『機動戦士ガンダムNT』公開記念特集  vol. 6

Interview

【ガンダム×ゴジラ特別対談】国民的2大コンテンツ最新作を背負って─福井晴敏・瀬下寛之が2018年に描くものの深層、その共通点とは?

【ガンダム×ゴジラ特別対談】国民的2大コンテンツ最新作を背負って─福井晴敏・瀬下寛之が2018年に描くものの深層、その共通点とは?

福井晴敏はなぜ「ニュータイプ」を描き続けるのか

『機動戦士ガンダムNT』より

瀬下 『機動戦士ガンダムNT』観させていただきました。素晴らしかったです。すごく面白かった。一瞬で90分が過ぎました。前作『機動戦士ガンダムUC』(2010年~)でいくつか気になっていたことがあったのですが、それに対して、そうかこの方向に進んでいくのかという回答を提示しておられて……。『機動戦士ガンダムUC』では、それまでの「ニュータイプを目指せ!」みたいな流れに疑問を呈するような終わり方をしましたが、本作では、そこに福井さんとしてのはっきりとした死生観を盛りこんでおられましたね。大仰に言えば「人はどのように生きるのか」というか。

福井 そこは『GODZILLA』3部作と共通しているところかもしれません。極限の絶望を前にした時に、人間ってどう反応するんだろう、そして人間のまま、その絶望に打ち勝つことってできるんだろうか? いや、そもそも打ち勝つ価値があるんだろうかっていうところまで踏み込んでいかないと、もはややる意味がない。

瀬下 そこにすごく感動しました。『GODZILLA』3部作でも、主人公のハルオを狂気と英雄の狭間をずっと歩かせて、演出にすごく苦労しました。それは、ハルオの最後の選択に対し必然性を高める為の苦労でした。

福井 『GODZILLA 星を喰う者』のラストは、最後の一線を守ったのか、守ることを止めたのか、どちらにも取れるところがありましたよね。

『機動戦士ガンダムNT』より

瀬下 そして、『機動戦士ガンダムNT』にもそういったところがありましたよね。そこにすごくざわざわしました。ネタバレは避けますが、涙腺が決壊するような思いを何度もさせられて……実に詩的というか、とても感動させられました。ところで、福井さんがニュータイプを描かれるのはなぜなんですか?

福井 俺があえて『機動戦士ガンダムUC』の頃から、ニュータイプを主題に据えているのは、それをやらないと、正規の続編に見えないというのが最大の理由ですね。それをやらないと、外伝的に見えてしまうというか。それで“置かれる売り場の棚”が決まっちゃうんですよ(苦笑)。ただ、やるからには徹底的にやりたいと考え、過去のガンダムを全て一通り観直しました。

そして、一通り観ると、子供のころには「額に稲妻が走ると敵の攻撃を避けられる」とか、「テレパシーで他人と話せる」くらいのイメージしかなかったニュータイプ像に、実はシリーズを通した意図があることが分かってくるんです。少なくとも、富野由悠季監督の中ではがっつり論理ができていて、全ての描写がそれに基づいていることが分かってくる。

瀬下 子供の頃は、富野監督の作品を観ていると、最後にみんな殺しちゃうんじゃないかとか、ハラハラドキドキさせられたものでしたが……(笑)。

『機動戦士ガンダムNT』より

福井 その上、『機動戦士Zガンダム』(1985年)以降は、話を分かりにくくするエキセントリックなニュータイプや強化人間が増えていくでしょう? でも、あれも人間が常に「受信状態」になってしまったらと考えると腑に落ちるんです。私の担当したガンダムでは、そうした、過去作品から一貫しているものを抜き出して、移植するということをやっています。その際、ただ移植するだけではつまらないので、ちょっとだけ、ほんの少しだけ先に進めました。

富野監督のニュータイプの論理に従っていくと、ニュータイプというのはこういうことなのではないか、と。その1つの具現が、『機動戦士ガンダムUC』の終盤、緑色に光るユニコーンガンダムが、腕の一振りでいろいろなものの動きを止めることもできちゃうっていう、ああいった描写です。

瀬下 なるほど……。

福井 ただ、今まで、ミリタリーやSF的な観点で観られてきた「ガンダム」に、ああいう魔法の巨人みたいなものをポンっと出現させて、それを一つの表象として終わりにしてしまうと、それは、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)と変わらないというか、それをさらに遠くに押しやってしまったみたいなところもあります。

