Interview

Chara 旬のダンス・ミュージックを意識した新作『Baby Bump』で魅せた27年目の新境地

Chara 旬のダンス・ミュージックを意識した新作『Baby Bump』で魅せた27年目の新境地

大きなアフロヘアーに真っ赤なルージュ。ニューアルバムのジャケットからもソウル/ダンス・ミュージックに接近したCharaが見えてくる。新作『Baby Bump』は、「愛を身ごもる」という彼女らしいテーマを軸に、Charaが自らのルーツにあった音楽を気鋭の若手サウンドプロデューサーたちと旬の音にアップデイト。それは彼女の甘く、切なく、時にワイルドでホーリーな歌声と世界観に絶妙に融け合っている。1991年のデビュー以降、ワン&オンリーな個性で多くの名曲を生んできた彼女。生誕50周年を迎えた27年目の今も創作意欲に満ちあふれ、チャレンジングな姿勢で音楽に愛と情熱を注ぎ続けているCharaが、『Baby Bump』を生んだ新境地を語る。

取材・文 / 佐野郷子

私、すごく生産性のあるアーティストなんですよ。音楽をつくることが日常なのね。

今年1月にはご自身の生誕50年を記念したスペシャルライブ「Shut Up and Kiss Me! ~ Chara’s 50th Birthday Blitz ~ 」を開催されましたね。

そう。歴代のバンドのメンバーが集まったり、息子が歌ってくれたり、とても楽しかった。息子に「プレゼント、何がいい?」って訊かれたから「歌ってくれたら嬉しいなー」ってちょっと甘えてみました。

2016年のデビュー25周年を超えて、何か感じたことはありましたか?

レコード会社さんはアニヴァーサリーやベストアルバムが好きじゃない?(笑)。私にとってベストアルバムは、大掃除をする感覚なのね。リマスターのためにデータをキレイに出来るという意味では。25周年のオールタイムベストアルバム『Naked & Sweet』の時は自分で選曲にも携わって45曲も選んだんだけど、そこでふと、今までこんなにたくさん曲を作ってきたのに、私はなんで常に新しい曲をつくるんだろうと。

1991年のデビュー以降、確かに長いブランクもなく、ずっとコンスタントにアルバムをリリースしてきましたね。

そうなの。私、すごく生産性のあるアーティストなんですよ。煮詰まったり、活動をお休みして何年もアルバムを出さないという人もいるけど、私は音楽をつくることが日常なのね。絵描きの人が毎日アトリエで絵を描いたり、お料理をつくって食べるのと同じように。そうやって音楽との関係をいつも良くしておきたいと思っているところはあるかな。音楽をやっていないと生きてゆくバランスが良くないと自分で分かっているんだよね。

デビューした頃は打ち込みのサウンドだったし、デイスコやソウルは元々自分のルーツにあるもの。

新作『Baby Bump』は、前作から1年5ヶ月ぶりのリリースと早いペースでネクストレベルの音を聴かせてくれましたね。

今回は自由につくれたというのがいちばん大きかったかな。以前なら例えばタイアップがあったりすると、クライアントが求める「ガーリー」とか「切ない」に応える曲を提供したいと思うし、「サイケデリックな音色のミディアムスロウな曲をCharaの声で聴いてみたい」と言われたら、「あります、そういう曲」ってなっていたんだけど、今回、移籍したレコード会社さんが求めてきたのは「Charaのパーティチューンが欲しい」だったの。

それでソウルやダンス・ミュージックを意識したサウンドに?

