SID 15th Anniversary Special マオ Self Liner Notes「歌詞を巡る旅」  vol. 7

Interview

シド 6th Album『dead stock』〜いつまでも色褪せることことのない、ポップな12曲〜

シド 6th Album『dead stock』〜いつまでも色褪せることことのない、ポップな12曲〜

Self Liner Notes特集「歌詞を巡る旅」もあっという間に後半戦に入りました。ということで、今回は6thアルバム『dead stock』について語っていきます。前作『hikari』をリリースしたことで、シドとして生まれ変わろうとか、そういう考えはもうなくなった時期の作品ですね。『dead stock』はシングルが多く収録されているので、その楽曲を軸に形を作っていったと思います。だから、こうしていま俯瞰で見てみると「ポップなアルバムだな」と思うんです。でも、それに対して歌詞は結構面白いものが多い。だから、解説していくのが楽しみですね。アルバムのタイトルになった『dead stock』という言葉は、意味合い的には売れ残りとか、そんなによくない言葉なんですけど、響きがカッコよくて。ファッション的には、dead stock商品というのは、普通の市場には出回っていない、お宝的なもののことを指すので、カッコいい言葉じゃないですか。そのバランス感がすごくいいなというところで、このタイトルにしましたね。なので、ここでいう『dead stock』は色褪せないとか、そういう意味合いですね。後々こうしてアルバムを聴き返したときに、この12曲だったらいい感じでシワが増えていって、色落ちして、いい曲になるんじゃないかなって。そういうイメージです。ジャケットのアートワークはデザイナーさんと打ち合わせをかなりやって作っていったんです。ミラーを使うというアイデアは、打ち合わせしてるときに出てきたものだったと思います。聞いたときに面白いなと思って。CDショップでアルバムを手に取ったら(ジャケットに)自分の顔が映るっていうのが、ね。ただ、それだけ(笑)。あー、でもね、配信とかがどんどん人気になってきて、CDというパッケージ商品のセールスがこのあたりからなかなか厳しくなってきていた時期でもあったので、いろいろ試行錯誤もしていたんですよ。それで、まずはパッケージとしての面白さも大事なんじゃないかなということで、こういうものを作ってみたんです。

構成・文 / 東條祥恵 撮影 / 今元秀明

自分がルールだって思ってたものが壊されると、すっごいビックリするんです

01. NO LDK
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

4つ打ちもので、いままでのシドにはなかったタイプの変わった曲がアルバムの1曲目にあるというのが面白いなと思って、この曲を選びました。アルバムは1曲目でビビらせたいという気持ちがあるので、ちょうどよかったですね。タイトルの「NO LDK」って言いやすいんですよ。3LDKや4LDKと同じ感じで“NO LDK”って言えるんで(笑)。ただ“NO”なので、文字だけ見るとLIVINGもDINNINGもKITCHINもないってなっちゃいますよね。ここでは彼女と一緒に住んでた部屋っていうものを“LDK”という言葉で表していて。そこに“NO”をつけることで、彼女が部屋からいなくなっちゃったということを表現しているんですよ。彼女も、想い出も全部なくなっちゃったということなんです。俺のなかで、この歌詞で一番の軸になっているのは“無論 本編を超えた エンドロール”というところ。これがまさにこの曲のテーマで。恋愛って、別れたあとの悲しさとか悔しさが、どんなに楽しい想い出を込み込みにしても抜いちゃう瞬間ってあると思うんですね。別れたあとも引きずりすぎちゃったりして……。もうとっくに(本編の恋は)終わってるのに、エンドロールを何回も何回も繰り返してしまって、別れたあとのほうが本編よりも長くなってきている。そこを象徴しているのが、この一節で。本編が終わっても、まだウジウジ言ってる歌をここでは書きたかったんです。“異国の美人 絵画 傾きに 違和感で 真っ直ぐに 直せば オフホワイト 歴を知る”というところは、部屋のなかでいままで傾いた絵画をまっすぐに直してみたら、傾いてたところの壁紙だけがやけに白くて綺麗だった。それを見て、2人でこんなに長く一緒にいたんだとか、そういうことばっかりこの主人公は考えてるんです。サウンドが4つ打ちだったこともあって、“至らぬ部分 分母 分子”や“余儀なく now 解体 解体”なんかは、リズムに合わせて歌いやすい言葉というのを意識して書きましたね。

