Interview

アニメ『あかねさす少女』その本性は「特撮アクション」だった!? 『ロマサガ』の伊藤賢治が語った、熱すぎるテーマ曲の秘密

アニメ『あかねさす少女』その本性は「特撮アクション」だった!? 『ロマサガ』の伊藤賢治が語った、熱すぎるテーマ曲の秘密

とある地方都市に住む高校生の少女たちが、都市伝説にしたがって試した儀式といくつもの偶然から異世界への扉を開けてしまう……。TVアニメ『あかねさす少女』は、女子高生5人の楽しげな日常と、並行世界で出会う不可思議な存在とのバトル、そのギャップからもたらされる独特な作風でアニメファンを驚かせている作品だ。

本作では、本編のほかTVスポットなどでも使用されるメインテーマを、「サガ」シリーズをはじめ数々のゲーム音楽で知られる作曲家の伊藤賢治が担当。ファンの間で“イトケン節”と呼ばれ愛され続けるメロディアスな楽曲と個性は、このテーマ曲に加え『あかねさす少女』スマートフォンゲーム版の主題歌(作曲)でも発揮されている。今回はそんな伊藤と『あかねさす少女』との関係性、さらにそこから見え隠れする作品の意図について、本作のプロデュースを手がけている高寺祐太朗との対談インタビューという形で明らかにしていく。

取材・文 / 柳 雄大

作品を象徴するような強い音楽が欲しかった

伊藤賢治(左)、高寺祐太朗プロデューサー(右)

まずは伊藤さん、先日の舞台「サガステ」(『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』)観させていただきました。お疲れさまでした!

伊藤賢治 ありがとうございます(笑)。公演が終わってからサウンドトラックの制作をしていまして、今ようやくそのマスタリングが終わったところでした。

一連の作業を終えて、いかがでした?

伊藤 今回、スクウェア・エニックス公式で、全編自分の音楽が使われる舞台っていう初めての機会だったんですよ。普通のゲームやアニメを一本作るような労力もかけたので、やっぱり充実感はありました。今でも役者さんの方々が “「サガステ」ロス”だとか、終わって寂しいね、なんて話題にするぐらいですしね。

本当にすばらしい舞台だったので、また次の機会があればぜひ拝見したいです。

伊藤 こちらとしても、期待したいところですね。

そして今回の『あかねさす少女』について。まずは、伊藤さんがメインテーマとゲーム版主題歌を手がけられることになった経緯から教えてください。

高寺プロデューサー 僕のほうから前段的なところをお話ししますと、監督たちも含めてアニメの劇伴音楽の方向性を決めていく作業をしていく中、今回はオリジナル作品ということもあり、作品のイメージの取っ掛かりをつかんでいくのに時間がかかっていて。そこにまず作品を象徴するような強い音楽が欲しいという話が挙がる中で、知人の方よりイトケンさんをご紹介いただけるというお話をいただいたんです。音楽プロデューサーのRyu☆さんともご相談してぜひ、ということになったので、去年の10月ぐらいにお話をさせていただきメインテーマの作曲をお願いすることになりました。

そのお話を聞いて伊藤さんはいかがでしたか? 「メインテーマ作曲」という役割って、そもそも珍しいことなんでしょうか。

伊藤 ゲームのプロジェクトではいくつかあったんですけど、アニメでそういうオファーはもちろん初めてでした。あとは音楽プロデューサーのRyu☆くんも含め、自分を推してもらえたのがありがたいと同時に、自分の中では「アニメ業界での自分の知名度ってそんなにないのに、いいのかしら?」みたいなところもあって。例えば30代ぐらいのスタッフさんたちがゲーマーとして僕のことはご存知でも、そうでない方たちに対して自分はまだ無名だし、ノコノコ行って大丈夫なんだろうか、みたいな気持ちもあったんですよ。ただ今回はお話を聞いていくと、若い方々も参加されたりチャレンジングな作品だということも含めて、僕をもしかしたら推していただいたのかもしれないな……と思って、心づもりをしました。

そこから制作に入っていくにあたり、伊藤さんはどこまで作品の内容を知ってメインテーマの作曲に入られたんでしょうか。

伊藤 まだストーリーの制作は現在進行形というような段階だったので、世界観の概要とあらすじ、キャラクターのデザインなど、大まかな部分だけをいただいて、そこからイメージして作っていきました。まだ「日常的に生活していた女の子たちがパラレルワールドに行く」というぐらいのものでしたね。

