Interview

GLIM SPANKY  LAでジャケット撮影、ローファイかつボーダレスな制作にこだわったアルバム。その手応えを訊く。

GLIM SPANKY  LAでジャケット撮影、ローファイかつボーダレスな制作にこだわったアルバム。その手応えを訊く。

5月に武道館ライブで大成功を収めたGLIM SPANKYのニューアルバム『LOOKING FOR THE MAGIC』で注目したいのは、LAで撮影されたカラフルなジャケットと、同じくLAでレコーディングされたリード曲の「TV Show」と、アルバム・タイトル曲の「Looking For The Magic」だ。The White StripesのJack Whiteのライブをサポートするリズム・セクションを起用して、ラフでタフなサウンドを手に入れた。
メディアによる洗脳をテーマにした「TV Show」は、GLIM SPANKYのエッジーな部分を前面に出し、「Looking For The Magic」では愛と自由を歌い上げる。これまでと変わらぬメッセージを歌いながら、バンドのスケールがひと回り大きくなったと感じさせる仕上がりだ。
既発シングルのカップリング曲が、アルバムの中で精彩を放っているのも特筆される。松尾レミ(Vo & g)と亀本寛貴(g)に新作について聞いてみた。

取材・文 / 平山雄一

サルベーションマウンテンでジャケットを撮りたいって、2、3年前からずっと言ってたことのほうが大きかったですね(松尾)

アルバムを意識し始めたのは?

松尾 アルバムの曲を作り始めたのは、武道館が終わってからなんで、6月ぐらいです。それまではシングル・リリースや“WILKINSON”とタイアップの「ハートが冷める前に」があったので、とりあえずそれを全部作ってから、アルバムの深い部分へ入っていきました。

前作『BIZARRE CARNIVAL』は「I STAND ALONE」っていうテーマが早めにあったけど、今回の『LOOKING FOR THE MAGIC』はどうだったんですか?

亀本 そういうの、なかったよねえ。

松尾 アルバム・タイトルの締め切りが早いんで、先に『LOOKING FOR THE MAGIC』って決めて、そのあとにレコーディングしていったんです。

だとすると、11曲目のアルバムの最後の曲「Looking For The Magic」は、アルバム・タイトルを決めたあとに曲を書いたの?

松尾 あの曲はもともとあって、仮タイトルが付いてたんです。で、アルバムのタイトルを『LOOKING FOR THE MAGIC』にしたのは、その曲ができたからこそだったんですよ。だったら、この曲を同じタイトルにしようってことで。

「Looking For The Magic」の歌詞が、アルバムを象徴するような大きいテーマを含んでいる?

松尾 そうですね。この曲を書いたきっかけは、武道館が終わったあとにちょっと休みをもらって、LAに旅行に行ったんです。歌詞はそのときのことを書いてます。

LA旅行は、何か目的があったの?

松尾 大学の時、60年代末から70年代初めの古着が好きだったんですけど、ビンテージ・カタログの背景にすごくきれいな場所が映ってた。それがLAから南に砂漠を抜けて車で4時間のところにある、サルベーションマウンテンだった。ずっとそこに行ってみたかったんです。

そのときに、LAでレコーディングしたいと思ったの?

松尾 いや、どうしてもLAっていうわけでもないんですけど、もともとボーダレスなレコーディングを、国境を越えてやりたいなとは思っていたので。それよりも、サルベーションマウンテンでジャケットを撮りたいって、2、3年前からずっと言ってたことのほうが大きかったですね。自分たちのカラフルでサイケデリックな世界観にもぴったりだし、ポップで鮮やかで、ただ古いだけじゃない。どんな時代に見ても、きっと人の心にときめきをくれる場所な気がしてて。ちょうどそこに、私たちが一緒にやりたいと思ってたミュージシャンが集まっていたので、すべてがうまい具合に重なって。

ジャケットも撮るし、レコーディングも。

松尾 レコーディングもできるし(笑)。

やりたいメンバーもそこにいた。

松尾 ってことで決まった感じですね。

LAでなら、ロックのレジェンドと一緒にやる可能性もあったと思うんだけど?

亀本 松尾さん的には、ガチガチのトップ・プロみたいなのとやりたいっていうよりかは、オルタナティブで、インディーな人とやりたいって感じが強かったんで、それに対して適任の人たちがいた。

メンバーチョイスに関しては、自分の中でイメージがあったの?

松尾 はい、この人とやりたいっていうのを、向こうのコーディネーターに全部送って。それを踏まえた上で、まずエンジニアが決まって、そのエンジニアとコーディネーターが話し合って、「この人たちがいいんじゃない?」って提案が戻ってきたら、私たちがいちばんやりたい人の名前が書いてあった。全部がうまく決まったって感じです。

5月にLAに行った事で出来た曲を、9月にLAでレコーディングしたって、ドラマティックだね。

松尾 はい!

この歌詞をLAで録りたいというよりかは、このリズム、このテイストを録りたいっていう感じではあったんです(松尾)

「Looking For The Magic」の歌詞はフォーキーな感じがした。

松尾 5月にLAで感じたことを日本に持ち帰って曲にして、9月にまたLAに行ってレコーディングしたんで、嬉しかったです。単純にまた戻って来れて、そこで録音できるっていうのがホントに奇跡だったし、こんなに早く還元できるとは!

