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生きて…リアルに描かれた『絶体絶命都市』で体感する被災地の真実

生きて…リアルに描かれた『絶体絶命都市』で体感する被災地の真実

『絶体絶命都市3 -壊れゆく街と彼女の歌』から10年近くが経ち、シリーズ最新作となる『絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-』がついに発売された。本作の発売を待ち望んだ人も多いことだろう。本作では、大都市での震災に遭った主人公が被災地から脱出するため奔走するのだが、ただ災害を扱った作品というわけではない。“都市部で発災するとどうなるか?”、“被災した人々はどういった行動をとるのか?”など、震災にまつわるさまざまな事象がリアルに描かれており、そこで展開される被災者たちとの交流は、主人公の視点を通してプレイヤーを作品の世界へと引き込ませる。本稿では、そんな本作が見せる被災地の現実、そこでのさまざまな人間模様についてお届けする。

文 / 長田雄太


大都市での発災、そのとき人々は……

本作は、大都市で地震が起こるところから始まる。バスに乗車していた主人公は大きな揺れを感じ、気がつくと横転したバスのなかに取り残されてしまっていた。なんとかバスから這い出ることができたが、眼前にはついさっきまでとはまるで異なる景色が広がっていた。倒壊した建物に隆起した地面、事故に遭った車、あちこちで上がる煙……。まさに地獄絵図といっても過言ではない光景だ。

▲バスのなかで席を譲ったおばあさん。大きな揺れののち、あたりを見渡したがおばあさんの姿はなかった……

現状が把握できていないため、とにかく歩を進めてあたりを観察する。すると、早速意外な光景が。建物を崩壊させるほどの地震に見舞われたのだから、てっきり人々は逃げまどっていたりパニックを起こしているのかと思ったのだが、なかには興味津々にあたりをカメラで撮影する人の姿がちらほら。そのほかにも、何かをするわけでもなくただベンチに座っている者や、車をぶつけてきたのはお前のほうだと諍いを起こしている者たちまでいる。「こんなときに何てバカなことをしているんだ!」と思いたくなる光景なのだが、非常事態にもかかわらず、まったく異なる行動をとる人々の混沌とした動きは妙に生々しく、観察すればするほど寒気のようなものを感じてしまう。おそらく、現実の災害でもこのような行動をとる人たちがいるのだろうという予感を覚える。

▲震災からたった数日で、もう会社に向かおうとする人の姿も。しかし、日本だとこの光景がありえなくないと思えてしまうのが怖いところだ

そんな状況下で、主人公は自宅へ帰るため数日間かけて被災地からの脱出を図るのだが、もちろん一筋縄ではいかない。地震直後は交通機関が機能していないのはもちろん、ガレキなどで通路がふさがれていたりと、まっすぐに歩くことすらままならないのだ。その状況下、被災した人々と交流していくと、主人公と同じように現状をどうにかしたいと思っている人が多くいることに気づく。愛する人を探す者、現実に打ちのめされながらも前を向こうとする者、被災地に留まり復興に尽力しようとする者……。本作ではそんな人々と協力し、情報を交換し、ときには行動を共にしながら、ひとりではどうにもならない現状を打開していく“人間ドラマ”が大きな魅力となっている。

▲以前知り合った男性と再会。その男性はなんと、一緒に行動していた女性の婚約者だった。しかも、彼と一緒にいたのはバスに乗っていたおばあさん! 数日間の物語のなかで意外な巡り合わせがあるのも、本作のおもしろいところだ

一方で、作中には物を盗ったり、邪な考えを持つ人間も登場。ときには彼らと対立せざるを得ない状況に巻き込まれたりすることもある。正直、彼らのような存在には出会うたびに憤りを感じさせられるのだが、同じ状況下で人々の善悪が分かれるのも、震災という極限状態を描いた本作ならではの光景と言えるだろう。さまざまな人々と関わることで、被災した人々の恐怖や怒り、そしてわずかな希望などの感情がゲームを通して、いつの間にかプレイヤーにも伝染してくるのだ。

▲路上で歌う女性。彼女の歌に多くの人が癒され、気分を落ち着かせているのだが、なかには不謹慎だと突っかかってくる者も。言いがかりに近いものを感じるが、男が言っていることも決して間違ってはいないので、被災時におけるそれぞれの考えかたというものを感じさせてくれる

本作には豊富な選択肢が設けられているのも大きな特徴。ストーリーの流れに大きな影響があるわけではないのだが、会話での返答などさまざまな状況下での選択が可能で、自身が選んだ行動によって相手の反応が変化したりする。特定の出来事に対して主人公が思ったことなども選択肢として出たりするので、ありのままの自分でプレイしてみたり、ちょっと粗暴な設定でプレイしてみたりと、自身に合ったプレイスタイルで進めることも可能だ。

▲選択肢はオープニングから豊富に設けられており、主人公の設定なども決めることができる

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