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【ムービーレビュー】同居を同棲に変える「食」 『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』

【ムービーレビュー】同居を同棲に変える「食」 『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』

【ムービーレビュー】同居を同棲に変える「食」 『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』

同居を同棲に変える「食」

食と性はつながっている。
原作小説で主人公さやかが、樹に同居生活を持ちかける場面で「人の胃袋までがっちり掴まえてさ!」と口説いている(?)ように、食欲と性欲は分かちがたく結びついている。
行き倒れの男を拾った、ひとり暮らしの女子。“同居もの”作品のセオリーとして、すぐに愛し合ってはいけない。それはあまりに勿体ない。同居を許す時点ですでに、彼女の中で答えは出ているのだから。
その答え、すなわち同居から同棲へと至るまでの過程を、いわば“じらし”を、どのように描いてゆくか。“じらし”をどう楽しむか。そこに“同居もの”の肝がある。男と女が同じ空間で生活をしながら(それも、明らかに惹かれ合っているのに)性的関係には陥らない。現実的に考えてみたら、どうにも説得力を持ちにくい設定に、いかにして観客を納得させるか……。

?2016「植物図鑑」製作委員会

?2016「植物図鑑」製作委員会

その点で本作は、食を性のメタファーとして使うことで、匂やかな官能性を発揮している。
植物男子である樹は、さやかを“狩り”に連れ出して、川の土手に生えているフキやノビル、フキノトウを材料にヘルシーでおいしい料理を作る。料理が苦手でコンビニ飯を常食していたさやかは、冒頭に記したとおり胃袋も、そして心までも、がっちりと掴まえられてしまう。
感覚から始まった恋は強烈だ。五感に訴えかけてくるだけに、身体に直接響く。
二人がついに結ばれた翌朝、さやかが樹の料理を褒めることで、彼への想いを間接的に伝える台詞は、なんともセクシャルだ。
「(樹の料理を食べ続けているうちに)味覚まで変わっちゃった」
大きな瞳が特徴的な高畑充希は、さやかの感情のゆらぎを目で表現して、その切実な表情が、ファンタジーすれすれの物語設定にリアリティを与えている。対する樹役の岩田剛典は、中性的でありながら色気があり、ミステリアスと生活感を兼ね備えたキャラクターを鮮やかに体現。
二人で一緒に植物を愛で、料理をして、食べる。視覚や触覚、味覚・嗅覚をフルに使ってふれあうことで、互いに変わり、変えられていく。題名も演者も映像も、爽やかなだけいっそう、そこに秘められているエロティシズムに……どきどきしてくる。

文 / 皆川ちか

映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』

『図書館戦争』など数多くの著作が映画化されるベストセラー作家・有川浩による恋愛小説が映画化。「EXILE」「三代目J Soul Brothers」のメンバーとして活躍する岩田剛典と、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』や映画『バンクーバーの朝日』の実力派若手女優・高畑充希が主演をつとめた。さえないOLのさやか(高畑充希)は、ある日、自宅マンションの前で倒れていた青年・樹(岩田剛典)と出会う。トントン拍子で、、半年間という期限付きで、樹はさやかの家で暮らすことになる。料理上手で野草に詳しい樹は、それまで知らなかった世界を教えてくれたりと、友達以上恋人未満な共同生活が始まる。いつも優しく支えてくれる樹に次第に惹かれていくさやかだったが……。

映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』
キャスト
岩田剛典(日下部樹)
高畑充希(河野さやか)
阿部丈二(竹沢陽平)
今井華(野上ユリエ)
谷澤恵里(香玉井千秋)

スタッフ
監督:三木康一郎
原作:有川浩
脚本:渡辺千穂

配給:松竹
(2016年、112分)
公式サイト:http://shokubutsu.jp/

?2016「植物図鑑」製作委員会