Interview

ヒトリエ TVアニメ「BORUTO-ボルト-」のエンディングテーマの新作でさらに進化した音世界を4人に訊く。

ヒトリエ TVアニメ「BORUTO-ボルト-」のエンディングテーマの新作でさらに進化した音世界を4人に訊く。

2017年12月にリリースしたミニアルバム「ai/SOlate」でさらなる音楽的進化を果たし、その後の全国ツアー、初の海外公演(台湾、上海)でライブバンドとしてのポテンシャルを大きく向上させたヒトリエ。ニューシングル「ポラリス」(TVアニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」エンディングテーマ)からも、現在の彼らの充実ぶりが伝わってくる。来年3月からは全国ツアー「ヒトリエTOUR 2019“Coyote Howling”」がスタート。「もっとすごくなりたい、強くなりたい」(wowaka/V&G)と新たな決意を胸に、ヒトリエはネクストフェーズに向かっていくことになりそうだ。

取材・文 / 森朋之

天啓じゃないけど、ここで主題歌を担当できることに運命じみたものを感じたんですよね(wowaka)

まずは2018年10月に開催された中国ツアー「HITORI-ESCAPE in CHINA “RED HOT POT TOUR”」のことから。初の海外ワンマンツアー、どうでした?

wowaka(V/G) すごく手応えがあったし、自分の人生にとっても大きな経験をさせてもらったと思います。今年の初めにミニアルバム『ai/SOlate』のツアーの追加公演として台湾、上海でライブをやって。それが初めての海外公演だったんですが、母国語が違う人たちに向けてライブをやる、歌を歌って、どういう感じで受け取ってもらえるか想像つかなかったんです。期待半分、不安半分だったんですが、実際にやってみると、日本と何も変わらない受け取り方をしてもらえてることがわかって。北海道と鹿児島で反応が違うように、台湾、上海でも(観客の)アウトプットのやり方は少しずつ違っていたけど、ちゃんと伝わっている感じがすごくあった。言葉が違う場所でこんなことが起きるなんてすげえなって、感動しました。

シノダ(G) うん。伝わってる感じはめちゃくちゃあったし、「俺たち、外タレかな?」っていう(笑)。

イガラシ(Ba) あの人(シノダ)、サングラス買ってましたから。

シノダ その話はいいよ(笑)。俺たちがオアシスのライブで「Wonderwall」を合唱するように、自分たちの曲を日本語で歌ってくれて。

ゆーまお(Dr) サビだけじゃなくて、全部歌ってくれるんですよ。

wowaka “どの曲も、オールウェイズ、全員”が大合唱ですね。

シノダ MCも日本語で通じるし、不思議な感覚でした。またやりたいですね、ホントに。気持ちとしては、いますぐにでも行きたいくらいなので。

そして11月28日にニューシングル「ポラリス」がリリースされます。ライブ感もすごくあるし、いまのヒトリエのモードが生々しく反映された曲だと思いますが、どんなテーマで制作された楽曲なんですか?

wowaka どこから話せばいいのかな…。まず、去年の中頃に「アンノウン・マザーグース」(wowaka名義の約6年ぶりのボーカロイド楽曲。10月にヒトリエver.を配信)を出して、それにつながる形で「ai/SOlate」をリリースして。そのときに「これが俺にとっての愛なのでは?」という感覚に初めてなれたんですよね。「作品の制作を通して達したこの境地に、肉体がどう反応するか?」という意識でツアーに臨んだんですが、ライブを重ねるごとに感覚が研ぎ澄まされて、福岡公演のときに「お客さんに投げかけるって、こういうことかも」と頭からつま先までわかった瞬間があったんです。それはあくまでも個人的な体験だったんですが、そのことをきっかけにして、ライブがさらに良くなった感覚があって。そのままの状態で台湾、上海でライブをやって、そこでもいろんなものを感じたんですが、ツアーが終わったときに「“BORUTO”の主題歌を作りませんか?」というお話をいただいたんです。

すごいタイミングですね。

wowaka そうなんですよ。「NARUTO-ナルト-」「BORUTO-ボルト-」は、子供の頃から中高生の頃まで、ずっと当たり前のように存在していた作品で。みんなが原作を読んでいたし、アニメも観ていて、その規模感がすごかったんですよね。あとはやっぱりアニメの主題歌。アジカン、オレンジ・レンジなどが主題歌を担当していて、そのオルタナティブな楽曲が強烈な印象として残っていて。「“NARUTO”の主題歌はカッコいいロックバンドがやっている」っていう。

シノダ うん。

wowaka 今回のお話をもらって、原作をすべて読んだですが、本当にすげえ作品なんですよ。中高生時代に感じていたことを紐解いていく感覚もあったし、それがいまのバンドの状況にも重なって。天啓じゃないけど、ここで主題歌を担当できることに運命じみたものを感じたんですよね。

