浜村通信が語る【ゲームは“売れる”から“集める”の時代へ】  vol. 3

Interview

浜村通信が解説する 「ゲーム業界・産業の現況」

浜村通信が解説する 「ゲーム業界・産業の現況」

新しい技術とヒットの構図

Nintendo Switchに続き、セミナーではPlayStation4(PS4)の現況についても言及した浜村氏。PS4は2014年2月22日に登場し、4年7ヵ月で国内累計販売台数が700万台を突破した。これは、同期間でのPlayStation3の数字(651万台)を上回っていて、家庭用ゲーム機ハードとしては円熟期に入っていると言えるだろう。そんなPS4の堅調を盤石にした2018年のビッグタイトル2本について、浜村氏にうかがった。

PS4で今年大活躍を見せたのがまず『モンスターハンター:ワールド』でした。浜村さんは以前、MANTANWEBという媒体の取材で累計出荷本数1000万本突破を予想し、見事に大当たりでしたが、確信や根拠はありましたか?

浜村 『スプラトゥーン2』の話と通じてきますが、海外で評判になるタイトルはFPSが多くて、ユーザーもFPSばかりのゲーム環境に少し飽きていた風潮がまずあったと思っています。そんななか、海外でも『Destiny』であるとか『Ark』といったハンティングゲームが出始めて、『モンスターハンター』シリーズも発売されてはいたんですが、ケータイゲーム機向けの展開だったんです。ご存知のように、日本で『モンスターハンター』シリーズが社会現象を起こした当時は、日本のゲーム市場の75%がケータイゲーム機でした。一方で、海外でのケータイゲーム機市場はたった10%だけ。それでも『Destiny』や『Ark』のようなタイトルがのちに出てきたということは、海外でもハンティングゲームに注目する人たちがずっといて、新作の登場が望まれている状況があるとは感じていたんです。そこに、ハンティングゲームとして圧倒的に熟れていて、ゲーム性としてもおもしろい『モンスターハンター』の最新作が発売されたら、ハンティングゲームというジャンルの王道として世界中で注目されるだろうな、と予測が成り立ちました。

▲全世界で累計出荷本数1,070万本(2018年9月30日時点)を突破したハンティングアクションゲームの最高峰『モンスターハンター:ワールド』(PS4/Xbox One/PC 発売中 ※Xbox Oneは全米・欧州)

海外では、満を持して据置型ゲーム機で『モンスターハンター:ワールド』が発売されたということですね?

浜村 海外のゲームシーンでは、みんな王道を待ち望んではいるんだけど、なかなか納得いくタイトルが出てこない。そんななかで、海外向けにリファインされた『モンスターハンター』が据置型ゲーム機で発売されたら、全世界で1000万本は届くだろうなと感じました。さらに付け加えるなら、おそらくプラットフォーム(ゲームを遊ぶハード)として、PC版も発売するだろうなという読みもありました。日本では15%ほどしかない据置型ゲーム機市場も、世界規模で見ると市場は大きく、かつ伸びてもいて、世界に『モンスターハンター』を持っていくカプコンの戦略という意味で、『モンスターハンター』をハイエンドで世界向けにリファインしたのは正しかったと思います。

ある意味、Nintendo Switchの『スプラトゥーン2』がFPSを日本に流行らせたことと逆の構図で、これぞ日本の誇るコンテンツという『モンスターハンター:ワールド』が、PS4を主戦場にして世界を席巻しているのだなと感じました。

浜村 そうですね。海外向けにリファインしたうえで、世界中で大きく伸びているプラットフォームで発売した、という合わせ技なんだと思います。

PS4の伸び、盛り上がりに起因するもうひとつのタイトルとして、セミナーでは『フォートナイト』が挙げられていました。PS4のサービスに変化を及ぼすほどのタイトルになったのは、どういった部分だったのでしょうか?

