Interview

福田雄一&西川貴教が、ミュージカル『サムシング・ロッテン!』で開拓する“笑い”の新境地

福田雄一&西川貴教が、ミュージカル『サムシング・ロッテン!』で開拓する“笑い”の新境地

12月17日(月)から東京国際フォーラム ホールCにて、ミュージカル『サムシング・ロッテン!』が上演される。本作は『コーラスライン』、『アニー』、『レ・ミゼラブル』などの人気ミュージカルや、シェイクスピア作品を想起させるシーンを引用したコメディ・ミュージカルで、2015年にブロードウェイで初演を迎え大ヒット、現在は全米をツアー中だ。
その日本語版の演出・上演台本は、劇団ブラボーカンパニーの座長だけではなく、映画・テレビの脚本家・監督として“笑い”を探求し続ける福田雄一が手がける。そして、ルネサンス時代の誰もが知る劇作家・シェイクスピアをアーティストでもある西川貴教が演じる。
ふたりに今作の魅力、さらには、どうして西川貴教がシェイクスピアにふさわしかったのか、演劇と映画・テレビの演出の違いまで聞いた。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 友澤綾乃


ミュージカルを観たことがないお客様でもわかるように

ミュージカル『サムシング・ロッテン!』ですが、ブロードウェイの上演版は、ありとあらゆるミュージカルの古典作品のオマージュやパロディの要素をふんだんに盛り込んだコメディとなっていますが、日本版にするにあたって気をつけたことはありますか。

福田雄一 まず、ミュージカルを観たことがないお客様でもわかるように心がけています。というのも、内容がかなりヘビーなんですね。台詞ひとつひとつはしっかりとシェイクスピアの台本を踏襲しているし、曲もいろいろなミュージカルから抜粋しています。ただ、僕でも知らない引用があるので、コアなミュージカルファンの方ならご存知かもしれませんが、そうでない方も多いと思うんです。

西川貴教 たしかに、普段ミュージカルをご覧になられず、たとえば僕の活動を追いかけている人からすると、中川(晃教)くんとかが出ていらっしゃるミュージカルのことを引用されてもわからないことが多いかもしれないですね。

福田雄一

福田 西川ファンはあまりミュージカルを観ないですか?

西川 最近は舞台に出演させていただいているので、僕の舞台をきっかけに“宝塚”をご覧になる方もいますが、もともとそういう人たちではなくて、「一緒に歌いたい、騒ぎたい、椅子に固定されているのがストレス」という方が多いですね(笑)。

福田 今作の場合、西川さんのシーンは立ち上がって観劇してもらいたいですよね。いっそのこと。

西川 そうなればいいな。

西川貴教

西川さんは脚本を読まれたときの印象はいかがでしたか。

西川 この作品を日本で上演するにあたって一番の難しいところは、いかにコメディとして成立させるかだと思いました。僕はロンドンのウエスト・エンドやアメリカのブロードウェイ、あるいは東京や大阪といった、どこで上演するかでコメディの質が違うと感じているんです。それらのせめぎ合いで、福田(雄一)監督は執筆に相当苦労されたんだろうと思って。だから、監督の上演台本が出来上がるのに時間がかかったんですよね(笑)。

福田 ふふふ。すみません。

シェイクスピアを誰にしようか考えたときに最初に浮かんだのが西川貴教だった

では、福田さんは西川さんをシェイクスピアに起用したきっかけはあったのでしょうか。

福田 今作でシェイクスピアを誰にしようかと考えたときに、最初に浮かんだのが、西川さんでした。プロデューサーに「西川さんはどうですか?」と聞いたら、「西川さんは主役しかやらない」と言われて(笑)。今回のシェイクスピアはとてもいい役ですが、主役ではないんですね。それで、キャスティングはいろいろと相談しながらも、結局着地できずに、いつの間にか忘れ去っていたんです(笑)。

(笑)そこからどうなったんですか?

