山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 49

Column

2018年、僕に響いた音楽たち

2018年、僕に響いた音楽たち

さまざまな災害に見舞われた2018年も暮れてゆく。
たとえどんな出来事が襲ってきたとしても、人生に絶望するか否かの自由は、私たちの手のうちにある。
そして音楽は、どんな時でも、求めれば必ず傍にいてくれる。
山口洋が2019年への祈りを込めて書き下ろす、My Best Music in 2018。


2018年、僕に響いてきた音楽たち。

Ásgeir / Afterglow(2017)

音楽雑誌はまったく読まない。でも、良質な音楽を耳にしたら、誰かに紹介せずには居られない友人たちが居て、彼らの審美眼を通過したものは迷わず手に入れる。敬愛するCHABOさんのギターテック、Mさんもそんなたいせつな友人のひとり。

ある日、アイスランド出身の若いミュージシャン、アウスゲイルを紹介されて、なくてはならない2018年の音楽になる。毎朝、屋上で富士山と海と空を眺めながら、ストレッチと筋トレをするとき、アウスゲイルの音楽が僕の細胞に染みとおっていく。目覚めのコップ一杯の水のように。出だしの音を聴いただけで、その日の体調もわかる。それは彼の音楽がネイチャーと呼応していて、祈りに満ちているからだと思う。

Kate Bush / Before The Dawn(2014)

この2枚組のライヴ・アルバムもMさんの紹介。

失礼ながら、ケイト・ブッシュをちゃんと聞いたことがなかった。アーティストとしての気高さ、パフォーマンスのクオリティー、アートワーク、楽曲の完成度、総合的芸術度、エトセトラ。すべての完成度の高さにのけぞった。こんなにすごい人だったなんて !

She & Him / Classics(2014)

She & Himを知っている日本人に今までひとりしか会ったことがない。まるでイリオモテヤマネコを一緒に発見したかのように盛り上がったっけ? 笑。僕がShe & Himを知っているのは、Himの方のM.Wardが昔から好きだったから。彼の存在を教えてくれたのはアイルランドのスタジオでアシスタントをしていたイタリア人。

まぁ、そのタッチ(手触り)と空気感が素晴らしいのです。今年のソロツアーのBGMはずっとこのアルバム。問い合わせも多かったので、ここでお応えしておきます。

Jerry Garcia Band / Let It Rock : The Jerry Garcia Collection Vol.2(1975)

随分前のことだけれど、増え続けるCDに怖れをなして、1000枚しか持たないことに決めた。それ以上のものはコンピュータに取り込んで、誰かに差し上げる。ゆえ、僕のCD棚は音楽が濃縮されていく。なかでもクルマのハードディスクには殿堂入りした音楽が格納されていて、常にJerry Garcia Bandを聞くことができる。いつ、どこを、どんな時間に走っていても、僕が自分を取り戻せる理想の音楽。今年、ニッキー・ホプキンスがピアノを弾いているアルバムをファンの方がプレゼントしてくれて、めでたく殿堂入り。素晴らしきかな、ガルシアの風。

Shinya Fukumori Trio / For 2 Akis(2018)

詳しくないけれど、ジャズは大好き。家でよく聞いている。ある日、自分の好きなアルバムがほとんどドイツのECMというレーベルから出ていることに気がついた。静寂の次に美しい音楽。そのレーベルからリリースされた日本人のリーダー作に自分が書いた曲が収録されていて、ほんとうに嬉しかった。ギフト、だね。

「来日」した彼のトリオを観に行った。ピアノ、サックス、ドラムス。ベースレスの編成。僕のバンドもベースが脱退したばかりだったので、たくさんのインスピレーションを受けとった。ないものはオーディエンスに想像させればよいのだ。

しばらくして、彼と僕は海を見ながら美味しいビールを飲んだ。ずいぶん年下だけれど、そんなことではどうでもいい。こころから尊敬できるミュージシャンに出会えたことが嬉しい。

Mitchell Froom / A Thousand Days(2004)

このアルバムはステレオの横にいつも置いてある。何千回部屋に流れたのか、わからない。何十枚知り合いにプレゼントしたのかも。笑。ガルシア・バンドが移動のときなら、このアルバムは部屋の中で僕が自分を取り戻すアルバム。雨や風やひかりのように。

Ry Cooder / The Prodigal Son(2018)

僕の夢。ライ・クーダーと音楽を創ること。ショーン・ペンの映画の音楽を創ること。じっとしていないで、本気で動き出そうと思う2019年。アメリカに渡って直談判だ。

Jeff Tweedy / Warm(2018)

Wilcoのヴォーカリストのソロ作品。インスタグラムで見かけて買った初めての音楽(外国から送られてくるのでまだ届いてない)。きっと名作。聞かなくてもわかる。関わり方が新しかったので、僕的にノミネート。

感謝を込めて、今を生きる。


アウスゲイル / Ásgeir
『アフターグロウ / Afterglow』

アイスランドの新星、天才シンガー・ソングライターとして注目を集めるアウスゲイルの3年ぶりの2ndアルバム。アコースティック中心だった前作から、シンセやプログラミングを駆使したエレクトロ・サウンドに進化。R&Bやソウルの要素も取り入れ、よりスケール感のあるサウンドに。北極に近い大自然の風景を鮮烈に喚起させる。(2017年発表)