02. シェルター
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

全然ライブでやってないですね〜。歌詞を読むと、物申す系なのかな。“ゆとりに紛れて 噛みつく乳歯は 時代の信号”っていう部分があるんだけど……乳歯っていうのは、若者的なことを指してるのかな……。でも、この当時はこういう若者系の事件、自殺とか、そういうニュースが多かったのかな。 最後、“消しました”って書いているから……ああー、いじめ問題だ。そんな感じがするな。“ここぞとばかりに 群がるフィクション 弱さの象徴”だから、たぶんそうですね。いじめとか、そういうことがピークだったんでしょうね。俺らが学生の時代もそういうことはあったけど、ちょっと種類が違う気がする。俺もいじめられた経験があるけど、短期間だったんですよ。俺らの時代って、それがみんなに回ってくるんです。だから、誰もいじめだなんて思ってないんですよね。俺の場合は、いじめられたっていうよりは、いつも俺の周りにいた仲間たちが、次の日学校に行ったら急に俺を空気とみなして、っていう感じから始まって。昨日までは全然強くなかったヤツの顔つきが急に変わって、人が変わったようにこっちを睨んできてゾクッとした憶えがありますね。男子はみんなそういう経験ってあるんじゃないかな。全然顔が変わるんですよ。いまだに憶えてるもんな〜。俺がいつもどおりに話しかけても全然ひるまなくて、うわ〜、このあとどうなっていくんだろうって本当に怖かった。だから、経験ですよね。いまの時代の子は経験がないままやってるから、自分がやられたときはこうだったからここまででやめておこうとかがないんですよ。やれるまでやる。限度がないんです。そういういまの時代の小、中学生のいじめについてなにか言いたかったんでしょうね、この歌は。

03. cosmetic
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

いまだにライブの定番ですね。俺もすごい好きな曲なんですよ。これは、上下関係がある男女の恋愛を描いていて。男のほうはちょっと頭のいい、インテリSという気がしますね。 “僕がルール そうだろ?”と言ってますから(笑)。こういうところ、実は昔からずっと自分のなかにあるんですよ。だから、「シェルター」のいじめの話じゃないですけど、自分がルールだって思ってたものが壊されると、すっごいびっくりするんです。ここの部分ヤバイですね。1番の“至近距離で 傷つけ合おう”って言ってるところ。すげぇな(笑)。ちょっとSっ気がある男子なんで、普通に「愛し合おう」とは言わないんですよ。ちょっと異常な愛という感じが出てる。しかも、“捻じ曲げる秩序”とか“エゴで歪む 君が見たい”とか言ってるので、かなりハード目な人なのかもしれないですね。“拒んでみて”とか、そういうことを楽しんでやってるから。俺、Sばっかだな(笑)。Mな歌詞ってあんまりないかもね。あったとしてもS側から見た向こう側の心情とかだから。今度拒む側のほうから書いてみようかな。書けんのかな、俺(笑)。冒頭の“スパークリング”とか、2番の“溶けた蝋”とかは、夜をイメージさせたくて入れました。曲名は“コスメティックに彩ろうか”という歌詞から引っ張りました。“コスメティックに〜”のところは、言葉を選ぶときに、大人な感じプラス、普通のすっぴんでカワイイっていう女の子ではない感じ。ちょっとメイクも濃い目にしてる女性とインテリでSっ気の男性というカップルに、コスメティックという言葉がハマるなと思って。いいやすいし、曲調もオシャレな感じだったから、そのままタイトルにしました。

こうして歌詞に書いてるってことはキツかったんでしょうね(苦笑)

