ZARDデビュー25周年記念特集【THE POP STANDARD】  vol. 7

Report

そこに坂井泉水が不在でも、ライブにはZARDは明らかに存在した

そこに坂井泉水が不在でも、ライブにはZARDは明らかに存在した

数多のトリビュートライブ、これほど、愛に溢れたライブはなかったのではないだろうか?
故人をリスペクトと愛で包む音楽家たちのパフォーマンスは観たことがない。
ZARDの残したこと、楽曲、全てを堪能させてもらった3時間の全容をお届けする。

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 2016年2月10日にデビュー25周年を迎えたZARD。アニバーサリーイヤーを記念し、オールタイムベストアルバム『ZARD Forever Best~25th Anniversary~』、MUSIC VIDEO集『ZARD MUSIC VIDEO COLLECTION~25th ANNIVERSARY~』とリリースが続いたが、坂井泉水の歌声とバンドの生演奏がシンクロするスペシャルライブ“What a beautiful memory~25th Anniversary~”が実現。
これまでも4回開催されてきたが、ぜひ節目の年に開催してほしいというファンの声にこたえ、5年ぶりの開催となった。大阪・東京で3日間行われたが、ここでは最終日の5月27日(坂井泉水の命日にあたる)の東京公演、TOKYO DOME CITY HALLの模様をレポートしよう。

 ストリングスアレンジによる「負けないで」の厳かなオープニングSEとともに暗転すると、今回のバンドメンバーたちが1人ずつ登場。センターにあるボーカルの立ち位置には、2004年のツアーで坂井泉水が実際に使用していたマイク、ステージ上に置かれていたテーブルとチェアが並べられ、スポットライトが当たる。まるで本人が今にも現れそうな気配漂う演出だ。

 “ZARDのライブにようこそ。今日は最後まで楽しんでいってください”と、生前の坂井泉水の肉声が流れ、「揺れる想い」で幕を開けた。背後のスクリーンには曲に合わせて歌う姿やオフショットなど、彼女のさまざまな場面が映し出され、一気に時間が巻き戻される。「君に逢いたくなったら…」では室内でくつろぐ姿など、リラックスした表情が次々に映り、楽曲と共に映像に引き込まれていく。

 「Listen to me」の映像は今回が初公開。モータウン調のベースリフがダンサブルなノリを生み、曲調のせいもあってか、ライブ仕立ての映像の坂井泉水はかなり大きなアクションでステージ上を動く。MVでもライブでもほとんど動かないで歌う彼女にしてみれば、これはレアな映像だ。

 キラキラしたイントロに導かれて始まった「息もできない」は、メイクを抑えたスッピンに近い彼女のさりげない視線やしぐさに目を奪われる。映像自体はMVで何度も目にしているはずなのに、こうしてバンドの生演奏と共に体験すると、息遣いまでが聴こえてきそうだ。

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 続いては、これもライブ初公開となる「サヨナラ言えなくて」。しっとりした曲調に加え、白っぽいシャツに黒いレザーのショートパンツという衣装で歌う姿が落ち着いた印象を与える。対照的に「Top Secret」では、カラフルなボーダーのセーターに白いパンツという組み合わせが爽やかに映える。

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 水平線が窓の外に見える映像で始まる「ハイヒール脱ぎ捨てて」。ここでは演奏にサックスが加わり、エモーショナルなソロを聴かせ、いちだんとサウンドに厚みが生まれる。“後悔を脱ぎ捨てて、青い海が見たいわ”という歌詞から広がる過去の思い出と切ないストーリー。ライトに照らされた坂井泉水の横顔の美しさに息を飲む。

 さらに、「二人の夏」も初公開。ピアノだけの伴奏からじわじわとバンドサウンドが盛り上げ、ライブ仕立ての映像の中の坂井泉水が丁寧に歌いあげていく。

 ここからはゲストアーティストが参加。作曲家であり、「Get U’re Dream」「瞳閉じて」「かけがえのないもの」「夏を待つセイル(帆)のように」などの楽曲提供で知られる大野愛果が登場する。初めて楽曲提供した「少女の頃に戻ったみたいに」を、大野自身のピアノ演奏だけで披露。柔らかな光に包まれた坂井泉水のポートレイトが楽曲の世界に寄り添う。「かけがえのないもの」でも大野がコーラスを担当し、くっきりとしたアクセントを刻む。

 2人目のゲストとして、徳永暁人が登場。今回のバンドメンバーであるギター&コーラスの大田紳一郎とともにdoaのメンバーであり、「風が通り抜ける街へ」「瞳閉じて」「今日はゆっくり話そう」などの編曲を手掛けている。doaではボーカル&ベース担当だが、ここでは彼が作曲・編曲を担当した「永遠」に、12弦のアコースティックギターとコーラスで参加。砂漠をオープンカーで走るお馴染みの映像をバックに、スケールの大きなサウンドを奏でていく。

