Interview

PELICAN FANCLUB メジャーデビュー作から見えてくるバンドの特異性と可能性を探る。

PELICAN FANCLUB メジャーデビュー作から見えてくるバンドの特異性と可能性を探る。

PELICAN FANCLUBは王道か?異端か?名門インディレーベルUK.PROJECTから数枚の作品を発表し、11月7日にミニアルバム『Boys just want to be culture』でKi/oon Musicからメジャーデビューを飾るというこれまでの道のりは、まさに「王道」のロックバンド。しかし、端整なニューウェイヴと凶暴なラウドロックが一枚の作品の中に混在する音楽性のふり幅の広さはあまり例を見ないし、ボーカル/ギターのエンドウアンリがフェイバリットに挙げるのは、P-MODELの平沢進をはじめとした、日本のロックの歴史における「異端」であったりもする。もちろん、これは白黒はっきり決着をつけようという話ではない。「王道か?異端か?」をテーマとしたエンドウとの対話から、PELICAN FANCLUBという稀有なバンドの特異性と可能性を感じてもらえればと思う。

取材・文 / 金子厚武
ライブ写真 / rina chizuwa、nishinaga “saicho” isao

 

新作は自分の名刺代わりになる作品だと自負してて

撮影 / rina chizuwa

「PELICAN FANCLUBは王道か?異端か?」と聞かれたら、エンドウくんとしてはどんな風に答えますか?

王道だと思いますけどね。結果論ではあるというか、自分が曲を作ってる段階では、自分の中がすべてだし、自分がこれまで培ってきた経験がそのまま曲になってるので、それは自分にとっての王道かなって。まあ、王道でありたいとも思いますし。

まずは、自分が基準だということですよね。その意味では、新作もエンドウくんにとっての王道になった?

今作は自分の中で特に王道の作品を作った感覚があるんです。前作(2017年発表の『Home Electronics』)はある種異端だったんですよね。楽曲自体は結果的に王道だったと思うんですけど、自分自身を表現したというよりも、まず「こういうものを作ろう」っていうのを設定して、バンドの共同作業でそれを作るっていうやり方をしたので、それは自分の中ではちょっと異端というか。でも、新作は自分の名刺代わりになる作品だと自負してて。

前作は先にゴールを設定して、そこにみんなで向かったけど、今回はまず曲を作り始めて、結果的に辿り着いたところがゴールだったというか。

そうですね。なので、作ること自体に不安はなかったんですけど、「このアルバムをどう説明すればいいんだろう?」っていう不安はちょっとあったんです。ただ、作り終わって気づいたのは、どんなに得体の知れないものが生まれたとしても、自分の中から生まれてきたものだから、結局自分のものだと思えるなって。自分が日々考えてることをそのまま言えば作品になるってわかったし、「自分そのもの」っていう作品になったと思いますね。

嘘のない状態で出すっていうことが、メジャーに行く上でのけじめでもあり、挑戦でもあり、希望でもあった

撮影 / rina chizuwa

撮影 / rina chizuwa

撮影 / rina chizuwa

「メジャーから出る最初の作品」ということは意識しましたか?

メジャーだからこそできた作品かもしれないです。僕の考えるメジャーって、今まで以上に多くの方が関わる舞台だと思っていて、そこで自分自身を純度高く表現するってことが、一番重要だなって思ったんです。ときには計算も大事かもしれないけど、このタイミングでは純粋に作りたいものを、嘘のない状態で出すっていうことが、メジャーに行く上でのけじめでもあり、挑戦でもあり、希望でもあったので、今回こういう作品を作ったのは、自分の中では必然だったと思います。

『Boys just want to be culture』というタイトルも、メジャーの一枚目だからこその所信表明になっているわけですよね。

今までと違うタイトルの付け方をしたので、最初はちょっと怖さもあったんです。今までは単語を並べたり、造語を使ったり、名詞を掲げていたんですけど、意思表示のタイトルをつけるのはかなり勇気の要ることで、相当自信がないとできないことだなって。でも、今回の作品にはその自信が伴ってたので、結果的には、全然怖くなかったですね。このタイトルをつけたときは、無敵な気持ちになりました。

その気持ちは今も変わらない?