亀本 数ヶ月で戻ってきた。

松尾 LAで経験したことを書いてたので、メンバーにもすごく説明しやすくて、めちゃめちゃ共感してくれた。ドラムのカーラは「この曲、めっちゃ好き」って言ってくれたので、いいコミュニケーションができた上で録れた曲かなって思いますね。アコースティックなんだけど、ちゃんとサイケデリックになりました。

リード曲の「TV Show」の歌詞は、すごく攻撃的なんだけど、LAで録ることを前提に書いたの?

 

松尾 この歌詞をLAで録りたいというよりかは、このリズム、このテイストを録りたいっていう感じではあったんです。LAで録った「TV Show」と「Looking For The Magic」は、日本人にしかわかんないことじゃなくて、世界的に共通してる感覚、例えば「TV Show」のメディアに洗脳されてるかもしれないっていうテーマは、どの国の人でも共感できることだと思うんですよ。レコーディングのときも、ミュージシャンと歌詞を共有してから録ったり。やりやすかったです。

彼らは「TV Show」にも共感してくれた?

松尾 すごく共感してくれて。

亀本 未だにガラケー使ってるような人もいたからね(笑)。

古い良さみたいなのがちゃんと出せてるなって感じがしました(亀本)

LAで録ってきたサウンドを聴くと、すごくローファイな音なんで、言い方は悪いけど、“退化”したんじゃないかと(笑)

松尾 そうですね(笑)。それを求めて行ったって感じだったんで。掘っ立て小屋みたいな、ガレージみたいなところでやりたかった。

亀本 スタジオなのに、あんまり防音はされてない。防音されてないというか、壁がそんなに音を吸わなくて、ナチュラルに楽器が気持ちよく鳴る感じでした。壁が木なんで、それなりに反射するんですけど、コンクリートほどではない。ドラマーの持ってきたキットも、すごくオールドなキットで。シンバルも全然ハイがなくて。ドラムの音がマイルドで、ハイハットやシェーカーだけがくっきり浮き出る。かなりイナたい音だったよね。

松尾 私的には「これだ!」って感じでした。求めていた音だった。

そうだったんだ(笑)。日本だとなかなかそういう音に録れない。

松尾 そうなんですよ。

亀本 日本でやろうとすると、ただのチープな音になっちゃって。でも向こうだと、古い楽器の良さとか、スタジオ自体の古い良さとか。日本のビンテージと違って、アメリカの機材や楽器って当たり前に自分の国の古いものとしてあるんで、日本よりはるかに手に入りやすい。それをみんなが普通に使う感じがあるので、古い良さみたいなのがちゃんと出せてるなって感じがしました。

松尾 アメリカに行っちゃったほうが、それを簡単に録れる。これからは、ローファイなほうがイケてるって思わん?

亀本 イケてるかはわかんないよ。

松尾 私の中ではイケてるんですよ。

これが普通にラジオでかかったときに、明らかに他の音と違うので目立つことは目立つと思う(笑)。

亀本 目立つと思います。

松尾 誰がどう感じるとかあんまり考えてなくて、自分がイケてることしかやりたくないんで。それだけでやってる感じですね。

ビンテージのアンプやギターで録ったの?

亀本 松尾さんのギターは、LAで弾いた音がすごいよかったんで採用した。ただ僕のギターに関しては、日本で録ってもそんなに変わんなかった。逆にポジティブに捉えると、日本でちゃんと録れてるなって感じは正直しました。なので、日本で録り直したものもあります。

アルバムのオープニングの「4 Dimensional Desert」は、シタールが入ってたり、無国籍なサイケだね。

松尾 限定しない風景を作りたかったって感じですね。自分の中ではLAの砂漠のイメージだけど、聴いた人にとってはどこでもいい。今までもGLIM SPANKYは、砂漠の幻想とか夜の幻想っていうものを表現してきたし、それともつながっている。私たちが経験した実際の砂漠の中の幻だったり、リアルな砂漠を体験したからこそ、改めて書けるサイケデリックな世界っていうか。目を閉じると、それはすごい灼熱の砂漠で朦朧とした中に見えてくる幻かもしれない。夜中に不思議なタイコの音が、どこかで鳴っているという想像の中の世界でもいいし。いろんなものが異次元からやってきて、それが自分の中で広がっていく風景というものを、このタイトルで表現したかった。1曲目で、リスナーをそういう幻想の世界にまずは入り込ませたいっていう思いから、導入としてこういうサイケな感じにしました。

そしてシングルのカップリング曲が、アルバムにバリエーションを付けている。

松尾 「In the air」とか「The Flowers」とか、カップリングで入っていた曲を、どうしてもアルバムに入れたいっていうのは、シングルを発表したときから思っていたんで、あえて入れてます。そういう引き出しがあるから、こういうテイストのアルバムができましたっていうひとつの答えに、2曲目の「Love Is There」はしたかったんですよね。だからああいうレトロなビートで、ちょっとサイケポップな感じがありつつ、広い幻想の世界を感じさせる曲が書きたいってことで、「Love Is There」がいちばん最後にできました。

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