04. いいひと
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

この曲、他と比べると歌詞がめちゃくちゃ短いですね。どんな意図で書いたんだろう……。憶えてないな(苦笑)。読みながら思い出していきます。“不純に濁る 深海 溶けていくイメージさ”だから、きっとあんまりいい状態ではない、不倫とかそういう感じで始まった恋愛なんですよ。まっとうな始まりじゃなかったから“書き順”は間違ってたって言ってるんでしょうね。けれども、いまはもうすぐちゃんとした“恋”にもっていけそうっていう状態なんですよね。“素直になれず 徒党を組む うさぎ”というところは、一人だと本当は寂しくて生きていけないふたりのことを表現している。“デニム地のキャンバス 白になる日に 憧れて くちづけた”っていうところは、デニムみたいに一緒に色あせていきたい。そういうふたりになりたいな、ということですね。“いとしいひとよ お願い いいひとに 成らないで”は、相手側に対していいひとにならなくていいよ、と。最終的にはまっとうな恋愛に徐々になっていこうねというところで終わってますね。冒頭の“苦い カプチーノ ココアパウダーを足した”は、お互いつまらない日々を過ごしていた日常に、甘いものが足されたということだから、ここで浮気をしたってことですね。意外と『昼顔』みたいな始まりなんだけれども(笑)。でも、最後には色落ち具合を“楽しもう いつまでも”と言ってるから、希望があるよね。カプチーノをここで出したのは、そもそも俺が好きだからですね。コーヒー大好きなんですよ。俺が好きなのはちょっと薄めのアメリカンコーヒーなんだけど。苦いカプチーノは、自分が好きとかではなくて、歌詞のなかの設定としていいなと思ったから使いました。この曲で“デニム地”って歌詞が出てきたところも『dead stock』というタイトルにつながってるのかもしれないですね。

05. 乱舞のメロディ
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

これはTVアニメ『BLEACH』のOPテーマ曲だったかな。書いたのは東京ドーム公演をやる前の頃だったと思うんで、そういう大きな決断が増えてきた時期でもあったんですよ。大きな決断をするときに必要な強い気持ちとか、過去の自分の経験とかをちりばめながら歌詞を書きました。ドームライブを控えて、“静かに 静かに 幕は斬りおとし 覚醒の夜明けに 蒼い炎”という、まさに当時はそういう気持ちだったんですよ。結成当初のメラメラメラってなっていた頃のシドとは違って、いまはやんわり炎を出しながら「いくぞー!!」っていう気持ちがすごかったから“蒼い炎”にしたんです。バンドとして、あんまり表には燃えたぎってる感じは出さないけど、心のなかでは炎があるというイメージで“蒼い”と書いたんです。だから、シドをかなり意識して書いてますね。“僕らは 負けを知らない弱さを 抱きしめ 歩いた”という部分。シドをやり出してから、俺らはあんまり挫折ってなかったんですけど、ここら辺からですかね。「ちょっとステージがデカイね」とかいろいろなんですけど、負けたことがないからこその弱さがウチのバンドにはあるなということを感じ出してきて。だから、もう1回シドとして歩き出した頃の強い気持ちを思い出そうよと言ってるんです。“目の前の敵”と言ってるのは、シドの考え方としてずっとそうなんですよ。会場が大きくなったりとか、なにか新しいことをやるときは、敵として戦いに挑みに行くような感じで。この頃は、それがピークだったんですね。もちろんいまも攻めてはいるんですよ。だけど、この頃とは攻め方が違うんです。バンドとしてはあんまりそういうイメージはなかったと思うんですけど、この頃はいつも敵を倒そうと戦ってたんですよ。それで、いろんな苦しいことや辛いことが増え始めて、精神的にも「この重圧、無理だわ」ってすごいプレッシャーを感じるようなことが出てきて。“苦しくて 逃げたくて 魔がさした 未来は 夢描いた僕らと 遠いところで”とか“心ない言葉 矛先 全てを飲み込み 歩いた”とか。こういうことが全部重なって、相当キツかったですね。なんにも怖いものなんかなくて、敵を蹴散らしてみんなで笑ってたじゃんって言いながら、無理くり丸め込んでやっていた。こうして歌詞に書いてるってことはキツかったんでしょうね(苦笑)。“乱舞”という言葉は『BLEACH』のOPテーマをやるということを意識しました。あとは、いろいろゴチャゴチャあったけど、もう行くしかないなっていう自分の気持ちもこもってます。