変わってないですね。ちゃんと自分自身が出せたので、誰が何を言おうと、何も気にならないというか、それって無敵じゃないですか?マリオがスターを取って、攻撃を食らわないのと一緒な感じです。

誰かになろうとするのではなく、自分自身であろうとすることが、将来的にカルチャーを形成することに繋がる。そういう意志表明でもあるのかなって。

まさにそうですね。僕はもともと影響を受けやすいタイプで、今まで出してきた作品の中には、あからさまに「これから影響受けてるな」っていうのが、わかりやすい曲もあったりして。でも、今回は「何かみたいになりたい」っていうのはなかったんですよね。最初にも言ったように、自分が何も考えずに作った曲って、これまでの経験の反映だから、意識しなくても影響は自然と出るもので、僕はそれが美しいなって思ったんです。

昔から「説得力のある人間になりたい」と思っていて、今回はそう思ってもらえる作品ができたんじゃないかって思いますね

これまでは「コクトー・ツインズのエリザベスのように歌いたい」とか「THE NOVEMBERSの小林くんのようにシャウトをしたい」とかあったと思うけど、今はそれが血肉化されて、エンドウくん自身のものとして出ているというか。

「この人が好きだから」っていうだけだと、説得力に欠けると思うんですよね。「じゃあ、何で自分はそれが好きなのか?」を分析すると、「このコード進行が好きだから」とか「この音階が気持ちいいから」って、ちゃんと説明できるようになって、そこに説得力が生まれる。昔から「説得力のある人間になりたい」と思っていて、今回はそう思ってもらえる作品ができたんじゃないかって思いますね。

よくフェイバリットとして挙げているP-MODELの平沢さん、COALTAR OF THE DEEPERS(以下、ディーパーズ)のNARASAKIさん、THE NOVEMBERSの小林くんって、3人とも説得力のある人だなって思いますが、「異端」の側面を持っている人たちだとも思うんですね。エンドウくんは彼らのどんな部分に惹かれるのでしょうか?

明暗がしっかりしてるんですよね。平沢さんで言えば、声の使い方が急に変わったり、単調からいきなり長調になったり。ディーパーズもそうで、一番わかりやすいのが『PENGUIN EP』の一曲目の「FASTEST DRAW(DREAM MAN 2)」で、サビ前まではデスボイスなんですけど、サビでいきなりかわいい声に変わるんです。あの両極端な振り切れ方が衝撃というか、自分の琴線に触れるんですよね。

ディーパーズはラウドな音と、かわいいボーカルの組み合わせの時点で極端ですよね。

言ってみれば、ミスマッチじゃないですか?でもあれが新鮮だし、ああいう明暗がはっきりしてるのが好きで、それはTHE NOVEMBERSもそうですよね。クラウス・ノミも好きなんですけど、AメロBメロはふざけた感じで歌って、サビでいきなりオペラ歌手になるとか、ああいう極端なものが僕はすごく好きなんです。

新作で言えば、3曲目の「ハッキング・八ックイーン」と4曲目の「ヴァーチャルガールフレンド」は両極端だし、「ハッキング・ハックイーン」は一曲の中でも明と暗が描かれていて、非常に「らしい」ですよね。あとさっきの3人って「カウンターカルチャー」的な存在という言い方もできるかと思うんですけど、アルバムタイトルの「culture」という言葉の中には、そういう意味合いも含まれていると言えますか?

確かに、今言われてそうだなって思いましたね。僕もともと音楽をやろうと思ったきっかけが、「見返してやろう」って気持ちだったんです。中学時代にいじめられてて、暴力では仕返しできないから、曲を作って感情を吐きだしてたんです。そういう精神は今もあるのかもしれないですね。クラスの中心というよりは、ちょっと端にいて、でもホントはクラスの中心に憧れてるというか、「異端から王道を眺めている」みたいな感覚なんですかね。

集めた楽曲たちなので、「エンドウアンリっていう人間がいるぞ」っていう、証明みたいな感じというか

撮影 / nishinaga “saicho” isao

聴き手に対しても、PELICAN FANCLUBの音楽で「見返す」というか、「自分を肯定してほしい」というような気持ちがありますか?

