Interview

10年越しの“夢”をかなえた山下敦弘監督&荒川良々。 異色作『ハード・コア』の実写化に挑んだ日々を明かす

10年越しの“夢”をかなえた山下敦弘監督&荒川良々。 異色作『ハード・コア』の実写化に挑んだ日々を明かす

もし自分たちがもっと若い時に映画化していたら、全然違うエピソードの拾い方になっていたと思う。

映画の撮影中はまだ、狩撫さんはご存命でいらっしゃったんですよね?

山下 そうですね、撮影中はまだ…。完成直前の仕上げの時、エンドロールをつくっているときに亡くなったと聞いて…“狩撫さんに捧げる”というテロップを急きょ足したんです。なので、観ていただくことがかなわなかったんですよ。できあがったら会いに行こうと思っていたんですけど…。ただ、打ち上げの時には熱いコメントをくださって、それはすごくうれしかったですね。

奇しくも、平成の終わりという時代の変わり目に、旅立ってしまわれて…。

山下 (右近たちが所属する政治団体の会長役を演じた)首くくり栲象さんも亡くなられて…。

荒川 あぁ、そうですね…。

山下 だから、狩撫さんと栲象さんに完成した映画を観てもらえなかったのが、悔しくて。栲象さん、すごく気合い入っていたんですよ。役づくりも。で、編集している時に連絡がとれなくなって、入院されているって聞いたので、病院にポータブルDVDのプレイヤーとサンプル盤を持って行ったんですけど、亡くなる3日前で。一応、病室に置いていったんですけど…やっぱり観てもらうことはできなくて。意識はすごくしっかりなさっていたので、もしかしたらと思ったんですけど…。

「山田孝之のカンヌ映画祭」で、まさしく“首くくり”のシーンを見た時には、不死身だと思っていたんですけど…。

山下 僕らも生であれ(=首くくり)を見た時、言葉が出なかったですからね。いま考えると、芦田愛菜ちゃんに見せてよかったのだろうか、と(笑)。

荒川 本当のところはどう思ったんでしょうね、芦田愛菜ちゃん。

山下 意外と僕らの方がドン引きしていて、芦田さんは泰然としていましたけどね(笑)。

荒川 さすが。っていうか、「カンヌ」の話になってますし(笑)。

では、話を戻しましょう。荒川さんが演じられた牛山という人物像を、もう少しお2人の視点から掘り下げられればと思います。

山下 基本的には原作に沿っていますね。右近が自分よりも弱い存在として、自己肯定の材料にしているところがあるという。

荒川 牛山としては右近を100%信じているから、あの女物の下着を隠れて着けたのがバレた時、情けないのとバレてしまったという羞恥心と申し訳なさとで、あれだけ大泣きしたんだろうなと、僕は思ったんですよね。信用しているからこそ、「本当に申し訳ないっ」という気持ちになったというか。

山下 だから、右近と牛山にお互いを探り合いさせるなんて…本当に(康すおん演じる)水沼はヒドいことをするなと、頭にきちゃうんですよね。でも…何となく右近と牛山と左近みたいな、不思議な組み合わせの3人組って小学校や中学校の時にいたような気がするんですよ。なんでこの3人がつるんでいるのか、どういう共通項でつながっているのかが見えにくい少人数のグループって、学校の中にいたよなって。僕はそれを遠目から見ているタイプでしたけど。

確かに、不思議なトリオが存在していた気がします。

山下 『ハード・コア』の場合、さらにロボットが加わるという。子どもたちが主人公の話ならファンタジーになりそうですけど、いい大人3人+ロボオというのが、この原作の妙なところというか、味なんだと思います。ロボオも実写化にあたってデザインをいろいろ考えてみたんですけど、結果的には原作どおりになりました。それが一番しっくりくるんですよ。

荒川 もし、もっと予算があったら『デッド・プール』みたいにCGになっていたと思うんですけど、それだとロボオの味が出ないんですよね。

山下 無駄にスマートになっちゃうっていう(笑)。

荒川 あれ、デカイけど…何か違うって(笑)。

山下 一応、『アイアンマン』とか観て研究はしたんですよ。したものの…これは着ぐるみがいいねっていう結論になって。

荒川 着ぐるみの方がいいですよ。日本映画っぽいじゃないですか。

山下 特撮っぽいですよね。

荒川 『がんばれ!ロボコン』みたいに、愛嬌があるじゃないですか。

山下 そうそう。でも、別件で、いましろさんと対談するんですけど、「なぜ、ロボオをあのデザインにしたのか?」訊きたいんですよね。しかも、新装版の『ハード・コア』のカバー、最近のいましろさんが描き下ろしているんですけど、ロボオがだいぶ『鉄人28号』チックなんですよ。もしかすると、いましろさんは元々『鉄人28号』っぽいイメージで描かれていたのかなって。