06. レイン
(作詞・マオ/作曲・ゆうや)

曲調に合わせて、失恋の傷を雨に例えて歌った綺麗めの歌詞ではあるんですけど、頭が“六月の嘘”から始まるのは、この前の年にシングルで出した「嘘」につなげてるんです。「嘘」がTVアニメ『鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST』の第一期EDテーマだったんですけど、「レイン」は最終期のOPテーマに起用されて。どっちもゆうやの曲だったから、関係性を持たせたくてどうしても「嘘」っていう言葉を入れたかった。この歌詞は、2番から新しい相手が見つかってますよね。“慰めから きっかけをくれた君と”というところの“君”が新しい相手の女性で。側でこの女性がずっと慰めてくれてたんですよ。でも、なかなか次にいけなくて。で、そろそろかなって思ったんだけど、“葛藤がこぼれ落ちる”って言ってるから、まだ気持ちがグラグラグラグラ〜ってしてる状態なんですよ。それでも、この相手の女性は“過去を知りたがらない”で“洗い流してくれる”、そんな存在で。“優しい歩幅で 癒す傷跡”というのは、こっちに「前の人なんか早く忘れてよ」とか言うのではなく、こっちのタイミングでいいからという優しさで過去の傷を癒してくれるということ。悲しいときにグイグイこられても、そういうときは無理じゃないですか? そこで、相手の気持ちを分かって側にいてくれたというのがよかったんですよ。それで、もう“包まれて いいかな”って言ってるから、この女性のほうにどんどん揺らいでいって。“差し出した傘の中で 温もりに 寄り添いながら”って、最後はハッピーエンドに近い感じ状態で終わってますね。最初は悲しい始まりだったのに。頭では“寄り添うとか 温もりとか わからなくなってた”のに、最後は“寄り添いながら”と歌ってますから。気持ち的にはもう解決していて、次の女性に向かえてるんですよね。雨は両方のシーンにあるけど、感じ方は違ってて。いまは想い出として雨を感じながら、ちゃんと次の相手と向き合えてるんです。

当時は「40万、最強だ!」って思ってました。40万ありゃあどんだけ暮らせるんだって

07. dog run
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

この当時、犬はまだ飼ってなかったんだけど、犬に例えて書いてますね。“バランスは 君の支配でとれてた”っていうところとかそうじゃないですか。“どんな辛い要素も まだ 手放せなくて”って言ってるので、まだ前の恋を引きずってるんですよ。さらにそのあと“パートナーが 何度変わろうと 僕は 君の手のひら 駆け回るだろう”と言ってるから、明らかに引きずってますね(笑)。本当は全部(相手に)ゆだねておけばよかったのに、まだ子供だったからはみ出しちゃったんですよね、この僕は。“余計な本当も 知りたがりな日々”というのは、そういうこと。大人の女性と子供の男性という関係性でよかったものを、男性がなんか背伸びしちゃって。それがよくない方向にいっちゃってということですね。ちなみに“「プレゼントです。」と〜行けない”のエピソードは実体験ではないです。でも、こういうエピソードがあると歌詞がリアルに響くし、まだ子供でまっすぐな男の子像が浮かぶかなと思ったので入れました。ちょっとでも腹黒い男の子だったら、お店に行くのが恥ずかしいとかならないと思うので。このエピソードで、男の子のピュアでまっすぐなところをアピールしてますね。俺も、この恥ずかしいなっていう気持ち、分かりますよ。だいたいね、女性ものを男性が買うと「プレゼントですか?」って聞かれるんですよ。そもそも女性のお店に男が入る理由は、女性へのプレゼントを買うためか女装家。それしかないから(笑)。俺は誰かにプレゼント買うときはリサーチするタイプ。本人にではなく、周りにね。あとは本人ですら忘れてる言動を思い出して考える。基本、俺はプレゼントをあげることって、男も女も好きなんですよ。だから、あげるものに関してはこだわります。大事なイベントのときはとくにね。

