Interview

「自分が大嫌い」を克服するためにやってみた。わたなべぽんの感涙コミックエッセイ『自分を好きになりたい。』

「自分が大嫌い」を克服するためにやってみた。わたなべぽんの感涙コミックエッセイ『自分を好きになりたい。』

『自分を好きになりたい。自己肯定感を上げるためにやってみたこと』。そのタイトルとかわいらしい表紙のイラストを見れば、ライトな自己啓発本のようにも感じられるかもしれない。ところがこのコミックエッセイは、著者持ち前の軽妙な作風とは裏腹に、胸の奥にズシンと重い何かを置いていく。

わたなべぽんは、幼少期から母親との関係に悩んでいた。時に暴力をともなった厳しすぎる躾、精神的に追い詰められるほどの暴力的な言動、今で言えば虐待と呼ばれるかもしれないそれは、子供の許容量をはるかに超えていて、彼女をずっと苦しめていたのだという。本書は、そんな経験から自己肯定感を持てなくなった彼女が、少しずつ自分自身を認め、受け入れていく様を描いたリアルな物語だ。

ただ、主題はつらい経験そのものではなく、今の彼女がどうやって幸せを感じるに至ったか、そのプロセスにある。だから、これを読むべきは、子供時代に傷を負った人だけに限らない。日々の生活の中で毎日、あるいは時々、自分自身を好きになれない多くの人に、読めばきっと何かのヒントがもたらされるはずだ。

 

取材・文 / 斉藤ユカ


描いていくうちに昔の感情が蘇ってきて、泣きながら描いていました(笑)。

帯に書かれた「私が私でいることがラクになってきました。」という言葉が印象的でした。ぽんさんは本書を形にしたことで、気持ちがラクになったんですね。

そうですね。子供の頃のつらい記憶も含めて、私の人生なんだなと。それを受け入れるのはすごく大変で、だけど、改めて文字や絵で表現することで心の中や感情が整理できて、以前より自分の心に納得がいったという感じがしています。今回はその過程を描いているんですが、前から書かねばと思っていた本だったので、ここがまた一つのターニングポイントになるのかもしれないなと思っています。

コミックエッセイなのでとても読みやすいのですが、衝撃的な内容です。

私の中でも、消化した感情を紙に起こす作業だなと思っていたんですが、描いていくうちに昔の感情が蘇ってきて、泣きながら描いていました(笑)。あの頃言葉にできなかった感情を吐き出すように書きなぐって、漫画としてまとまらないこともありましたね。もともと「されたこと」よりも、「された」けど「どんな風にすれば生きやすくなるか」ということにスポットを当てたいというのがテーマだったんですが、素直に描くほどにやはりドロドロした気持ちが出てきてしまって……。自分でも吐き出すこととまとめることの作業の難しさを感じましたね。なので、こうして出来上がってホッとしています。

『スリム美人の生活習慣を真似したら、1年間で30キロ痩せました』や『やめてみた。』など、ぽんさんは多くの著作で自身の生活を描いてきて、たくさんの人に読まれて、多くの共感を得ましたよね。それは、ぽんさんの人生を多くの人が肯定してくれたということでもあると思うのですが、それでもやっぱり「自分を肯定する」のは難しかったですか?

それはもちろん本当にありがたいし嬉しいんです。けど反面、それなのに自分を受け入れられない部分があるのはなぜだろうって。誰かに褒められるほどに、私はその評価に相応しいのだろうかとか考えてしまって。自己肯定感には直接は繋がらなかったんですよね。母の虐待は幼い頃から続いていたので、私は自分が好きではないというのがずっと当たり前だったんです。私っていつもこうだよな、いやだな、でもしょうがないよな、だって私だし。そんな思考の繰り返しすら、まぁ、私だからしょうがないなって思っていたんです。

冒頭で、近所の人に会ったときに、思わず隠れてしまう自分というのをどこか嘲笑的に描いているじゃないですか。私も世間話がとても苦手なので、よくわかります。

世間話! まさにそこが鬼門なんですよね。当たり障りのないお天気の話でいいはずなのに、そういう大人のライトな挨拶ができないというか。隠れられるときはいいんですけど、急に向こうから来られたときのドギマギ感ったらないんです(笑)。ゴミ捨てのとき、スッピンでヘンなところで髪をまとめててボロボロの格好の時に限って近所の人に会って挨拶されるとか、もうどうしていいのかわからなくて、結果おかしな言動になってしまう。きっとヘンな人だと思われただろうな、どうして私はこうなんだろうって、夜寝る前にふと思い出してはまた落ち込んだり。

