【80年代名鑑】明菜からYMOまで 80'sからの授かりもの  vol. 101

Column

CHAGE&ASKA 『21世紀』を見据え、チャゲ&飛鳥からCHAGE&ASUKAへ。

CHAGE&ASKA 『21世紀』を見据え、チャゲ&飛鳥からCHAGE&ASUKAへ。

気付けばこの連載も100回を越え、今回が101回目。日頃、お読みくださっている皆様、本当にありがとうございます! でも101回目といえば「101回目のプロポーズ」(笑)。現在、CHAGE&ASKAのこと書かせて頂いているのも、なにかのご縁かもしれません。とはいえ「SAY YES」の話が出てくるのは、まだまだ先ですが…。前口上はこのへんで、いざ本文へ。

今回取り上げるのは、1983年6月にリリースされた『CHAGE&ASUKA IV -21世紀-』である。久しぶりに聴いたけど、このアルバムは実に音楽性も幅広く、カラフルで聞き飽きない。この時期のモノ、なにかひとつ聴いてみようという時、お奨めしたい。それにしても、(前も書いたかもしれないが)彼らの残した音源は録音が優秀だ。80年代というと、今の耳には音が薄く感じられるものも多いが、まったくそんなことないのである。

まずは『CHAGE&ASUKA IV -21世紀-』という、タイトルの話をさせて欲しい。注目すべきは“CHAGE&ASUKA”とアルファベット表記されていることだ。前作『黄昏の騎士』でも、ジャケットを飾ったイラストにこの表記は存在した。しかし今回は、正式なアルバム・タイトルとして明記されている。彼らは変化を望んでいたし、二人の心情と表記の変化は、どこかで連動していたのだろう。本来、自分達の中にあるものを素直に作品化したかった。6か月の充電の時期でもあり、しかし充電といっても、それはおのおのの曲作りの時間でもあった。

「万里の河」で定着した、無骨にシャウトするツイン・ボーカルのスタイルを否定するわけではないものの、それに囚われず、さらに自由になりたかった。一部で“演歌フォ−ク”とも呼ばれた、いわゆるパブリック・イメージというヤツから、解放されたかったのだ。とはいえ元手となるのは作品だった。それ以外にない。

さっそく『CHAGE&ASUKA IV -21世紀-』を聴いてみよう。アルバムのオープニングはASKA作詞作曲の「自由」である。いきなり意欲作だ。教会の鐘の音に続き、合唱曲などにみられる、ふたつの旋律が同時に歌われていく凝った構成のものだった(しかも片方は、英語詞になっている)。教会音楽的でもあり、ASKAのヨーロッパ指向が、ここではさらに、中世へと旅したかのようだった。

この歌は、教会の外で“自由”を願っている。同じくASKA作の「O Domine」は、教会の中のミサ曲のようだ。彼によれば、映画『ブラザー・サン・シスター・ムーン』の音楽にインスパイアされたものだそう。「O Domine」というタイトルは、ルネサンス期のフランスの作曲、ジョスカン・デ・プレの「O Domine Jesu Christe 」とも関係あるのかもしれない。

「万里の河」が南極なら、北極くらい違うテイストの2曲である。ニューミュージックの世界で大衆に愛される楽曲を模索する彼と、この“敬虔”ともいえる世界観の彼と、さてどちらが真の姿かといえば、どちらも同じくこの時代のASKAだろう。いずれにしても、より幅広い着想での曲作りを意識し、実践した時期なのだ。

今の2曲はクラシカルでもあるが、とびきりポップな楽曲も書いている。「あの娘にハ・レ・ル・ヤ」である。突っかかるような印象的な♪ドゥドゥタタドッタッのリフは、ナックの「マイ・シャローナ」風である。「O Domine」と同じ人間が書いたとは思えないほど、あっけらかんとした夏の恋の歌だ。

ASKA作品が違う雰囲気なら、CHAGE作品もこれまでと違う雰囲気だった。特に「闇」。イントロでエレキ・シタールも聞えるラーガ・ロック風の出だしが印象に残る。バラードを切々と哀感込めて歌うCHAGEのことは知っていたが、この曲では、まさに心の闇を吐き捨てるようなボーカルを聴かせ、それが新鮮であった。散りばめられた言葉も、[あやしい雲]、[絶望の谷へ]と、ダウナー系が並ぶ。最近のソロ・ライブでこの作品は取り上げていないと記憶するが、たまには「闇」も、歌って欲しいものだ。

これがアルバムの7曲目であり、続く「夢を見ましょうか」もCHAGEの作品である。彼のファンの間で人気が高いが、確かに歌が取り扱う感情がぶ厚くて、支持の高さも納得である。単に“夢見がちな歌”ではない。ハッピー・エンドじゃない恋も視野に入れて、すべてを我が人生と受け止めつつ、それでも夢を諦めない、そんな作品へと仕上げている。

『CHAGE&ASUKA IV -21世紀-』は、もともと先行シングルを含まない、純然たる9曲入りのオリジナル・アルバムとしてリリースされている。現在手に入るものは直前に出されたシングル「マリオネット」などをボーナス・トラックとして含む、全12曲入りだ。先ほど触れたミサ曲のような「O Domine」は、ラストを飾るものだからこそああした曲調にしたところもあったろう。でも今は、それに続く楽曲も聞えてくる。その辺は、事情が違うわけである。

松井五郎の作詞、CHAGEの作曲による「謎²遊戯」は、「マリオネット」のカップリングだった作品だ。サウンド的にはテクノ・ファンクというか、初期のトーキング・ヘッズみたいな雰囲気もあるのだが(アレンジは松田聖子はじめ数多くのヒット作を手掛けた大村雅朗)、やがて女性コーラスというか、ツイン・ボーカルが聞えてくる。クレジットをみると、[Side Vocal HIROMI ISEKI]とある。イセキ・ヒロミというのは、のちにCHAGEがMULTI MAXを組むことになる浅井ひろみの本名のようだ。ということは、今もCHAGEがソロ・パフォーマンスをする際に基本スタイルとする、自分のボーカルに女性ボーカルが絡むという、その原型が「謎²遊戯」にはあるのかもしれない。

このアルバムがリリースされ、彼らは7月からツアーに出掛ける。まずは「 21世紀への招待Part 1」。翌年、“Part 2”を開催した。この時、音楽アーティストとして初めて、「国立代々木競技場第一体育館」をコンサート会場として使っている。この事実は、けっこう知られている。ただ、どんなふうにあの体育館を使用して、どんなコンサートやったのかに関しては、あまり伝えられていない。残された音源と映像から、次回はそのあたりを書いていくことにしよう。

文 / 小貫信昭

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