今回歌詞で共感を得たいとは思ってないんですよね。それこそ感覚的というか、とある日に、ふと思ったことをそのまま表現して、集めた楽曲たちなので、「エンドウアンリっていう人間がいるぞ」っていう、証明みたいな感じというか。

前作の歌詞は「聴き手に寄り添う」という意識がある歌詞だったと思うけど、今回は最初にも言ってくれたように「自分自身」であることが重要だったと。

それがすごく美しいと思うんですよね。世の中でエンドウアンリという人間は一人しかいないからこそ、それをやりたかったし、それを残すことはとても美しいことだなって。なので、今回はすごく楽しく作品を作れて、最近は生き生きしてますね。どんどん新しい曲もできてるし、ノンストレスで行けるようになりました。

今後もただ感覚的に作るというよりは、もっといろんなことを試したくて、その上で、自分がいいと思う水準を上げて、それを超えたものしか出したくないと思ってて

世の中的には、「踊れる」とか「泣ける」とか、機能性を重視した音楽が主流を形成しているように思うんですね。だからこそ、計算して作ったわけではない、ただ自分自身を表現した音楽の美しさっていうのはすごく貴重だと思う。

撮影 / nishinaga “saicho” isao

撮影 / nishinaga “saicho” isao

それが僕のやりたいことでした。ダンスミュージックとかそうかもしれないけど、ちゃんと用途のあるもの、機能的なものも僕はすごく好きではあるんです。でも、「これは何なんだろう?」っていう、よくわからない感覚、手の届かない感覚って、すごく大事だと思うんですよね。さっきの3人はそこが共通点でもあると思うし、そういう美徳みたいなのは、作品を作るモチベーションにもなってます。

機能的に作られたものを「王道」、そうじゃないものを「異端」とするなら、僕も王道は王道であっていいと思うけど、もうちょっと異端の割合が増えてもいいのにとは思ってて。

ガチガチに機能的なものを考えて作るのも好きだし、僕は普段シンセサイザーで実験的な音楽を作るのも好きなんですよね。たまにそういう娯楽要素とアート要素のバランスがめちゃくちゃ美しいバンドがいて、自分もそうありたいっていうのはありますね。なので、今後もただ感覚的に作るというよりは、もっといろんなことを試したくて、その上で、自分がいいと思う水準を上げて、それを超えたものしか出したくないと思ってて。

今回のミニアルバムを作ったことで、自分の中のハードルが上がった?

めちゃくちゃ上がりましたね。今回は感覚的に作ったので、極端に言えば、偶然の産物だと思うし、バンドとしても新体制になったことによって偶然できた、奇跡的な作品なのかもしれないと思ってて。なので、これをそのまま続けることはできないし、「こういうものを作ろう」っていう中に、上手く感覚的な要素も入れていければなって思うんですよね。

Ki/oon MusicにはASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)も所属してるじゃないですか?彼らはこの国のロックにおいて「王道」のバンドだと思うんですけど、ゴッチさんはカルチャーの土壌を作ることにすごく意識的で、ある種「異端」な側面もある人だと思うんですよね。彼らのことはどんな風に見ていますか?

