浜村通信が語る【ゲームは“売れる”から“集める”の時代へ】  vol. 3

Interview

浜村通信が解説する 「ゲーム業界・産業の現況」

浜村通信が解説する 「ゲーム業界・産業の現況」

「2018年秋季 ゲーム産業の現状と展望 “売れる”から“集める”へ」と題して開催された、株式会社Gzブレイン主催のクローズドセミナー。本記事は、セミナー後にファミ通グループ代表の浜村通信こと浜村弘一氏へ行ったインタビューを元に、ゲーム業界の現在と未来を読み解く全4回の特集だ。これまでの2つの記事は、国内でも急速に盛り上がりを見せるeスポーツをメイントピックスに浜村氏を直撃した。3回目となる今回は、好調を見せる家庭用ゲーム機市場の裏側にスポットを当て、ゲーム業界・産業の“いま”をあらためて浜村氏とともにさまざまな角度から眺め直していく。

取材・文 / wodnet
エンタメステーション編集部

浜村弘一(浜村通信)

日本を代表するゲーム総合誌“週刊ファミ通”(旧・ファミコン通信)の創刊時に編集者として携わり、編集長も務める。浜村通信はペンネーム。現在は、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)副会長、カドカワ株式会社 デジタルエンタテインメント担当 シニアアドバイザー、ファミ通グループ代表。長年に渡ってゲーム業界・産業に寄り添い、知識だけでなく人脈も豊富で、さまざまな角度からゲーム業界に精通し分析を重ねている。


『スプラトゥーン2』と初恋

家庭用ゲーム機といえばNintendo Switchが世界中で好調だ。2017年3月3日に発売され、1年半で日本国内の販売台数は累計517.0万台と、その普及スピードは著しい。同じ1年半で633.9万台を販売したWiiと比較すると、数字の上では下回っているが、Wiiが1年半の間に年末商戦を2回経ているのに対し、Nintendo Switchは1回のみということから見ても、その好調さをうかがい知ることができる。セミナーで浜村氏はさらに、Nintendo Switchの好調を表す指標として『スプラトゥーン2』の装着率に注目していた(図表参照)。

▲このグラフは前作『スプラトゥーン』(Wii U)と『スプラトゥーン2』のパッケージ版のみの装着率を比較したもの。装着率とは、ゲーム機本体を買った人がどれくらい特定のゲームソフトを購入しているかを示す比率である。『スプラトゥーン2』は2017年9月3週のピーク時の装着率70.5%も顕著だが、2018年9月5週の時点でもまだ51.8%で、2台に1本の割合が驚異的である ※Gzブレイン作成セミナー資料より

Nintendo Switchの好調に『スプラトゥーン2』が貢献しているというお話がありました。たしかに国内の販売本数で見ても2018年上半期でダントツの1位(約268万本)ですが、海外でもこのような現象は見られるのでしょうか?

浜村弘一氏(以下、浜村) 憶測になりますが、日本と同じではないと思います。なぜなら、海外ではFPS(First Person Shooting;一人称視点のシューティングゲーム)を遊ぶ文化が当たり前ですよね。日本ではFPSが一般層にまで浸透していませんでした。正確にはTPS(Third Person Shooting;三人称視点のシューティングゲーム)ですが、初めてFPSらしきゲームを幅広く浸透させたのが『スプラトゥーン』というタイトルだったんです。女性でも子どもでも遊べるFPSを提案して、それがしっかり受け入れられた、ということですよね。

セミナーでも、Nintendo Switchの好調の要因に若年層の盛り上がりを挙げていました。若年層に何が響いているのでしょうか?

▲4人1組でチームバトルをくり広げるシューティングゲーム、『スプラトゥーン2』。勝敗は敵を撃ち倒すことでは決まらず、インクをばらまいて地面を塗りまくり、試合終了時に敵よりも多くの陣地を塗っていたチームが勝利となる。カジュアルでキャッチーな世界設定も魅力

浜村 『スプラトゥーン2』に関して言えば、やはりコンテンツの力、おもしろいゲームだった、ということにまずは尽きるとは思います。それともうひとつ、“新鮮さ”があったということが言えるんじゃないでしょうか。さきほどの話とつながりますが、FPSのおもしろさを知るきっかけになった。人を撃つことに慣れていない日本人にとって、FPSは食わず嫌いしていたところがあって、それを食べられるように加工してFPSのおもしろさを伝えてくれた。さらには、子どもや女性にとっても嫌悪感を抱かない、むしろ好意的にすら感じられる世界設定とキャラクターでもあった。こうした加工の努力やキャッチーな要素に惹かれてひと口食べてみたら、そもそもおもしろかったFPSがものすごく新鮮だった、ということだと思うんです。

業界的に新しいかどうかではなく、ユーザー一人ひとりにとっての新鮮さですね。

浜村 ええ。新鮮なゲームというのは、たとえば、初めて遊んだRPG(ロール・プレイング・ゲーム)などはハマりますよね。僕はよく“初恋ゲーム”って言いかたをするんですけど、生まれて初めて遊んだゲームのことを恋してしまうほど大好きになってしまう。ゲームはどんなタイトルであれ、画面に映ったものを自分で操作できるインタラクティブ性があって、ただ操作できるというだけでも、すでにおもしろい。日本人が毛嫌いしていたFPSというジャンルのおもしろさを味わえる形に料理したら、ものすごく好きになってしまった人がたくさんいた。『スプラトゥーン2』はおそらくIP(知的財産)として、ずっと生き残っていくタイトルになるんじゃないかと思います。

日本におけるFPSの先駆者ですね。

浜村 そうですね。少し脱線しますけど、たとえばRPGでは『ファイナルファンタジー』と『ドラゴンクエスト』。レーシングゲームでは『リッジレーサー』と『マリオカート』。もしかしたら『グランツーリスモ』も入ってくるかもしれませんが、それぞれのジャンルを代表するタイトルというのは、王道という意味では1つか2つに絞られてくるんですよ。まさに『スプラトゥーン』は、日本でのFPSというジャンルの代表作、ということになるんじゃないかと思います。日本のFPSプレイヤーの人口は、かつては30、40万人だったんですけど、いまは200万人を超えている。そこまで押し上げたのが『スプラトゥーン2』であり、任天堂の制作力の上手さ、強さだったということだと思います。

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