佐野元春 REVIEWS Original Album 1980-2013  vol. 1

Review

佐野元春 REVIEWS Original Album vol.1

佐野元春 REVIEWS Original Album vol.1
pct1

1st 「BACK TO THE STREET」
1980年4月21日発表

Epic Records Japan
① 夜のスウィンガー
② ビートでジャンプ
③ 情けない週末
④ PLEASE DON’T TELL ME A LIE
⑤ グッドタイムス&バッドタイムス
⑥ アンジェリーナ
⑦ さよならベイブ
⑧ バッドガール
⑨ BACK TO THE STREET
⑩ DO WHAT YOU LIKE(勝手にしなよ)

ロックの歴史と新時代に向かう空気感に満ちた1作目

デビュー曲「アンジェリーナ」の掻き立てられるような焦燥感と疾走感。

これぞデビュー当時の佐野元春のイメージだったのではないだろうか。過剰なまでに韻を踏んだ歌詞はとても都会的で、まくし立てるように歌う様子は目まぐるしい80年代の幕開けを象徴していた。

同様に「夜のスウィンガー」や「BACK TO THE STREET」といったロックンロール・チューンには、バディ・ホリーからブルース・スプリングスティーンにいたるロックの歴史を感じさせつつも、同じような新しい時代に向かうみずみずしい空気感が込められている。初めてのアルバムだからこそ生まれたマジックといっても言いだろう。しかしその反面、職人的なソングライターとしての佐野の才能も見え隠れしている。

例えば、名バラードとして人気が高い「情けない週末」は、ビートニク詩人のエッセンスを見事にポップ・フィールドへ持ち込んでいるし、ラストの「DO WHAT YOU LIKE (勝手にしなよ)」におけるジャジーな世界観はロックンローラーとはまた違う顔が見えてくる。

こういった多彩な面をまとめたのが伊藤銀次。その後、バックバンドのThe Heartlandにも参加し大きな影響を与えた。しかし、本作は質の高さに反して商業的に成功したとはいい難く、ライヴの動員も苦戦していたというのが今となっては信じられない。

栗本斉


pct2

2nd 「Heart Beat」
1981年2月25日発表

Epic Records Japan
① ガラスのジェネレーション
② NIGHT LIFE
③ バルセロナの夜
④ IT’S ALRIGHT
⑤ 彼女
⑥ 悲しきRADIO
⑦ GOOD VIBRATION
⑧ 君をさがしている(朝が来るまで)
⑨ INTERLUDE
⑩ HEART BEAT(小さなカサノバと街のナイチンゲールのバラッド)

都会のストーリーテラーとしての佐野元春を確立

1年を待たずして届けられた2nd アルバムは、デビュー作の続編という印象が強いかもしれない。

たしかに「IT’S ALRIGHT」や「悲しきRADIO」における若さゆえの疾走感は健在だし、なによりも初期の名曲と称される「ガラスのジェネレーション」の “つまらない大人にはなりたくない” というフレーズが、やんちゃなロックンローラーとしての意思表示にも受け取れる。

もちろん、オールディーズ・スタイルのパーティ・チューン「NIGHT LIFE」や、静かで美しいバラード・ナンバーの「バルセロナの夜」、女性コーラスを配してエルトン・ジョンのようなピアノ・ロックを披露する「GOOD VIBRATION」などは確実に前作のエッセンスを受け継いでいる。

しかし、ここで特筆すべきなのは終盤の「君をさがしている(朝が来るまで)」と「HEART BEAT(小さなカサノバと街のナイチンゲールのバラッド)」という2曲ではないだろうか。 いずれも、都会のストーリーテラーとしての佐野を確立したと言ってもいい出来栄えだ。

時には字余りだったり、突拍子もない言葉をぶつけてくるが、そういった要素も渾然一体となって押し寄せてくる夜の情景とそこから浮き上がる心象風景。

ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンにも通じる言葉と音の一体感は、それまでの日本の音楽シーンには存在しなかったはず。ブレイク前夜の記録としても貴重な一作だ。

栗本斉

→ 続きは vol.2で! 8/23 更新予定


佐野元春 & THE COYOTE BAND
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Track List

01. 境界線
02. 紅い月
03. 本当の彼女
04. バイ・ザ・シー
05. 優しい闇
06. 新世界の夜
07. 私の太陽
08. いつかの君
09. 誰かの神
10. キャビアとキャピタリズム
11. 空港待合室
12. 東京スカイライン

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