「ai/SOlate」のツアーの途中から自分の音の出し方をさらに突き詰めていたこともあって、その音をしっかり乗せたいと思って(イガラシ)

ティーネイジャーのときの記憶、現在のヒトリエの状態がリアルに結びついたというか。

wowaka そうですね。当時は「音楽を作って生きていく」なんて想像の欠片にもなかったんですけど、生活のなかで音楽に触れて、そのなかの何かに感動しながら生きていて。その後バンドを組んで、このタイミングで主題歌の話をもらって…。「俺には何ができるだろうか?」と考えて、向き合いながら作ったのが「ポラリス」なんですよね。当時の自分に聴かせたいという気持ちもありましたね、制作中は。

イガラシ wowakaからデモが送られてきたときは、純粋にいい曲だなと思いました。突き抜けていくような感じもあったし、wowakaのメッセージをまっすぐ届けたいなと。個人的なことで言えば、「ai/SOlate」のツアーの途中から自分の音の出し方をさらに突き詰めていたこともあって、その音をしっかり乗せたいと思って。

wowakaさんと同じように、ライブの質が変わってきた感覚があった?

イガラシ うん、それはありました。wowakaがその感覚を得た瞬間がいつなのかはわからないけど、「最近のリーダーのパフォーマンスはいいと思う」と伝えたんですよ。

wowaka そうそう、言ってくれたんですよね。

イガラシ だからwowakaのパフォーマンスがもっと効果的に伝わるように演奏も少し変えたくて。まあ、それは伝わらなくてもいいんですけどね、お客さんには。

wowaka 勝手に感じ取るものだからね。

シノダさんは「ポラリス」の制作にどんなスタンスで臨んでましたか?

シノダ 「この曲にはこう挑んだ」みたいなことはなくて、基本的にはwowakaが提示するイメージに近づけることだけを考えているんです。そのなかに自分のエゴを出していい曲、出すべきではない曲があるんですけど、「ポラリス」は完全に後者で。苦労したことといえば、サビのアルペジオを煌びやかな音にするために、めちゃくちゃ時間がかかったことくらいかな。

ゆーまお 僕も楽曲から受けた印象を伝えることに徹していましたね。そのうえで「ここはフレーズを詰め込んでいいかな」というところは極端に派手にしたり。あと、「RIVER FOG,CHOCHOLATE BUTTERFLY」に関しては、打ち込みと生音のバランスもかなり悩みました。(wowakaと)ふたりでギリギリまで考えてましたね。

サウンドメイクにおいても新しいトライが多かった?

wowaka はい。音的な挑戦は毎回やってるし、同じことを続けるのは違うなと思ってるので。メンバー全員がそのときのベストを詰め込もうとしているし、サウンドにおいても「もっとやれることがある」と感じることが増えていて。海外の音楽を聴いていると、すごくドライな音だったり、耳に近いところで鳴っているような曲があったりして、「自分たちだったらどうするだろう?」と考えることも多いんですよ。

wowakaに「暗い音のシンバルがほしい」と言われて、ずっと使っていなかった、めっちゃ暗い音が出るシンバルを家から持ってきたり(ゆーまお)

なるほど。シングルの2曲目に収録されている「RIVER FOG,CHOCHOLATE BUTTERFLY」は、斬新なサウンドを求める姿勢がしっかり出ている曲ですね。

wowaka そうですね。この曲を作ったのは今年の6月か7月くらいなんですけど、その時期の俺の“こういう音を追求したい”という感じが出てるかも。ワンコーラスだけ作ってメンバーに投げたんですけど、それだけで成立させてもいいかなと思ってたんです。でも、バンドでアレンジしているうちに「もう少しフックがほしい」ということになって、ノイズのセクションが入って、最後は生楽器でアンサンブルして。おもしろい曲になりましたね。

ゆーまお ドラムもいろんなことを試してますね。wowakaに「暗い音のシンバルがほしい」と言われて、ずっと使っていなかった、めっちゃ暗い音が出るシンバルを家から持ってきたり。使い道がぜんぜんわからなかったから、この曲で使えてよかったです(笑)。

イガラシ デモにシンセベースが入っていたんですが、まったく同じフレーズを弾いて、両方使ってるんですよ。あと、最後のほうで弾いてるフレーズは稀に見る美メロなので、是非注目して聞いてください。

シノダ この曲、ギターはほとんど弾いてなくて。ライブでやるときはどうしようかと思って…。

ゆーまお ツアーのときみたいにパッド叩けばいいんじゃないの?

wowaka うん。「RIVER〜」みたいな音の突き詰め方をやろうと思ったきっかけも、「アンノウン・マザーグース」から「ai/SOlate」の流れ、その後のツアーだったので。シノダにパッドを叩いてもらったのも、そのときのツアーが初めてだったんですよ。

