Interview

どこまでもリアルに。そのときの自分を歌詞に残す、植田真梨恵の魅力

どこまでもリアルに。そのときの自分を歌詞に残す、植田真梨恵の魅力

どこまでもリアルに。そのときの自分を歌詞に残す、植田真梨恵の魅力

植田真梨恵のニューシングル「ふれたら消えてしまう」は、夏らしい爽快感と疾走感に富んだギターロックサウンドに、時間と記憶をめぐる実感について切実な筆致で綴られた歌詞が乗っている。ポップでありながら、どこまでもリアルな歌を描く。それが植田真梨恵というシンガーソングライターだ。彼女がいま立っている地平に迫った。

インタビュー・文 / 三宅正一


紙資料に2016年5月9日のブログの文章が引用されてあって。実直な言葉がバーツと綴られているんですけど、それゆえになかなかカオスな内容で。「そんな情緒不安定な私ですが」とも書かれていますが。

そうですね(笑)。こういう状況を世間では情緒不安定って言うんだろうなって。

でも、いまの植田さんにはその状態にある自分を笑って話せる軽やかな強さがあるなと思っていて。

そうかもしれない(笑)。100対100で気持ちがスパッスパッって変わっていくから、極端なんですよね。前シングル「スペクタクル」を書く前は感情の波が細かく揺れ動いていたんですけど、いまはそれが抜けて、極端に感情が切り替わっていく感じで。困ったなあという感じではあるんですけど、どっちでもいいんだろうなという感じでもあって。

そのときどきの自分と向きあえばいいという感じなのかな。そうするといろんなタイプの曲ができるのではないかと。

そうですね。なるべくギアを軽くして曲を書いていこうという気持ちで。ひとことしゃべるくらいだったら、1曲書いたほうがいいと思うんですよね。だから、いろんなタイプの曲がけっこうできてますね。

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ニューシングルの表題曲「ふれたら消えてしまう」は、サウンドは爽快感に富んだギターロックなんですけど、歌詞の内容は切実で。このバランスが植田さんらしいなと思った。この曲は時間や記憶、現実の実感について歌われていて。このトピックはいまの植田さんにとってとても大きいんだろうなって。弾き語りの3曲目「まわりくるもの」も地元にいたころの自分といまの自分を照らし合わせるような筆致だし。

大阪で一人暮らしを始めて今年で10年なんです。それがなんとなく自分の頭のなかにずっとあって、いまになって感じることがあるなって。音楽活動を続けていくこともそうだし。メジャーデビューからも2年が経って、ときの流れを感じていますね。「スペクタクル」以降はいま自分が抱えている感情がそのまま曲になってるので。

感情をそのまま曲にすることを自分で許してるし。

許してますね。なるべくこういう曲を書いたほうがいいのかなってそのときどきでがんばって書こうとしていたところから、いまは自分のなかにない感情は曲にできないなと思ってるので。

「ふれたら消えてしまう」はどのようにできていったんですか?

ギターを新調して(フェンダーUSA 1973年テレキャスターデラックスの製作初年度モデル)、ギターをいっぱい弾こうと思って家で鳴らしてたんです。そのときにメロディも浮かんで、気持ちよく歌っていたらそれに引っ張られる形で歌詞も書いていって、そのままメロと歌詞がくっ付いていったんです。アレンジはひさしぶりにインディーズ時代にとてもお世話になっていた岡崎健さんにお願いして。

サウンドの相性もよさそうということで?

そうですね。華やかなサウンドにしたいというのもあって。そもそもアレンジャーさんにお願いするのをやめようと思っていたわけではなく、“いっせーのーせ”(サポートメンバーとアレンジする際のクレジット)でアレンジを固めることが大事だと思っていたので。その流れが一段落して、「ふれたら消えてしまう」はやりたいこととか、曲をどう育てていきたいかと考えた時に、アレンジャーさんにお願いしたほうがいいなと思ったんです。

ひさしぶりの作業で成長を感じてもらえたんじゃないですか?

