冒険Bリーグ  vol. 5

Column

覚醒した仕事人。栃木の遠藤祐亮こそがBリーグで最もホットなプレイヤーだ!

覚醒した仕事人。栃木の遠藤祐亮こそがBリーグで最もホットなプレイヤーだ!

『冒険Bリーグ』第五回の主人公は、B1を首位快走中の栃木ブレックスを支える遠藤祐亮だ。ハードでタフな守備を持ち味としていた彼だが、今季は積極性を増して新たな「武器」も得て、ホットな活躍を見せている。

何も知らずにこの男を観察すると、バスケットボールでなくラグビーや格闘技の選手に見えるだろう。185センチ・88キロで筋肉質な肉体を持ち、実際にフィジカルなプレーを苦にしないタイプだ。29歳の彼はエリートとは縁遠い叩き上げの経歴を持ち、栃木へ加入した当時は育成契約だった。「玄人好みの仕事人」のイメージで通ってきた選手だ。

栃木は11月24日の川崎ブレイブサンダース戦を終えて17勝2敗。B1全体の最高勝率で、日本代表戦による中断期間を迎えている。東・中・西に分かれた3地区の中でも、アルバルク東京や千葉ジェッツがいる「東」は最激戦区。開幕前の予想を振り返ればA東京や千葉、川崎ブレイブサンダース、琉球ゴールデンキングスが「四強候補」の定番で、栃木を挙げる人はおそらく少なかった。しかし今季の栃木は2016-17シーズンのB1制覇時を思い出させる強さを発揮している。

ただし栃木が万事順調だったということではない。まずシューター喜多川修平が、開幕前の8月に右ヒザの重傷を負った。精神的支柱、司令塔の田臥勇太は腰痛の影響で10月21日のレバンガ北海道戦からプレーしていない。そんな穴を感じさせない結果を出している一因が、遠藤が見せている攻撃面の覚醒だ。

栃木の新エースはこう述べる。
「自分はアシストとかに回ることが多かったけれど、今年はスコアラーの修さん(喜多川)がいない分、自分が取らなければいけない」

栃木は23日、24日の連戦でも、強敵・川崎に連勝。特に24日は遠藤が3ポイントシュート4本を含む22得点を決め、勝利の立役者になった。

【B1ハイライト】11/24 川崎 vs 栃木(18-19 B1第11節)

彼が記録している今季の3ポイントシュート成功率は47.1%。途中経過とはいえ、B1のトップ3に入る高率だ。1試合の平均得点も11.5点と高水準で、チーム内でもライアン・ロシター、ジェフ・ギブスに次ぐ数字を残している。

本人の説明によると「特別変えているところはないですけれど、より積極的に打つようには心掛けている」とのこと。どうやら「メンタル」「積極性」といった内面の変化が大きいようだ。

どんなにいい状態でも、試合になれば波があり、波に飲まれて自滅をする選手もいる。彼は24日の川崎戦についてもこう振り返る。

「前半は自分の感覚でシュートも打てていなかったし、どこかふわふわしている部分があった」

しかし後半は安齋竜三ヘッドコーチの「積極的に行け」指示もあり、遠藤は立て直しに成功した。彼は第3クォーターの立ち上がりに3ポイントシュートを3本連続で成功。前半は「4分の1(25%)」だった3ポイントのスタッツは、最終的に「8分の4(50%)」になった。

本人はヒーローとなった試合後も、こう課題を口にしていた。
「打たなければ入らないし、(失敗を)気にしていても仕方ない。積極的に行った結果入ったので、1クォーター目からそういうメンタルにできるようにしていきたい」

一方で安齋HCは遠藤の変化についてこう述べる。
「シュートは試合によっても変わるし、ディフェンスによっても変わる。今までの遠藤は打たなかったり、判断が悪くなったりしていたけれど、今はウチのエースという自覚も持っている。それを打ち続けてくれて、流れを持ってきてくれた。メンタル面の成長だと思います」

彼にとって3ポイントシュートに次ぐ新たな武器となりつつあるのがフローターシュート。ブロックの難しいやや高い軌道で、片手でふわっと柔らかく投げ入れるシュートだ。栃木のライアン・ロシター、千葉の富樫勇樹らが「必殺技」にしているプレーだが、遠藤もこれを取り入れ始めている。24日も第4クォーター残り1分13秒の勝負どころでも、フローターを決めた。そして何故かベンチに向かって微笑みかけていた。

記者から問われた遠藤はこう明かす。
「いつもフローターが入ると、アシスタントコーチとアイコンタクトをしてニヤニヤしています。稲垣(敦)さんにフローターを見てもらっていて、幅が広がってきた。今まで苦手意識があったけれど、今年はより余裕を持ってできるようになった」

得点力という新たな強みを得た遠藤だが、その真価はやはりディフェンスだ。栃木戦の川崎は日本国籍のニック・ファジーカスとバーノン・マクリン、シェーン・エドワーズを「トリオ」として勝負どころで起用していた。今季の遠藤は主に3番と呼ばれるスモールフォワードのポジションで起用されており、24日の終盤はエドワーズとマッチアップしていた。

説明するまでもないが、どのチームも外国籍選手は攻撃力が高い。エドワーズは身長が201センチと遠藤を16センチ上回り、インサイドに切れ込む高速ドライブも強烈だ。彼はドライブを警戒して程よい間合いを取って対応し、味方の助けも得て脅威を最小限にとどめた。24日の第4クォーターにエドワーズが記録したシュートの成功率は28.6%(7分の2)で、それは粘り強い対応でしっかりタフショットを打たせたからだ。

遠藤はこう振り返る。
「ライアン(ロシター)やジェフ(ギブス)がいる方に追い込んでいく狙いでした。手も長い選手なので、自分では到底届かない。でもよりタフなショットを打たせる方向付けを意識してやりました。去年は外国人選手に付くことが少なかったけれど、自分は楽しみだし、自分がやらなければという気持ちもある。あの時間はすごく楽しかった」

玄人好みの守備力はそのままに、得点力を増して栃木のエースへと脱皮しつつある。遠藤こそが今のB1で一番ホットなクラブの中で、一番ホットなプレイヤーだ。

取材・文 / 大島和人 写真提供 / B.LEAGUE

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著者プロフィール:大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。大学在学中にテレビ局の海外スポーツのリサーチャーとして報道の現場に足を踏み入れ、アメリカの四大スポーツに接していた。損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年から「球技ライター」として取材活動を開始。バスケの取材は2014年からと新参だが、試合はもちろんリーグの運営、クラブ経営といったディープな取材から、ファン目線のライトなネタまで、幅広い取材活動を行っている。

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