08. one way
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

これは、いまからのシドというか、まあ自分ですね。もう1回、ここから高みを目指して頑張ろうという自分の決意表明みたいな歌です。バンドを始めた頃の気持ちも同時に思い出しながら書いていくなかで、悔しい思いもいっぱいしてきたよな、という過去の出来事を思い出しながら書きました。この“「わけがわからんことばかり述べずに しっかりと前に習え」”っていうところは、学校の先生に言われたことで。俺は真剣に将来のことを話したつもりだったんですよ。「有名人になりたい」って(笑)。たしかに、言い方はよくなかったなというのはいまだと分かるんです。東京に行って、しっかりバンドをやってって言えばよかったものの「俺がいる場所はここじゃないから、東京に行って有名人になってくる。だから、就職とか進学とかはしない」って言ったら「バカか、お前は」って言われて(笑)。それがすっごい悔しくて。「おぉー、頑張れよ!」まではいかないとしても、もっと真剣に受け止めてくれるかなと思ったんです。でも、頭ごなしに全く聞いてもくれなかった。だから、こっちも「ああ、もういいや。伝わんないわ」って一瞬で終わっちゃったんですよ。それでライブハウスに入り浸るようになって。“待っててね 会いにいくよ”というのは、東京はいずれ俺のファンになるヤツがいっぱい待ってる街。そこに会いにいくからっていう意味。本当にそう思っていたんで。それぐらい自信家だったんですよ(笑)。“手に入れた片道チケット”というのは本当のことです。家もなにもない状態で、自分で貯めたバイト代40万円だけを持って東京に出てきたんですよ。よーく憶えてるんですけど、当時は「40万、最強だ!」と思ってました。40万ありゃあどんだけ暮らせんだって。この「one way」が東京に出てくるまでで、「Dear Tokyo」はその後の東京に出てきてからの生活も含めて書いた歌ですね。

09. 2月
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

これは弟が結婚するってことになって、歌詞をプレゼントしたいなと思って書きました。弟が可愛くて(微笑)弟が中学生の頃に俺が東京に出てきちゃったんで、それまでアニキらしいことをあんまりしてやれなかったこともあって。でも、お金じゃなくてちゃんと残るものをあげたいなと思って、歌詞にしたんです。弟には、このアルバムが出たときに言いました。「そういう感じで聴いてみてよ」って。そうしたら、奥さんとふたりで喜んでくれましたね。歌詞は、俺のなかの弟のイメージをふくらませながら書きましたね。具体的なエピソードを入れこんだりはしてないんですけど、2月は弟の誕生月でもあるんですね。それで、さすがに「弟」っていうタイトルにすると演歌みたいになるんで(笑)、「2月」にしました。曲調がかなり冬っぽかったので冬の歌にしたんですけど“ずっと なんて強いこと 言えない僕”というところは、アイツは言えなさそうだなという弟のイメージで書いた部分ですね。実際の弟は、ちょっとおとなしめで内気で、俺とは正反対なんです。この歌の、毒っ気もなにもなく、最初から最後までここまで真っさらな感じというのは、弟のキャラクターの影響が大きいと思います。同じ親の元で育ってても兄弟で性格が違う人って多いじゃないですか? 不思議ですよね、なんでこんなに違うんだろうって。俺がバンドやってることに対して、弟は最初はあんまり興味がなかったみたいですけど。だんだん興味を持ってくれて、普通にCDを聴いてくれていたみたいです。ライブにも何回か来てますね。ファンの方もこの曲を結婚式に使ってくれているみたいで、うれしいですね。また、曲調が合うんですよね。入場するときとかに。