そうだったらいいですね。メジャーデビュー以降は自分でディレクションする部分も多くなっていたので、自分が欲しているアレンジのイメージをより細かく伝えられるようになったのはよかったなと思います。楽しいレコーディングでした。

この曲を聴いて、人の脳はあることが起こった8秒後に過去と認識するという説を思い出したんですけど。

へえ、そんな説があるんですね! 知らなかった。私自身は、いつも生きているなかで、悲しいとか、寂しいとか、楽しいとか、そういう感情ってその出来事自体が過ぎ去ってから思い返して実感することが多いなと思ってこの曲の歌詞を書いたんですけど。過去の写真を見ても「あ、この時期の私はいい顔をしてるな」とか、逆に「すごくやつれてるな」とか、「そういえば、あのときああいう恋をしてたな」とか、自分の過去の顔を見て後々実感が湧いてくる感覚があって。

いまみたいにスマートフォンのカメラロールを何気ない時間にすぐ見返せる時代だと、そういう気づきを覚えるタイミングは多いですよね。

そう。思いがけずそのときのことを思い出して、愛おしい時間は戻ってこないから愛しいんだよなって思ったり、でも、やっぱり寂しいなって思ったり。特に夏ってそういう時間を焼き付けやすい季節だと思うし。

幼いころの夏休みの記憶もほとんど断片的な瞬間しか覚えてなかったりしますよね。

ね。ほんの一瞬のことを愛おしく思ったり。だからこそ、人はたくさん写真を撮ってそれを残しておきたいのかなって。「スペクタクル」で“変わらないことがあって嬉しくなるのは 変わりつづけるから”って歌ってるんですけど、ようやく人が変わり続けるのは当然のことなんだって気づいたあとに、それを忘れても忘れなくても、音楽や写真でそのときの自分を残すことはすごく素敵なことだなって思ったんですよね。

こと音楽に関しては、それはソングライターの特権でもあるし。植田さんもご自身の過去の作品を聴き直していろいろ思い出すこともあるんじゃないですか?

そうですね。ここ2年くらい自分の過去作を全然聴いてなかったんですよ。でも、つい先日、福岡の実家に帰省したときに母親が運転するクルマのなかで『U.M.E.』を聴いて、懐かしいな、良いアルバムだなと思いました(笑)。歌い方こそ気になる部分がいっぱいあったんですけど、当時の私が表現しようとしていたことがちゃんと曲に凝縮されていたので。

曲のなかにはもう存在しない自分もいるだろうし。

そう、絶対にそのときと同じ気持ちになれないないからすごいなって思いますね。自分は音楽家なので、ひとことしゃべるよりも曲を書く。Twitterにつぶやくよりも歌に変えていくほうが絶対素敵だと思うから。たとえば心の深いところで示したい感情を私が持っているとしたら、絶対ちゃんと音楽で表現していきたいなって。

歌詞は切実だけれど、この曲を夏の野外で鳴らしたら間違いなく気持ちよさそうですよね。

そうですね。最初は青空の下で気持ちよくギターを弾きたいというところから始まった曲でもあるので。夏のライブを観てくださった方が、この曲を聴いて感動してくれたとしたら、いつか「あの夏はよかった」って思い出してもらえたらいいなって。

2曲目「ルーキー」もアッパーで、オルタナティブなロックサウンドであると同時に、野球を舞台にしたドラマティックな歌詞の構成とメロディは歌謡曲があるなと。

そう、マイナー調でブラスバンドが弾くといい感じに聴こえるメロディラインは歌謡曲を意識して書きました。代打でようやく出番がまわってきたルーキーがここ一番の場面で勝負するのを応援したいという気持ちで書きました。

歌謡曲は幼いころから聴いてたんですか?

好きでしたね。最近気づいたんですけど、どうやらうちの母はステージママだったみたいで。ずっと母は否定していたんですけど(笑)。私が歌手を目指すきっかけになった小2のときに出場したのど自慢大会があったんですけど、その次の年は友だちとピンク・レディーの「サウスポー」と「ウォンテッド(指名手配)」を歌ったんですよ。

そう考えると「ルーキー」はちょっとピンク・レディー感ありますね。

うれしいです。

歌謡曲でほかに好きな曲は?

中森明菜さんの曲が好きですね。松本隆さんが手がけている松田聖子さんの曲も好きですけど、カッコいいと思うのは明菜さんの曲が多いですね。

「まわりくるもの」はいまでも歌うことが自分の夢であり続けているんだという思いが綴られてますね。

たまに人に「夢を叶えましたね」って言っていただけるんですけど、自分では全然そうは思ってなくて。全然そんなことないって思うんです。私はずっと子どものころから歌手になりたいと言い続けてるので、子供のころに憧れたそのままの形でいつか夢を叶えたいと思ってます。

でも、いまプロの歌手であることも事実ですよね。

そのようです(笑)。

でも、まだ夢を叶えたという感覚はないと。

実感はないです。先日、イエモン(THE YELLOW MONKEY)の復活ライブを観に行ったときに私がやっている音楽や歌手という職業は、こんなに素敵なものなのかってビックリして。周りのお客さんが復活の興奮にいるなか、私はただただイエモンの曲をライブで聴けるうれしさでいっぱいで。単純にいい曲すぎて泣くっていう(笑)。純粋に曲が素晴らしかったことに芸術を感じたんです。私がいま立っている道はそういうところなんだってすごく夢をもらいました。これからもその道を自分の足で歩いていきたいと思います。

