Interview

岸 洋佑を徹底解剖!メジャーデビューを迎えた心境、『宇宙戦隊キュウレンジャー』以前のこと、そしてこれから

岸 洋佑を徹底解剖!メジャーデビューを迎えた心境、『宇宙戦隊キュウレンジャー』以前のこと、そしてこれから

注目のアーティスト・岸 洋佑が、12月5日にミニアルバム『走りたいわけじゃない』でメジャーデビューする。『宇宙戦隊キュウレンジャー』で幅広い層から人気を集め、2018年には自主企画・制作でライヴハウスツアーを成功させている。かねてよりシンガーソングライターとして活動してきた彼だが、その道程は平坦なものではなかった。
今、メジャーデビューするということについて。メジャー第1弾となるミニアルバムへ込めた想い。音楽に救われた過去とサラリーマン時代に学んだもの、決意を持って戻った音楽の道……そして目指す“岸 洋佑”像を聞いた。

取材・文 / 片桐ユウ 撮影 / 中原幸

メジャーデビューは目標ではない。僕はその先が目標

7月にメジャーデビューを発表。反響はいかがでしたか?

周りの方々が僕以上にとても喜んでくれました。僕、前の事務所であるLDHに入っていたときの同期が三代目J Soul BrothersやGENERATIONSだったりしまして。ちょうど昨日も「三代目がデビュー8周年」という情報が流れてきていたんですよ。それを思うと、僕はみんなより8年間くらい遅れているわけです。だから昔を知っている方々からは「岸、今デビューするんだ」「まだやっていたんだ」という反応も多かったです(笑)。

ご本人的にも“ようやく”といった感覚が?

もちろん嬉しかったのですが、僕はインディーズで活動していて、インディーズの可能性っていうものを見出している途中だったりもしたので……。だから、メジャーデビューするからにはメジャーでやる意味をちゃんと見出さなければいけないという責任を感じるほうが大きかったかもしれないです。音楽業界っていうもの自体が昔みたいに「メジャーになれば売れる」という世界ではなくなってきている現状がありますし、今やネットを通じて誰でも世の中に音楽を出せる時代でもあるので。メジャーに行かなくても音楽を届けられるなか、あえてメジャーに挑戦するということなので、意味をしっかり持ってやらないとなと思いました。

ではメジャーデビューのお話があったときには、正直迷いもあったのでしょうか?

大変ありがたいチャンスをいただいた、という思いはありました。ただ、どんどんシビアになってきているので。だからこそ、どういうふうにやれば結果を出すことができるのか、どういうやり方をしたらいいのかな、というほうにすぐシフトチェンジした感じですね。インディーズは自分のお金だけで回せるので自分の責任のもとでよいのですが、メジャーは周りの人の人生を巻き込んでやるものですし。

その中で岸さんが“メジャーデビュー”にメリットを感じた点は?

裾野が広がる、という考え方が大きくありました。今、ありがたいことに俳優をやらせていただいたり、『スッキリ』でレポーターをやらせていただいていたりするので、そういったテレビ番組などと関連するときはインディーズよりメジャーのほうがいいなと思ったんです。日本コロムビアさんでデビューさせていただくのですが、『宇宙戦隊キュウレンジャー』でもコロムビアさんでCDを出させていただいていますし、アーティスト活動と俳優活動とレポーターの活動、いろいろなものが揃ったときにメジャーの意味があるだろうと。だからこそ結果が必要なので、今から頑張るしかないんですけど(笑)。

“メジャーデビュー”に浮かれている時間はない、と。

ネガティブな話ではないんですけど、僕も芸能界に入って8年ぐらい経っているので「この人たち、すげーな」と思った人たちがどんどん辞めていく現場を目の当たりにしていて、メジャーデビューの厳しさを知ってしまっているんですよね。だからメジャーデビューがゴールではないですし、「ここからが、めちゃめちゃスタートだ」と思っています。周りの方々はメジャーデビューを目標にしていると思っているでしょうから「デビューできて良かったね」と声をかけてくださいますけど、僕はその先が目標。だから「おめでとう」と言葉を掛けられると「ありがとうございます」のあとに「頑張ります!」と絶対付けてしまいますね。

“25年間の集大成”という意味を持たせながら、今の自分を浮き彫りに

その気合いや決意が今回のデビューアルバムに込められているわけですね。ミニアルバムの制作に取りかかったのは、メジャーデビューが決まってからでしょうか?

はい。ただ、メジャーデビューが決まってからCD発売までの期間がかなり短かったんです。メジャーデビューを発表した日が、本当にデビューが決まったその当日だったんですよ。「言っていい? いいんだよね? 言っちゃうよ! メジャーデビューしまーす!」って(笑)。でもリリースの時期は決まっていたので、7月に発表してから11月までに作らなくてはいけなくなって。すべてゼロから音源制作をするとなると難しい状況だったのですが、絶対にないがしろにはしたくなかったんです。それで“25年間の集大成”という意味を持たせようと。新人ですけど前々から音楽をやってきているので今まで作った曲たちがある。だから、18歳の頃の歌を今の自分が歌ったらどうなるかとか、そういう集大成的なアルバムにできたら、と提案させてもらいました。ライヴではずっとやってきたけど音源化していない既存の曲を中心に……「僕への挑戦状」はインディーズアルバムに入れたことがありましたけど改めてアレンジして。この25年間を締め括るようなアルバムにさせていただきました。

プロデューサーは、一青窈さんの「もらい泣き」や「ハナミズキ」を書かれたマシコタツロウさん。

10代の頃、プロデュースしていただいていた方で、「もう一度プロデュースをしていただけないでしょうか」と頭を下げに行きました。紆余曲折あってメジャーデビューとなったので「一発目は、音楽の最初を教えてくれたあなたとやりたいです」と伝えたら、ふたつ返事で「やろうやろう」と言ってくださって……。すごくありがたかったですね。タツロウさんの曲も3曲入っています。彼の力で今回は作ることができたのではないかと思うほどで。彼が一番僕のことを知ってくださっているので、サウンド面やそういうものに関してはお任せしつつ、僕はどちらかというと全体を見るところにいようというスタンスでした。

先ほど、アルバムの大きなテーマが“25年間の集大成”だとうかがいましたが、そのほかこだわりとして持っていた部分はありますか?