最終的にはシドのライブに集まって、みんなで騒いで、元気になろうよっていう想い

10. ワイフ
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

これは人妻の話ですね。ちょいワルな夜の男に引っ掛かってるんだけど、家庭は壊したくない、でもまだ何回かは会いたいなっていうメロドラマですね。この歌詞はカタカナが結構ヤバイ。ポーカーフェイスとか、ニヒルとかは、いままで俺が生きてきて絶対に使ったことのない言葉ですから(笑)。使ったことがあるのはチェイサーぐらい。これは意識して入れたんですよ。この曲は、メロがちょっと昭和歌謡っぽい感じだったから。曲を聴いたときに、昼間の雑多な繁華街が思い浮かんできて。雑多な繁華街とか路地裏は、なんか昭和歌謡とかフォークのイメージがありますよね。で、雑多な昼間の繁華街から時間を夜に巻き戻して、ドラマを思い浮かべていったんです。それで、奥さんがバーに入り浸ってて、年下の男にハマっちゃってというのが面白いかなと思って。奥さんの旦那さんは冷たいんですよ。定番ですけど(笑)。で、夕飯のおかずをずっと考えてたら日が暮れたとかっていうエピソードも定番ですけど、そういうものをシドでやるのが面白いかなと。女性はね、やっぱりいつまでも綺麗でいたいんですよ。そういうちっちゃい弱みに、この相手の男はつけこんでる気がしますね。女の人も“適度な刺激とか 欲しいだけなの”と言ってるから、こっちも悪い人っちゃあ悪い人。だからお互い様だね(笑)。昭和の曲って、当時のアイドルもそうでしたけど、あんまり幸せじゃない歌が多かったんですよね。影がある歌、影がある人が人気だったイメージが俺のなかにはあって。その影響もあって、こういうメロディがくると、影がある歌詞を書いちゃいますね。主人公を年の差があるカップルの設定にしたのは、きっとそのほうが物語を展開させやすいからだと思います。他の楽曲にもありますからね。年の差カップルの設定は。

11. sleep
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

この曲、すごく好きなんですよ。「2月」はずっと一緒にいたいっていう歌だけど、これはずっとじゃなくてもいいからっていう、そのときの気持ちだけを歌ってるんですよね。これは、年齢なのか人としてなのかは分からないけれど、相手のほうが大人な感じがしますよね。“今日こそは後と決めたのに 包まれ 心地よく 先に眠った”という2行目を見ると。子供のほうが先に眠ることが多いって言うじゃないですか? ここでは、こっちのほうが子供っていうことを表したかったんでしょうね。“君のことを知るたびに 知らない君を ひとつ 忘れる”は、たぶんこの相手はモテる人なんですよ。それで、いろんなことを知っていくたびに、辛い情報しか入ってこないので、知らなかったってことにひたすらしていくんです。それぐらい“君主導な恋”なんです。向こうは全然そういうこっちの気持ちは分かってくれていないから、辛い感じ。だから、相手がちょっと悪いですね。それでも“念の為に 抱きしめる”。ずるい人だと分かってるんだけど、もう後戻りはできないんです。2番を見ると、この相手の男はモテまくりでしたね(笑)。“今日も誰か 喜ばせるの そして 悲しませるのね 痛いよ”ですから。そんな男に“こちらにもお願い”とかヤバすぎですね。ひっぱりだこだよ、この男は(笑)。“「泣くなよ」で拍車がかかった”って、ここの表現はいいですね。もう女の人も、終わりに向かってるんだなというのは分かってるんですよ。でも、最後を“さよなら”じゃなくて“眠った”で終わらせたのは、まだ一応続いていく感じを出したくて。“できるだけ長く”というのが女の子が唯一相手に求めてることだから。あと2〜3回なのか、10回なのかは分からないけど、もうちょっとは続いていくんだよというのをこの“眠った”で表現しています。それにしても悲しいな、これ(苦笑)。

