ZARDデビュー25周年記念特集【THE POP STANDARD】  vol. 6

Interview

2016年型。新たに生まれ変わった坂井泉水のスタンダード

2016年型。新たに生まれ変わった坂井泉水のスタンダード

全く変わらないはずの坂井泉水の歌声が、大黒摩季とのツインボーカル、リアレンジによりに「今」に生まれ変わった。誰もが予想もできなかったトリビュートアルバム。この作品について、バンドdoaのボーカル&ベースでありながら、B’z、倉木麻衣はもとより、数々のアーティストへの楽曲提供、編曲、ライブサポートに参加してきた徳永暁人に興味深い話を訊いた。

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大変失礼な言い方ですが、坂井さんはお姉ちゃんみたいな存在でした

さかのぼると、ZARDに関わったのはいつ頃からですか?

徳永 僕は大学を出た後、ゲーム音楽を作ったりしていたんですけど、歌ものの音楽を作りたくて、そっちのデモテープもずっと作っていたんです。だけど、箸にも棒にもかからない(笑)。どこに出しても何も反応がなくて、やめようかなと思っていた時期でした。その時に、本当に自分が好きで作ったデモ集があって、それを聴いたZARDの坂井泉水さんと長戸大幸プロデューサー (ビーイング創設者。ZARD、B’z、大黒摩季、T-BOLAN、WANDSなどを発掘し育てた)が気に入ってくださって、声をかけていただいたのが最初です。

ビーイングとのつながりはあったんですか?

徳永 当時、いろんなオーディションを受けていて。その中でビーイングのオーディションに最後まで残らせてもらって、まだ契約が決まらないぐらいの時期だったと思いますね。アレンジの仕事を何件かやらせてもらったり、そういう時期です。

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ちなみに、それまでダメだったのに、その時のデモはなぜ反応があったんでしょうか?

徳永 いや、よく分からないですね(笑)。「永遠」という曲のデモを最初に気に入ってくださったんですけど、そのデモ集の中に「帰らぬ時間(とき)の中で」という、のちにカップリングになる曲も入っていて。その2曲を気に入ってくださったみたいです。当時、J-POPの流れとしては、ZARDもそうですけど、どちらかというとギターサウンドが主体で、ディストーションが効いたギターがガンガン鳴っているとか、90年代ですからグランジが流行っていたりとか。要するにギタリストが曲やサウンドを作るという主流があったんですね。でも、僕はイーグルスとかウエストコースト寄りの音楽、コードがはっきりしていて、メロディがはっきりしている音楽が好きだし。それに、ギタリストじゃないので、作風が当時あまりないタイプだったんじゃないかなと思うんです。当時は純然たるロックを求められている時代だったから、どこからも声がかからなかったんですけど、ZARDの時だけ声をかけていただいて。「永遠」はイーグルスの「ホテルカリフォルニア」みたいな曲を作りたかったんですよ、12弦ギターが入っているような。当時僕はギターが弾けなかったので、サンプリングでギターの音を出してデモを作っていたのを覚えていますね。その、変な感じが気に入ってくださったのかな。

「永遠」はそれまでのZARDにないタイプの曲ですよね。

徳永 そもそもZARD用に書いた曲じゃないですからね。自分が好きで作って、これでダメって言われたら俺はダメなんだろうなって。だから、ギターがガンガン鳴っていないし、何度も転調するという、ポップスではなかなかない曲作りでした。デモ集の中でも推しの曲じゃないから、後ろのほうに入れておこうとか(笑)。

これが選ばれた時は嬉しかった、救われたと思いました?

徳永 ところが、当時は直接アーティストさんと話すことはほとんどなくて、長戸プロデューサーから、こういうデモを作ってくれ、こういうアレンジでという指令のみで作っていたんですね。だから、この曲がZARDで採用されるとか知らなかったし。レコーディングが進んで、ミックス寸前ぐらいの時にエンジニアの方からドラマ「失楽園」の主題歌に使われますよって聞いたんです。その前に、同じ曲がカメラのキヤノンEOS KissのCMになるので、CMサイズを作ってくれと言われていたんですけど。要するにボーカルが入っていないので、誰が歌うか知らなかったんですね。サイズとキーだけ決めて作って。あとでテレビを見ていたら、ZARDの坂井さんが歌っているのを聴いて、あ、そうだったんだって知ったのが最初ですね。

仕上がった後で知る?

徳永 他のプログラムもそうでした。あと、直しが多かったので、この曲の何テイク目がOKなのか記憶にないぐらいずっと作業をしていて。嬉しいというより、びっくりしたほうが大きいです。

そういうパターンは多いんですか?

徳永 多いですね、いまだにありますけど(笑)。でも、先入観というか、ZARDで使うと言われると、どうしてもZARDの音楽に合わせてみようとか、他の方のアレンジに似せてみようと思ったかもしれないです。

長戸さんからはどういう依頼がありました?

徳永 アメリカンで、と言われた記憶があります。僕の中でアメリカンといえばイーグルスなので、アコギ、12弦ギターをフィーチュアしていいんだ、ぐらいのイメージでした。ストリングスを入れてくれという指示はあとから来た気がします。

直しが多いというのは、さらにいろんなパターンを考えてみるということですか?

徳永 そうですね。「永遠」に限らず、ZARDのプロジェクトは、スネアの音色が一個違うだけで直しが来るんです。坂井さんからも来たりしました。スネアの余韻が長いか短いかだけで、直しが来るとか普通にありましたから。テイクが10とか普通にあった状態で、採用されたのがどのテイクなのか自分でも把握できないぐらいで。とにかく寸前までこだわっていらっしゃいました、坂井さんは。

曲調が変わるわけじゃなくて、細かいところに直しが入る?

徳永 最初は、ダンスみたいノリがある曲でとか、ロックでとか、バラードでとか、大まかな指示をもらうんですけど。だんだんテイクを重ねるうちに、“ここにジャラ~ンと入れてくれ”とか、音色だけじゃなくフレーズの指示もありました。“サビ前にはこういうキメをくれ”とか、“何拍目にこういうドン!が必要だ”とか。電話で(長戸プロデューサーから)“ドン!だよ”って言われて、“はい!”って(笑)。メモって、覚えておいてアレンジして、という細かい作業でした。

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