私、デビューした頃は打ち込みバリバリのサウンドだったじゃない? あの頃はクラブ・ミュージックが好きだったし、実際にクラブに遊びに行って踊っていたしね。今度のアルバムは音質的には今のクラブサウンドに仕上がるように気をつけたけど、ディスコやソウルは元々自分のルーツにあるものだから。クラブに足を運ぶ機会こそ少なくなったけど、最近の音も好きだから、リアルタイムで旬の音を聴いている息子世代とも共有できるんですよ。

息子さんはCharaさんのバースデイ・ライブでもR&Bンンガーのダニエル・シーザーの曲をカヴァーを披露していましたよね。

そう。彼には影響されています。今回は去年くらいから目をつけていた若手アーティストの方々と一緒に音をつくったのも新鮮だった。今は無料のSoundCloudで良質の音楽をつくっている人がたくさんいるし、こんなに才能のある人たちが世界中にいる時代に「自分はどうする? 何をする?」と思った時に、やっぱり私は自分から出てくるものでやるしかないんだなと。自分の個性や曲作りは実はそれほど変わってないんだけど、音と人が変わるとこうなるということなんだよね。

去年の12月に初めてDJ Charaとしてクラブでイベントをしたのも関係していますか?

それはない。DJは1回やってみたかったんだけど、選曲だけならいいけど、私には向いてなかったかも(笑)。

でも、いくつになっても新しいことに挑戦する姿勢は見えて来ますよ。

そうだね。元々ダンス・ミュージックには影響を受けてきたから、大人になってしばらくするとルーツに戻るんだよね。それを今の音にするのが課題でもあった。

Charaは音にうるさいから、Charaと仕事するのは勇気と才能が要ると思う。

今回はKai Takahashi (LUCKY TAPES)、TENDRE、Gakushi、mabanua、SWING-Oなど新進気鋭のサウンドプロデューサーに迎えていますが、その人選は?

たまたまご縁があったり、自分が色々な音楽を聴いていいなと思った人たち。みんな若くて、一部そうでもない人もいますが、才能があって、思い描くサウンドにするために諦めない強さがあるんだよね。私は一緒に音をつくるのは、刺激をもらったり、緊張感がある方が良いと思っているんですよ。Charaは音にうるさいから、若手の人はCharaと仕事するのは勇気と才能が要ると思うの。でも、これを乗り超えたら、きっとどんな仕事でもできるんじゃないかなと。そうやって若手がステップアップしていくのを見ていたいし、彼らの音楽も私のファンの世代にも聴いてほしいんだよね。

アルバムの1曲目「Pink Cadillac」は、今、世界でも人気のフューチャー・ファンクですね。

十代の頃からP-ファンクやZAPPが好きだったし、トーク・ボックス(トーキング・モジュレーター)が最近また注目されているじゃない? そういう音像からピンクのキャデラックを連想して。おばあちゃんになったらピンクのキャデラックに乗りたいという願望も込めて。

「Chocolate Wrapping Paper」はTAKU(韻シスト)と共作です。

これは家で曲を作っていて、ギターのリフを入れたかったから「TAKU、ちょっと来てよ」って声をかけて。そういうパターンで共作することもありますね。この曲は今、注目のTENDREにサウンド・プロデュースしてもらいました。

ダンスチューンで難しいのは歌詞だと思うんですが、そこを独特の表現で持って行くのがCharaさんらしい。

歌詞はノリに合わせて、英語や日本語で響きの合う言葉を探すんだけど、今回は「すごく歌いにくいけど、これが言いたい」という歌詞が多いかも。〈チョコレートを包む銀紙みたいに 剥がれちゃうの?〉なんてホントに歌いにくいんだけど、絶対入れたかったんだよね。今までだったら、もっと歌いやすい、似たようなフィーリングの言葉にしていたと思うんだけど、ファースト・インプレッションを大事にしようと。もう歌詞に関しては、誰も何も言ってこないからね(笑)。

22、3歳の頃につくった曲を、今の20代にお願いするのが面白いなと思った「愛のヘブン」

アルバム・タイトルになっている「Baby Bump」は?

