浜村通信が語る【ゲームは“売れる”から“集める”の時代へ】  vol. 4

Interview

浜村通信が語る 「ゲームは“売れる”から“集める”の時代の真相」

浜村通信が語る 「ゲームは“売れる”から“集める”の時代の真相」

“売れる”から“集める”の変化をおもしろがれるか

ゲーム業界にまつわる技術革新の話は尽きない。昨今は、スマートフォンにも“ゲーミングスマホ”と呼ばれる機種が登場するほど、スマホはゲームハードとしての地位を確立している。新しいOSや機種が新機能を備えるたびに、ゲームやアプリケーションはかなりのスピード感を持って活用していく。セミナーでも紹介された、リアル世界の物質をスマホで撮影(スキャン)して3DオブジェクトとしてAR空間に再現できる“iPhone 3D Scanner”の技術なども、その一例だ。被写体を360度方向から映すだけで自動的にモデリングして3Dオブジェクト化し、リサイズも可能。たとえば、お店で気に入って取り込んできた家具の3Dモデルデータを、自宅に戻ってから好きな場所に配置して、フィット感を確認するといったことができる。ゲームへの応用にも期待が膨らむ技術だ。

ゲームハードを見ても、マイクロソフトは次世代ゲーム機の開発に乗り出していることを示唆しているし、ソニーはPS5とは明言しないまでも、後継機の開発に着手していると明言している。こうした次世代に向けた動きとともに、ゲーム業界は“サービスの形態”も変容させている。至極当たり前のことを書くが、ゲーム業界も含めたエンターテインメント業界は人々を楽しませるために、“いかに売れるコンテンツを作るか”に心血を注いできたと言っていいだろう。それはこれからもエンターテインメント業界の中核にあり続けるはずだ。だが、これからの時代は“売れる”ことだけにフォーカスするのでは足りないかもしれない。インタビューの最後に浜村氏からうかがったのは、激動のゲーム業界の全体像と、そこに寄り添う我々の在りかただった。

任天堂、ソニー、マイクロソフトを中心としたゲーム業界全体の“サブスクリプションサービス (定額制サービス) ”の強化が、今後のトピックスのひとつになっていきそうですね。日本ではまだですが、マイクロソフトは10ドル払えば最新のゲームもすべて遊べるサービスを始めているとか?

浜村 セミナーでもお話ししたように、世界ではすでにパッケージ販売の売上は全体の1割まで下がっていて、たくさんのユーザーがダウンロード、もしくはダンロードしては消す、をくり返して、大切なセーブデータをクラウド上に置くことが当たり前になってきています。パッケージを作らなくていいとなったら、中間マージンも取られなくなりますし、利益率が高いし、価格も抑えられる。そうなればたくさんのユーザーに手に入れてもらえる。流通革命とも言えることですよね。

物品として手元にないと買った気がしないといった気持ちもまだあるにはあると思いますが、周囲を見ていてもずいぶんとダウンロードに慣れてきているように感じます。

浜村 気持ちはもちろんわかるんですけどね。アーカイブしておけるのはいいですよ。そういうユーザーさんが増えてきているのは感じています。時間帯を気にせずにいつでも買えるし、品切れもないですからね。

こうしたゲーム業界を取り巻く技術やサービスの革新によって、ゲームハードの垣根がなくなるだけでなく、そもそもゲーム機を持っていなくてもゲームが遊べる時代が到来するかもしれない、というセミナーでのお話は衝撃でした。そんな時代を、どんな風に待ち構えていたらいいでしょうか?

浜村 何も難しいことはなくて、ただただ“おもしろがればいい”と思います。さきほどAIアシスタントを少し怖いかもと言っていましたけど、身体に悪いとか、子どもによくないとか言わずに、まずはとにかく体験して偏見を持たずにおもしろがってくれれば、それでいいと思うんです。便利なものは必ず普及していくし、身体に悪いものは淘汰されていきますからね。

極論ですが、ゲームハードが無くなる可能性はありますか?

浜村 可能性としてはあるとは思います。ただ、ゲーム機の普及って、その時点での最先端・最新型の性能を備えたPCを安く普及しているのと同じ、とも言えるんですよ。最新のPCを買おうとすると10万円とか15万円とかしてしまうけど、ゲーム機なら5、6万円で買える。たしかにExcelなどの計算ソフトは使えないかもしれないけど、ゲームを遊ぶために買うハードなら、PCじゃなくてゲーム機がいい。そういう最先端技術の普及の利便性を考えると、僕はゲームハードは無くならないのではないか、と考えています。あとはセミナーでお伝えした『フォートナイト』の話が、ゲームハードの代替品という部分でも関わってきそうですよね。

PS4がクロスプレイに踏み切った話題でしたね。

浜村 そうです。スマートフォンも含めたあらゆるゲームハードからログインして、別々のサーバーではなく、いっしょに『フォートナイト』を遊べるクロスプレイ。こういうことが、これからどんどん当たり前になっていく。でもこれ、ソニーとしては布石というかフラグで、クロスプレイが可能になったことで、逆に家庭用ゲーム機の売上は伸びるかもしれないんですよ。いつでもどこでも遊べるとなったときに、グラフィック、利便性、安さ、操作性も含めて、ゲーム機が一番ちょうどいいのかもしれない。そうなると僕は、むしろゲームハードはいま以上に需要が出てくるという可能性も考えられると思うんです。

Nintendo Switchはどうですか?