12. Sympathy
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

このアルバムはバラードで終わらないんですよね。今作は12曲と収録曲数が多いということもあったけど、「この曲、最後がいいな」って普通に思っちゃったんです。なんか、これを聴くとみんなで元気になれるじゃないですか。そこがいいですよね。最終的に全員で元気になれるというのが、この曲を最後にもってきた理由です。歌詞は、自分のなかにあるものというよりは、誰かと話したときや、ファンのみんなから届く手紙を読んで、そんなことを思ってるんだっていうものをヒントに書き始めましたね。“「取り柄」と「リアル」が睨めっこ もどかしく 時間だけが オーバー”の部分についてなんですけど、夢って気持ちとして強いじゃないですか? でも、誰もが夢を見られるわけではなくていろんな状況がある。そのなかで、「取り柄」っていうもの、自分はこれが得意だっていうものをどうにか形にしようと思ったら、そこに「リアル」という現実が入ってきて。んー、ってなっていたら時間だけが経っちゃったという人はたくさんいるんですよ。地元の友達でも「いま全然自分が好きなことをやれてないんだよね」っていう人もいる。いろんな状況の人がいるけど、そういうみんなをひっくるめてハッピーになれたらいいなという気持ちで歌詞を書きました。この歌のなかで人生は“流れは セットリストに似てて 巻き返し どこからでも オッケー”と言ってるんです。ライブって不思議で、前半は自分的にどうなのかなと思ってても、後半3曲とかでグワーってきたりすることがあるじゃないですか? そういうことって人生にもあると思うんです。絶対的な条件が整ってて、子供の頃から夢を見られる人もいればそうじゃない人もいるけど、そうじゃなくてもありえるからね、ってことを希望としてここでは書きたかったんですよね。いろんな状況の人がいるけど、最終的にはシドのライブに集まって、みんなで騒いで、元気になろうよっていう想いで。

次回 7th Album『M & W』編は2018年12月中旬掲載予定です。

ヘア&メイク / 坂野井秀明
スタイリング / 奥村 渉

衣装協力 / NOID.
https://store.noid.jp/

LIVE DVD / Blu-ray『SID TOUR 2017 「NOMAD」』

2018年7月25日リリース
【初回生産限定盤DVD(DVD+写真集)】
KSBL-6322-6323 ¥6,000+税
【通常盤DVD】
KSBL-6324 ¥5,000+税
【初回生産限定盤Blu-ray(Blu-ray+写真集)】
KSXL-268-269 ¥7,000+税
【通常盤Blu-ray】
KSXL-270 ¥6,000+税

Mini Album『いちばん好きな場所』

2018年8月22日リリース
【初回生産限定盤(CD+DVD)】
KSCL-3076-3077 ¥2,788+税
【通常盤(CD)】
KSCL-3078 ¥1,852+税

ライブ情報

SID 15th Anniversary ASIA TOUR “THE PLACE WHERE WE LOVE MOST 2019”

2019年2月15日(金) Legacy Taipei / Taipei
2019年2月20日(水) MacPherson Stadium, Mongkok, Kowloon / Hong Kong

SID 15th Anniversary GRAND FINAL at 横浜アリーナ ~その未来へ~

2019年3月10日(日) 横浜アリーナ
http://archive.sid-web.info/15th/

MAO from SID
X’mas Acoustic Live 2018

2018年12月11日(火) 日本橋三井ホール
http://www.maofromsid.com

*公演スケジュールなどの詳細は公式サイトをご参照ください。

マオ from SID

マオ/福岡県出身。10月23日生まれ。2003年に結成されたロックバンド、シドのヴォーカリスト。2008年10月「モノクロのキス」でメジャーデビュー。以降、「嘘」「S」「ANNIVERSARY」「螺旋のユメ」など、数多くの映画・アニメテーマ曲でヒットを放つ。2018年、バンド結成15周年を迎え、4月にはセレクションベストアルバム『SID Anime Best 2008-2017』をリリース。直後の5月から6月28日まで”SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 2018”と銘打った全国6都市14公演ツアーを開催。9月からはLIVE HOUSE TOUR”いちばん好きな場所”を展開、11月21日のマイナビBLITZ赤坂で全国31公演を無事に完走した。

オフィシャルサイト
http://www.maofromsid.com
http://sid-web.info

vol.6
vol.7