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加藤和樹&鎌苅健太&河合龍之介が、今を「自分らしく生きていく」ことを体現する、project K『僕らの未来』開幕レポート

加藤和樹&鎌苅健太&河合龍之介が、今を「自分らしく生きていく」ことを体現する、project K『僕らの未来』開幕レポート

加藤和樹、鎌苅健太、河合龍之介。ミュージカル『テニスの王子様』で出会った3人が10年ぶりに共演する舞台、project K『僕らの未来』が、12月6日(木)品川プリンスホテル クラブeXにて初日を迎えた。
初日開幕直前に行われた初日会見と、ゲネプロの熱演を写真&レポートでアップ! 青春時代を共に過ごした3人が様々な経験を経て、30代を迎えた今だからこそできる密な芝居の空気をお届けしたい。

取材・文・撮影 / 片桐ユウ

かけがえのない仲間たちと、“自分らしく生きていく”

加藤和樹がアーティスト活動を行って初めて作詞を手がけた「僕らの未来~3月4日~」(2007年発表アルバム『Face』収録)を原案にした本作。「生きる年数は決めることはできないが生き方だけは決められるだろう」をテーマに、自分の意志や力でしっかり生きるという考え方を問う作品となっている。

初日会見には、加藤和樹、鎌苅健太、河合龍之介、なだぎ武、吉高志音のキャスト5名全員と、脚本・演出のほさかようが登壇した。

藤代 樹(ふじしろ いつき)役の加藤和樹は「自分の楽曲をもとにこうした舞台が上演できるということを非常に嬉しく思っております。少ない人数での凝縮されたお芝居。多くの人に届けばいいなと思っています」とコメント。

安藤 健(あんどう たける)役の鎌苅健太は「僕の大好きな加藤和樹の『僕らの未来~3月4日~』という楽曲が、こういうふうに時を経て舞台になるということがとても嬉しいですし、待っていてくださった方がいるのかなと思っています。そしてこの大好きなメンバーと、いろいろな世代に伝わる作品にすることができたと思いますので、みなさんと素敵な時間が過ごせたらなと思っています」と、喜びを語った。

倉田陽介(くらたようすけ)役の河合龍之介は「この世界に入ったときからの仲間であったメンバーと特別な時間を過ごせています。世代を超えた話ということで、なだぎさんと志音がいて、僕たちの世代だけでなく幅広い世代の方に共感いただけるような作品になったと思っています」とアピール。

干場武夫(ほしばたけお)役のなだぎ武は「今回のお芝居は、この(加藤和樹の方を向いて)ラーメン二郎さんの楽曲がもとになっているということで……」と、“ラーメン二郎”好きで知られる加藤の名前を間違えるギャグを挟んで会場に笑いを起こしつつ、「親睦会のときに、楽曲のバックボーンもいろいろ聞かせていただきました。それぞれが等身大の年代を演じるということで、世代ごとの“今”を切り取っているお芝居です。つねに“日常”を感じる作品になっています」と、本作の芝居について真摯にコメント。だが最後は「上演時間中は、ずっと私を見ていただければと思います!」と締めて、鎌苅から「いや、なんでですか!(笑)」とツッコまれていた。

神山レオン(かみやまれおん)役の吉高志音は「今回出てくる三世代の中で、一番下の世代をやらせていただきます。世代ごとに生きてきた時代や場所だったりが違うので、考え方は食い違ったりもしますが、想いは一緒だったりすると思うので、そこをいっぱい吸収して、それを舞台上でも活かせるように頑張ります!」とフレッシュに挨拶。

観る人たちが自分のことでは?と思う作品

脚本・演出のほさかようは「“リアル”に寄せた芝居になっています。これだけキラキラした人たちを使って、とてもシンプルに“演劇”というものを信じてつくってきた作品です。派手なものだったり、エンターテインメントというものを観ている方々からしたら、『あれ? おとなしくない?』『こんなにしっかり観るんだ!』と不思議な感覚になるかもしれませんが、『自分たちのことをやっているんだ』と思っていただけるようにと、考えながらつくってきた作品です」と明かし、「それぞれの楽しみ方で観ていただければと思います。面白くなっていると思いますので、どうぞ期待してお待ちくださいませ!」と、力強く宣言した。

その後、登壇者たちへ「稽古場でジェネレーション・ギャップを感じたことは?」という質問が投げかけられ、10歳以上、歳の離れたキャストたちから次々にエピソードが飛び出した。