飾りたくなかった、ということは大きいです。格好つけたくなかった。ジャケットの写真もスッピンです(笑)。海で濡れまくってそのまま撮っていただいていますし、初回限定盤のほうは「写ルンです」で撮った写真ですね。楽曲は18歳や20歳の頃に歌っていた曲たちを今の僕が歌ったらどうなるかというところなので、表現力などへの挑戦は意識していました。

アルバムの中で、一番昔からあった曲というと?

「いつかの君へ」ですね。19歳のときに初めてライヴハウスで歌った曲で、フロアにお客さんが4人ぐらいしかいなくて……全然歌えなかった記憶があります。でも今回のアルバムで、この曲だけ1テイクで録った音源をそのまま入れていたりして、そこも含めて思い出深い曲になりました。その次が「ちいさい月の下で」。20歳ぐらいの頃かな。神奈川県にある僕の最寄り駅のことを歌った曲です。「メッキのメダル」は、メジャーデビューしようと思ったときにマシコさんと一緒に作っていて頓挫した曲なんです。だから「今、メジャーデビューするんだったらコレを入れなきゃ!」っていう、リベンジの意味を込めて入れさせてもらいました。

岸さんの道程が伝わるアルバムになっているんですね。

そうですね。2曲目の「僕への挑戦状」は前の事務所を辞めた翌日に作った曲なので、時系列になっていたりもするんですよ。「メッキのメダル」では世の中への不満を歌っていて、だけど次の「僕への挑戦状」で「結局、自分は自分なんだから、誰のせいにもしないで自分で生きなきゃいけないんだよ」ということに気づけた。強く生きよう、という決意の曲です。

そして3曲目からは恋愛を歌った曲。

「海辺のコンパス」は一番新しい曲です。20代の恋愛を描いた曲を、大人になってきた自分が歌ってみようという。「いつかの君へ」はマシコさんが作詞・作曲をされた、昔からある曲なのですが、改めて歌ってみると歌詞がすごく意味のあるものに感じて。大人になった今だから歌える曲だなと思っています。「ちいさい月の下で」は学生の恋愛なんです。大黒摩季さんの「ら・ら・ら」じゃないですけど、みんなで歌えるような曲にしたくて。懐かしい思い出をみんなで歌おうよ!となったらいいなあと思って、最後の曲にしました。

さらに通常盤にはボーナストラックで「明日」が収録されています。

渋谷のduo MUSIC EXCHANGEでのライヴ音源を収録しています。「死ぬんじゃねえ!」と伝えたくて、綺麗事じゃなく、この曲で誰かが救われたらいいなという想いで作った曲です。これを機に、いろんな人に聴いてもらいたいなと思って入れさせてもらいました。

“唄いたい唄を唄い”“歩きたい道を歩ける”ようになった

岸さんからの様々なメッセージが込められているのですね。

今までの自分という意味合いと共に、これからのスタートという意味も入っています。「僕への挑戦状」はインディーズで出したアルバム『for you』にも入っているのですが、その当時は「俺の人生はこういうものにしてやる」、「唄いたい唄を唄って、歩きたい道を歩いてやる」みたいな、もう全然笑顔では歌えない曲だったんですよね。でもその後、人生を歩んでいくなかでいろんな仲間が集まって、今こうしてメジャーデビューできるようになって……。“唄いたい唄を唄える”ようになって、歩きたい道を歩けるようになったから、当時と意味がちょっと変わっているんです。「僕への挑戦状」であると同時に、僕から皆さんへの挑戦状でもあるというか。「こうなる人生もあるから、諦めないで」という想いが入るようにもなってきましたね。

今、ここまでこられたからこその変化が。

MVでも、僕はこの曲のサビの部分で笑っているんです。歌詞だけ見たら「この世は 理不尽な事だらけさ」って全然笑えるような内容ではないんですけど、「唄いたい唄を唄って 歩きたい道を歩く」というところは、今が本当にそうだから。それがMVでも伝わったらいいなと思います。つらい経験というにはおこがましいですけど、いろんな経験をしてきて良かったなっていうふうに今は思えます。まだまだ稚拙な人生ですけど、それでも自分なりに生きてきたかなという想いはあります。

完成作を聴いてみて、いかがですか?

俯瞰で“岸 洋佑”という人を見たときに「デビューでこれだけやってもらってありがたいよね」と思えるアルバムになりました。マスタリングし直したりもして、結構大変だったんですけど(笑)。そのぶん、作品として納得がいくものにできました。そして、これを聴いてライヴに来て欲しいなってすごく思っています。ライヴだとまた全然違うと思うので。ライヴだと熱い曲はもっと熱いですし、静かな曲はもっと静かで、生感があります。ミュージシャンの完結するところはライヴだと思っているので、そこも大事にしていきたいですし、ぜひ遊びに来てもらえたら嬉しいです。

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