僕初めて買ったアルバムが『ソルファ』だったんです。小6の誕生日に買ってもらって、聴いて、そこで僕にとって彼らは文化になったんです。

自分もきっかけを与える側になりたいっていうのはあります

撮影 / rina chizuwa

その年齢で受け取ったものは大きいですよね。

そうですね。僕は彼らにきっかけを与えられたので、自分もきっかけを与える側になりたいっていうのはあります。なので、彼らの活動は参考にしてるというか、同じ席にずっと座っていないで、どんどん変わっていくじゃないですか?火の揺れや海の波をずっと見ていられるように、変化していくものってずっと興味を持ち続けられるし、美しいと思うので、自分もそうありたいっていうのはありますね。

彼らももともとはウィーザーをはじめとした欧米のバンドへの憧れから始まって、でもそれこそ『ソルファ』をリリースする頃にはそれを血肉化し、自分のものにすることで、この国のロック文化を作り上げていった。そんな彼らが新作『ホームタウン』でリヴァース・クオモと共作してるっていうのはすごくいい話だし、リードトラックのタイトルが「ボーイズ&ガールズ」であったように、彼らは今も少年少女のきっかけになろうとしてるんだと思う。『Boys just want to be culture』というタイトルとも、リンクする話かなって。

僕らからすると、彼らは親のような存在というか、同じレーベルに所属してても、「幻の存在」くらいに思えるんです。僕が軽音楽部にいたときは、みんなアジカンをコピーしてて、もうそういうカルチャーができあがってたんですよね。

まずは僕自身が説得力を持てば、このバンドをもっといろんな人に聴いてもらえるんじゃないかなって

僕の世代だとハイスタがそういう存在だったし、20代にとってはアジカンやバンプがそうですよね。今はまたその下の世代が更新して行ってるんだと思うけど。

そういう存在になるためには、やっぱり説得力が必要だと思うんです。「この人についていきたい」とか「この人の言ってることならいいと思える」とか。そうなるためにも、自分をそのまま出すってことが大事なのかなって。音楽の形式がどんな形であれ、いくら異端であれ、その人が説得力を持てば、それは文化になり得ると思うし、そう信じてやってるんです。なので、まずは僕自身が説得力を持てば、このバンドをもっといろんな人に聴いてもらえるんじゃないかなって。僕の中の「文化」って、「売れる/売れない」の前の話っていうか、「自分の人生はこの人にすごく影響を受けた」っていう時点でもう文化なんですよ。誰か一人に対してでも、そういう存在になれたらなって。

その他のPELICAN FANCLUBの作品はこちらへ

ライブ情報

PELICAN FANCLUB TOUR 2018 “Boys just want to be culture”

11月9日(金)  福岡・Queblick w / 2
11月11日(日)  香川・DIME w / Teenager Kick Ass
11月14日(水)  愛知・CLUB UPSET w / mol-74
11月15日(木)  大阪・Music Club JANUS w / mol-74
11月17日(土)  広島・4.14 w / Teenager Kick Ass
11月19日(月)  宮城・enn 2nd w / LILI LIMIT
11月26日(月)  北海道・COLONY w/ 2
11月29日(木)  石川・vanvan V4 w /パノラマパナマタウン
12月5日(水)  東京・CLUB QUATTRO (ONEMAN SHOW)

GREAT TRIANGLE TOUR 振替公演
12月11日(火)  愛知・CLUB UPSET w / Age Factory、パノラマパナマタウン

*詳細、その他のライブ、イベントの情報はオフィシャルサイトで。

PELICAN FANCLUB

エンドウアンリ(Vo&Gt)カミヤマリョウタツ(Ba)シミズヒロフミ(Dr)からなるロックバンド。
シューゲイザー、ドリームポップ、ポストパンクといった海外音楽シーンともリンクしながら、確実に日本語ロックの系譜にも連なる、洋邦ハイブリッドな感性で多彩な楽曲を生み出す。Vo&Gtエンドウの持つカリスマ性を柱に、光と闇の両極を鮮やかに描き出す楽曲の振り幅が持ち味。また、ステージとフロアの境目をなくしたゼロ距離ライブ”DREAM DAZE”を定期的に開催するなど、独自の視点を持った活動も魅力。
2017年、インディーズでフルアルバム「Home Electronics」を発売。2018年6月、会場限定シングル「ガガ」を発売し、7月にはメジャー進出を発表。
2018年秋、ミニアルバム「Boys just want to be culture」でKi/oon Musicよりメジャーデビューを果たす。

オフィシャルサイト
http://pelicanfanclub.com