アルバムをつくる時に「愛を身もごる」というイメージがあって、バイリンガルのレイ・マストロジョバンニくんがCharaのキャラクターに合う英語の歌詞を書いてくれました。対訳の〈私はあなたの卵を産みたいのかもわからへん〉の関西弁が可愛いでしょ? 音はSeihoくんで、初期のCharaを知っている人ならこの音は馴染みやすいかも。

「愛のヘブン」は、Charaさんがゲストボーカルで参加したLUCKY TAPESのKai Takahashiがサウンドを担い、ポップで愛らしい曲になりましたね。

(高橋)海くんは私と韻シストがコラボしたシングル「I don’t know」(2014年)をすごく気に入ってくれて、それで声をかけてもらったの。「愛のヘブン」は私が22、3歳の頃につくった曲で、それを今20代の彼にお願いするのが面白いなと思って。私が「ローラー・ディスコでかかるような曲にしたい」と言ったら、彼、ローラー・ディスコを知らなくて、YouTubeの動画を送ったりしました(笑)。

昔のデモテープもちゃんと残してあるんですね。

いつか使える時が来るかなと思ってね。デモで「Baby Don’t Go Away」と若い可愛い声で歌っていて、「さすがにもう歌えないかな?」と思ったんだけど、海くんのサウンドとCharaの「やさしい気持ち」も手がけているエンジニアの高山徹さんのボーカル処理の腕のおかげですごく良い感じに仕上がりました。

「私たち二人なら、愛の歌しかないでしょう」。LINEでやりとりしながら生まれた歌詞。

注目のマルチプレイヤーTENDREが手がけた「Twilight」は、まさに夕暮れに似合う切ないR&Bですね。

TENDREも愛の歌が多くて、彼の新しいアルバム(『NOT IN ALMIGHTY』)もゴスペルっぽい曲が多くて素敵なんですよ。この曲はBPMが遅めの大きなメロディーをサビにした曲にしたいとTENDREに伝えて、「私たち二人なら、愛の歌しかないでしょう」とLINEでやりとりしていたら、「そうですね。会ったときからそれが渦巻いていましたよね」と返事があって、「その言葉頂き!」って〈渦巻いていたい Forever〉という歌詞になったの。

歌詞のヒントは至るところにあるんですね。

元々はネットのニュースで知った模型の鳥と恋に落ちて、死んじゃった「世界一孤独な鳥」と呼ばれたナイジェルの話にインスパイアされて出来た歌詞なんだけどね。この曲がライブで始まったら、ゆったり踊りながら愛が渦巻いているような可愛いモッシュが起きるといいなと思って(笑)。

KenKenとの共作Cheek to Cheek」はアルバムで唯一のバンドサウンド。

これはKenKenと数年前に二人とも大好きなスライ&ザ・ファミリー・ストーンみたいな曲をつくろうってデモを録ったんだけど、長い間寝ていた曲。試しに新しい担当ディレクターに聴いてもらったら「この曲、メッチャイイんじゃないですか」って初めて言われて、今までスルーされていた曲が甦った。原型とはまったく違う音になったけど、バンドサウンドの良いアレンジになったと思う。

〈私が空 あなたが星〉に始まる歌詞もロマンチックですね。

絵本(『LITTLE HEARTBEAT』)をつくったので、その影響もありますね。絵本もロマンチックでピュアなストーリーなんだけど、ソウルはそういうテイストをストレートに表現しやすいところがあるような気がする。

確かに〈真っ直ぐに生きて 傷つくの好きよ〉は、なかなか出て来ないですよ。

それはまぁ、私自身でしょうね。もうこの歌詞のここが良いとか好きとか言ってくれる人がいないから。Charaの“圧”がそうさせないみたいなんだけど(笑)。

「Cat」や「赤いリンゴ」もChara流のソウルと言えそうですね。

そうだね。「Cat」でやっとアルバムのテーマで、歌いたかった〈愛を身籠れば〉という歌詞が出て来る。これも絵本の影響があるかな。〈恋は内巻き〉っていう表現は自分でも気に入っていて、普段から友達同士の会話でも「あたし今日は内巻きだから」って使ってるし、気持ちがそうなる時って女性ならあるじゃない? バラードの「赤いリンゴ」はつくったときから勝手に歌っちゃってたの。その時、何か思うことがあったんだろうね。もしくは、内に溜まっていたものが歌に出ちゃったのかも。