福田 あるとき、フジテレビの『ワイドナショー』を観ていたんです。そうしたら、西川さんが出演されていて、急にシェイクスピアのことを思い出して(笑)。とにかくおいしい役だし、お話だけでもしたかった。僕はちょうど『堂本兄弟』(CX)の構成作家もしていたので、この番組に出演していた西川さんと無関係ではないから、それを利用しようと画策しました(笑)。まず、同番組の構成で西川さんの親友の津曲ラッキー(津曲裕之)さんに会わせてくださいとお願いをしたんです。そうしたら「西川さんが近々に会ってくれる」とお返事いただいて。ただ数日後には僕の事情で海外に行かないといけなくて「ああ、しばらくお会いできないな」と困ってたんです。そうしたら、その翌日でしょうか。僕が脚本・演出をしている井上芳雄くんの『グリーン&ブラックス』(WOWOW)の収録にスタジオに行ったら、『堂本兄弟スペシャル』(CX)を収録の貼り紙があって、「おい、西川さんいるじゃないか!」と。ただ、まだ西川さんとそれほど親しくなかったので、まず仲良しのKinKi Kidsの楽屋に行って周りの様子を伺いつつ、思いっきり飛び込んで、シェイクスピア役をお願いしました(笑)。

そのときどんなお声がけをしたんですか。

福田 とにかく西川さんを口説き落としたくて、何を伝えたのか覚えてないんです。ちなみに、僕と同じぐらい妻も西川さんの大ファンだったので、出演のOKをいただいたときの妻も尋常じゃないテンションでしたね(笑)。彼女は、ずっと「稽古場に行きたい」と言っていました。

西川 そこまでおっしゃっていただけると幸せですね(笑)。福田さんにお会いする前日の夜です。津曲さんから「福田さんのこと覚えてる? 会いたいと言ってるよ」と着信があったんです。僕は「いいですよ。候補日を教えてもらったらスケジュールを合わせます」とお伝えして、翌朝『堂本兄弟』のために控え室にいたら、津曲さんから突然「福田さんがドアの前にいます」と連絡があって(笑)。

福田 あはは。

西川 「えー!? スケジュール出すって説明してたよね?」って(笑)。もちろんそんなことは言わずに、慌てて控え室のドアを開けたら本当に目の前にいらっしゃるんです。

福田 だってこんな運命的なことありますか? 『ワイドナショー』で西川さんを思い出して、次の日にスタジオに行ったら控え室にいるんだから、もうこれは運命です。神に祝福されたミュージカル(笑)。

西川貴教は天然のシェイクスピアです

西川さんにとってシェイクスピアとはどんな役ですか。

西川 ブロードウェイ版は、70年代や80年代のロックスターをいっぱい鍋に入れて、煮詰めて、濾過したような役なんです。ご覧になっていただけたら、たとえばこの台詞や所作はフレディ・マーキュリーのパロディだとわかると思います。それでも、これが今、高校生や大学生の甥っ子や姪っ子に話しても何ひとつ通じないんです。

福田 元になったネタさえ通じない時代になってますよね。

西川 そうなんです。だから丁寧に扱わないと、よくわからなくなってしまうので、どこまでパロディにするのか探りながら、福田さんの台本と照らし合わせて役づくりをしていこうと思っています。ただ、僕は懸命に役づくりをしているのに、僕以外の方は稽古場でみんな仲良く楽しそうなんです。稽古場にくるとシェイクスピアは一番寂しい役だと思いました(笑)。

福田 でも今日、衣裳合わせをしていて「銀色がいい」「金色がいい」と光り方の問題で衣裳さんを呼び出しているんです。天然のシェイクスピアですよ(笑)。だから、この舞台のシェイクスピアは西川さんだから面白くなるんです。衣裳にさえこだわりを持っている時点でT.M.(西川貴教)先輩面白いなって(笑)。

西川 何がいいか悪いではなくて、衣裳さんのプレゼンをとにかく聞きたかった。あなたは、「シェイクスピアを愛していますか」と。

福田 あはは。それは劇中の感じと同じですよね。

シェイクスピアが歌う「ウィルパワー」という曲がこの演目を象徴している

(笑)稽古はいかがですか。

西川 置き去りです(笑)。明日は通し稽古だから頑張るぞと思ったら、着信があって、「明日の稽古なくなりました」って……ええっ! シェイクスピアは『ドラゴンボール』に出てくる一日が外界の一年に相当する“精神と時の部屋”に隔離されていると思いました(笑)。

福田 簡単に言うと、出番が遅いんですよね(笑)。1幕はなかなか登場しない。ただ、登場したら、そのインパクトがハンパない。だから、シェイクスピアが歌う「ウィルパワー」という曲がこの演目を象徴しています。ミュージカルファンも大好きな曲ですし、西川さんの歌稽古を聴いたアンサンブルたちが、テンションが上がって、僕に「早く聴きに来てください」って叫んでいましたね。

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