浜村 どんどん手を打ってくると思いますよ。もしかしたら来年、新しいNintendo Switchが出るかもしれない。任天堂は1人1台の時代をニンテンドー3DSからNintendo Switchにシフトしている様子もあって、さらに普及させたいであろう任天堂が何もしないままでいるとも思えないですからね。ユーザーとしてはそういった大胆な予想も含めて、この状況を楽しめばいいと思います。じつは、ユーザーにとってこれほど素敵なスタンスはなくて、つぎは何が出てくるんだろうとウキウキしながら待って、おもしろいものが出てきたら、それを素直に楽しめばいいだけなんですよね。それはeスポーツについても同じだし、クラウドゲーミングについても同じ。

何が出てきてもまず楽しんでみる。おもしろがったもん勝ち、ということですね。

浜村 そうですね。eスポーツが好きで、eスポーツに何か貢献したいと思うなら、楽しむのが一番でしょう。ゲーム業界や産業がもっと大きくなってほしいなら、ゲームを買って楽しむのが一番です。ハッキリ言ってしまうなら、それだけでいい、とも言えますよね。


大人になってビジネスのことが少しでもわかってくると、どのハードが売れていて、どのタイトルが売れたのか、といった情報も含めてゲーム業界を楽しむクセがついていたように思う。だが、サブスクリプションサービスからもわかるように、一定期間に決められた金額を払うだけで、最新のゲームがいつでもどこでもいくらでも遊べるような時代がこれから訪れたとき、ゲームは売買されるコンテンツではなく、提供される“サービスの一部”となる可能性がある。映像作品を取り扱うHuluやNetflexなどに近いサービスの形態になっていくかもしれない。さらに、2018年3月2日にリリースされた『Bitpet(ビットペット)』のような、仮想通貨の世界で利用されている“ブロックチェーン”の技術を活用した分散型アプリケーション(dApps)ゲームが今後流行っていくとしたら、ネットワーク上でゲームを遊ぶこと自体が投資行為となり、ゲームが上手ければお金を稼げるといった未来がやってくる可能性もある、と浜村氏はセミナーで語っていた。ちなみにブロックチェーンとは、ユーザーの持つデータや情報を誰かや企業が中央で一元管理するのではなく、不特定多数のユーザー同士がお互いに情報の保存や管理を分担して行うシステムのことだ。

『Bitpet』は、こうしたユーザーの持つデータを個性的な“ペット”に見立てて合成・飼育し、ほかのユーザーとペットを売買したりゲームで競ったりをくり返すことで、ゲーム内のお金を稼ぐことができる。プレイヤーの行動は投資そのもので、さらにゲーム内のお金を仮想通貨に変換できるため、ゲームが上手ければ(この場合、魅力的なペットが飼育できれば)実際のお金を稼げる、という仕組みになるわけだ。当然ペットを手に入れるための初期投資は仮想通貨で行う必要がある。

このように、ゲームは対価を支払って楽しむだけのサービスに留まらず、ゲームを遊ぶことで稼げる未来が、eスポーツでプロプレイヤーになるといった選択肢以外にもやってくるかもしれない。これからのゲーム業界・産業は、何がどれくらい“売れる”かよりも、ゲームを通じて人々がコミュニティを作り、クラウドや最先端技術を活用してコンテンツを集結させ、サービスを充実させることが重要になってくる。つまり、人やモノを“集める”という時代に、ゲーム業界がパラダイム・シフトしていると読み解ける。

こうしてセミナーと浜村氏のインタビューをまとめてみると、前記事のeスポーツの役割も輪郭が鮮明に見えてくるだろう。ゲームを見ることのおもしろさ、見る楽しみを強化するeスポーツは、“人を集める”というゲーム業界の大きな動きにとって、必然とも言うべき使命を果たすため、いま急成長を見せてくれている。あとは我々一人ひとりが、こうした成長や変化をおもしろがれるゲームファンであり続ければ、きっとゲームは応えてくれるはず。どうやら、いまのゲーム業界・産業をありのままおもしろがれる者こそが真の勝者となりそうだ。

©Epic Games, Inc.

©Laan Labs

< 1 2
vol.3
vol.4