それで『機動戦士ガンダムNT』では、そうしたものをきちんと包含した上で、「ニュータイプ」というものが、あの世界の中でどのように扱われて、そして沈静化されていったのか(注:『機動戦士ガンダムUC』の約30年後を舞台とする『機動戦士ガンダムF91』の時代には、「ニュータイプ」という概念が過去のものとして忘れ去られようとしている)をきちんと描くことにしました。もちろん、この作品だけでは全てをやりきってはいないのですが、これを観ていただければ、今後、私たちがどういう方向に進んでいこうとしているのかが分かってもらえるはずです。

『GODZILLA』3部作と『機動戦士ガンダムNT』に共通するもの

瀬下 『機動戦士ガンダムNT』では、「ニュータイプ」という概念を通して、絶望にどのように対峙していくのか、こうした閉塞の時代だからこその、リアルな生き様のようなものを感じることができました。

福井 ガンダムもニュータイプも、ゴジラも、言ってしまえば、単なる「ガジェット」です。それを描くことが目的なのではなく、それを描くことで、今の人間や、人間が直面している問題を浮き彫りにしていくことが目的なんですよ。

瀬下 おっしゃる通りだと思います。世界観設定は感情の発生装置なんですね。『GODZILLA』3部作では、実はゴジラは戦う相手というより“天災”です。家族や恋人が台風で死んでも、台風に復讐しようとは思いません。今回のゴジラは、本来、人知が及ぶところではないんです。最新作のポスターでも、そのあたりのテーマを示唆しています。大きく描かれているゴジラ達は背景で、主役は小さく描かれている人間たち。彼らが極めて過酷な環境(=怪獣)の中で、どのように生きていくかという物語です。

福井 その哀しみを減ずるために、一矢報いるために、人類は文明を発達させてきたわけですよね。いや、発達させてしまったというべきなのか……。

瀬下 そこまで理解していただけて、本当にうれしいです。(もうひとりの監督である)静野さんや、虚淵さんも喜ぶと思います。

福井 ニュータイプもそれに近いですよ。戦争ばっかり、哀しみばっかりという世界に対して、ニュータイプという概念が提示されて、いつか、皆がそこに行き着くだろうという漠然とした希望が提示されたのが、初代『起動戦士ガンダム』だったんですが、その後、シリーズを追うごとにいろいろなことが明らかになっていくわけです。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』では、ラストでポジティブな面も描かれるのですが、ニュータイプって、死者との界面がなくなるってことなんじゃないのという側面も見えてしまった。その界面を越えて先に行くと……

瀬下 まさに、『GODZILLA 星を喰う者』の中で、メトフィエスがやろうとしていたことです。この世界の行き着く先に滅びしかないのであれば、その世界の先に行こうとした。

福井 生も死もない次元に移行しようとしたわけですよね。でも、それってこっち側からみたら、死ぬことと何も変わりがない。さっきはヤマトの方が近いかも、なんて言いましたが、こうして考えるとゴジラとガンダムにも共通するものがありますね。やっぱり、この時代の日本で物語を作っていると、通じてしまうものがあるのかな。

瀬下 そうだと思います。

映画『GODZILLA 星を喰う者』

劇場公開中

【キャスト】
宮野真守、櫻井孝宏、花澤香菜、杉田智和、梶 裕貴、小野大輔 ほか

【スタッフ】
監督:静野孔文・瀬下寛之
ストーリー原案・脚本:虚淵玄(ニトロプラス)
キャラクターデザイン原案:コザキユースケ
音楽:服部隆之
副監督:吉平”Tady”直弘・安藤裕章
プロダクションデザイン:田中直哉・Ferdinando Patulli
CGキャラクターデザイン:森山佑樹
造形監督:片塰満則
美術監督:渋谷幸弘
色彩設計:野地弘納
音響監督:本山 哲
製作:東宝
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
配給:東宝映像事業部

©2018 TOHO CO., LTD.

オフィシャルサイト
上映館情報

映画『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』

劇場公開中

【キャスト】
榎木淳弥、村中 知、松浦愛弓 ほか

【スタッフ】
企画・制作:サンライズ
原作:矢立 肇、富野由悠季
監督:吉沢俊一
脚本:福井晴敏
メインキャラクター原案:高橋久美子
キャラクターデザイン:金 世俊
メカニカルデザイン:カトキハジメ、小松英司
色彩設計:すずきたかこ
CGディレクター:藤江智洋
ディスプレイデザイン:佐山善則
美術監督:丸山由紀子、峯田佳実
特殊効果ディレクター:谷口久美子
撮影監督:脇 顯太朗
編集:今井大介
音響監督:木村絵理子
音楽:澤野弘之
アニメーション制作:サンライズ
配給:松竹

©創通・サンライズ

オフィシャルサイト

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