『機動戦士ガンダムNT』公開記念特集  vol. 6

Interview

【ガンダム×ゴジラ特別対談】国民的2大コンテンツ最新作を背負って─福井晴敏・瀬下寛之が2018年に描くものの深層、その共通点とは?

【ガンダム×ゴジラ特別対談】国民的2大コンテンツ最新作を背負って─福井晴敏・瀬下寛之が2018年に描くものの深層、その共通点とは?

今や日本人なら知らない人はいないほどの国民的コンテンツとなったゴジラとガンダム。その最新作であるアニメ映画『GODZILLA 星を喰う者』、『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』が、2018年11月に相次いで公開された。またそれを記念した、本邦初のスペシャルコラボ企画も実施。まるでゴジラとガンダムが対決しているかのようなスペシャルコラボPV(参照)は、もうごらんになっただろうか?

今回はそんな夢のコラボ実現を記念して、最新作のリードクリエイターである瀬下寛之(アニメ版『GODZILLA』3部作監督)と、福井晴敏(『機動戦士ガンダムNT』脚本)による対談を実施。かつてのゴジラ少年、ガンダム少年が、どのような想いを込めて最新作を生み出したのか、その重圧、その喜びを語り合ってもらった。

取材・文 / 山下達也(ジアスワークス)


『シン・ゴジラ』のことはがんばって気にしないようにした

福井晴敏(左)、瀬下寛之(右)

福井晴敏 まずお聞きしたいんですが、最初に「アニメでゴジラをやろう」って言い出したのは誰だったんですか?

瀬下寛之 東宝さんですね。4年くらい前(2014年頃)に声をかけていただいて。

福井 4年前というと、まだ『シン・ゴジラ』は……

瀬下 やっていませんね(注:『シン・ゴジラ』は2016年公開)。その時の僕は『亜人』というTV・劇場アニメの総監督、その次には『BLAME!』(2017年)という劇場アニメの監督もやることになっていました。当時は手探りしながら、やっとCGによるセルルック表現で長編アニメができるようになってきたという時期で、さすがに「ゴジラ」は荷が重い。思わず反射的に「(アニメでゴジラをやるのは)無理だと思います」って言いました(笑)。

福井 瀬下さんは、ゴジラはお好きだったんですか?

瀬下 もちろん、子供の頃から熱心に観ていました。ゴジラならではの様式美もリスペクトしていて、2012年に東京現代美術館で行われた「特撮博物館」(「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」)に何回も足を運びました。現役の特撮ファンだと……ライト層ですが(笑)言えます。

福井 それゆえに、安易には引き受けられない、と。

『GODZILLA 星を喰う者』より

瀬下 そうですね。でも、東宝のプロデューサーが丁寧に口説いてくださって……。「ゴジラ」というブランドをもっと盛り上げていきたい、毎年、日本中、世界中のお客さまに実写、CG、アニメなど、さまざまな形のゴジラを届けていきたいと。スタッフについても、脚本に虚淵玄さんが決まっているほか、友人でもある静野孔文さんとの共同監督だと。内容については“怪獣プロレス”的なことにはこだわらず、これまでに無い切り口で……とまで。それならチャレンジできるかも……そんな入り方だったんです。

福井 引き受けたタイミングでは、『シン・ゴジラ』のことは知らされていたんですか?

瀬下 いえ、全然。虚淵さん、静野さんと全体的な構成を決め、脚本作業が始まった頃、『シン・ゴジラ』という作品が公開されるということを伝えられました。『シン・ゴジラ』で監督・特技監督を務めた樋口真嗣氏はVFX業界での大先輩でもあり、焼肉を食べに行った際にも、概要はうかがえませんでした。当然ですが(笑)。

福井 あんにゃろ、黙ってたんだ(笑)。で、それを知った時はどう思われましたか?

瀬下 我々の参考にと東宝さんから脚本を見せていただきましたが……衝撃でした。庵野秀明さん、樋口真嗣さんというレジェンドな御二人がやっているわけで、面白くないわけがない。東宝さんには「気にしないでくれ」って言われましたが、気にしないわけない(笑)! でも、まあ、がんばって気にしないようにしてきました。そうするしかありませんでしたから。

『GODZILLA 星を喰う者』より

福井 でも、端から見ていると、この並び順は結果的にすごく良かったんじゃないかと感じますよ。『シン・ゴジラ』をやった翌年に、昔ながらの特撮ゴジラをやったら、かなりキツいことになっていたんじゃないかな。そこにCGアニメを持ってくることで、良い意味で驚きをもって迎えられたところはあるんじゃないかと。

瀬下 福井さんにそう言っていただけると、少し救われた気持ちになりますね。ただ、アニメ化発表直後から、SNSなどで、批判の言葉もいただきました。無理もないことだと思います。また、それによって「ゴジラ」というキャラクターの凄さ、存在感を、改めて実感させられました。