ケイト・ブッシュ / Kate Bush
『Before The Dawn』

2014年にロンドンのハマースミスで全22公演にわたって行われた35年ぶりの舞台“Before The Dawn”のライヴ音源を収録。コンサート、芝居、ミュージカルといった要素を組み合わせ、ケイト・ブッシュらしいパフォーマンスが大きな話題を呼んだ。CDは3枚組、アナログレコードは4枚組で、コンサートのフルセットを収録。(2016年発表)


She & Him
『Classics』

M.WardとZooey Deschanelの2人組ユニット、She & Himが自らのルーツである往年のオールディーズやソウル、ポップスのヴィンテージ楽曲をカヴァー。1960年代のロレッタ・リン風カントリーもあれば、70年代のカーペンターズの陽気なポップもある。ジャズやオールディーズ的サウンドに落とし込まれた抜群のムードと空気感、その洗練された仕上がりは一曲一曲が映画を観ているよう。(2014年発表)


ジェリー・ガルシア・バンド / Jerry Garcia Band
『Let It Rock : The Jerry Garcia Collection Vol.2』

ジェリー・ガルシアのギターは言うまでもなく、ザ・ローリング・ストーンズのサポート・メンバーとしても知られるニッキー・ホプキンスのピアノがなんといっても秀逸。録音、選曲、演奏、すべてにおいて、ジェリー・ガルシア・バンドの中でも特に完成度の高い一枚。(1975年発表)


Shinya Fukumori Trio
『For 2 Akis』

17歳で単身渡米し、ボストンのバークリー音楽大学を卒業後、2013年に拠点をミュンヘンに移して活躍中のジャズ・ドラマー / 作曲家である福盛進也(1984年大阪府生まれ)をリーダーに、マテュー・ボルデナーヴ / Matthieu Bordenave(サックス / クラリネット)、ウォルター・ラング / Walter Lang(ピアノ)のトリオによる新作。艶のあるテナー・サックスと流麗なピアノが響きわたる中を、空間に細心の注意を払った福盛のドラムスが自由に浮遊する。1曲目「Hoshi Meguri No Uta(星めぐりの歌)」から美しく繊細、色彩豊かなサウンドが耳を捉えて放さない。8曲目に「Mangetsu No Yube(満月の夕)」を収録。(2018年発表)


ミッチェル・フルーム / Mitchell Froom
『A Thousand Days』

ミュージシャンとして以上にポール・マッカートニー、シェリル・クロウ、エルヴィス・コステロ、コアーズ、ロス・ロボス、クラウデッド・ハウス、スザンヌ・ヴェガらのプロデューサー、エンジニアとして知られるミッチェル・フルームのソロ第2作。全曲を作曲し、自身でピアノを弾いている。美しい旋律と印象的なフレーズで構成された14曲はさまざまな映像を喚起させ、日常に別趣の彩りを添える。(2004年発表)


ライ・クーダー / Ry Cooder
『The Prodigal Son』

映画『パリ、テキサス』(1985)、『ブエナビスタ・ソシアル・クラブ』(1996)でもおなじみ、60年代から活動し、現在も創作意欲が絶えないアメリカのべテラン・ミュージシャン、ライ・クーダーの6年ぶりの新作。ゴスペルを現代的に解釈したカヴァーを中心に、アメリカの政治状況に鋭い視線で切り込んだオリジナル曲も収録している。ほとんどの曲を息子のジョアキム(ドラム)と2人で演奏。バンジョーを積極的に使い、マンドリンのリフ、ジョアキムのパーカッション、ムビラの響きが、変化に富む空間を生み出している。(2018年発表)


ジェフ・トゥイーディ / Jeff Tweedy
『Warm』

米シカゴのオルタナロック・バンド、ウィルコ / Wilcoのフロントマン、ジェフ・トゥイーディによるソロ・アルバム。地元シカゴにあるウィルコのスタジオ、THE LOFTでレコーディング。アルバムには息子でメンバーでもあるスペンサー・トゥイーディーやウィルコのメンバーであるグレン・コッチェらが参加。年齢を重ねたからこそ溢れ出るユーモアと温かみが秀逸。(2018年発表)


著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。1990年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』には阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。アン・サリーによるカヴァー「満月の夕(2018ver.)」は2019年2月公開の映画『あの日のオルガン』(監督:平松恵美子、主演:戸田恵梨香、大原櫻子)に起用されることが決まった。東日本大震災後は、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らと“MY LIFE IS MY MESSAGE”として、福島県相馬市の人たちと希望のヴァイブレーションを起こすイベントを続けている。2018年4月から池畑潤二(Drums)、細海魚(Keyboard)と新生HEATWAVEとしての活動を開始。2018年は全3回のHEATWAVE sessionsを行い、12月にはHEATWAVE TOUR 2018“Heavenly”を行った。HEATWAVE結成40周年となる2019年に向け、現在は精力的に楽曲制作を続けている。奇蹟的に発見された1994年5月24日新宿パワーステーションでの“NO FEAR TOUR”の音源を収録した『OFFICIAL BOOTLEG #006 19940524』が、ツアー会場での限定販売に続いて、HEATWAVE OFFICIAL SHOPでの発売が決定。

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