LIVE SHUTTLE  vol. 310

Report

15周年だからこそ、シドが“いちばん好きな場所”を選んだツアーの意味とその成果

15周年だからこそ、シドが“いちばん好きな場所”を選んだツアーの意味とその成果

SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 「いちばん好きな場所 2018」
2018年11月21日@マイナビBLITZ AKASAKA

9月から全31公演を駆け抜けてきたライブハウスツアー“SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 「いちばん好きな場所 2018」”を、11月21日に東京・マイナビBLITZ AKASAKAにて大団円で終了させたシド。シドといえば、いつも大きなホール会場で、ツアーコンセプトにあったステージセットを組み、映像や電飾や特効をふんだんに使った演出のなかでライブを行なっているイメージが強い。そんな彼らを小さなライブハウス、とりわけ地方では手が届きそうな距離感で観られるというだけで、このツアーはファンにとってみれば奇跡のようなものだった。当然、チケットは全公演すぐにSOLD OUT。そのファイナルの舞台となったBLITZは、本ツアーのなかでは大きな会場だったものの、当日は2階席の後ろを解放して立ち見の観客を入れて対応するほど、場内は超満員のオーディエンスで埋め尽くされていた。

取材・文 / 東條祥恵 撮影 / 今元秀明

果敢な攻め込みも見事に決まり、序盤からツアーの成果を見せつける

LIVEが始まると、場内が暗転。各々のテーマ曲のようなものがつながったSEに合わせて、ステージサイドからゆうや、続けて明希、Shinjiがオンステージ。最後にゆっくりとマオが現れると大声援が響き渡り、フロアはすでに爆発気味。その熱気を揺さぶるようにゆうやが弾けるビートを叩き込み、ライブは「VOICE」で勢いよく幕を開けた。サビで楽器隊が“ウォーオ”とコーラスを入れると、マオが“声を聞かせてよ”と歌いかけ、オーディエンスもコーラスを歌い出す。ライブハウス仕様のシドは、この素早いレスポンスの畳み掛けで、オープニングから場内に一体感を作り上げる。

曲終わりからCDとは違うギターフレーズをShinjiが豪快に弾きまくるロックナンバー「reverb」、続く「XYZ」ではマオが体をフロアに乗り出して“おれがいなきゃダメさ”、“粉々になるまで愛し合おう”、“残りのおれ全部お前に捧げるよ いいだろ?”と歌い、フロアをたちまちシドの虜に。果敢な攻め込みも見事に決まり、序盤からツアーの成果を見せつける。

「イェー!! こんばんは、シドです。31本目。駆け抜けてきました。ただいま!(観客「おかえりー!!」)素敵な思い出を作りましょう」

というマオの挨拶に続いて披露されたのは「蜜指〜ミツユビ〜」。イントロで楽器隊の音がとろける蜜のようにからみ合ったあと、マオがブレッシーな甘い声で“愛してよ”とおねだり。曲中「ベース、明希!」というマオの呼び込みからベースソロ、Shinjiのギターソロへと楽器隊の見せ場が続いていく。ゆうやとShinjiが織りなすフュージョンなグルーヴ感が曲をリードしていく「KILL TIME」ではドラム、ベース、ギターと3人が流れるように展開していくソロなど、シドの幅広い音楽性を支えるプレーヤーたちの熟練したパフォーマンスで、フロアを魅了していった。そんなカッコいい見せ場の後に楽器隊のメンバートークが始まると、この日は最近ラーメンの仕事が増えつつあるShinjiを、明希が“オン ラーメン!”と紹介すると「“ずるずるずる〜(ラーメンをすする音)”」とShinjiが珍しく(笑)ナイスなリアクションを入れ、会場に大爆笑を呼び込んでいった。

「まとめると、俺たち“仲良シド”ってことで」(マオ)