福井 いや、でも、『シン・ゴジラ』のような“特異点”が出てきてしまうと、次どうするのって話になりますよ。そこにアニメを用意していたというのは、言葉は適切でないかもしれませんが、いい逃がし方だったんじゃないかと思います。

瀬下 僕も東宝さんの戦略はすごいと思います。そして、福井さんのおっしゃるように『シン・ゴジラ』はまさに“特異点”でした。脚本を読んで衝撃を受け、ラッシュを見せられて唖然、そして劇場で観て呆然。そのたびに繰り返すように「ま、ま、気にしないでください」なんて言われるわけです(笑)。そこから、今日までの2年間は、自分たちのゴジラはきっといろいろな評価をされるけれども、最後に信じて走り抜こうと、そういう気持ちで作ってきました。

『GODZILLA』3部作は、絶望に抗う人間たちの物語

『GODZILLA 星を喰う者』より

福井 実は私は、瀬下さんの『GODZILLA』3部作を観て、今回、コラボをさせていただいた『機動戦士ガンダムNT』よりも、以前、私が脚本とシリーズ構成を担当した劇場アニメ『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(2017年)に近いんじゃないかと思ったんですよね。今、世の中的に多くの作品が「絶望に抗え」というテーマに行き着いていると思うのですが、その点で、非常に近い。

瀬下 確かに!

福井 これはもちろん、2011年の震災以降、多くの日本人の心性に根付いたテーマ。もう日本人は、ありきたりの絶望とか、最終的に元どおりになるんでしょというような、作為的な困難を描いた物語が刺さらなくなってしまっているんです。リアルに“滅亡”のにおいを嗅いでしまいましたから。

瀬下 本当に、まざまざと見せつけられましたよね。

福井 その中で、フィクションの中で描かれている“希望”とか“勇気”とかではもうどうにもならないということを知ってしまったんですよ。その点、今回の『GODZILLA』3部作は、そこに真っ正面から取り組んでいるじゃないですか。『シン・ゴジラ』よりも向き合っていると言っていいくらい。

瀬下 それに関しては……僕からはノーコメントで(笑)。

福井 でも、俺は言っちゃう(笑)。『シン・ゴジラ』は(絶望との)戦い方として、自分たちが好きだったフィクションのフルパワーを武器にしているんです。「現実対虚構」というキャッチコピーは伊達ではなくて、自分たちが虚構(フィクション)というものに持っている期待感、信頼感、心酔感、そういうのを全部まとめて、今、日本を覆っている絶望にぶつけたんですよ……山手線とかに乗っけてね。

瀬下 それはすごく分かります。自衛隊で勝てなくて、最後は電車と重機で勝ってますからね。僕の世代が、自分達の好きなもので勝っていく、日本を守る、そういうのにグッときました。だから『シン・ゴジラ』を観た後は、これから生きていける感じがしましたよね。「ありがとう」って気持ちになりました。僕自身も含めたおじさんの夢をこんな素晴らしい映画にしてくれて、本当に勇気をもらいましたから。

『GODZILLA 星を喰う者』より

福井 対して、『GODZILLA』3部作が絶望に対して、何で立ち向かったかというと……、思弁的SF小説というか、よくぞあれを映像で作ったなと感心しました。

瀬下 虚淵さんの最初のプロット、A4用紙1、2枚だったんですが、その時点で、今回の3部作の根幹となる部分は全く変わらず存在していました。僕と静野さんは、それを読み終わった時、ただただ絶句しましたね。そして、これは「ゴジラ」なのか? これは英雄譚なのか? と考え込んでしまいました。心が逃げ場を失って、どうしたらいいのか分からなくなってしまったほど。ただ、ストーリーの構造は非常にエレガントで非の打ちようもない。心のどこかに、痛快にゴジラとバトルしまくる話にしようって気持ちもあったんですが(笑)、やはり、これは良くできているぞ、と。

福井 最初はまだ悩むところがあったんですね。

瀬下 はい、ただ、僕自身が『シン・ゴジラ』やハリウッド版ゴジラに感じる、ある種のコンプレックス、ああいう作品を作りたいという欲求、作れたらかっこいいだろうなという憧れみたいなものを抱く僕が、完全に予想だにしないストーリーというのは、逆にアリかと思いました。

そもそも、CGアニメで作るという時点で既にとてつもなく異端ですからね。『シン・ゴジラ』のような本流に対する亜流の役割みたいなものを考えて行くと、それは、「ゴジラ」を今までとは異なる新しい未来に羽ばたかせることなのではないかと。アニメにもなる、マンガにもなる、なんならオープンワールドのゲームやVRにもなっていく、新しい「ゴジラ」をここから始められるようにしようって。そんな覚悟でした。

福井 それはとてもクレバーな選択だったと思いますよ。

瀬下 ありがとうございます! 本当に、今日はここに来て良かったです(笑)。

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