バックボーンが全然違う関係性だからこそ、何で蒲生と結ばれているのかを考えて観てもらえると、表面的な部分じゃない鈴木哲郎という人間が見えてくるのではないかな、と。複雑な言い方をすると、生身の人間だからこそ匂う鈴木の人間くささと、人間くささを抑えている蒲生ならではの人間味の対比は、見ていて面白いんじゃないのかなと思っています。

ヘアメイク / 晋一朗(IKEDAYA TOKYO)
スタイリスト / 外山由香里

『連続ドラマW パンドラⅣ AI戦争』

11月11日(日) WOWOWプライムにて放送スタート
毎週日曜よる10時~(全6話)第1話無料放送

脚本:井上由美子(「パンドラ」シリーズ、「白い巨塔」、『昼顔(2017)』)
監督:河毛俊作(「パンドラ」シリーズ)、村上正典(「連続ドラマW 真犯人」)
音楽:佐藤直紀(「パンドラ」シリーズ、『劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』)
出演:向井 理 黒木 瞳 美村里江 三浦貴大 山本耕史 原田泰造 渡部篤郎 ほか
特設サイトhttp://www.wowow.co.jp/dramaw/pandora4/

向井 理(むかい・おさむ)

1982年2月7日生まれ、神奈川出身。
近作に「やすらぎの郷」「アキラとあきら」(すべて17)「きみが心に棲みついた」「そろばん侍 風の市兵衛」(共に18)、映画『いつまた、君と ~何日君再来~』(17)『君が君で君だ』(18)、舞台「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season風」(17)など。映画『ザ・ファブル』(19)が公開待機中。現在、テレビ朝日系ドラマ「リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~」(テレビ朝日系)に出演中。来年公開の映画『ザ・ファブル』の出演を控える。

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