歌うのは幸せになりたいから。私はCharaでいることが仕事だと思っている。

ラブソングでも恋と愛の比率が微妙なバランスになっているのが、Charaさん独自のさじ加減で。

このアルバムにも恋と愛のどっちの要素もあるとは思うんだけど、恋はしたいと思いますねー。私が歌い始めたのは失恋がきっかけだし、歌っていたらイイ男が見つかるかなって(笑)。歌うのは幸せになりたいから。そこだけはずっーと変わってない。

「赤いリンゴ」はギターと「Everybody Look」の英語補作に息子さんも参加していますね。

家でデモつくっているとき息子がたまたま帰って来たから、「ちょっとギター弾いてくれない」って、それをそのまま使ったの。彼は英語ができるし、家にいたら色々協力してくれる有り難い存在。「Everybody Look」のイントロには姪っ子の言葉も入っているし、ちょっとファミリー感あるね。

「小さな愛の工場」は若い世代へのメッセージも込められていて、愛おしい曲になりましたね。

私も好きなの。1曲はラヴァーズっぽい曲を入れたかったし、ドリーミーで私っぽくて、Charaのイメージ=「愛の歌」というテイストになったと思う。〈私は美しい物を頬張りたいだけ〉や〈タイミングがいいことを運命って言って欲しい〉のパートは自分でも気に入っている。

Charaさんの元々の資質や声と今のソウル/ダンス・ミュージックは相性が良いし、若いクリエイターと組むことでよりアップデイトされた感がありますね。

そうなの! 私がデビューした頃の90’sの音が若い世代にまたキテるし、19歳になる息子も私が夢中になったプリンスとかが新鮮みたい。そういう反応が私も面白いし、楽しいの。確かに今までのイメージで行けば、安定はするのかもしれないけど、私ってそういうところはパンクなのかな?

現状維持ではなく、新しい音にチャレンジする精神が今も息づいているということでは?

私はCharaでいることが仕事だと思っているし、時間をかけながら自分で自分をジャッジしながらクリエイトしていけるようになったかなとは思う。50歳になっても人は成長できるっていう(笑)。この先がどうなるか分からないけど、いくつになっても音をつくることはずっと続けていきたいかな。

その他のCharaの作品はこちらへ

ライブ情報

Chara Live Tour 2019 “Baby Bump”

1月19日(土)  大阪 Zepp Namba
1月20日(日)  愛知 Zepp Nagoya
1月26日(土)  福岡 Zepp Fukuoka
1月27日(日)  岡山 YEBISU YA PRO
2月1日(金)  東京 Zepp Tokyo
2月2日(土)  東京 Zepp Tokyo
2月9日(土)  宮城 仙台PIT
2月10日(日)  石川 北國新聞赤羽ホール
2月16日(土)  北海道 PENNY LANE 24

Chara

1991年、シングル「Heaven」でデビュー。1992年にはオリジナリティ溢れる楽曲と独特の声が生み出す世界観で日本レコード大賞ポップ・ロック部門のアルバム・ニューアーティスト賞を受賞。1996年には岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』に出演し、劇中バンドYEN TOWN BAND のボーカルとして参加・制作したテーマソング「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」が大ヒット。1997年のアルバム『Junior Sweet』は120万枚のセールスを記録する。ライフスタイルをも含めた”新しい女性像”としても絶大な支持を獲得し、数多くのファッション誌やCFに登場。2014年には、愛娘SUMIREと初のCM共演が話題となる。デビュー25周年を迎えた2016年には初のオールタイムベストアルバム『Naked & Sweet』、2017年には岸田繁(くるり)やケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)が参加した『Sympathy』をリリース。2018年12月にはCharaが物語、実妹が絵を担当した初の絵本(CD付き)『LITTLE HEARTBEAT』を発売。一貫して「愛」をテーマに曲を創り、歌い続けている。

オフィシャルサイト
https://charaweb.net/