Interview

蒼井 優&葉山奨之が舞台『スカイライト』で伝授する、“正しい人間関係”のススメ

蒼井 優&葉山奨之が舞台『スカイライト』で伝授する、“正しい人間関係”のススメ

12月1日(土)のプレビュー公演より新国立劇場小劇場にて、舞台『スカイライト』が上演される。イギリスを代表する劇作家、デイヴィッド・ヘアが書いた三人芝居で、かつて不倫関係にあった、とある男女の物語を膨大な台詞と緻密な心理描写で描いている。演出は、2018年9月より新国立劇場 演劇部門の芸術監督を務めている小川絵梨子が手がける。
今作で、不倫関係にあった女性のキラを演じる蒼井 優と、相手男性の息子のエドワードを演じる葉山奨之にインタビュー。人間というなんとも不思議な存在について、さらには今作の魅力、ふたりの関係性まで多くのことを語ってもらった。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 冨田望

未来に対して小さな光が伸びていく舞台

今作はイギリスの演劇界で最も権威のあるローレンス・オリビエ賞に輝いたデイヴィッド・ヘアの傑作戯曲ですが、脚本をお読みになられた感想をうかがわせてください。

蒼井 優 私は戯曲を読む前に、舞台を映画館で鑑賞する“ナショナル・シアター・ライヴ 2015”で『スカイライト』を観ました。キャリー・マリガン、ビル・ナイ、マシュー・ビアードのたった3人のお芝居で、素敵な演劇だと思いました。過去や現在はものすごくねじれているかもしれないけれど、最後には未来に対して小さな光が伸びていく気がしたんです。

葉山奨之 感動しました。後半になるにつれて、普通の人でも生きていたら経験することだと実感するところもあるので、人ごとではないと思いました。男性目線からすると、「父親のトム(浅野雅博)は何をやっているんだ」という気持ちになって、心が悲しくなる部分もあるんですよ。

蒼井 優

蒼井さんが演じるキラ、葉山さんが演じるエドワードの役どころを教えてください。

蒼井 キラはもともと良い家柄の娘で、そこから親に反発して18歳でロンドンに出てきます。たまたまトムの奥さんのアリスが経営しているお店で働くことになって、そこから家族に深く関わり、浅野さんが演じるトムと6年間不倫をします。結果的に、10年ほどトムの一家と一緒にいて、とあるきっかけで彼らと離れ、独り立ちをして3年目になる女性です。頭が良くて、物事を考えながら人生をチョイスしているぶん、別の角度から見ると頑固にも見えるんです。

葉山 エドワードは、お父さんのトムがレストランの経営で成功している大金持ちで18歳の子供ですが、それをストレスに感じているんです。あまり父親と仲が良くなくて、さらに仲が悪くなるから、離れ離れになったキラに思わず助けを求めるんです。

蒼井 たくましいといえば、たくましく感じるよね。

葉山 そうですね。10代にしか感じられない青春が詰まっていると思います。家にいても父親と喧嘩をするだけだし、かといって、したいことがあるわけでもない。お金持ちでいることも嫌なので、普通の生活に憧れを持っている青年だと思います。

葉山奨之

(蒼井)優ちゃんを説得するぐらいのつもりで演じたい

今作は濃密な会話劇で、しかも三人芝居になります。

葉山 (蒼井)優ちゃんに関しては膨大な台詞量に驚きます。それでも、3人しかいないぶん、お客様には何が起こっているのか、わかりやすいと思います。その中でエドワードは、キラに3年ぶりに会う。10代はすごいスピードで成長しますから、父親との関係を含め、あまり良くない状況にどんどんなってしまうんですが、そんな泥沼からキラに助けてもらおうとして、彼女をどう説得するのか悩んでいる。なので、実際に優ちゃんを説得するぐらいのつもりで演じたいですね。

蒼井 三人芝居ではあるのですが、舞台上にはつねにふたりしかいない状況で物語が展開していきます。キラはたしかに膨大な台詞量をしゃべりますが、それぞれのセクションでふたりが何を議論しているのか明確にしつつ、音が口から出ているのが大事なセクションなのか、意味を届けたくて喋っているのか、それを意識したいです。場合によっては、キラやトム、キラやエドワードの副音声さえ聞こえるようにしたいです。そうして4つの声が重なりあえば舞台にふくらみが出ると思っています。会話の中に登場するいろいろな人物像を明確にして、知り合いの話をしているように、しっかりしたイメージを3人で分かち合えたら、舞台がほつれていくことはないと思っています。

となると、結果的に二人芝居に近いわけですね。

蒼井 そうですね。とにかく今作は濃密であることが大切。人間関係もシンプルですし、稽古場だと私たちの足並みがどうやって揃っているのかも確認しやすいので、大変ですけど、楽しいです。

葉山 僕らは同じ方向を向いて集中できるし、お客様も舞台上のどの人物を観ればいいのかわかりやすいと思います。

蒼井 たった3人で“人間”そのものの面白味が感じられるのが今作の魅力です。まさに“人”を感じる舞台ですね。

3人で想像しながら同じ女優をキャスティング

舞台上には登場しませんが、トムの奥さんのアリスが、本当によく台詞の中に登場しますね。実際に彼女の存在を意識されたりするんですか。

蒼井 3人で想像しながら同じ女優をキャスティングしたよね(笑)。

葉山 (笑)。僕にとってはお母さんですから、トムよりしっかりした会話ができる人だと思っています。なので、母と息子との関係を超えて、人間として共感できる人になっています。ただ、劇中では、1年前にすでに亡くなっている設定なので、エドワードは17歳でお母さんを失っているわけですから、とてもつらいことですよね。だから、こういう人であって欲しいという願いも込めています。

蒼井 もちろん、アリスだけが登場するわけではないので、みんなで雑談のように、「この人はこのときこういう状況だった」と肉付けをしながら共有しています。

脚本からは、どこにでもある家庭の不和や、それでも続いていく日常といった、人間の営む生活感を強く感じました。

葉山 そうなんです。なので、普通に喋ることを心がけて、演技として喋っている感覚を持たないように演じようと思っています。

蒼井 私も葉山くんと同じで、おそらく喋るスピードに変化を加えながら、演じていこうと考えています。

不倫のお話ではありますが、しっかりと普遍的なテーマも漂っている気がします。

蒼井 そうだと思います。やはり“人と人”のドラマを描いているからですね。

葉山 僕は“人と人”それから“自分”の存在も感じました。

蒼井 それは葉山奨之ってこと?

葉山 そう。キラとトムとエドワードを愛するだけではなくて、演じる自分も愛する必要がある気がして。海外の舞台はそういう傾向にあると思うんです。実際の自分も好きでありつつ、あなたのことも愛しているという作品だと思います。

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