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今期のダークホース…どころじゃない面白さ! 『ゾンビランドサガ』笑いと感動で忙しい新感覚アニメの魅力

今期のダークホース…どころじゃない面白さ! 『ゾンビランドサガ』笑いと感動で忙しい新感覚アニメの魅力

『この世界の片隅に』『ユーリ!!! on ICE』『BANANA FISH』といった話題作を手がけるMAPPAと、エイベックス・ピクチャーズ、Cygamesがタッグを組んだ“新感覚ゾンビアイドル系アニメ”『ゾンビランドサガ』。第1話の放送が終わると、その評判はすぐに広まり、その熱は作品の熱と同じように高くなっていっているように思う。物語もクライマックスに向かいつつある今、あらためてこの作品を振り返っていきたい。

文 / 塚越淳一


完全にダークホースだった。仕事で関わっていないアニメに関しては極力情報を入れずに、やっているものを片っ端から見ていくタイプではあるのだが、正直「またゾンビものをやるのか」くらいだった。ゾンビアニメと言えば最近のものでは『がっこうぐらし!』や『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』、『甲鉄城のカバネリ』あたりを楽しく観ていたので、今回もそういうアニメなのかなと思っていたら、とんだコメディー・ゾンビ・アイドルアニメだったという。混ぜるな危険というか、混ぜられるんだそれ……といった感じだ。

第1話「グッドモーニング SAGA」の衝撃

1話の冒頭、アイドルを目指し、オーディションの書類を手にした訛りがかわいい主人公・源さくら(CV.本渡 楓)が、自分の家を飛び出した瞬間、豪快にトラックに轢かれる……キラキラ輝いて夢を目指していた時間、約1分。しかも轢かれる瞬間がいわゆる「繰り返しショット」で描かれ、そこからスローモーションになり、メタルのOPテーマが流れるのだ。何だこれ?……である。

今はこれだけアニメが多いと、全作品を観続けることはほぼ不可能なので、自分に合った作品を探すために、とりあえず一話を見て考える……なんてことをしているアニメファンは多いと思う。なので最近は、1話がとにかく引きのあるように作られている作品が多い。少し前は3話まででひとつ山を作るような傾向にあったが、今はそこまで待てないのだ。

だがこの作品は開始1分で衝撃的な展開が訪れる(笑)。いや、ここは笑うというより唖然とした、と言ったほうが正しいだろう。冷静に考えたら、あんなスピードで住宅街を走る軽トラがあるかよ!とツッコミも入れたくなるが、視聴者にそんな事を考える暇すら与えないというのが『ゾンビランドサガ』なのだ。見ている間は考えさせない。そのテンポ感は今っぽい。

とある館で目を覚ました源さくらが、数人のゾンビたちに襲われ、街へ逃げ出すと、そこは佐賀県だった。筆者はここで「あ、サガって佐賀の話なのね」と理解したわけだが(※物語とも「性」ともかかっていると思われる)、街で出会った警察官A(CV.吉野裕行)に助けを求めたところ、さくらの顔を見た警察官Aは突然恐怖し、いきなり発砲(笑)。さくらは鏡に写った自分がゾンビだということに気づいて絶望するが、突然現れた巽 幸太郎(CV.宮野真守)に回収され、館に戻される。そこでさくらは巽に「十年前、お前は死んだ。だがゾンビィになって復活した。そしてこれからお前は、ゾンビィ1号として仲間たちと共に佐賀を救うんだ!」と告げられる――。

盛りだくさんすぎて理解が追いつかないかと思いきや、とりあえずゾンビが佐賀を救う話なんだねと理解できてしまう話のシンプルさ。これも「何をしたいのかわからない」と言って、すぐに見るのをやめてしまう昨今の空気をよく考えていると言える。しかも、その斜め上を行っているという感じがすごい。

そしてBパートからは、宮野真守劇場の始まりである。自身のライブで流すコント映像がとにかく面白いことでも知られている彼だが、アニメでその笑いのセンスをフル導入した作品というのは、それほど多くはない。だが、今回は振り切っている。彼の演技に絵を合わせたんじゃないかと思うほどのキレッキレのキレ芸だ。Aパートで飛ばしたから、後半は落ち着くのかと思いきや、ネタを惜しみなくつぎ込む怒涛の展開。

佐賀を救うために巽が復活させたという、伝説の“特攻隊長”・“昭和のアイドル”・“花魁”・“天才子役”・“平成のアイドル”。そして“伝説の山田たえ”に、(アイドル風の)特殊メイクを施して飛び入りでライブハウスでライブをする。この時点で意識が目覚めているゾンビはさくらだけなのだが、みんなゾンビ状態でデスメタル(カラオケ音源)で叫び、ヘドバンをキメ、最後はさくらが客席ヘダイブする。そんな興奮状態になったライブを経て、館に戻った女ゾンビたちは、目を覚ましたとき、意識を取り戻していた(たえを除く)。

新たなジャンル=ゾンビアイドル

重要なので1話のあらすじが長くなってしまったが、そんな衝撃的な1話を受けての第2話「I♡HIPHOP SAGA」では、さらなる名シーンが待っていた。

おさらいすると、『ゾンビランドサガ』は、ゾンビ0号 伝説の…山田たえ(CV.???)、ゾンビ2号 伝説の特攻隊長!!二階堂サキ(CV.田野アサミ)、ゾンビ3号 伝説の平成のアイドル!! 水野愛(CV.種田梨沙)、ゾンビ4号 伝説の昭和のアイドル!!紺野純子(CV.河瀬茉希)、ゾンビ5号 伝説の花魁!!ゆうぎり(CV.衣川里佳)、ゾンビ6号 伝説の天才子役!! 星川リリィ(CV.田中美海)、そしてゾンビ1号 源 さくらがアイドルになって、「佐賀を一世風靡させんじゃい!」(巽)という話となる。

2話から放送されたオープニングテーマは、ゾンビたちが歌う「徒花ネクロマンシー」。さくらの口上から始まるやたらといい曲なのだが、戦隊モノのオマージュあり、昭和テイストありの、かなりハイセンスなオープニングだった。1話から歌の本気度は十分伝わってきていたが、OPやED、さらに劇伴に至るまで、本作の音楽の良さは特筆すべき点だろう。劇伴は少し前のアニメのテイストがあって良い。

意識が戻ったことで、やはり館を抜け出した水野愛と紺野純子。そしてそれについていったさくらが、真夜中に商店街でラッパーにラップでナンパされる。そしてまたもや警察官A(CV.吉野裕行)に発砲され、現実を思い知り館に逃げ戻った3人。今度は佐賀城のイベントでライブをするという話で、本作の面白さを確かなものにしたのがこの2話だったと言える。

タイトルの「I♡HIPHOP SAGA」は、さっきのラッパーナンパ師のことではもちろんなく、ライブでアイドル曲を歌うかと思いきや、いつの間にかさくらとサキが『フリースタイルダンジョン』ばりのラップバトルを始めるという謎展開。ここは演出含めて、緻密に計算された笑いだと思い知った。効果的な「繰り返しショット」やさくらがマイクを叩きつけるときのカメラの位置などが本当に面白い。そして、さくらのラップでは、この作品のテーマじゃないかというくらい、とても良いことを言っていたので、ぜひ確認してみてほしい。

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