吉高が「先輩方が口ずさんでいる歌がわからない」と口火を切ると、鎌苅が「ネットから入った世代とは違う気がする。僕らはテレビがメインだったから」と受け取り、「有名なCMとかも知らないんですよ。“ヤキソバン”(UFO仮面ヤキソバン/日清食品のCM「日清焼そばU.F.O.」で登場したキャラクター)も知らなかった!」と具体例を挙げる。すると加藤も「そうそう。“あげ玉ボンバー”(ヤキソバンの必殺技)も知らないなんて!」と重ねて、会場の一定世代は大爆笑となった。

河合が「でもYouTubeとかを使いこなしているから、僕らが知らないことを知っているよね」と吉高を優しくフォローすると、鎌苅が「最近の流行りって何?」と吉高に質問。吉高は「やっぱり『TikTok』(短編動画共有アプリ)ですかね?」と回答するが、すかさず、なだぎが「ファミコンのゲームで『ディグダグ (DIGDUG)』っていうのがあって、それなら知っている」と、懐かしネタをぶっ込み。

その後も、加藤が「『ノストラダムスの大予言』も知らないでしょ? 『明日から学校行かなくてもいいんだ~』ってなった気持ちとか」と“懐かし話題”を出して、吉高が「あ、僕は1999年生まれなんです!」と答え、“世紀末ネタ”で盛り上がりを見せていた。

初日会見の最後は、改めて加藤からメッセージ。作品のスタートを振り返って「原案の楽曲は、もともとは地元の仲間たちに向けたメッセージソングでした。今回、企画の段階から参加して、物語がゼロから構築されていく様、ひとつの舞台になっていく過程を目の当たりにすることで、いつもとは違う想いもあり、さらにそれをかけがえのない仲間たちとできることに感慨深いものがあります」と、しみじみした様子。続けて「今の時代だからこそ伝えられるものがある作品だと思います。生きにくい今の時代、生きることに疲れてしまった人々に向けて、とても大事なメッセージを込められたと思っています。“自分らしく生きていく”ということがこの作品で一番伝えたいこと。自分も自分の役を演じていて、とても考えることがありました。それも含めて舞台上で全部出して、少しでも心に響くものを、このメンバーで伝えられるものを届けたいと思います」と、決意を語っていた。

等身大の彼らの物語。そして観る人すべての物語

この後は、ゲネプロの模様を登場人物の役柄をまじえてレポートする。

ステージは、Bar「ナーサリー来夢」の内部。上手にバーカウンター、下手寄りにテーブル席とソファ。さらに2階へ続く階段もあり、劇場の空間を生かしたつくりになっている。内装や小物がオシャレで、こだわりがうかがえる。 ステージ中央には客席と行き来できるように階段がセットされており、そこがBarの入り口だ。役者は客席通路を通って出入りするため、彼らの芝居を間近で感じ取れる。

開幕。Bar「ナーサリー来夢」のマスター・干場武夫(なだぎ武)とアルバイトの神山レオン(吉高志音)のやりとりから、さっそく“ジェネレーション・ギャップ”が漂う。干場は48歳、レオンは18歳。10代から見れば“おじさん”の主張は鬱陶しく感じるだろうし、中年の世代にとって“若者”の感覚は、理解し難いものが多々あるだろう。

そこへやってきたのが、かつて住み込みでこのBarの店員をしていた藤代 樹(加藤和樹)。彼は日本語教師として途上国を転々としており、底抜けの明るさとグイグイと周りを巻き込む強引さを持っている。

続いてスーツ姿の倉田陽介(河合龍之介)、映画好きが高じて映像ディレクターの職についた安藤 健(鎌苅健太)が登場。

高校卒業以来、久しぶりに再会した3人は近況を報告しつつ、昔ながらに騒いで旧交を温める。だが遠慮のない会話の中で、それぞれがささくれのように引っかかるポイントがあり、それはレオンの主張をキッカケに大きく裂けて、そこから本音が溢れ出していく……。

張り詰めるような緊張感が四六時中漂っている演劇ではない。だが劇場の空気を震わせ、埋め尽くす熱量がある。それは間違いなく、5人の役者が生み出す摩擦と情熱による“芝居”の力だ。

