モリコメンド 一本釣り  vol. 95

Column

Luby Sparks 耽美的にしてノイジーなギターサウンド。既存の邦楽バンドとは一線を画す5人

Luby Sparks 耽美的にしてノイジーなギターサウンド。既存の邦楽バンドとは一線を画す5人

2018年3月1日、東京・渋谷のCricus Tokyoで行われたヘイゼル・イングリッシュ(オーストラリア出身のレトロ・ポップ系シンガーソングライター。めちゃ良いです)の初来日公演を観に行ったとき、オープニング・アクトとして登場したのが、このバンドだった。細身で金髪の男性ベーシストと美しい女性シンガーのツイン・ボーカルが紡ぎ出す浮遊感のあるメロディライン。そして、耽美的にしてノイジー、ときにポップな広がりを感じさせるアンサンブル。かつて80年代〜90年代の洋楽ギターロックにどっぷりハマっていた筆者にとって、このバンドが鳴らす音はどこか懐かしくもあり、“最近、こういう音に触れてなかったな”という新鮮さもあった。MCは「新しいボーカルが入って、今日が最初のライブです」のひと言だけ。終始うつむきがちで、演奏に集中するスタイルも好感が持てた。

Luby SparksはNatsuki(ba/vo)、Erika(vo)、Sunao(gt)、Tamio(gt)、Shin(dr)による5ピースバンド。大学のサークルで知り合ったNatsukiとSunaoがUKのロックバンド・Slowdiveの話で盛り上がり、交流のあったShin、Tamio、女性ボーカリストともにバンドを結成したのが、2016年3月。結成から3回目のライブでThe Bilinda Butchers (US)、Manic Sheep (台湾)のダブル来日公演に出演したことをきっかけに注目を集め、1stカセットシングル「Pop. 1979」は即完売。2017年7月には、UKのフェス「Indietracks Festival 2017」に唯一の日本のバンドとして出演し、同年10月にはYUCK(UK)とのスプリット・カセット「Yuck/Luby Sparks」をリリース。さらに2018年1月にはロンドンで制作したデビューアルバム『Luby Sparks』を発売するなど、順調な活動を重ねてきた。2018年2月末で初代ボーカリストが脱退し、新たにErikaが加入。その最初のライブが、前述したヘイゼル・イングリッシュ来日公演のフロント・アクトだったというわけだ。

バンドのHPに掲載されているフェイバリット・アーティストには、cocteau twins、my bloody valentine、The Jesus & Mary Chain、Pale Saints、SUPERCAR、Lush、Ride、Slowdive、Beach Houseなどの名前が連なっている。その多くは80年代、90年代に活躍した、ポストロック、シューゲイザー、ドリームポップを代表するバンドだ。“ノイジーで甘美なギターサウンド”“官能的なメロディライン”などを特徴とするこれらのバンドは90年代以降の日本のアーティストにも多大な影響を与え続けているが、10年代に入り、“みんなで楽しく盛り上がる”系のバンドが主流になってからは、やや下火になっていたように思う。20代前半のLuby Sparksがシューゲイザーやドリームポップの要素を色濃く反映した音楽を奏でているのは、再びバンドシーンの潮流が動き始める前兆なのかもしれない。

もうひとつ強調しておきたいのは、Luby Sparksはよくある“シューゲイズ・フォロワー”ではなく、好きな音楽のエッセンスを取り入れながら、まったく新しいポップミュージックに昇華しているということだ。新作「(I’m) Lost in Sadness」にも、そのことははっきりと示されている。

たとえば「Cherry Red Dress」はcocteau twins的なダークネスを含んでいるし、「Look on Down From The Bridge」(アメリカのサイケデリックバンド“Mazzy Star”の楽曲のカバー)には明らかにSlowdiveの影響が感じられるが、“〜っぽい”雰囲気に終始することなく、ルーツミュージックからいろいろな要素を抽出しながら、Luby Sparksのオリジナリティに結びつけているのだ。Natsukiが紡ぎ出すロマンティックなメロデイ、SunaoとTamioによる独創的なギターアレンジ、Shinの端正なビート(今回の作品では、打ち込みのトラックも取り入れている)、そして、憂いと華やかさを併せ持ったErikaのボーカル。本作によってこのバンドは、音楽的なアイデンティティをしっかりと掴み取ったと言っていいだろう。共同プロデュース、レコーディング、ミックスを手がけたYuckのフロントマン・Max Bloomの手腕も素晴らしい。

2019年1月17日には渋谷・Shibuya WWWで自主企画イベントLuby Sparks Presents「Thursday I don’t care about you」(ゲストは韓国のインディーポップバンド“Say Sue Me”)を開催、2月1日にはドイツのバンドIsolation Berlinのオープニングアクトとして出演(Shibuya Milkyway)することが決定するなど、既存の邦楽バンドとは一線を画す活動を続けているLuby Sparks。洋楽ロックの愛好家だけではなく、このバンドが幅広いリスナーに受け入れられたとき、(あまりにも画一的な)日本のバンドシーンは少しずつ変わり始めるはず。まずは心を空っぽにして、Luby Sparksの楽曲に身をゆだねてみてほしい。ゆったりと陶酔できるような快感がそこにあるはずだ。

文 / 森朋之

その他のLuby Sparksの作品はこちらへ

オフィシャルサイト
https://spaceshowermusic.com/artist/12415596/

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