「螺旋のユメ」からは、TVアニメを通して愛されてきたシドの楽曲を次々とパフォーマンス。バンドのキャリアのなかでも圧倒的スケール感、メジャー感を誇るヒット曲たちは、イントロが流れただけでオーディエンスを爆発させる起爆剤になるものばかり。そのフロアの高まりにあおられたマオは、「V.I.P」のエンディングでこれでもかと言わんばかりの驚異のロングトーンを披露。歌い終えたマオは「ごめん、伸ばしすぎちゃった」とはしゃいでみんなを笑わせた。このあと、4人がクロストークでツアーを振り返っていった場面では、マオが「観光もしたよね?」と問いかけると、ゆうやが「といっても、俺は基本海だけど」と釣り人らしいコメントで返答。明希は「各地のご飯も美味しくてね」と付け加え、ライブ後の打ち上げはほぼ4人でご飯に行ったことを告白。「だから15周年、いまがいちばん仲いいかも」と言うと、「まとめると、俺たち“仲良シド”ってことで」と喜ぶマオ。「こんな3人でこれからも」とマオがまとめようとすると「おい!」と、Shinjiが絶妙のタイミングでツッコミを入れる(笑)。こうやってトークになると、とことんアットホームな雰囲気を見せる。そんなところをずっと彼らが持ち続けているのも、シドが15年もの間、ファンに愛され続けてきた理由のひとつだ。そうして「こんな仲良し4人(←ちゃんと言い直す・微笑)、このツアーでずっとやってきて、この先も大切なバラードになると思う」というマオの曲紹介から始まったのは「その未来へ」だった。ケルトな民族的旋律から中近東、アジアと世界を旅していくような音階をたどる穏やかでやさしいメロディ。そこに込められた世界平和を祈るようなピースフルなメッセージが最後、マオからメンバーの歌声、オーディエンスの歌声を巻き込んで会場いっぱいに広がっていったシーンはこの日の中盤のハイライトとなった。マオは「この(歌の)輪を3月10日の横浜アリーナにつなげて、みんなで大合唱できたらと思います」と観客に伝えた。

場内が薄暗いピンク色の照明に染まると、バンド・アンサンブルがねっとりと妖艶でアダルトなムードを作り上げていく。そのなかで、マオが中性的なファルセットを使ってエロティックに歌い上げていった「刺と猫」は、曲が終わって照明が消えた後、マオのキス音だけを場内に響かせ、観客の耳元をゾクゾクさせた。その余韻にたっぷり浸らせたあと、「hug」の温かいバラードナンバーで、オーディエンス一人ひとりに愛情をたっぷり注いでいく。最後は、マオが自分の体をギュギュッと抱きしめ、会場に集まったみんなをエアハグしてみせた。歌い終えたあと、この曲は「みんなをハグするように歌ってます」とコメント。「なので、聴いててギュッとされた人は、前からだと俺だけど、後ろからのギュッとは霊的な何かかもしれないので(笑)、すぐにお祓いに行ってください……。って、このMCも31回目だよ〜」と、リラックスした笑顔を浮かべ、フロアになごやかな空気を送り込む。

そこから「いけるかー!!」というマオの叫び声を合図に「MUSIC」から終盤戦へ突入。スラップを弾き倒す明希とShinjiが向かい合って音をうねらせ、会場の温度をどんどん上げたあと、軽快なビートをゆうやが鳴らす「ラバーソール」の疾走感で、フロアのボルテージは急上昇。「やっとこの言葉が言えます。“Dear Tokyo”」とマオが叫び、始まった「Dear Tokyo」では、気持ちの高ぶりを抑えきれないゆうやが椅子から立ち上がってシンバルを叩き、マオはオーディエンスの振りを真似て立ったり、しゃがんだりを繰り返してクラップを披露。曲中、フロア一丸となっての大合唱が巻き起こると、マオが「ずっとずっと会いたかったー!」と絶叫。「もっといけるか?」とマオがフロアをあおり「プロポーズ」「眩暈」を激情全開で叩きつけ、オーディエンスも呼応するように叫び、コブシを突き上げ、体を揺らし、本編はみんな汗だくになってクロージング。

「俺たちは4人ともミュージシャンで、その前にバンドマンだからさ。この場所が心から大事なんです」(マオ)

