『機動戦士ガンダムNT』公開記念特集  vol. 4

Interview

『機動戦士ガンダムNT』が示す“ニュータイプ神話の行き着く先”とは何か? ガンダム制作の継承者たちが語った苦悩と希望

『機動戦士ガンダムNT』が示す“ニュータイプ神話の行き着く先”とは何か? ガンダム制作の継承者たちが語った苦悩と希望

吉沢監督、小形プロデューサーが注目する“新たな才能”たち

『機動戦士ガンダムNT』に参加している若いクリエイターについて、もう少し詳しく教えてください。お二人が具体的に可能性を感じられている方をご紹介いただけますか?

吉沢 原画で参加していただいているアニメーターの工藤友靖さんです。『ガンダム Gのレコンギスタ』『機動戦士ガンダム サンダーボルト』と、ガンダム畑でずっとやってきた方で、まだ20代なんですが、ものすごく良いアニメーションを作ってくれました。たとえば、ナラティブガンダムのラストカットを彼にお願いしているのですが、その動きが非常に素晴らしいので、ぜひ注意して観ていただきたいです。まだ若いのにこれだけの絵を描けるというのは将来有望ですね。

小形 僕も工藤君ですね。ナラティブガンダムのラストシーンもそうなのですが、冒頭の過去の「手術シーン」とかも個人的に気に入っています。以前から注目してはいましたが、ここに来て、素人目線でも画力が1段階、2段階、上がった感があります。

声優さんではどの方に注目されていますか?

吉沢 声優さんでは、ミシェル役の村中知さんと、リタ役の松浦愛弓さんですね。サンプルボイスを聞いた瞬間に、あ、この人たちしかいないと感じるくらいバチッとハマっています。絵を見ながら聞かせていただいたんですが、「あ、このキャラが喋っている!」と思うくらいの自然さで。

小形 僕はリタ役の松浦さんと、ゾルタン役の梅原裕一郎さんですね。リタ役の松浦さんは、子役をやっておられた方で、声優さんとは違うアプローチの演技をされる方なんです。本作はリタの声が非常に重要なのですが、その透明感、純粋性をとても上手に表現してくださいました。逆に松浦さんでなければ、これは表現できなかったと思ってしまうほどですね。

吉沢 梅原さんに演じていただいたゾルタンは面白いキャラクターですよね。『機動戦士Zガンダム』のロザミアを彷彿させるというか。無邪気に仲間を殺しちゃうとか、とにかくヤバい人なんです。ガンダムシリーズは、単純に善悪を測れないことが特徴の1つでもあるのですが、ゾルタンに関しては徹底的な悪役として描いています。

『機動戦士ガンダムNT』絵コンテ

小形 あとはやはり音楽ですね。『機動戦士ガンダムUC』に引き続き、澤野弘之さんにお願いしているのですが、冒頭からクライマックスまで、サウンド面でもいろいろな仕掛けを盛りこんでいるので、その辺りも楽しんでいただければうれしいです。

『機動戦士ガンダムNT』ではオカルト色が前面に押し出される?

本作はキャッチコピーが「ニュータイプ神話の行き着く先」となっています。実は、これまでの宇宙世紀ガンダム作品って、富野監督作品以外では、ニュータイプについて描くことを避けているようなところがありましたよね? 『機動戦士ガンダムUC』でそこに一歩踏み込み、『機動戦士ガンダムNT』では「行き着く先」が描かれるという……。この方針を打ち出したのはどなたなのでしょうか?

小形 福井(晴敏)さんですね。宇宙世紀のガンダムをやる際は、どうしても富野さんがこれまで築き上げてきた世界観をどう解釈していくかが課題になっていくのですが、福井さんは『機動戦士ガンダムUC』の後半あたりから、福井さんなりの解釈で「ニュータイプ」を描いていこうとしていました。『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編』や『機動戦士Zガンダム』の終盤、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のラストシーンなどで描こうとしていたものがいったい何なのか、真正面から向き合っていたのです。その福井さんなりの解釈の一つの結論が『機動戦士ガンダムNT』で描かれています。

それを受けて、監督はニュータイプをどのように映像化されていますか?

