黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 22

Interview

『FF』もう一人のキーマン田中弘道氏(下)スクエニ合併から退社。そしてガンホーへ。

『FF』もう一人のキーマン田中弘道氏(下)スクエニ合併から退社。そしてガンホーへ。

次の世代にバトンを渡していくような立場でゲームに関わっていますね

今後作ってみたいものはすでに構想の中にあるんでしょうか。

田中 僕自身はホントに『聖剣伝説3』ぐらいで作りたいものはほぼ作り切っていて、最後に『ファイナルファンタジー』シリーズの集大成として『FFXI』のゲームシステムをデザインしたんで、やり切ったっていう感はあります。今は『セブンス・リバース』もそうですけど、次の世代にバトンを渡していくような立場でゲームに関わっていますね。ただね、『FFXI』以前まではホントにガムシャラに作るだけで、ほかのゲームってほとんど遊んでこなかったんですよ。でも、それだけだと、やっぱり枯渇していたんだろうなと思っていて。

インプットがないと。

田中 そうです。ほかのゲームを本気でやり込んだのって『FFXI』の前ぐらいだけですからね。あのときは1年近くあまり仕事もしないでガッツリ遊びました。坂口氏がハワイで映画を作っているときに『EverQuest(エバークエスト)』(注44)にハマっていたんです。「こんな面白いゲームがあるぞ、これやろうぜ」って言ってきたので始めたんです。そのときに「ああ、こんな面白いゲームがあるんだ」ってなったんですね。

でも、それをプレステ2で作ろうと思ってもハードディスクがないとオンラインゲームには必須とも言えるバージョンアップができない。DVDになって容量が増えたといってもさすがに難しいよねえって言っていたときに、久夛良木さんがペロっと「いや、ウチHDD用意している」って(注45)。それで、じゃあ作るかっていう話になって『XI』を作り始めたときにたまたまエレクトロニック・アーツの日本支社EAビクターがビクターとの提携を解消して、スクウェアと新たに合弁会社エレクトロニック・アーツ・スクウェアを設立したんです(注46)。

注44:ソニーオンラインエンタテインメント(現デイブレイクゲーム)が開発・運営を手がけたファンタジー世界を舞台にしたMMORPG。1999年のアメリカでのサービス開始以来、絶大な人気を誇り、後のMMOに多大な影響を与えた。

注45:ハードディスクを搭載したプレイステーション2用のネットワークアダプタ「PlayStation BB Unit」のこと。プレイステーション2向けのネットサービスは2016年3月10日をもって終了となった。

注46:現在はスクウェアとの合弁を解消している。

なるほど。

田中 このときエレクトロニック・アーツ・スクウェアの『ウルティマオンライン』の運営チームが丸ごと『XI』の運営チームになってくれたんです。だから、『XI』も『XIV』も元々は『ウルティマオンライン』のGM運用ポリシーからスタートして、その後『ファイナルファンタジー』のオンラインゲームとしてのポリシーを加えていって運営されています。

ありとあらゆるゲームをやり込んで、自分なりの回答を見つけてほしいですね

最後にクリエイティブを目指す若い人たちにアドバイスをいただけますか。

田中 まずベストプレイヤーであってほしい。僕も1年間ガッツリ遊んだからこそ『XI』が生まれたっていうのがあるので、やっぱりプレイヤーの視点に立つためには、まず自身がプレイヤーであるべきだと思います。ありとあらゆるゲームをやり込んで、自分なりの回答を見つけてほしいですね。

ゲーム業界も誕生から30年、40年経っていて、あらかた出尽くした感もありますが、たまに『テトリス』みたいなエポックメイキングなものが出てきますからね。既存の概念にとらわれないものって、まだあると思うんですよ。だから、「ゲームを作るぞ」って気負うんじゃなくて、「こんなゲームがあるんだ」って思いながら、いろいろ遊んでみてほしいです。その中で、「こういうゲームにしたいな」っていうものが見つかればいいなあと思います。

ありがとうございました。ちょっと失礼ですけど、田中さんって体も大きいし、あまり笑顔も見たことがなかったので何か近づきがたい、怖い人じゃないかっていう印象があったんです。

田中 オレと石井浩一が一緒に歩くとヤバイですからね、ハッハッハ。

そうそう、石井さんも威圧感がありますよね。僕は田中さんにもそうしたものを感じていたんですよ。でも、今日お話を聞かせていただいて印象が変わりました。

田中 完全な電気オタクですから。

いやいやいや(笑)、今日は素晴らしいお話をありがとうございました。

撮影 / 北岡一浩 取材協力 / 仁志睦


著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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