作品の根底にある二面性と“イトケン節”との親和性

高寺さんサイドから伊藤さんに対しては、どんな要求やオーダーをされましたか。

高寺 作品の大枠をご説明して、イトケンさんにお持ちいただいた印象をそのまま曲にしていただくことで“強さ”につながる部分があるかなと思っていたんです。だから、あえて具体的にこういう方向性で、というようなことはあまり話さずに、ある意味「イトケンさんらしい曲をお願いします」というような(笑)お願いをさせていただきました。

伊藤 僕は何度も「いいんですね?」って聞きましたけど(笑)。

その「いいんですね?」っていうのは、この女の子たちの、一見すると日常ふうな世界観に合うかどうか、というような確認ですね。

伊藤 そうですね。

高寺 『あかねさす少女』には、表向きには一見、日常系の作品らしいふわっとした雰囲気があるんですけど。実は作品の根底に二面性、さらに言ってしまうと多面性みたいなところがあって。裏面にはもうひとつのモチーフとして「特撮アクション」というのもあったりするんです。

なるほど、特撮!

高寺 そういったアクション、バトルものとしての一面と、いっぽうでストーリーものとしてのキャラクターの心理的な成長という、いろいろな葛藤を描く一面も作品のテーマとしてはあるんです。イトケンさんの楽曲って、もちろんバトルの曲もすごく激しくて、一度聴いたら絶対に忘れられないような強さがあるんですが。それだけでは終わらなく裏側にある繊細な楽曲の印象……そういう多面的な部分が個人的にはすごく魅力的な部分だなと、ファンの一人として僭越ながら思っておりまして。

伊藤 ありがとうございます。むずがゆいです、とても(笑)。

高寺 ですので、単に激しいだけではない楽曲というところが作品に重なってくるだろうという狙いもあって。「イトケンさん的な感じでお願いします」というお話になったんです。

そんなオーダーを受けて、伊藤さんご自身は……?

伊藤 自分の曲作りって、昔から「メロディアス」というところから始まってるんです。いわゆる激しい曲だろうが悲しい曲だろうが、何かエモーショナルな部分に訴えられるような曲をずっと作りたい、というのが根底にあったので。今回の『あかねさす少女』では、いかに自分のオリジナリティを生かしたエモーショナルをぶつけていこうかと。自分の中でのダメ出しも含めながら、作っては捨て、を繰り返して。結果的にお渡ししたものは意外に一発OKで。「あっ、これで間違ってなかったんだ」といううれしさはありましたね。

伊藤さんのメロディアスな楽曲は“イトケン節”と言われて親しまれていますよね。ちなみにイトケン節って、いつごろから呼ばれるようになったんでしょう?

伊藤 『聖剣』(1991年の作品『聖剣伝説 ~ファイナルファンタジー外伝~』)ぐらいからですかね。けっこう早かったかもしれない。

あ、じゃあゲームボーイの頃から。伊藤さんのキャリアとしては、かなり早い段階ですね。でも、常に定番のフレーズを使うというわけでもなく「節」を感じられるってすごいなと思います。それって、ご自身的にはどう意識されているんでしょうか。

伊藤 例えばゲーム系のオファーなどで、イトケン節みたいなものをお願いしますと言われたら、逆に僕は「あ、何やってもいいんですね?」と受け取るような感じで(笑)。自分のオリジナルをそこで出す! ぐらいの開き直りがあったりするんですけれど。あとはたぶん他の方と自分の曲の作りの違いって、かなり「歌もの」の構成に近いことなんじゃないかなと。

なるほど。

伊藤 イントロから始まってAメロ、Bメロ、サビみたいな。きっとゲームをプレイしながら聴いてる方々にも、「来るぞ、来るぞ……キター!」っていうのがわかりやすいような。そういう作風は確立したかなと思いますね。

『あかねさす少女』のメインテーマも、もちろん既出のメロディーではないんですけど、やっぱりすごくイトケン節を感じます。まさに中盤のフレーズで決めが入って、そこからどんどん滾らせてくれるような、伊藤さんのサービス精神のようなものもこの曲にも表れてるなと。

伊藤 そう感じていただけるとうれしいですね。

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