 徳永、大野が去り、5月18日にリリースされたばかりのアルバム『d-project with ZARD』から、「愛は暗闇の中で」(What a beautiful memory Ver.)をバンドメンバーで披露。ロック色が強まったアレンジに、映像の中の坂井泉水の黒い上下の出で立ちがマッチ。ライブ仕立ての映像は、カメラがかなりの至近距離まで迫るもので、挑むような表情が印象的だ。

 「遠い日のNostalgia」では、事前に配られたサイリウムを観客がいっせいに点灯。青い光が大きく揺れる感動的な光景に、映像の中で周囲を見渡す坂井泉水の顔がダブり、まるでステージ上に本人がいるような錯覚を覚える。

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 3人目のゲストは、PAMELAHのギタリストであり作曲・編曲担当の小澤正澄。「愛が見えない」の作曲でも知られる彼が同曲に参加し、ダイナミックなギタープレイで華やかに彩っていく。

 そして、小澤と入れ替わりに今度は4人目のゲスト、編曲家でありキーボード・プレイヤーの池田大介が登場。「心を開いて」「Today is another day」「運命のルーレット廻して」の編曲で知られる池田が、自身が編曲を手掛けた「My Baby Grand~ぬくもりが欲しくて~」に参加する。さらに、「運命のルーレット廻して」では、池田の大きな身振りを加えてのアグレッシブな演奏に会場が沸き、大きな手拍子が起こる。

 ここで、大野、徳永が再度登場して「心を開いて」に加わり、場内の熱気がさらに上昇していく。「Today is another day」では参加メンバーによる分厚いコーラスが、伸びやかな坂井泉水の歌声をサポート。モナコで撮影された映像の煌めくような高揚感とぴったりとシンクロしていく。

 「きっと忘れない」は、大野と徳永、そして大田、岡崎雪の息の合ったコーラスと坂井泉水の歌が揃って始まることで、楽曲のみずみずしさがさらに増す。映し出されているのはZARDのMVではお馴染みの日本青年館でのシューティングライブ映像だが、そこにこの日のライブの躍動感が重なり、熱を帯びたステージが目の前に出現しているかのように見えてくる。

 徳永と大田のアコースティックギター、そして鋭いホーンのイントロで始まった「君がいない」は、キレのいいサウンドが起伏のあるメロディをさらに際立たせていく。バンドマスター大賀好修の弾くスライドギターも強烈な個性でエンディングを締めくくった。

 その勢いを生かして始まったのは「マイ フレンド」。反復される力強いビート、間奏のサックスソロ、ギターソロが曲をさらに華やかなものにし、映像に映るロンドンの路上を赤&シルバーのパーカーを着て歩く坂井泉水が活き活きと迫ってくる。

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 そして、いよいよラストは「Don’t you see!」。ここでもコーラスの厚さが会場を圧倒し、観客の気持ちをますます高めていく。さらに、この曲に欠かせないNYのストリートで撮影された映像の数々が映し出され、様々な表情とともに遠い記憶を呼び戻す。サビでは会場のライトが観客をあおるように何度も点灯し、感動が頂点に達して終了した。

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興奮が冷めない観客の拍手にこたえ、アンコール1曲目の「Oh my love」がスタート。テレビ局のセットで撮影された映像とオフショットが混ざりながら、どの場面でも驚くほど自然体な表情を見せる坂井泉水。その存在感はやはり唯一無二だ。

 赤いライトに照らされて始まったのはバンドメンバーの紹介も兼ねた「こんなにそばに居るのに」。イントロ部分からメンバーそれぞれがソロパートを交えながら、盛り上げていく。坂井泉水の歌に切り替わると、その熱気が曲を高いテンションのまま届けてくれる。さらにエンディングでも激しいソロバトルが繰り広げられるなど、見どころ満載だ。

 曲が終わると、この日出演したゲストアーティスト全員が登場。数々のファン投票で1位に輝いた「あの微笑みを忘れないで」を、メンバーたちがコーラスを重ねて披露する。

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そして、ラストに用意されていたのは「負けないで」。誰の耳にもなじみのある、あのイントロが流れてきた瞬間にすでに総立ちだった会場はさらに沸き、最大級の手拍子が起こる。ここでも、場内をぐるっと見渡すような坂井泉水の視線が生のライブとリンクし、この場に本人がいるような気にさせられる。エンディングに差し掛かると、“今日はどうもありがとうございました”という肉声が、オープニング同様に流れ、ライブは幕を閉じた。
スクリーンには、右肘をついて手を顔に寄せた坂井泉水の、あの有名なポートレイトがアップで投影され、そこに観客から“ありがとう!”の声が響く。さらに、イーゼルに同じポートレイトがセットされ、メンバーと会場の全員で記念撮影。鳴りやまない拍手の中、名残惜しそうに去っていくメンバーと観客の気持ちもシンクロしたライブだった。

 見るものそれぞれが胸の中にある坂井泉水を思い浮かべ、彼女が残した作品の数々をもう一度追体験したこの日のライブ。ZARDが残した色あせることのない名曲たちと、その縁を受け継ぐアーティストたちとのコラボが生んだ奇跡のライブでもあった。

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