浜村 『フォートナイト』が、というよりも“バトルロイヤル(大勢のプレイヤーのなかで最後の1人になるまで生き残る)”ゲームが起こしたムーブメントの凄さをあらためて痛感しますよね。バトルロイヤルはシューティングゲームの一部ではあるのですが、もはや新しいゲーム、新しいジャンルと言えるでしょう。そして、なんと言ってもクロスプレイ。ゲームハードの垣根を超えて、PS4でも、Nintendo Switchでも、Xbox ONEでも、PCでも、スマートフォンでも遊べて、なおかつ別のプラットフォームで遊ぶプレイヤーたちと同じフィールドでいっしょに遊べる。ゲームの新しいヒット作は、こうしたクロスプレイのような新技術の上に生まれてくることが多いんです。

▲最大100人が同時に参加できるバトルロイヤルゲーム、『フォートナイト』。最後の1人になること(VICTORY ROYALE)がプレイヤーの目的で、バトルの上手い下手だけで勝ち残れるとは限らない。キャッチコピーに「拠点が要るなら自分で造れ」があり、本作は素材を集めて壁や階段を自ら建築し、立てこもったりもできる。ポップな見た目も魅力

新技術が新しいゲームを生み出すということですか?

浜村 そうではなくて組み合わせの“構図”ですね。みんな『ファイナルファンタジーVII』が大好きな理由って、それまでポリゴンで表現されたRPGがなかったからだと思うんですよ。あんなに生き生きとキャラクターが動き回るRPGは当時見たことがなかった。ポリゴンで表現されたタイトルということで言えば、PCの人気アドベンチャーゲームに『アローン・イン・ザ・ダーク』がありましたが、そこで使われていた当時の最先端技術を、世界中が好きなIP『ファイナルファンタジー』シリーズで使うという組み合わせだったわけです。じつはこんな風に、あるゲームタイトルがヒットする背景には“構図”がちゃんとある。それを今回の『フォートナイト』に当てはめてみると、人気のバトルロイヤルゲームに、クロスプレイが実現できる技術力を使ったという構図。もう少し詳しく言えば、PCゲーム市場よりも大きく、伸びも期待できる家庭用ゲーム機市場にも『フォートナイト』を投入してプレイヤーを一堂に会させた、という構図になっている。その技術的なインパクトが強かったんだと思います。家庭用ゲーム機という視点で見ると『フォートナイト』が最初のバトルロイヤル体験になったユーザーが多かったから、好きになった人も多かったということでしょうね。

こうしてお話をうかがうと、ユーザーが最初に触れる機会の大事さがあって、あらためてハードや媒体の裾野を広げる意味は大きいと感じました。

浜村 同じことが『荒野行動』にも言えると思います。これからどうなるかわかりませんが、日本のスマートフォン市場で最初に投入されたバトルロイヤルゲームは『荒野行動』なので、スマホ市場では『荒野行動』のほうが人気がありますから。

1年半さきの未来を見据えるゲーム業界

PS4に関連する話題として、毎年来場者数が右肩上がりの東京ゲームショウ(TGS)のとある結果がセミナーで取り上げられていた。ちなみにTGS2018の来場者数は過去最高の298,690人で、この数字に大きく貢献したのがeスポーツイベントだと浜村氏は分析している。さて、TGSの恒例行事となった日本ゲーム大賞の発表。そのなかの“フューチャー部門”に今年大きな変化があったという。これについて浜村氏に聞いた。

▲下表の2012年を見ると、半分のタイトルがケータイゲーム機向けタイトルであるのに対して、上表の2018年は、すべてのタイトルが据置型ゲーム機向けタイトル ※Gzブレイン作成セミナー資料より

PS4を取り巻く環境の変化といえば、TGS2018の日本ゲーム大賞・フューチャー部門(今後が期待される作品に来場者が投票した結果)のラインアップに注目します。上位の10タイトルすべてが据置型ゲーム機向けのタイトルであり、すべてPS4で発売されるタイトルでした。この変化が示しているのはどんな現象でしょうか?

浜村 ケータイゲーム機からのシフト・チェンジが起こっているという捉えかたができるかもしれません。サードパーティー(ゲームソフトを開発・販売する会社)は、セミナーで取り上げたNintendo Switchの好調をまだ知らなかった時期ですから、普及台数の多いPS4向けタイトルの出展が必然的に多くなります。TGS2018に来場して投票した方たちから見ても、ニンテンドー3DSなどのケータイゲーム機向けの出展タイトルが少なくなっていますから、投票する際の選択肢としてPS4向けのタイトルが多くなったはずです。このタイミングでの市場の動向が結果に表れた、ということだと思います。いまPS4のタイトルが多いというのは、“1年半まえくらい”の状況を見ていないと占えないところがあって、これからさきの1年半としてみると、次回はNintendo Switch向けのタイトルが増えてくるんじゃないかと思います。

なるほど。そうなるとNitendo Switchは据置型ゲーム機とケータイゲーム機の合わせ技のハードですから、その結果がまた来年のTGSでフューチャー部門に反映されてくるかもしれないと?