人にどう思われるかが、ネガティブな意味で気になるという。

やはり母が強烈なキャラクターだったので、常に顔色を窺うっていう性格がそこで出来ちゃったのかなと思います。でも逆に、これまで本を描かせてもらった中で、私の視点や観察眼について評価してくださる方もいて、この仕事をする上でその辺はプラスにも働いているのかなと、やっと思えるようになってきました。母の虐待を肯定するわけではないんですけど、とても辛かった経験も決して無駄になってはいないんだなと感じています。

©わたなべぽん/幻冬舎

©わたなべぽん/幻冬舎

人の言葉が響くときって、自分が変わろうとしているときなのかなと思います。

ぽんさんの性格や、画風によるところもあるのでしょうが、子供時代の辛かったことや、自分を好きになれないまま大人になったこと、それゆえに日々困っていることなども、表現された時に決して暗くて辛いだけのものにはなっていないんですよね。どちらかというとユーモラスで明るい印象です。

本来は深く考えないというか、楽観的な性格だと思うんです。だけど、虐待されて自己肯定感の低い子供の私が時々足首を掴んでくる、みたいな感じなんです。恨み辛みももちろんあるんですけど、それを相手にぶつけるんじゃなくて、私の場合は自分がダメなせいだと思っちゃう。この人キライだなって思う人がいても、自分が悪いから嫌なことをされたんじゃないだろうかって思うことの方が今までも多かったです。

とてもリアルだなと思ったのが、ぽんさんが実家と疎遠であることを聞いたお友達が「どんなことがあっても親子は親子なんだよ」と明るく言い放つ場面。そこに悪意がないからこそ残酷だし、厄介なんですよね。

そうなんです、悪気はないから根に持っちゃいけないと思うんですけど、どうしても傷ついちゃうんですよね。でも、そういう善意の人、世の中にはけっこう多いじゃないですか。

何か対処法はありますか?

打ち明けてしまうのも手かなと思っています。最近、夫や友達の言葉が心に引っかかったりした場合は、なるべくその場で言うことにしているんです。相手を非難せずに、自分の気持ちを正直に言う。「今の言葉でこんな風に悲しくなりました」とか「そう言われて私ってダメだなって思っちゃったんだけど、この受け取り方は違うの?」とか。そうすると、「そういうつもりじゃなかった」とか「そんな風に思ってたの?」って返してくれる場合もあるし、さらに説明をつけ加えてくれたりもする。

今までだったらできなかったことなんですけど、自分の意見を殺さないことが自己肯定感につながっていくということがわかったんですよね。どうせ私の言うことなんて誰も聞いてくれないと思わずに、言ってみるといいです。正直に言えば、正直に向き合ってくれる人が思いのほか多いですから。

自分を認めるとことで、相手を信じることもできるようになったんですね。

そうかもしれません。正直に気持ちを伝えて、わかってくれた人は、より私を理解してくれたり、つながりが深くなっていくことが多いので、関係が濃くなる気がします。去っていく人は去っていくけど、それはそれでいいかな、と。

それにしても、今作でも旦那さまの素敵さが際立っていますね。優しいし、アドバイスは的確だし、もう最高です!

わぁ、ありがとうございます! 夫とはすごく付き合いが長くて、私と親との関係が良くない時期も見ている人なんです。だから、彼は彼で、私の人生に対して思うこともあるし、長い付き合いの中で私の扱い方にも長けてきてるんですよね(笑)。ありがたいなって思います。

今回の本では、夫もそうですけど、ジャズの先生や友達の存在が力になったということも描いているんですが、私の場合、人の言葉が響くときって、自分が変わろうとしているときなのかなと思います。どうせ私なんかって思っていると、みんなはいい環境にいるから綺麗事を言えるんだって卑屈に受け取ってしまうけど、心を開けば人の言葉って素直に入ってくる気がします。

