浜村通信が語る【ゲームは“売れる”から“集める”の時代へ】  vol. 1

Interview

浜村通信に訊く 「eスポーツをおもしろがる秘訣」

浜村通信に訊く 「eスポーツをおもしろがる秘訣」

2018年10月19日(金)に行われた、株式会社Gzブレイン主催のゲーム業界・産業に関する定例のクローズドセミナー。毎年2回開催されており、ゲーム業界・産業の未来を占うデータや示唆に富んだ注目のセミナーだ。今回のセミナーのテーマは「“売れる”から“集める”へ」。その意味するところをさらに深掘りすべく、ファミ通グループ代表・浜村通信こと浜村弘一氏にインタビューを敢行。本記事は、そのインタビューとセミナーの内容を通じて、ゲーム業界・産業の現状と展望を読み解いていく全4回となる。第1回は、セミナー冒頭で語られた話題沸騰中のeスポーツについて、データを交えながら浜村氏の描く将来像や熱い思いをお伝えしていきたい。

取材・文 / wodnet
エンタメステーション編集部

浜村弘一(浜村通信)

日本を代表するゲーム総合誌“週刊ファミ通”(旧・ファミコン通信)の創刊時に編集者として携わり、編集長も務める。浜村通信はペンネーム。現在は、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)副会長、カドカワ株式会社 デジタルエンタテインメント担当 シニアアドバイザー、ファミ通グループ代表。長年に渡ってゲーム業界・産業に寄り添い、知識だけでなく人脈も豊富で、さまざまな角度からゲーム業界に精通し分析を重ねている。


eスポーツと人間ドラマ

そもそも、“eスポーツ(esports)”とはなんだ? というフレーズを今年はあらゆるところで見かけるが、多くの方に知ってもらうためにも、何度だって説明すべき時期であろう。“エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)”の略称で、いわゆるビデオゲーム、コンピューターゲームを“競技”として捉えることの名称だ。

▲e-Sports X(クロス)。ブルーステージとレッドステージの2ステージが用意され、さまざまなタイトルの大会が行われた

日本国内におけるeスポーツの認知度は以下のとおり(図表参照)。2017年9月調査時点の14.4%から、2018年7月調査では41.1%と大幅に上昇している。国内ではeスポーツ視聴者の7割強が男性、残り3割弱は女性で、年代別に見ると、20・30代を中心に10代から40代までの視聴者が86%を占めている。

▲データはいずれもeb-i調査で、2017年9月調査はサンプル数が16,552人、2018年7月調査は21,777人だった ※Gzブレイン作成セミナー資料より

認知度の推移や年代層の広がりを見ると、国内でもeスポーツが急速に浸透してきていることがわかる。これは、“ゲームで競っている人たちを観戦する”という文化が定着し始めているとも表現できるだろう。そこで、浜村氏に少し変化球の質問をぶつけてみた。

eスポーツは“競技”なので、人が競い合う“対戦”がイメージされますが、たとえばフィギュアスケートのように個人技を磨くスポーツの形で、eスポーツが広がりを見せる可能性はあるでしょうか?

浜村弘一氏(以下、浜村) これは、言葉というか定義の話かなとは思います。フィギュアも点数を競っていますからね。直接的な対人戦が行われるタイトルだけがeスポーツなのか? と問われるなら、たしかにスコアで競うeスポーツタイトルは、無いことはないと思います。ただ、これはゲームを遊ぶ側の理屈だけでは片付けられない話題ですね。

遊ぶ側ではない理屈とはなんでしょうか?

浜村 それは見る側の理屈です。要するに“見ていておもしろいか”、“どう見たらおもしろくなるか”で、競技になるかが決まってくるんじゃないでしょうか。たとえば陸上競技で、選手がひとりずつ走るのを見ていておもしろいかどうか。並走して競っているからおもしろいんじゃないか。さきほど例に挙がったフィギュアスケートは、まずショーとして見応えがあるから見るのであって。ひとりのプレイヤーが延々とゲームをプレイする様子を見て、それで盛り上がるかどうか、ですよね。

たとえば、PlayStation®4(以下、PS4)の『モンスターハンター:ワールド』で、A選手とB選手が別々に狩りをする様子を見て、それぞれに得点をつけて競うというのはeスポーツになるか? ということですよね。

