Interview

『ジョジョ』第5部アニメ化の裏には、これだけの“覚悟”があった─大森啓幸P、シンガーCodaが語る『黄金の風』と「Fighting Gold」

『ジョジョ』第5部アニメ化の裏には、これだけの“覚悟”があった─大森啓幸P、シンガーCodaが語る『黄金の風』と「Fighting Gold」

この10月に放送がスタートしたTVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』が、大きな注目を集めている。本作は、2017年に連載開始30周年を迎えた荒木飛呂彦の人気コミック『ジョジョの奇妙な冒険』の中でも屈指の人気を誇るシリーズ、主人公のジョルノ・ジョバァーナがイタリアを舞台にギャングスターへと登り詰めていく姿を描いた第5部『黄金の風』を初アニメ化したものだ。

そのOPテーマ「Fighting Gold」を歌うのは、TVアニメ第2部のOPテーマ「BLOODY STREAM」の歌唱を担当したCoda。彼はこれまでにもシンガーおよび作曲家として複数の『ジョジョ』ソングに関わっており、今やシリーズに欠かせない存在となっている。今回はそんな彼と、TVアニメ版『ジョジョ』を第1部から一貫して手がける大森啓幸プロデューサーとの対談をセッティング。『ジョジョ』という作品や今回のOPテーマに対する想いについて、存分に語り合ってもらった。

取材・文 / 北野 創(リスアニ!)


個人的には、第5部が『ジョジョ』という作品の中でいちばん「生き死に」を感じるシリーズなんです(大森)

おふたりは今回の『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』で描かれる原作の第5部の物語について、どのような印象をお持ちですか?

Coda 僕は第5部に、前の第4部とは違うある種のダークネスを感じるんです。第5部では日常感がほぼなくなってるし、登場人物はみんなギャングなのにそれぞれの正義を持っている。その正義のぶつかり合い、自分の欲しいものを掴みにいくところが印象深いですね。

大森啓幸 僕は原作を久しぶりに読み返して、第5部に第2部のような雰囲気を感じたんですよ。第2部は「柱の男」という絶対的に強大な敵が登場するなかで、ジョセフが知恵を使いながら切り抜いていく物語じゃないですか。なので個人的には『ジョジョ』という作品の中で一番「生き死に」を感じるシリーズなんです。だからこそ、僕はシーザーの死ぬ回(第20話「シーザー孤独の青春」)で泣いてしまいましたし。

Coda いやあ、あの回は泣けますよね。

大森 第5部には、それに近い「人の命のやり取り」を感じるんですね。ジョルノたち主人公サイドも敵もギャングなので、「悪vs悪」の戦いになるわけですが、そのなかで主人公サイドは「弱いものをしいたげるのは気にくわない」という矜持を持っている。それはかっこいいギャング映画のようでもあるし、ギリギリのところで戦っているスリルも感じることができて。原作者の荒木(飛呂彦)先生は、第5部のテーマ性について「行き場のない若者たちの悲しみを描いた」とおっしゃってますが、5部のキャラクターは周りからは恵まれてないように見えるかもしれないけど、本人は泥んこになりながら前を向いて進んでる。そこに切なさを感じますし、それでも自分の信じることに対してまっすぐ進むところが魅力なんだと思います。

その第5部のアニメ化にあたり、大森さんはプロデューサーとして、まずどのようなOPテーマを制作しようと考えたのでしょうか?

大森 先ほどお話ししたように、第5部は第2部っぽい印象があったし、キャラクターたちが後ろを振り返ることなく戦っていく清々しさを感じたので、自分も今回は初心に立ち返って背水の陣で臨もうと思ったんです。

最初の『ジョジョ』のOPテーマを書いていただいたのは田中公平さんでしたが、公平さんには第3部のOPテーマ(「ジョジョ その血の記憶~end of THE WORLD~」)も書いていただきまして、そこで一旦締め括っていただいたと感じていて、今回は第2部のOPテーマ(「BLOODY STREAM」)を書いていただいた大森俊之さん、そしてその曲を歌ったCodaさんにお願いしようと思ったんです。そういう事で、今回は曲のイメージよりも先に、まず誰にお願いするかを考えたんですよ。

及川眠子さんの歌詞に昭和の根性を感じるんです。ジャンプでいうところの「友情・努力・勝利」です(笑)(大森)

なるほど。ちなみに大森さんはOPテーマを制作するうえで、EDテーマとのバランス感は考えるのでしょうか?

大森 それはもちろん考えます。実はこれまでのシリーズも含めて『ジョジョ』の曲でいつも一番最初に決めるのはEDテーマなんですよ。毎回荒木先生にご相談させていただいて、各部ごとのイメージになる曲をいくつか出してもらうんです。過去に何度かこちらから楽曲を提案することもあったんですが、なかなか荒木先生の思い描くイメージには当てはまらないんですよ。それで結局荒木先生に曲を挙げてもらうと、僕らが意外に思った楽曲でも不思議とハマりが良くて、収まるべきところに収まる。やっぱり天才なんだなあと思いますね。

今回の『黄金の風』のEDテーマも、アメリカのR&Bグループ、ジョディシィ(JODECI)による95年のヒット曲「Freek’n You」という意外なものでした。

大森 ええ。今回もまずEDテーマを決めてから、OPテーマの制作に取り掛かったんですが、「Freek’n You」は歌を聴かせるタイプのゆったり横に揺れる曲なので、OPテーマは逆に駆け抜ける感じのものにしようと思ったんです。ただ、それは自分が事前に何となくイメージしていた曲調と合致してたんですよ。

では大森俊之さんには、どのように楽曲をオファーしたのですか?

大森 今回は若者が駆け抜けていくような疾走感と、恵まれてない環境の中でもしっかりと前を向く意志を曲で表現したかったので、サウンド的には「疾走感と力強さが欲しい」というお話をしました。そこに「切なさ」ということで、歌謡曲のような哀愁も加えていただいたんです。

また、今回の楽曲は及川眠子さんが作詞を担当されています。及川さんが『ジョジョ』の音楽に関わるのは今回が初ですね。

大森 やはり今回は新シリーズということで、新しい方にも加わっていただきたかったんです。そこで俊之さんに相談したら「じゃあ眠子さんはどう?」とサラッとおっしゃられて(笑)。もちろん大ベテランの方なので僕も緊張はしたんですけど、お願いすることにしました。

そして及川さんに上げていただいた歌詞に僕がリテイクを出したのですが、眠子さんはさすがベテランの方なので、僕の意見をしっかりと受け止めていただきまして、そこから推敲を重ねていくつかのパターンを出していただいたんです。今回及川さんに歌詞をお願いして感じたのは、言葉の力のすごさですね。例えば2番のサビの“すべてを塗りつぶせ 情熱の色で”は「こんな表現があるんだ!」と思いましたし、個人的には“地べたを這いながら 見上げたあの空の 星をつかまえるんだ”もグッとくるんです。僕はこの部分に昭和の根性を感じるんですよ。ジャンプでいうところの「友情・努力・勝利」です(笑)。

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