加藤和樹が演じる藤代は、初対面のレオン相手にも「人は音楽で繋がれる!」とギターを持ち出してかき鳴らしてみせる。“夢を追いかける”ことを続けている人間で、カリスマ性と実現力を持った人物だ。だからこそ、そうでない人を無意識に傷つけてしまう場合もあるが、誰かの背中を押す力もある。後半で明かされる彼が夢を追う理由には、ハッとするような衝撃と切なさがあった。

鎌苅健太が演じる安藤は、茶目っ気とツッコミで誰に対してもフォローを欠かさない人物。だが、道化風の振る舞いの中に自身の事情を隠している。夢と、見栄と、生活。様々なタイミングが重なって葛藤する彼の立場は、共感性が高い。

河合龍之介の演じる倉田は、包容力を備えた大人で一番の常識人に見えるが、密かにわだかまる想いを抱えている。大多数の人間が行く道の代表のようでもあり、それ故の苦悩が身に迫る。

演じている役者たちとの共通性を感じさせるような人物像と、お互いをよく知る間柄であることが何気ない絡みからもうかがえ、芝居という仮初めの時間と設定にリアルな感触を加えている。
加藤和樹、鎌苅健太、河合龍之介。彼らの“if”の人生ではないかと一瞬混ざって考えてしまうほど、それぞれの生き方が生々しく伝わってきた。

「テニミュ」時代の彼らを追ってきたファンにとっても、感慨深いものがあるだろう。華やかなステージで脚光を浴びた彼らが、その後も役者として努力を重ねてきたからこそ磨かれてきた力、見る人を惹き付ける力強さと大きさを肌で感じることができる。

そして3人の配役は「彼にしかできない」と思わせ、「彼らならでは」の関係性に見える一方で、すべての役の立場や心情は、非常に普遍的な「身近な誰か」あるいは「いつかの自分自身」を思い出させるものとなっており、幅広い世代に刺さる物語に仕上がっていることを特筆したい。

これは等身大の彼らの物語。そして観る人すべての物語だ。

3人の役は33歳。多くの人が、このあたりの年齢で“人生の岐路”を感じるのではないだろうか。10代で学校を卒業したときに決めた“進路”。ひたすら方向を変えずに突き進む人もいれば、方向転換を余儀なくされる人もいただろう。そしてどこに向かっても、躓くこともあれば壁にぶつかることもある。だが、一歩ずつでも前に進めば未来は見えてくる。どの道にも困難はあり、同時に希望がある。どんな状況も自分次第だというメッセージを受け取ったように思えた。

その道に立ったばかりの神山レオンを演じる吉高志音と、その道をさらに進んだ先にある場所に立っている、なだぎ武が演じる干場武夫。彼ら3人を挟んだ三世代が登場したことで、さらに奥行きが感じられる物語となっていた。

東京公演は12月16日(日)まで品川プリンスホテル クラブ eXにて上演。その後、大阪公演が12月20日(木)~12月23日(日・祝)まで大阪ビジネスパーク円形ホールにて上演予定。終演後は「『僕らの未来』SPECIAL TALK SHOW~俺たちの現実~」として、project Kとゆかりのあるゲストを迎えたスペシャルトークショーも開催される。

project K『僕らの未来』

東京公演:2018年12月6日(木)~12月16日(日)品川プリンスホテル クラブeX
大阪公演:2018年12月20日(木)~12月23日(日・祝)大阪ビジネスパーク円形ホール

STORY
高校卒業後、都会で期待と不安を感じ社会と戦ってきた3人も、15年経ち30代半ばになろうとしていた。
夢を描いていたあの頃、現実を知った日々、道半ばの彼らがたくさんの人々に出会いながら歩んできた“僕らの未来”とは?
「生きる年数は決めることはできないが生き方だけは決められるだろう」
こんな時代だからこそ、自分の意志や力でしっかり生きるという考え方を問う。

原案:加藤和樹「僕らの未来~3月4日~」
脚本・演出:ほさかよう
脚本協力:亀田真二郎(東京パチプロデュース)

出演:
藤代 樹 役:加藤和樹
安藤 健 役:鎌苅健太
倉田陽介 役:河合龍之介
千場武夫 役:なだぎ武
神山レオン 役:吉高志音

オフィシャルサイト
Twitter(@project_K2018)

関連音楽:加藤和樹アルバム『Face』(「僕らの未来~3月4日~」収録)