そして3曲目にはwowakaさんのボカロ曲「日常と地球の額縁」のヒトリエverを収録。wowaka名義の楽曲がヒトリエのCDに入るのは初めてですが、どうしてこの曲を収録することになったんですか?

wowaka 「日常と地球の額縁」は2011年くらいに書いた曲なんですが、ボーカロイド曲の全国流通盤(アルバム「アンハッピーリフレイン」)をリリースすることになって、制作の最終段階の時期だったんですよね。新曲を3曲入れることになっていて、その3曲目に作った曲なので。最後の最後に絞り出すようにして制作して、心身ともに疲労困憊で。その体験もあって、リリースした後は曲とまともに向き合えなかったんです。その直後にヒトリエを結成するんですが、シノダは当時から「『日常と地球の額縁』をバンドでやりたい」と言っていて。でも、俺には曲を作ったときの良くない思い出があるから、“それはちょっと…”という感じで。

シノダ 自分としては「wowakaとバンドを組んだら、まずこの曲をやりたい」くらいの気持ちだったんですけど、出鼻をくじかれました(笑)。

wowaka 「それだけはイヤだな」みたいな感じでしたからね(笑)。今回のシングルに収録したのも、去年から今年にかけての流れが関係しているんですよ。「アンノウン・マザーグース」を作って、「ai/SOlate」を出して。ツアーのリハーサルのときに「もう1曲、ボカロ曲をセトリに入れようか」という話になって、「日常と地球の額縁」をやってみようと。なぜかそのときは拒否反応を感じなかったし、セッションしてみると「いける!」という手応えがあったんです。

イガラシ うん。バンドでやることにまったく違和感がなかったというか。

シノダ お客さんからの反響もすごくあったしね。

wowaka ツアーで演奏する中でバンドの曲として仕上がって。これもシノダの提案なんですけど、この曲をシングルに入れようという話が出たときも「めっちゃいい! 今しかない!」と思って。

メロディが叙情的で、エモいギターソロもあって、ギターのリフもカッコよくて、「こういう曲も書く人なんだな」って(シノダ)

シノダさんは「日常と地球の額縁」のどんなところに魅力を感じていたんですか?

シノダ wowakaの曲のなかでも突出してたんですよね。

wowaka そうなんだ?(笑)

シノダ 他のボーカロイド曲とはぜんぜん違うテイストだったんですよ。メロディが叙情的で、エモいギターソロもあって、ギターのリフもカッコよくて、「こういう曲も書く人なんだな」って。しかも、すごくバンドに合いそうな曲ですからね。ギターロックじゃないですか。

wowaka そうなんだよね。バンドを結成する直前に作った曲だから、“ヒトリエのプロトタイプ”みたいなところがあって。こうやって形にできて良かったです

7年経って、楽曲との距離が取れるようになったのでは?

wowaka そうかもしれないです。というか、最初から距離なんてなかったんですよ。ボカロ曲もバンドの曲もすべて自分の人生だし、それを聴いてくれて、付き合ってくれる人がいて。それが全てなんだって、やっと気付けたんだと思います。

「すごくなりたい」という気持ちなんですよね、いまは(wowaka

2019年もスリリングな1年になりそうですね。

wowaka 「すごくなりたい」という気持ちなんですよね、いまは。これは“BORUTO”に触発された部分もあるんですが、少年マンガの主人公って、最初は弱いことが多いじゃないですか。弱くてダサい主人公が、いろんな壁にぶつかりながら、大事なものを見つけて、自分を委ねられる仲間ができて、最強のラスボスに挑むっていう。そういう感覚を大事にしたいとこの年齢になって改めて思ったし、生きてきたなかで感じている苦しさ、つらさが報われる瞬間があると思えるようになったんですよね。それを言葉にすると「すごくなりたい」になるというか。フワフワしてるように聞こえるかもしれないけど、本当にそれが全てなんです。

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ライブ情報

2019年3月から全国15か所を巡るツアー
『ヒトリエTOUR 2019 “Coyote Howling”』開催決定!

*詳細はオフィシャルサイトで。

ヒトリエ

ニコニコ動画で一時代を築き上げたトップクリエイターの一人、wowakaを中心に結成されたロックバンド。2011年前身となるバンド“ひとりアトリエ”を、wowaka(Vo.)、イガラシ(Ba.)、ゆーまお(Dr.)で結成。2012年にシノダ(Gt.Cho.)が加入し、4人で“ヒトリエ”として本格活動を開始。4人が繰り出す爆発的なバンドアンサンブルは、独創的なメロディーと言葉でリスナーを1フレーズ目から非日常へと連れていく。みんなではなく、あなたへの絶対的な音楽を鳴らすロックバンド、ヒトリエ。

オフィシャルサイト
http://www.hitorie.jp