浜村 そうですね。それからPS4向けのタイトルがフューチャー部門に多く並んでくる理由をもうひとつ挙げるなら、“海外で日本のタイトルが売れ始めている”という背景があると思います。

さきほどの『モンスターハンター:ワールド』のようにですか?

浜村 たとえば『仁王』であるとか、アジア圏では『龍が如く』シリーズも売れています。『ペルソナ』シリーズも海外ですごく評価が高いんですよ。こうした、言わば日本で売れるように作ったタイトルが、そのままでも海外で売れ始めている。PS4で展開すればひとつのコンテンツが世界中で売れる。PS4の未来は明るいぞ、とそれぞれのタイトルを作るメーカーが1年半まえにじつはそれを見抜いて予測していたからこそ、いままさにこういう状況が生まれているのだと思います。

▲『ペルソナ』シリーズのナンバリング最新作『ペルソナ5』は、とある事情で東京の高校に転入することになった主人公の一年間を体験するRPG。独特の世界設定やスタイリッシュなデザインで人々を魅了し、アニメ化もされている

たしかにアニメチックなキャラクターを代表するような、いわゆる日本人好みのテイストが海外でも当然のように受け入れられていますよね。

浜村 これはYouTubeなどの動画サービスのおかげですよね。日本のアニメが動画サービスに乗っかって、それを見た海外の方、とくにフランスやアメリカの方に響いている。日本のテイストを自分たちの作品にも取り入れたりして、そうやって日本のアニメ文化が受け入れられてきたことが、PS4のタイトルの評判にも影響しているということでしょうね。

フューチャー部門に据置型ゲーム機向けのタイトルが多いのは、相対的にスマホ向けゲームアプリの数が減ったからでしょうか?

浜村 日本ゲーム大賞フューチャー部門の投票は、あくまでもTGS2018に来場したゲームファンが、出展されていたタイトルだけを見て、触って、評価して1票を投じているものなので、ゲーム業界全体を表してはいないですね。

なんとなく、据置型ゲーム機向けのゲームが注目されているということは、ユーザーひとりあたりがゲームに費やす時間、もっと言ってしまえばゲームに費やすお金が増えていることの表れなのではないかと感じたのですが。

浜村 たしかに市場規模としては拡大しています。ただ、それ以上にスマホの市場も大きいですけどね。

少し脱線しますが、セミナーでは芸能人の実況チャンネルを例に『Dead by Daylight』をピックアップしていました。これまでにも何作か発売されてきた非対称型マルチプレイヤー対戦ゲーム(鬼ごっこのように、追う側と逃げる側に分かれて、1対4などの対称的ではない人数で対決するゲームのこと)ですが、このジャンルがこれから浸透していきそうな背景があるのでしょうか?

浜村 やはり新しいかどうか、だと思いますね。ゲームっていつも新しい提案がなされて、それにみんながビビッドに反応するものじゃないですか。とくに今回、ゲーム実況をする人がどんどん増えてきて盛り上がってきているから、その拡散の勢いを見ていて、来そうだなと僕が個人的に感じているという程度ですね。

ゲームを実況するというスタイルに適したジャンルだということですか?

浜村 そうですね。ただ、こういう流行りそうなゲームやジャンルには波があって、どんなにいい波でも、ほかに大きな波が起きてしまうと埋もれてしまうことがあるんですよ。これは絶対イケるのに……と思っていても、そこまで流行らなかったりする。そういうめぐり合わせもあるので、まだ非対称型の対戦ゲームが絶対来るとまでは言えないですね。ただ、いい気配は感じる、ということですね。


家庭用ゲーム機好調の裏にはしっかりとゲームソフトの存在感があり、ゲームの楽しみかたに新たな提案をもたらす技術の登場もゲーム業界を支える大きな要素である、と語った浜村氏。いまの好調が1年半まえのクリエイターたちの描いていたビジョンであるなら、つぎの1年半後は、いったいどんな景色を我々に見せてくれるのだろう。TGSのゲーム大賞・フューチャー部門からは今後も目が離せない。さて、最終回となるつぎの第4回では、ゲーム業界がさらにどんな未来へと向かっているのか。浜村氏が語る“売れる”から“集める”への変化が何を意味するのか。その核心に迫っていきたい。

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