冒険Bリーグ  vol. 4

Column

「僕は異質なので」。横浜の主将、細谷将司が描くポイントガード像

「僕は異質なので」。横浜の主将、細谷将司が描くポイントガード像

『冒険Bリーグ』の第四回は横浜ビー・コルセアーズのキャプテン細谷将司が主人公。キャリアもプレースタイルもユニークな彼が目指すものは「他の選手と違うポイントガード」だ。

横浜の連敗を「7」で止めたのは、細谷の活躍だった。今季は先発でなくセカンドユニット起用の多かった彼だが、18日のライジングゼファー福岡戦では先発に復帰。トーマス・ウィスマンHCの期待に応え、23得点を挙げて85-73の勝利に大きく貢献した。

細谷はこう振り返る。

「僕が求められているのは、アップテンポな展開を作り出すところ。そのためにはまずディフェンスだと思っていて、最初の時間帯はとにかく激しくエナジーを出すという気持ちで臨みました。それが本当に今日はいい方向に行った」

横浜は第1クォーターで29-13と福岡を大きく突き放し、試合の流れを掴み、そのまま勝ち切った。細谷の武器は素早いモーションから放つ3ポイントシュートだが、18日の福岡戦は前半だけでそれを5本も決めている。第1クォーターに2本成功すると、第2クォーターの終盤には「3連続3ポイントシュート」を決めた。細谷は「今シーズンは結構多いんですけれど、ゾーンの状態に入ったのかなというのはありました」と振り返る。

彼はチーム練習が終了した後、3ポイントシュートを100本放つルーティーンを持っている。それは自身のシュート力を磨く鍛錬であり、調子を図るバロメーターでもある。彼はこう説明する。

「今は平均で(100本中)85本くらい決めているんですけれど、それを90本以上に持っていきたい。今は状態がすごくいいし、練習中から積極的に打っている。それが自信になって、こういう風に入っているのかなと思います」

細谷は11月7日の三遠ネオフェニックス戦で、Bリーグ通算1000得点も達成した。得点力、シュート力が彼にとって最大の武器になっている。

【B1 10月度】Monthlyスリーポイントランキング
※細谷選手は5位で登場

ウィスマンHCは細谷をこう評する。

「彼は本来であればシューティングガードで使っていける選手。(173センチという小柄な)サイズのせいでポイントガードにいるけれど、入るときはシュートが連続で何本も入る。それがチームの力になっていく」

バスケのポジションは基本的に「背の順」で、大きい順にセンター(5番)→パワーフォワード(4番)→スモールフォワード(3番)→シューティングガード(2番)→ポイントガード(1番)と並んでいく。ポイントガードは「ボールを運び、パスで攻撃の一手目を打ち、周りをコントロールする」仕事が多い。細谷は速いテンポでガンガン行くタイプで、プレースタイル的に「コントロール」というタイプではない。

ウィスマンHCは細谷の特徴をこう説明する。

「常に100%でやってしまって、緩急のつけ方が分からない部分がある。でもそれが彼だし、そこが彼の魅力。彼はこのチームにとって、すごくエナジーを出してくれる選手だと思います」

細谷は軽い自虐を交えながら、自身の課題を説明する。

「『速すぎる』とか、トム(ウィスマンHC)からいつも言われているんです。チェンジ・オブ・ペースの部分がずっと僕の課題です。いろんな人に聞いてアドバイスをもらうんですが、僕の中ではすごく『遅い』と感じていても、周りから見たら速いというズレがある」

ポイントガードは年を重ねるごとに「イケイケ派」から「コントロール派」に変貌していくのが常だ。細谷はチームのキャプテンで、29歳という年齢を考えても若手というポジションではない。そう突っ込むと、彼はこんな答えを返してきた。

「みんなとキャリアも違いますし、僕は異質なので。30歳からでもアグレッシブにできるとアピールしたいですし、なおかつコントロールができるところを見せていきたい。他の選手と違うキャリアを歩んできたぶん、他の選手と違うポイントガード像をもっと印象付けたい」

細谷のキャリアを考えればB1のコートに立ち、3季目早々に1000得点を記録するような選手になっている現状は奇跡に近い。彼は神奈川県立秦野南が丘高、関東学院大というバスケ的な意味で「名門」とは言い難いコースを歩み、卒業後も実業団の葵企業に進んでいる。そこから栃木ブレックスの育成チームだった「TGI D-RISE」のセレクションを受けて合格し、バイトをしながら2シーズンプレー。兵庫(現西宮)ストークス、つくば(現茨城)ロボッツを経て、2016年から横浜に加わった。

そもそも細谷はバスケを始めた時期も遅く、中学入学後だ。小学生時代の細谷は二宮町内の少年団でサッカーに励んでいた。左利きのミッドフィルダーとして活躍し、湘南ベルマーレのU-15からの誘いも届くレベルだったという。しかし家族の反対でJリーグのアカデミー入りはかなわず、彼が進んだ二宮町立二宮西中にはサッカー部がなかった。

彼は秦野南が丘高入学直後の球技大会で、その技量を認めたサッカー部員から「サッカー部に入れよ」と勧誘を受けた。そのとき声をかけた先輩の名は三平和司。今季のJ1昇格に貢献した、大分トリニータのエースストライカーだ。秦野南が丘高はサッカーもバスケもプロは一人しか輩出していない普通の県立高だが、そんなウソのような巡り合わせもあった。

誰よりも高い壁を乗り越えて今の座をつかんだ細谷だから、逆境でも挫けない。2016-17シーズン、17-18シーズンと横浜が「ぎりぎり」でB1に残留しているのも、キャリアに裏付けされた彼の逞しさがあるからだろう。今季は名将ウィスマンが指揮を執り、細谷はキャプテンに任命された。18日の勝利で「全体最下位」は脱したが、4勝13敗は中地区最下位。チームはなお厳しい状況に直面している。

しかし細谷は表情も言葉も前向きだった。

「今は底辺にいると思っています。でもトムが来て、トランジッションバスケットをすごくみんなが意識できるようになったし、速攻も去年より格段に増えている。ディフェンスは一番の課題ですが、今日の第1クォーターのようなエナジーで全員ができれば、ああいうバスケができる。それをやることで、勝ち星が徐々に増えていくと思っています」

取材・文 / 大島和人 写真提供 / B.LEAGUE

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著者プロフィール:大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。大学在学中にテレビ局の海外スポーツのリサーチャーとして報道の現場に足を踏み入れ、アメリカの四大スポーツに接していた。損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年から「球技ライター」として取材活動を開始。バスケの取材は2014年からと新参だが、試合はもちろんリーグの運営、クラブ経営といったディープな取材から、ファン目線のライトなネタまで、幅広い取材活動を行っている。

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