浜村 うーん、これは『モンスターハンター』だけに限らないですが、さまざまな要素が複雑に絡み合うようには思いますね。まず、そのゲームタイトル自体が見ているだけでもおもしろいかどうか。あと、そのゲームが普及しているかどうかによって、たとえ対人戦の要素が無くても、見る人は見るはずです。ただ、そういったコンテンツの持つ魅力とはまったく別の角度で、対人戦には、ゲームの外側に“人間ドラマが生まれる”という魅力があるんです。

人間ドラマ、プレイヤー自身のドラマ、ということでしょうか?

浜村 そうです。たとえば、失敗した選手をフォローしたり、チームの絶体絶命のピンチをひとりの選手がスーパープレイで逆転して救ったり、実際にプレイしている選手同士がそうした勝利をハイタッチして喜び合う。逆に、敗北を味わって涙を流す。そういったプレイヤー側に起こるドラマも含めて見るほうが感情移入しやすいですよね。そういう意味では、多人数同士の対戦のほうが、見ていて盛り上がる傾向があると思います。

たしかにFPS(First Person Shooting)、一人称視点のタイトルのeスポーツ大会などを見るとそう感じます。

浜村 ですから、最近では『ウイニングイレブン』も『鉄拳』も『ストリートファイター』も、ゲームの内容としては1対1がベースにありながら、大会やイベントの仕組みとして3on3などのチーム対抗戦にする試みを始めています。単純に“eスポーツは競うもの”。だから、対人戦のできるゲームが選ばれているというだけではなくて、“プレイする人たちの人間ドラマもいっしょに見るスポーツ”だから、よりドラマチックな展開が生まれやすい対人戦が選ばれている、という逆の理屈もあると思います。

▲シリーズ最新作の『鉄拳7』は現在シーズン2に突入し、多彩なキャラクターが次々追加。直感的で爽快感のあるバトルが3D格闘ゲーム最高峰のグラフィックで楽しめる

▲格闘ゲームというジャンルを確かなものとしたシリーズの最新作『ストリートファイターV』。まず家庭用ゲーム機で発売され、満を持して2019年にアーケード版の登場も控えている

昔、『風来のシレン』というとてもハプニングの起きやすいゲームで、一喜一憂しながらプレイする人を後ろから眺めて大笑いしていた時代がありました。見るという点では、対人戦で起こるドラマや盛り上がりは、これとは別物ということですね?

浜村 ゲーム実況はすでに確立されていますよね。それはそれでおもしろい。それとは別の“見るゲームの新たなカテゴリー“としてeスポーツがある、ということですね。人対人のドラマが起こるゲームシーンが見ていておもしろい。

浜村 昨年の東京ゲームショウ(TGS)2017のe-Sports X(クロス)ステージで、『モンスターハンターダブルクロス Nintendo Switch Ver. トップハンター最速決定戦 in TGS』がありました。たとえば、2組が同時に同じクエスト(複数のモンスターを討伐する)をスタートしたとして、どちらがさきに討伐し終えるかを競うとなったらどうなるか。片方のチームが一歩さきに進んでいる様子を、もう片方のチームは実況や会場の気配、盛り上がりから感じ取って、追い越すためにはどうするか? と悩んだり、作戦変更をその場で決めたりするだろうと思います。

▲TGS2017のe-Sports Xで行われたのは『モンスターハンターダブルクロス Nintendo Switch Ver.』のチャレンジクエスト。あらかじめ用意された装備から1種類を選んで2人1組のチームでクエストに挑み、討伐時間を競う

いわゆるTA、タイムアタックですね。

浜村 はい。タイムアタックなので個別にプレイしても討伐タイムは出ますから、それを比較しても決着はつきます。実際、大会ではそうしていたわけですし、1組ずつの超絶プレイをじっくり見られるという利点もある。もし「いっせーのーせ!」で同時にスタートしていたら、劣勢のチームは追いつくためにリスクを承知で危険な作戦を選ぶであるとか、プレイ中に別の駆け引きが加わるかもしれない。そこに観客として共感できるドラマが生まれたりもするんです。その一瞬や瞬間に、eスポーツのおもしろさがあるのだと思います。

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