吉沢 ネタバレになるので詳しくはお話しできないのですが、冒頭の、(ユニコーンガンダム3号機)フェネクスがあたかも鳥のように飛翔するシーンなどは、そうした意図を込めて演出しています。「ガンダム」シリーズにはちょっとオカルトっぽいところがあると思いませんか? たとえば『機動戦士ガンダム』のア・バオア・クー脱出時に、アムロがホワイトベースの仲間たちにテレパシー(?)で話しかけたり、死んだ人間と会話したり。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のラストで、νガンダムが謎の力でアクシズを押し返しちゃうところなんかもそうですよね。今回、それを象徴しているのがフェネクスとリタの存在です。小説『不死鳥狩り』における彼女たちの表現も、かなり印象的でした。

アニメ版フェネクスで追加された尾の動きが、それをより効果的なものにしていますよね。

小形 フェネクスの尾は、メカニカルデザインのカトキハジメさんからの提案です。『機動戦士ガンダムNT』を作るにあたり、小説『不死鳥狩り』のときのものからデザインをリニューアルしてほしいと依頼したところ、そう言えば、鳳凰と言えば尾だけど、それがなかったよねと、新たにこれが追加されました。

吉沢 『機動戦士ガンダムNT』は、リタを、フェネクスをひたすら追いかけていくというお話です。物語の冒頭でヨナとミシェルがリタを追いかけるシーンがあり、そこではリタの髪がフワフワと揺れていますが、それと同じ効果をフェネクスの尾でも出せたのは面白かったなと思っています。そこは意識した画作りになっています。

……ちなみにそうしたニュータイプの描き方について、富野監督にはオーケーをもらっているんでしょうか?

吉沢 いや……?(笑)

小形 これはあくまで、福井さんが解釈した「ニュータイプ」であって、本作をもって、ニュータイプを完全に定義してしまおうということではありません。福井さんが解釈し、吉沢監督が映像化するとこういう作品になりますよ、ということです。もちろん、富野監督が『機動戦士ガンダム』から『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』までに描いてきた映像がモチーフとなってはいますが、あくまで一つの解釈として受け取っていただければ。

『閃光のハサウェイ』アニメ化も決定。これからもガンダムワールドは拡大し続ける

それでは最後に、エンタメステーション読者に向けてメッセージをお願いします。

吉沢 『機動戦士ガンダムNT』は、オカルト色をわりと前面に押し出した、一風変わった「ガンダム」に仕上がっています。モビルスーツがモビルスーツらしからぬ振る舞いをするだとか、ヨナ、ミシェル、リタの3人がイメージ映像の世界に飛んで語り合うとか……。先ほどお話しした、徹底的な悪役としてのゾルタンという存在も含め、「そういえば今まで無かったな」と感じてもらえる表現に挑戦できたのではないかと思っています。

小形 確かにこの作品は、今までのガンダムとは手触りの異なる作品に仕上がっていますね。それゆえに、ガンダムを知らない人の方が先入観なしに楽しめるのではないかなと感じています。その上で、福井さんの作品と言うことで、宇宙世紀というものをきちんと掴んだ作品にもなっていますから、この作品を見ることで「ガンダム」って何なのかが分かっていただけるはず。個人的には、これまで一度もガンダムに触れたことのない人が、この作品を観てどう感じられたのかを聞いてみたいですね。

吉沢 それは気になりますね。

小形 もちろん、熱烈なガンダムファンにも楽しんでいただけるよう、そこかしこに仕掛けを盛りこんでいます。そして先日発表された『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』映像化など、今後も「ガンダム」は走り続けます。これからの展開にもご期待ください。

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