©わたなべぽん/幻冬舎

©わたなべぽん/幻冬舎

©わたなべぽん/幻冬舎

今日からイヤなことはやめればいいし、今日から自分を受け入れて生きればいい。

実はこれまで出された本もそうですが、ぽんさんは何かを提案しているわけではないんですよね。あくまでもご自身の経験と思いを率直に描いている。

そうですね。『やめてみた。」のときも、炊飯器をやめたのはあくまでもきっかけでした。自分の生活に何が必要で何が不必要かを気づくスイッチだったんです。だから、あれは「炊飯器を捨てましょう」という提案ではないんですよね。読んでくださった方から「炊飯器はなかなか手放せないんですよね」なんて言葉を頂いたりもしたんですけど、いいんですよ、それはやめなくて(笑)。

本書も同じですね。自分の人生のぐちゃぐちゃをとりあえず掘り起こして並べて、何が必要で何が不必要かを見極めて、すっきり生きられるようにする。

そう言われるとそうかもしれないです。経験の整理整頓というか。それができた今だからこそ思うことですが、自分を嫌いだったり自分をダメだと思ったことは辛かったんですけど、私には必要なことだったんだったなって。もしそれがなかったら、人生をよりよくしたいと思わなかったかもしれないので、ある程度の起爆剤として必要だったんだろうなって。そう思えたこと自体が、自己肯定感が上がった証拠なんじゃないかなって思うんです。

だから今、自分が嫌いだと思っている人は、その悩む過程は辛いでしょうけど、いつか何かしらのプラスになるはずなので、無理せずゆっくりでも向き合って欲しいなと思います。そういう人だからこそ考えられることだったりとか、思いやれることだったりとか、この先つかめる幸せもたくさんあると思いますから。

たくさんの方に褒められて認められても、最後は自分で自分を認めてあげないとダメなんだっていうのが、この作品の主題のひとつとして横たわっている気がします。

そうですね。本の中にも描きましたけど、自分が自分のいちばんの味方でいてあげないといけないんだなと。誰に肯定されるよりも自分で自分を肯定することは難しくて、だけどそれが何より大切。誰かに100%受け止めてもらうことで得られる満足感や肯定感もあるんですけど、ありのままを自己肯定することが何より必要かなと私は思います。

いいところも悪いところも自分であるということをまず認めて、その自分の味方でいることが大事なんじゃないかな、と。もちろんまだ、私ってダメだなって思うこともあるんですけど、ひどく落ち込んだりすることは少なくなったと思います。始めるのはいつも今日ですから、今日から始めればいいし、今日からイヤなことはやめればいいし、今日から自分を受け入れて生きればいい。最近は毎日そう思っています。


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わたなべぽん

漫画家。山形県出身。第6回コミックエッセイプチ大賞を受賞しデビュー。著書に、AVなど成人男性向け商品を取り扱う古本屋の女性店長を務めた経験をコミカルに描いた『桃色書店へようこそ』、作画を手掛けた『隠すだけ! 貯金術』『家計簿いらずの年間100万円! 貯金術』、自身のダイエット経験を綿密に描き大ヒットとなった『スリム美人の生活習慣を真似したら 1年間で30キロ痩せました』『もっと! スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました』『初公開! スリム美人の生活習慣を真似して痩せるノート術』、汚部屋脱出の体験を描いた『ダメな自分を認めたら 部屋がキレイになりました』『面倒くさがりの自分を認めたら 部屋がもっとキレイになりました』、身近なモノコトを減らす生活を描いた『やめてみた。』『もっと、やめてみた。』がある。

Twitter@PonWatanabe

書籍情報

『自分を好きになりたい。
 自己肯定感を上げるためにやってみたこと』

わたなべぽん(著)
幻冬舎

「どうせ私なんて…」から脱するためにやってみた11のこと。累計20万部突破! 『やめてみた。』『もっと、やめてみた。』のわたなべぽん最新作。幼少期のしんどい親子関係から自己肯定感が低くなってしまい、「自分が嫌い」という辛い感情を抱えて生きてきた著者・わたなべぽん。そんな状態から脱するために、自ら考えたり試したりしてきたことを克明に記した感涙エッセイ漫画。「大人になった私が、心の中にいる「小さい自分」の”親になったつもり”で行動してみたら、私が私でいることがラクになってきました」