荒川 鼻の感じとか、近いですよね。でも、最初、僕(牛山)と山田くん(右近)の2人でいることが多かったですけど、ロボオが加わることで、初めて牛山としては構ってやらないといけない存在ができるわけです。自分がいないとダメっていうか…いや、牛山がいなくても大丈夫なんだろうけど、母性っていうとおかしいのかな、捨て犬を拾ったみたいな感覚があったんです。右近と2人の時は頼ってばかりだったことを考えると、ロボオがちょっとだけ牛山を大人にしてくれたんですよね。

他人に依存していた牛山が、少しだけ成長する話でもある、と。

荒川 ただ、右近は大変でしょうけどね。面倒みなきゃいけない相手がさらに増えたっていう。しかも、ロボットだか何だか得体の知れない、ワケのわからないのが来ちゃったっていう(笑)。

山下 2人分を抱えなきゃいけないというね。

荒川 ヘンテコなモノを見つけてきやがって、みたいなね。

山下 原作だと右近と牛山とロボオの3人で屋台をやったりして、もう少し緩い時間の流れ方をするんですけど…さすがに映画では描ききれませんでした。でも、原作に出会ったころにもし映画化が実現していたら、そういうエピソードばかり拾おうとしていたんじゃないかな、という気がします。下手すると3人が延々と廃墟で生活をしていてもいいんじゃないか、という映画にしていたかもしれない。そう考えると、今回書いた脚本はちゃんと骨格のある物語だったというか…一応、起承転結になっていて。でも、若い時だったら上・下巻の上巻だけで終わっていただろうな、なんてことを、ふと思ったりもしたんですよね。

年齢と人生を重ねたことによって、物語の芯のとらえ方が変わったということなんでしょうね。

山下 そうだと思います。水沼の娘の多恵子(石橋けい)が出てきてから、右近がどんどん人間っぽくなってくる感じは、いまの自分の方がわかるんですよね。

荒川 僕もその時々によって、原作の読み方って変わると思っていて。若い時の僕はやさぐれていたから、自分以外の世の中の人間全員がバカだと思って、常にイライラしていたんですよ。バイトに行っても、全員敵視してたりして。そういう…一番どん底の時だったから、自分の物語のように感じられたんですよね。でも、いま読み直したら…まさか自分が本当に牛山を演じるとは思っていなかったから、複雑な感情がわき起こってくるんじゃないかなと思います。

山下 今回、映画をつくる時に、もう1回あらためて原作を読み直したんですよ。まあ、左近が一番まともではあるんですけど、鼻につく男だなと思っていたんです。でも、今回で印象が少し変わって、左近は左近なりに割り切れない何かを抱えているんだな、と感じたんですよね。それに、左近のようなキャラクターを登場させないと、理解に苦しむキャラクターだらけになってしまうぞ、と(笑)。そういう意味では左近って負担の大きな役なんですよ。説明ゼリフも多かったですし。だから、(佐藤)健くんは僕らが思っていた以上に大変だったと思います。

荒川 そうですよね、健くんだから成立したんだよなぁって、僕もすごく思います。


【募集終了】抽選で1名様に山下敦弘監督&荒川良々さんの直筆サイン入り映画『ハード・コア』プレスシートをプレゼント!

応募期間

※募集期間は終了致しました。

11月21日(水)~11月28日(水)23:59

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・応募は日本国内にお住まいの方に限らせていただきます。
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映画『ハード・コア』

11月23日(金・祝)全国公開

【STORY】
現代日本―。都会の片隅で細々と生きる権藤右近(山田)はあまりにも純粋で、曲がったことが大嫌いだ。間違いを正そうとする自らの信念をいつも暴力に転嫁させてしまうため、仕事も居場所もなくしてきた。そんな右近の仕事は、山奥で怪しい活動家の埋蔵金探しを手伝うこと。共に働く牛山(荒川)だけが唯一心を許せる友人だ。二人を見守るのが、右近の弟・権藤左近(佐藤)。一流商社に勤務するエリートだが、腐った世の中にうんざりし、希望を失っていた。ある日、そんな彼らの前に、謎の古びたロボット(ロボオ)が現れ、男たちの人生が一変するような一大事が巻き起こる。

出演:山田孝之 佐藤 健 荒川良々 石橋けい 首くくり栲象 康すおん / 松 たか子
監督:山下敦弘
脚本:向井康介
原作:狩撫麻礼・いましろたかし「ハード・コア 平成地獄ブラザーズ」(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
音楽:Ovall(Shingo Suzuki mabanua 関口シンゴ)
エンディングテーマ:Ovall feat. Gotch 「なだらかな夜」(origami PRODUCTIONS)
配給:KADOKAWA 
制作プロダクション:マッチポイント
©2018「ハード・コア」製作委員会

オフィシャルサイト
http://hardcore-movie.jp/

原作コミック

ハード・コア 平成地獄ブラザーズ

狩撫麻礼, いましろたかし
ビームコミックス

「男たちの結末に、僕は泣いた」山田孝之、絶賛。そして、佐藤健、荒川良々とともに、映画化へ!狩撫麻礼&いましろたかし、漫画界最狂のタッグが放つ、二十世紀最後の大傑作、衝撃の復刻。最底辺のアウトローが、この世界の“核心”へ肉迫する。現代の奇書!

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