浜村通信が語る【ゲームは“売れる”から“集める”の時代へ】  vol. 2

Interview

浜村通信曰く 「ゲームはおもしろがったもん勝ちっ!」

浜村通信曰く 「ゲームはおもしろがったもん勝ちっ!」

株式会社Gzブレイン主催のゲーム業界・産業に関する定例のクローズドセミナーが「“売れる”から“集める”へ」というテーマで開催された。本記事は、ファミ通グループ代表・浜村通信こと浜村弘一氏に後日行ったインタビュー内容と併せて、このテーマを読み解いていく全4回。第1回の記事では、eスポーツの活況とプレイヤーたちの人間ドラマも含めた“見て楽しい”ゲームシーンを開拓するeスポーツの役割が見えてきた。今回は、そんなeスポーツにどう参加していくべきか、eスポーツを取り巻く状況やゲーム業界に関わる人々の話も交えながら、浜村氏のビジョンを共有していく。

取材・文 / wodnet
エンタメステーション編集部

浜村弘一(浜村通信)

日本を代表するゲーム総合誌“週刊ファミ通”(旧・ファミコン通信)の創刊時に編集者として携わり、編集長も務める。浜村通信はペンネーム。現在は、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)副会長、カドカワ株式会社 デジタルエンタテインメント担当 シニアアドバイザー、ファミ通グループ代表。長年に渡ってゲーム業界・産業に寄り添い、知識だけでなく人脈も豊富で、さまざまな角度からゲーム業界に精通し分析を重ねている。


他業種・他分野のeスポーツ参画

人と人が競い合うのを見ること。それをショーとして興行すること。それ自体は、古代ローマの円形闘技場・コロシアムまで遡ると大袈裟かもしれないが、人類がずっと楽しんできたスポーツ観戦そのものだ。その意味では、eスポーツはリアルスポーツと区別できないどころか、むしろ老若男女やハンデキャップを問わず、多くの“一般の人たち”が参加できるバリアフリーなスポーツとして注目されてきている。

セミナーで紹介されたau、サントリー、ガレリア、ローソン、BEAMS、indeedの大手企業6社は、いずれも一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)のオフィシャルスポンサーとしてeスポーツ業界への参画を決めた企業だ。こうした一般の他業種・他分野からも熱い視線が注がれている背景に何があるのか、浜村氏を直撃した。

JeSUのスポンサーに他業種・他分野の企業が続々と参加しているという話を興味深く聞きました。これまでにも、何か商品を買うとゲーム内アイテムがもらえるパスコードがついてくるといった企画などではゲーム業界と一般企業のコラボレーションは見かけましたが、eスポーツでは、こういった他業種・他分野企業とどんな関わりをしていくのでしょうか?

浜村弘一氏(以下、浜村)  まず彼らが期待してくれているのは、おそらくスポーツとしての部分だと思うんですよね。逆の言いかたをするなら、すでにスポーツとして認めてくれている企業がこの時点で参加してくださっている。セミナーでも少し話しましたが、たとえばBEAMSさんの名前があります。スポーツブランドではないBEAMSさんが、新しいスポーツとしてeスポーツならではの発想、デザインを提案したいという話は、すでにうかがっています。いまプロプレイヤーに半袖のユニフォームを着せているチームが多いですけど、ジャケットを着てもいいんじゃないか、とか。BEAMSさんのハードルを上げてしまって申し訳ないですけど、個人的にはBEAMSさんの作るユニフォームやeスポーツウェアがどんなものになるのかは、すごく見てみたいですね。

こうした他業種・他分野にゲーム業界が与えている影響という観点から眺めたときに、2010年頃から使われている“ゲーミフィケーション”という言葉が思い当たりました。ゲームのおもしろさを説明できる人、ゲームの仕組みに詳しい人、ゲームでの勝ちかたを知っている人が、ある意味他業種・他分野で活躍できる時代。これはゲームファンがアドバンテージを得るような時代がすでに来ている、と考えてもいいでしょうか?

浜村 アドバンテージかどうかはわからないですが、すでにゲームは共通言語になっていますよね。体力のことを“HP”と日常会話で言って通用するくらいになっている。たとえば、銀行のATMやキャッシュディスペンサーの画面を前にして、「俺ならもっと使いやすいUI(ユーザーインターフェース)を作れるのにな」っていうゲームの開発者ってけっこういて、ゲーム的な操作に慣れているからこそ、「ここで画面が戻るって設計は(ゲームでは)ありえないよね」とか気づける。「この家電のマニュアル(説明書)の分厚さはなんなんだ?」とかもそうですね。

ゲームのマニュアルは昔に比べてものすごく進化……というか、ほぼ無くなってしまいましたね。

浜村 『Nintendo Labo』のマニュアルはすごいですよ。マニュアルの“無さ”がとにかくすごい。プラモデルを作るときって指示が図解されていますけど、『Nintendo Labo』は画面上ですべての工程を解説してくれる。要するにマニュアルがすべて動画になっている。最近の家電には、一見薄いマニュアルで親切だなぁと思っても、よく見るとオンラインでサイトにアクセスして調べてくださいと誘導するケースも多い。もし任天堂が家電のマニュアルを作ったとしたら、すべて丁寧に、しかも使いながらわかる形で解説してくれるはずです。この発想ってじつはゲーム業界では当たり前の“マニュアルいらず“の文化で、ゲームに詳しくない世界の人たちにとっては想像もつかない発想やアプローチがあったりするとは思いますね。

▲『Nintendo Labo』はNintendo Switchで発売されている、ダンボールでコントローラーを自分で作って遊べるという新感覚ゲーム。画像は、マニュアル動画の流れがわかるように4枚を並べたもの

よくゲーム業界は技術的に最先端を走っているという話を耳にしますけれど、ここにきて人の考えかたとか価値観、モノの見かたも、ゲームに接している人のほうが感覚的に研ぎ澄まされているような気がしてきます。

浜村 研ぎ澄まされているというか、誰かに何かを伝えて理解してもらうための努力や発想に慣れているということかもしれませんね。何かを見てすぐに、「これはユーザーフレンドリィじゃないな」と気づけたりする。ゲームってじつは、ありとあらゆるクレームに耐えられるようにできているんですよね。ゲームを遊んでいてプレイヤーを2秒待たせるようなことがあったらダメだな、とか。任天堂が光学メディアを使うハードになかなかシフトせずにロムにこだわったのは、プレイヤーを待たせるのがイヤだったからという話がありますよね。これって究極のユーザーフレンドリィと言えると思うんです。まぁ待つタイトルもあるにはありますけどね(笑)。ユーザーのことを第一に考えているのはもちろんだし、こういう環境で育ってきたのがゲームファンだから、僕らはいろいろなモノを見る目も肥えていて、要求水準がすごく高いですよね。

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