アンコールは、しっとり聴かせるバラード「ホソイコエ」でスタート。演奏を終えたあと、Shinjiが「“ホソイコエ”のストーリー、せつないわ〜」とボソリとつぶやくと、マオが「俺たち(シドとファン)も遠距離恋愛みたいなもんだけど、でも街で出会う確率はゼロだから」とドS発言でファンを軽くいたぶったあとに夏のラブチューン「夏恋」投下。これにはもうフロアは熱狂するしかない。そうして「one way」で会場の興奮は極限まで高まり、オーディエンスは雪崩のように前へ前へと押し寄せ、左右に動きながらぐるぐる回転するサークルでBLITZを激しく揺らす。マオが「みんな、めちゃめちゃ元気だね。新しい部族のお祭り? 悪魔でも召喚してるの?」と会場を笑わせたあとは、真面目な表情で「俺たちは4人ともミュージシャンで、その前にバンドマンだからさ。この場所が心から大事なんです」と伝えた。そして、アンコールの最後に、次の約束の場所。シドの結成15周年のグランドファイナルを飾る横浜アリーナで、また会おうという気持ちを込めて「いちばん好きな場所」を歌い上げると、それまでの熱気とは全く違う温かさが、会場全体を包み込んでいった。

そして、マオが「あれやる?」といって、4人で手をつないで「いちばん好きな場所、最高! イェー!!」と叫び、この長い長いツアーの最後を締めくくった。最後、明希は「ここからも突っ走っていくから」、Shinjiは「君たちのこと、大好きです」、ゆうやは「横アリ、その先も僕らの夢の続きはずっとあるんで、これからも応援よろしくお願いします」とメッセージを残してステージから姿を消した。一人ステージに残ったマオは「いろいろ試して回ったツアーだったけど、俺ららしい人間臭い、泥臭いライブができたと思います。これでツアーは終わっちゃうけど、みんなの心に残ったと思うし。これからも悲しくなったり辛くなったら、いつでも(シドのライブに)帰ってきてください。俺はみんなが心の底から大好きです」と温かい言葉を伝えて、オフマイクで「愛してます」と叫び、舞台を去った。

シドは2019年3月10日、横浜アリーナ単独公演で、ついに結成15周年のグランドファイナルを飾る。

SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 「いちばん好きな場所 2018」
2018年11月21日@マイナビBLITZ AKASAKA

SET LIST

M.01 VOICE
M.02 reverb
M.03 XYZ
M.04 蜜指〜ミツユビ〜
M.05 KILL TIME
M.06 螺旋のユメ
M.07 ASH
M.08 V.I.P
M.09 その未来へ
M.10 刺と猫
M.11 hug
M.12 MUSIC
M.13 ラバーソール
M.14 Dear Tokyo
M.15 プロポーズ
M.16 眩暈
EN.01 ホソイコエ
EN.02 夏恋
EN.03 one way
EN.04 いちばん好きな場所

ライブ情報

SID 15th Anniversary ASIA TOUR “THE PLACE WHERE WE LOVE MOST 2019”

2019年2月15日(金) Legacy Taipei / Taipei
2019年2月20日(水) MacPherson Stadium, Mongkok, Kowloon / Hong Kong

SID 15th Anniversary GRAND FINAL at 横浜アリーナ ~その未来へ~

2019年3月10日(日) 横浜アリーナ

公演スケジュールなどの詳細は公式サイトをご参照ください。
http://archive.sid-web.info/15th/

SID(シド)

2003年結成された。マオ(Vo)、Shinji(Gt)、明希(Bs)、ゆうや(Dr)からなる4人組ロックバンド。
2008年10月「モノクロのキス」でメジャーデビュー。以降、「嘘」「S」「ANNIVERSARY」「螺旋のユメ」など、数多くの映画・アニメテーマ曲でヒットを放つ。2018年、バンド結成15周年を迎え、4月にはセレクションベストアルバム『SID Anime Best 2008-2017』をリリース。直後の5月から6月28日まで“SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 2018”と銘打った全国6都市14公演ツアーを開催。9月からはLIVE HOUSE TOUR“いちばん好きな場所”を展開、11月21日のマイナビBLITZ AKASAKAで全国31公演を無事に完走した。

オフィシャルサイト
https://sid-web.info

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