冒険Bリーグ  vol. 3

Column

「いい2番」から「すごい1番」への飛躍。渋谷の若き司令塔、ベンドラメ礼生は「壁」を乗り越える

「いい2番」から「すごい1番」への飛躍。渋谷の若き司令塔、ベンドラメ礼生は「壁」を乗り越える

『冒険Bリーグ』へようこそ!ライターの大島和人です。Bリーグの魅力を横から目線、下から目線で多彩にお伝えするこの企画。第三回は渋谷で今まさに「壁」を乗り越えようとしている、若きガードの葛藤と努力をお伝えします。

取材・文 / 大島和人 写真提供 / B.LEAGUE


日本の男子バスケは今、若く有望な人材を徐々に世へ送り出しつつある。NBAデビューを果たした渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)や、八村塁(ゴンザガ大)など本場で高い評価を受ける人材も出てくるようになった。

一方で決め手となる人材がパッと思い浮かばないポジションがガードだ。特にポイントガードはチームの「司令塔」となる花形ポジション。ドリブル、3ポイントシュート、正確かつ創造的なパスといった“スキルセット”を揃えつつ、試合の読みやリーダーシップも求められる。

体格が決め手にならないポジションであるため、競争は必然的に激しい。様々な「候補」がBリーグで経験を積み、悔しい思いもする中で、日本バスケを背負うポイントガードが浮上してくるのだろう。

そんな司令塔候補のひとりが、サンロッカーズ渋谷のベンドラメ礼生だ。福岡県生まれでブラジル人の父を持つ彼は、2016-17シーズンにBリーグの初代新人王ともなった。183センチ・79キロの体格で、ゴール下に切れ込む素晴らしいドライブを持っている。個人で局面を打開し、自ら得点を決める部分は日本人ガードの中でも五指に入るだろう。昨シーズンのB1では1試合平均11.2点を挙げ、今季も二桁ペースで得点を決めている。

しかしこの10月、ベンドラメとチームは高くて厚い「壁」に直面した。渋谷は1勝7敗という苦しいスタートを切り、10月26日には勝久ジェフリーヘッドコーチ(HC)が退任。伊佐勉アシスタントコーチが昇格し、指揮を引き継いだ。

渋谷では「1番」のポイントガードで起用されていたベンドラメも、「2番」のシューティングガードにポジションが移った。(※バスケ界ではポイントガード=1番、シューティングガード=2番、スモールフォワード=3番、パワーフォワード=4番、センター=5番とポジションを番号で呼ぶ)

ベンドラメはこう述べる。
「僕が1番で出ているときに、上手く試合運びができなかった、勝ち切れなかったのはすごく責任を感じるところです」

シューティングガードへのコンバートには、判断や配球の負担が減り、彼の持ち味を発揮しやすくなるメリットがある。しかしベンドラメが日本代表のような「上」を目指すなら、そこを喜んではいられない。彼は自分で仕掛ける能力を既に持っているが、「試合の流れを読む判断力」「全体を動かす冷静さ」をまだ十分に持てていない。ただ、その両方を持てるようになれば「いい2番」から「すごい1番」へと飛躍できる。

ベンドラメは2番に戻った状況に葛藤を感じつつ、野心を捨てていない。彼は言う。

「葛藤はもちろんあります。自分が目指すところとチームが必要としていることがあり、その中でやることが少し変わってくる。そこにやっぱり葛藤はあるんですけれど、2番ポジションで出る時間帯でも学べるところは沢山ある。1番ポジションとしてどうするべきかと、2番で出ながらも考えています」

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伊佐新HCの下で、チームは復調しつつある。11月10日、11日には強豪・シーホース三河を相手に連勝を飾った。2試合とも最終盤までどちらに転ぶか分からない展開で、ベンドラメも「接戦をモノにできたことは自分たちの自信になります」と手応えを口にする。

三河戦の渋谷は、ベンドラメや伊藤駿といった高速ガード陣の速いドライブが効いていた。渋谷には213センチのロバート・サクレ、211センチのライアン・ケリーという強烈なコンビがいて、いずれもNBAでのキャリアを持つ大物。ただその副作用で、渋谷はオフェンスが単調になる、彼らに依存して攻撃が重くなるといった傾向が出ていた。

渋谷は新HCのもとチーム全員がボールをシェアし、チーム全員が得点を取りに行くスタイルへ切り替えようとしている。日本人を中心とした速攻を増やすことが、当然ながら復調のカギになる。そのためにはサクレやケリーがボールを捌きつつスペースを「空ける」仕事をする必要があるし、ベンドラメを筆頭にした日本人選手が単純にシュートを決めねばならなない。

そこについて新指揮官は「ベンドラメが(攻撃の)中心で、最後のシュートは彼に任せたいと思うくらいの選手。彼は責任と自信をもって今後やって欲しい」とベンドラメの働きに期待を口にする。

ベンドラメは三河との連戦で合計30得点を決め、ひとまず結果を出した。10日の第1戦後には「外国人以外のところで点を取れたことは大きい」と収穫も口にしていた。

伊佐HCは「自主練習の実の入り方が相当違っている」と試合以外の変化を口にしていたが、ベンドラメはそこに同意しつつ、外国籍選手から受けた影響を口にする。

「ロバート・サクレが練習前に一番来て(自主練習を)やっている。それを見てみんなの意識も高くなったし、練習前から汗をかいてしっかり1回身体を温めることはやっています。そうした一人一人の行動がチーム全体をよくしていくと思います」

Bリーグを見れば外国籍選手と日本人選手の能力差がどうしてもある。才能はあっても経験が足りないためにそれを出し切れていない日本人選手は多い。ただし優れた外国籍選手は、お手本として使えばいい。渋谷が10月に直面したような「壁」は、乗り越えようとする選手の努力を引き出す材料になる。

ベンドラメは完成した選手ではないし、経験不足も否めない。しかし彼が味わった苦い経験は、彼がBリーグを代表する1番となるための良い「薬」となるものだ。

B.LEAGUE(Bリーグ)オフィシャルサイト
https://www.bleague.jp/

著者プロフィール:大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。大学在学中にテレビ局の海外スポーツのリサーチャーとして報道の現場に足を踏み入れ、アメリカの四大スポーツに接していた。損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年から「球技ライター」として取材活動を開始。バスケの取材は2014年からと新参だが、試合はもちろんリーグの運営、クラブ経営といったディープな取材から、ファン目線のライトなネタまで、幅広い取材活動を行っている。

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