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PS4で甦った未完の大作『シェンムー』の魅力を振り返る

PS4で甦った未完の大作『シェンムー』の魅力を振り返る

Kickstarterのクラウドファンディングにて、“最も短時間で100万ドルを集めたビデオゲーム”というギネスレコードを記録したアクションアドベンチャーゲーム『シェンムーIII』。2019年8月27日の発売に先駆けて、今から約20年まえにドリームキャスト用ソフトとしてリリースされた『シェンムー 一章 横須賀』(以下、『シェンムーI』)と、『シェンムーII』を一本にまとめた『シェンムー I&II』がPlayStation®4用ソフトとして11月22日に発売された。『シェンムーIII』でも主人公となる芭月涼が歩んできたストーリーを復習するのにピッタリのタイミングだ。
ちなみに『シェンムー』はもともと全11章からなる壮大な構想を1章(1作)ずつリリースする予定が立てられていたのだが、諸般の事情により、続編の『シェンムーII』では3章から6章の物語が収録されているため、章でのナンバリングではなくなっている。
このゲームを愛してやまないファンであれば、かつてドリームキャストでこの2作を遊び尽くしていたとしても、改めて『シェンムー』が登場したことを喜び、そして間違いなく購入しているに違いない。しかし、なかには「当時はドリームキャストを持っていなかったから遊べなかった」という人もいるだろう。福音書の有名な一節を拝借しつつ、声を大にして言いたい。「 1999年当時、ドリームキャストで『シェンムー』を遊んだことがない者は、まずこの『シェンムー I&II』を遊びなさい」と。

文 / クドータクヤ


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What’s シェンムー? その功績を追う!

『シェンムーI』の内容をご紹介するまえに、まずは1999年に『シェンムー』が与えた衝撃について述べたい。
当時、セガの第2ソフトウェア研究開発部(通称、AM2研)の部長を務めるゲームクリエイターの鈴木裕氏が、ドリームキャスト用の新作RPG『プロジェクト・バークレイ(仮題)』を開発しているという第1報をゲーム専門誌で目にしたとき、「これはとんでもないゲームがやってくる」と期待せざるを得なかった。
鈴木裕氏とAM2研といえば、プレイヤーの操作に合わせて筐体が左右に動く“体感ゲームシリーズ”で1980年代中盤のゲームセンターを席巻し、1990年代には社会現象を巻き起こした3D対戦格闘ゲーム『バーチャファイターシリーズ』を送り出したことで有名だ。このチームがドリームキャストで新作を作るのであれば、当たり前のゲームではないということは予想ができた。

▲もともとは『バーチャファイター』のRPGという想定をしていたこともあり、涼の使用する技は『バーチャファイター』の代表キャラクター・結城晶のものに似ている

▲情報収集の主な場となる横須賀・ドブ板にあるゲームセンターYouでは、鈴木裕氏がゲームデザインを手がけたバイクレースゲーム『ハングオン』や3Dシューティングゲーム『スペースハリアー』がまるごと遊べるというアピールポイントもセガファンの心を打った

秘密のベールに包まれたそのソフトは、これまでにないゲーム体験を提供する新ジャンル”FREE(Full Reactive Eyes Entertainment)“であるということ、全16章にも及ぶ長編であること、初作となる第一章は神奈川県・横須賀市を舞台にしていること、そして正式タイトルが『シェンムー』に決まったことなどが明らかになっていく。日に日に押し迫る発売日に向け、週刊ゲーム誌に速報として掲載される静止画キャプチャーの一枚一枚を食いつくように見つめ、「どんなゲームなんだろう?」と想像力を働かせて期待を膨らませていた。それだけではなく、体験版ディスクやプロモーションビデオが収録されたVHSといった販促品をゲームショップで入手し、製品版を一日も早く遊びたいとワクワクしながら心待ちにしていたことを思い出す。
前代未聞の莫大な制作費が注ぎ込まれた『シェンムー』は、大々的な宣伝によって当時のドリームキャスト向けタイトルとしては大ヒットを記録。しかし、商業的には結果を残すことができず、『シェンムーIII』が製作されるまで18年もの年月を要する未完の大作となってしまった……。
いつしかE3(Electronic Entertainment Expo)の開催時期には、「『シェンムーIII』の発表はまだかな?(笑)」と、例年のネタにされているのをいくつか目にしてきた。だがその反面、現在のアクションアドベンチャーやRPGで主流となったオープンワールドの先駆けであるということや、『シェンムー』がなければ『グランド・セフト・オートIII』や『龍が如く』は生まれなかったといった見かたがされるようになり、ゲーム史における大きなターニングポイントとしての再評価に繋がっていく。
だが、いちファンとしてはこうした見かたや評価を喜々として受け入れることはしない。あとにも先にも、『シェンムー』は『シェンムー』でしかない唯一無二のゲームだからだ。

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