冒険Bリーグ  vol. 6

Column

ストリートで育まれた才能。琉球、並里成はBリーグ最高の“ファンタジスタ”

ストリートで育まれた才能。琉球、並里成はBリーグ最高の“ファンタジスタ”

『冒険Bリーグ』の第六回は、琉球ゴールデンキングス(以下、琉球)の並里成(なみざと・なりと)を取り上げる。Bリーグの中でもずば抜けた個性を持ち、バスケの楽しさを表現する男の魅力と、故郷・キングスへの復帰から起こっている良き変化を皆さんにお伝えしたい。

まだBリーグが開幕する少し前、琉球のスタッフに沖縄のバスケ事情についてお聞きしたことがある。

沖縄では2011年に停波するまで英語の「米軍放送」が地上波で無料放送されていた。東京や大阪の視聴者が衛星放送でNBAに親しみ始めた時期は1990年前後だが、沖縄の視聴者は本場のプレーにずっと早い時期から接していたのだという。

それも一因になって、沖縄にはバスケをプレーし楽しむ文化が根付き、それが琉球を後押しする“熱”にもつながっている。プレイヤーも「部活で先生に教わった」ような優等生でなく、いい意味で奔放な、自由な発想を持ったタイプが多い。トップレベルから目で学び、ストリートでそれを真似して技を磨くことで、天然の才能が育まれる。その代表格が並里成だろう。

並里はBリーグでも最高の“ファンタジスタ”だ。172㎝・72㎏とサイズには恵まれないが、ボールハンドリングと動きの切れは唯一無二。さらに隙間へグイグイ割り込む力強さもある。

彼はDFを切り裂くドライブを持ち味とする“スラッシャー”で、意表を突くパスも持っている。2018-19シーズンの個人記録を見ると1試合の平均アシスト数「7.6」はジュリアス・マブンガ(京都)に次ぐ2位で、得点能力もB1のポイントガード(PG)では屈指だ。

29歳で迎えた今季は4年ぶりに琉球へ復帰し、故郷でプレーすることになった。琉球はBリーグ発足後から精力的な補強を見せており、この開幕前にも並里、橋本竜馬とトップレベルのPGを獲得している。

2018-19シーズンの琉球は12月9日の栃木ブレックス(以下、栃木)戦を終えて15勝6敗と好調。西地区の首位で、B1全体を見ても3位の勝率を記録している。栃木との連戦はB1全体1位の難敵に対して1勝1敗で終えた。

8日の初戦は26点を決めた並里の活躍もあり、琉球がダブルオーバータイムの激闘を93-90で制した。第2戦は栃木が持ち味の“堅守速攻”で上回り、77-67で勝利している。

9日の栃木は高い位置からボールホルダーに激しくプレスをかける守備を多用し、それが奏功していた。ただ試合後の安齋洋三ヘッドコーチはこう説明していた。

「プレスは(並里)成がいない時間帯に多くやろうと元々思っていた。成はすごいボールハンドラーだし速いので、なかなかプレッシャーをかけ続けることができない」

栃木の守備はB1最高レベルだが、この男に対しては自重していた。一方で第2戦は並里の得点が「7」に抑えられた。これについて福岡第一高の後輩でもある栃木の鵤誠司はこう説明する。

「シュートのタッチが良くて、本当に止めにくい選手になっていた。一人だったら厳しいですけど、みんなで助け合った」

栃木はインサイドの大型選手がヘルプに寄って上からシュートコースを消し、キーマンの得点を抑える狙いだった。一方で並里は7アシストを記録し、相手を引き付けて生まれたスペースをきっちり使っていた。

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並里は滋賀レイクスターズでプレーしていた過去2季に比較して、ターンオーバーをはっきり減らしている。1試合平均で見ると「2.6」から「1.7」に改善した。攻撃力、得点力の高い選手がそろう琉球だから彼も無理をする必要がない。だから余裕をもって、安定したプレーを見せられる。

しかし並里自身はまだボールロストの頻度を多く感じている様子で、こう述べていた。
「新チームになって、選手一人ひとりがお互いをまだちょっと理解できていない部分がある。その部分のズレが出ているだけなので、もっともっと減らしていける」

琉球は並里と岸本隆一を並べる“ダブルガード”のラインアップを多用している。岸本は長くキングスのオフェンスを担っていたPGだ。両雄並び立たずと思いきや、本人は「楽しくやっています」と前向きだ。そして彼はこう続ける。

「ボールを向こうに預けてウイングになれるというのは、僕としてもやりたかったバスケ。岸本選手に限らず橋本選手、石﨑選手もハンドラーになってくれるので、そこはやりやすい」

並里には日本代表のPGにも名乗りを挙げて欲しい人材だが、代表については力みなくこう答えてくれた。

「もちろんバスケット選手である限り、上は目指していきたいなと思います。ただそれに行くためにはまず自分のパフォーマンスを上げ、チームが結果を残すことが大事。目標としては置いていますけれど、僕のスタイルを好んでくれてぜひ使いたいと言ってくれれば行くし、変に変えるつもりはありません」

最後にどうしても気になっていた疑問をぶつけてみた。この男が今季から取り入れているヘアスタイルは一体なんなのか。そしてなぜその髪型にしたのか……。髪にビーズを細かく編み込んだ手のかかった髪型で、本人曰く「中途半端は嫌だった」とのこと。

さらに彼は真顔で「佐々さんが僕にやってくれと言ったので」とイメチェンの理由を説明し、佐々宜央HCにも「ご想像にお任せします……」と煙に巻かれてしまった。

ただ“普通のバスケ選手”にとっては奇抜な髪型も、並里がやれば似合う。キングスのファンタジスタは、バスケの楽しさを全身で表現している。

取材・文 / 大島和人 写真提供 / B.LEAGUE

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著者プロフィール:大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。大学在学中にテレビ局の海外スポーツのリサーチャーとして報道の現場に足を踏み入れ、アメリカの四大スポーツに接していた。損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年から「球技ライター」として取材活動を開始。バスケの取材は2014年からと新参だが、試合はもちろんリーグの運営、クラブ経営といったディープな取材から、ファン目線のライトなネタまで、幅広い取材活動を行っている。

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