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ワルキューレ デビューからの軌跡&横アリ公演(×2)徹底解説─『マクロスΔ』とともに5人のステージが続く意味とすばらしさ

ワルキューレ デビューからの軌跡&横アリ公演(×2)徹底解説─『マクロスΔ』とともに5人のステージが続く意味とすばらしさ

アニメ『マクロスΔ』から飛び出した、戦術音楽ユニット・ワルキューレ。彼女たちの最新映像作品である『LIVE 2018“ワルキューレは裏切らない”at 横浜アリーナ』がBlu-ray&DVDにてリリースされた。2018年2月24日・25日の2日間にわたって開催され、2万2千人の大観衆を熱狂させたライブの模様を余すところなく収録したパッケージの見どころを、これまでの彼女たちの軌跡を振り返りながら紐解いていく。

文 / 仲上佳克


2年連続で開催した横浜アリーナでのステージ

「もう一度、この場所に戻ってこられるとは思っていませんでした――」

2018年2月、3rdライブの会場となった横浜アリーナのステージで、5人のメンバーは今回の公演に向けての思いをそう口にした。一人ひとり表現は違っても、心に抱いた気持ちはひとつ。アリーナを埋め尽くした大勢の観客たちを含めて、1年前の2ndライブを終えた時点でこうしてまた横浜の地でワルキューレのライブが開催されると考えた者は、いたとしてもごくわずかだっただろう。もちろん、2ndライブでワルキューレの今後の活動について何らかの発表があったわけではない。それでも、みんなが「これが最後のワルキューレかもしれない」と思っていた。その理由は、ワルキューレがアニメ作品から派生したユニットであるという、一般的なアーティストとは異なった出自をもつことによる。

2016年4月~9月にかけて放送されたTVアニメ『マクロスΔ(デルタ)』は、36年以上の歴史を誇る“マクロスシリーズ”の最新作として制作された作品である。今をさかのぼること36年前のアニメ界は、『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』に端を発する空前のSFアニメブームに湧いていた。その中でも特に個性的な作風で人気を博したのが1982年放送開始の『超時空要塞マクロス』である。後にマクロスの三大要素として広く知られるようになる「リアルなデザインの戦闘機からロボットへの変形」「主人公を中心とした三角関係を軸に据えたストーリー展開」「アイドルのうたう歌が作品内で重要な意味をもつ」はこの時点で既に確立し、後にシリーズ化してからも歴代の作品で踏襲されていくことになる。

『超時空要塞マクロス』ではアイドル歌手のリン・ミンメイ、『マクロス7』(1994年)ではロックバンドのFire Bomber、『マクロスF』(2008年)ではふたりの歌姫シェリル・ノーム&ランカ・リーと、時代の変化に即してさまざまな歌を紡いできたマクロスシリーズが『マクロスΔ』で世に送り出したのが“戦術音楽ユニット・ワルキューレ”だ。

戦術音楽ユニットとは、作中で猛威を振るうヴァールシンドロームという謎の奇病を歌の力で鎮圧するために結成されたユニットのこと。そのメンバーは、各方面から集められた5人の少女――フレイア・ヴィオン、美雲・ギンヌメール、カナメ・バッカニア、レイナ・プラウラー、マキナ・中島。それぞれに異なるイメージカラーの衣装を身にまとって歌い踊る姿は、従来のマクロスシリーズとは全く違うタイプのキャラクターの登場に放送開始前から多くのアニメファンからの熱い視線が寄せられた。

予想をはるかに超えていたワルキューレのポテンシャル

歌と深いかかわりをもつマクロスシリーズは、現実世界とも巧みにリンクしてその世界を広げていく。10年前の『マクロスF』でもシェリル・ノームの歌を担当したMay’nと、ランカ・リーの声優と歌を務めた中島 愛のふたりを輩出し、一大ムーブメントを巻き起こした。

『マクロスΔ』が始動するにあたってもまた、ふたりの新人が抜擢された。謎多きワルキューレのエースボーカル・美雲の歌を担当するのは、当時15歳の“シリーズ最年少歌姫”JUNNA。新メンバーとして登場するヒロイン・フレイアの声優と歌を務めるのは、中島 愛と同様に一般公募のオーディションの中から選ばれた鈴木みのり。このふたりは放送開始前の先行上映会やワルキューレとしての初のミニライブにも揃って出演し、シリーズの新たな歌姫としてファンに認知されるのに、そこまで時間はかからなかった。

だが、先述したようにワルキューレのメンバーは5人である。残る3人のキャラクターは、安野希世乃(カナメ役)、東山奈央(レイナ役)、西田望見(マキナ役)が歌と声優の両方を任されることになった。既に声優として活動しているキャストが歌い手まで担うのは長いシリーズの中でも異例のこと。さらに、彼女らは(後に安野と東山はアーティストデビューを果たすが)特に音楽活動をしているわけではなく、いわば歌のプロフェッショナルではない。そんな3人とJUNNA・鈴木のふたりが融合してどんな化学反応を示すのか、この時点では誰にも予想がつかなかった。

結論から言えば、ワルキューレのポテンシャルは我々の予想をはるかに超えていた。とても十代とは思えないほど新人離れしたJUNNAのパワフルなボーカル、逆にいい意味で新人らしいフレッシュさをもった鈴木のはつらつとした歌声、女性らしいたおやかさの中にもどこか悲しみを秘めた安野の表現力、持ち前の器用さで自分の役割を全うする東山の存在感、そしてユニットの中でひと際輝くアイドルらしさを発揮する西田のキュートな魅力――。結成当初はJUNNAと鈴木をフロント、安野・東山・西田をバックに置くという構想もあったと聞くが、結果的には“2+3”ではなく“5”としたことで、ワルキューレはマクロスシリーズの中でも唯一無二の存在になったといえるだろう。

主線とハーモニーが1曲の中で複雑に入れ替わるコーラスワークはデビューシングル「一度だけの恋なら/ルンがピカッと光ったら」の発売と共に多くのリスナーに衝撃を与え、「一度だけの恋なら」のミュージックビデオが公開されると、今度は高難度のフォーメーションを伴う振り付けを披露して観る者を驚かせた。生のステージで、5人揃ったワルキューレを観てみたいという機運が徐々に高まる中、2016年8月~9月にかけて東名阪を回るツアーを開催。この記念すべき1stライブで5人は複雑なコーラスワークと激しいダンスを両立したパフォーマンスを見せつけ、オーディエンスを圧倒。「歌って踊れるユニット」は数あれど、他にあまり類を見ない「歌って踊ってハモれるユニット」の出現は瞬く間に評判となり、ここからワルキューレの快進撃は続く……かに思われた。

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