Interview

Fate、まどマギ、テイルズ…名作ゲーム&アニメを支えた作曲家たちの仕事術とは? 梶浦由記×椎名豪スペシャル対談

Fate、まどマギ、テイルズ…名作ゲーム&アニメを支えた作曲家たちの仕事術とは? 梶浦由記×椎名豪スペシャル対談

『Fate/Zero』や『ソードアート・オンライン』などの劇伴を手がけた梶浦由記と、『テイルズ オブ』シリーズや「GOD EATER」シリーズ、『衛宮さんちの今日のごはん』で音楽を担当した椎名豪が、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』など数々の映像作品に楽曲を提供した千住明を迎え、コンサート『Composers Summit Concert 2018』を開催する。多くのファンを持つ作曲家だけに開催前からどのような空間が生まれるのか期待が高まるが、そのコンサートを控えた梶浦と椎名が対談。ゲームやアニメを中心に活躍してきた、互いの作曲スタイルについて語り合う。

取材 / 冨田明宏 文 / 清水耕司(セブンデイズウォー)


制約の中での楽曲づくり

劇伴作家として活躍されるお二人の道のりには共通点や相違点がいろいろあるかと思うのですが?

梶浦 椎名さんは音楽の勉強をされてからゲーム会社に入られたんですか?

椎名 ほとんどしたことはなかったですね。自分の家がエレクトーン教室をやっていたので、一応少しはやったことがあるんですが、すぐに少年野球に移ってしまったんです。僕らの世代は、男が鍵盤楽器をやっているといじめられそうになるという部分があって。

梶浦 なんとなくわかります。私の兄もピアノをやっていたんですが、「女々しい」ということで辞めてしまいました。

椎名 そうですよね。その後は何もやっていない、という状態でナムコに入りました。で、地獄を見る、という。

梶浦 そうしたら、最初に作ったのはゲーム音源ですか?

椎名 そうなんです。Excelで曲を作りました。

梶浦 すごいですね。Excel!?

椎名 当時はDAW(Digital Audio Workstation)もないので。

梶浦 でも確かに、私の時代もドラムの打ち込みを数字でやっている人がいました。ドラムのグルーヴも全部数値で入力して。

細かいタイム感とか?

梶浦 そうです。数値で、2、3、5、2、3………って入力すると「ドタタタタ、パーン!」って(笑)。当時も「すごい!」と思って見ていましたが、数字で作っていたという意味では……。

椎名 一緒ですね。ABCDE……と並んだ縦一マスが16分音符で。テンポはヘッダで決めるので、3連符を作るときはそのテンポから変えるんですよ。

梶浦 なるほど。

椎名 3連の曲なんて作ったことはなかったんですが。計算できないので(笑)。

仮にやるとしたら、ということですね。

椎名 そうなんです。

梶浦 一番小さな単位が16部音符か。厳しい!

椎名 だから、もっと細くしたいときはテンポを倍にするんですね。

梶浦 装飾(音の入った)譜を書くときも?

椎名 そうですね。

梶浦 それは大変。最大テンポは決まっていたんですか?

椎名 255ですね。それ以上は増やせなくて。

制約の中での戦いですね。

椎名 はい。あとは音源側に「タタ」って音を入れるとか。

ゲーム音源制作からオーケストラへと移行

梶浦 そうしたらオーケストラの書き方はどこで勉強されたんですか?

椎名 基本はコピペですね。バイオリンのものをフルートにコピペしたりしていました。で、「なんか気持ち悪いな」と思ったら1オクターブ上げるとか。

梶浦 でも、昨日までゲーム音源を作っていて、「今日からオーケストラ書きまーす」ということはできないですよね。椎名さんと言えば、「オーケストラのシンフォニックだ」というところがあるくらい、ものすごいオケを書かれているのに。

椎名 いえいえ。基本的にゲーム音源は、先ほど仰っていたようにパートごとの要素が少ないですよね。僕はオケもあまり要素がないと思っているんです、バンドと違って。例えば、対旋律、メロディ、ベース、みたいに。だからコピペの組み合わせで、作れるところがあると思います。

梶浦 確かに、バンドからオケに移行するよりも、音数が少ないゲーム音楽からオケという方が共通点は多いかもしれないですね。

椎名 そうですね。自分の勝手な解釈ですが。

梶浦 私も「そうかも」と思いました。逆に、バンドならリズムとコードを鳴らした上に歌を乗せたらなんとかなる、という作り方がゲーム音楽では成り立たないわけですよね。まずメロディからか……、なるほど。

椎名 でも、僕は「白紙」だったのがよかったんだと思います。お話ししたように、会社に入った時点では作曲すること自体が初めてだったので。僕が入社したとき、ナムコの採用に関する方針として、音楽のできるスペシャリストとキャラの二枠があったんです。

梶浦 キャラ採用(笑)。

椎名 そうなんですよ。それは、お互いをライバル視させないための戦略でしたが、実際、僕は同期が国立音大出身だったので、その子からいろいろと教わっていました。でも作曲ってそうそうできるものではないですよね。僕は3年くらい経っても、ドラムがパターンでできているということが理解できませんでした。よく、「エレクトーンをやっていたならわかるでしょう」と言われたんですが、全然でしたね。ここにフィルが来て……とか。コードもまったくわからなかったんです。知っているのは、すごく簡単な「Cはドミソ」くらい。だから、コードから楽曲が作れる人はすごいと思います。

梶浦 でも私は、アマチュア時代にコードを書いたことないんです。

椎名 え?

梶浦 コードというものを知らなかったんですよ。アマチュア時代は、作った曲をピアノで弾きながら歌って、それをメンバーに聴かせていました。「覚えて」って(笑)。譜面のないバンドだったんです。だからプロになってから、コード譜をくださいと言われたときに困ってしまって。コードというものがあることは知っていましたが、必要ないと思っていたんですよね。でも、どうやら必要だということで覚えました(笑)。

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