リリース情報

2016年7月6日発売

【初回限定盤】

【初回限定盤】

【通常盤】

【通常盤】

「ふれたら消えてしまう」

【初回限定盤 <CD+DVD>】
GZCA-4146 ¥1,852+税
【通常盤 <CD+Photobook>】
GZCA-4147 ¥1,600+税

【収録曲】
1.ふれたら消えてしまう
2.ルーキー
3.まわりくるもの
4.ふれたら消えてしまう –off vo.-
5.ルーキー –off vo.-

【初回限定盤 DVD】
2015.11.30 shibuya eggman -hiki gatari live-
1.a girl
2.ハイリゲンシュタットの遺書
3.心と体
4.さよならのかわりに記憶を消した
5.クリア
6.わかんないのはいやだ

【通常盤付録 フォトブック】
・ジャケットのアートワークとつながるフォトブック
・32Pオールカラー (予定)
・スリーブ仕様

ライブ情報

植田真梨恵 SPECIAL LIVE”PALPABLE! BUBBLE! LIVE! -SUMMER 2016-“

7月23日( 土 ) 東京・赤坂 BLITZ

プロフィール

植田真梨恵


1990年9月22生まれ。福岡県、久留米市出身。B型。

中学卒業を期に、「歌を歌いたい」と、故郷福岡から単身大阪へ。
自らの音楽をジャンルで縛りたくないという思いから、15歳で作詞作曲を始め、16歳の春、力強いハイトーンボイスと怖いもの知らずのライブパフォーマンスがレコード会社スタッフの目にとまり、本格的な音楽制作活動に入る。
以降、17 歳で1st Mini AL『退屈なコッペリア』、18歳で2nd Mini AL『U.M.E.』、19歳で3rd Mini AL『葬るリキッドルーム』とコンスタントに、インディーズレーベルよりリリースを続け、2012年、初めてのフルアルバム『センチメンタルなリズム』をリリースし、夏にはアルバムを引っ提げてのワンマンライブ、【植田真梨恵LIVE”センチメンタルなリズム”】を東京と大阪で敢行。
続く2013年には三枚組シングル『心/S/サ』のリリースのほか、その圧倒的なライブでの伝播力から、【植田真梨恵LIVE「カレンダーの13月」】(東京・大阪)、【植田真梨恵LIVE”心/S/サ”】(東京・大阪)を含む、ワンマンライブ全公演SOLD OUTを記録。
2014年1月には渋谷クラブクアトロと梅田クラブクアトロにて、【植田真梨恵LIVE TOUR 2014 LIVE OF “LAZWARD PIANO” AT QUATTRO】を開催し、リリースもタイアップも絡めることなく成功に導く。
16歳の初ライブから実に7年、2014年8月6日、長年のインディーズ活動が実を結び、全国32局でパワープレイを獲得したシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビュー。
東阪で行ったワンマンツアー【植田真梨恵LIVE TOUR 2014 UTAUTAU vol.1】も早々にソールドアウトを記録。
続く11月にはギターレスのピアノロック「ザクロの実」を2ndシングルとしてリリースし、大晦日には、COUNTDOWN JAPAN FESに出演を果たす。
ピアノツアー【LIVE OF LAZWARD PIANO-青い廃墟-】で幕を開けた2015年は、2月にメジャー1stアルバムのリリースと初の全国4公演ツアー【植田真梨恵LIVE TOUR 2015「はなしはそれからだ」】を敢行。
初日LIQUIDROOMからファイナルBIGCATまで駆け抜けた。
夏にはインディーズデビューとメジャーデビューそれぞれの周年を記念した弾き語りワンマン【たったひとりのワンマンライブ vol.2】(東京・大阪)の開催と3rdシングル「わかんないのはいやだ」のリリース、秋にはこの年2本目の4公演ツアー【植田真梨恵LIVE TOUR UTAUTAU vol.2】をTSUTAYA O-EASTからスタートさせ、全国4都市を駆け抜けた。
2016年1月からは全国6都市8公演に及ぶピアノツアー【Live of Lazward Piano “Old-fashioned.“】を大阪市中央公会堂、東京キネマ倶楽部とSOLD OUTで終え、追加公演として、Motion Blue yokohamaにて【Live of Lazward Piano “Old-fashioned.” Special Edition!】を開催。
4月には、Billboard Live OSAKAにてスペシャルワンマンライブが決定するなど、活動の幅を広げている。
「届くべきところに届くまで歌い続ける」強い決意をもって、前進し続ける。