LIVE SHUTTLE  vol. 34

Report

秦基博 東京国際フォーラム 2016.6.4

秦基博 東京国際フォーラム 2016.6.4

秦基博の魅力といえば、真っ先に思いつくのは「声」。聴く者をつかんで離さない、透き通るような、それでいて芯を持ったメッセージが強く届く歌声に魅了される。そして、その歌声をサポートするギターの存在も秦基博には必要不可欠なもの。秦のギターといえば、アコースティックギター(以下、アコギ)だろう。彼がデビュー直前に購入してから愛用している1966年製のギブソンJ-45は、レコーディングやライブでメインとして使われている。そのJ-45の乾いた音鳴り、ふくよかなボディ鳴りと芯をもったミッドローのサウンドが秦の歌声にぴったりと寄り添う。秦=アコギのイメージが一般的には強いかもしれない。しかし、近年のライブではエレキギターを弾く姿も観られ、今回のライブでもアコギをメインにしながらもエレキギターも数曲で積極的に弾く姿が印象的だった。
昨年12月に約3年ぶりの5thアルバム『青の光景』をリリースし、今年2月にはドラマ主題歌ともなった20thシングル「スミレ」リリースと、立て続けに作品を発表してきた秦基博。全国ツアー“HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2016―青の光景―”は、全国15会場17公演で5万人を動員、全公演即日ソールドアウトとなった。今回はツアーファイナルの国際フォーラムホールAの公演を、ミュージシャンの側面からレポートする。

取材・文 / 井桁 学 撮影 / 河本悠貴


ls_hata_0392

ライブはアルバム『青の光景』の1曲目でもある「嘘」から始まる。柔らかいフェンダーローズのコードの響きのなか、鋭く刺さるギターリフ。エレピのコード感とギターのフレーズがループされ、ゆったりと “青”の世界へと誘う。続くタテノリの8ビートの「ダイアローグ・モノローグ」では、エレキギターのカミナリギターズSUNRISEでドラムの4分打ちに合わせたタテのリズムバッキングで自らの歌をサポートしていく。
この1、2曲目の選曲。ゆとりある大人のセットリストに感じる。デビュー10周年を迎えた秦基博のキャリアと、今回のアルバムの落ち着いた世界感。ゆっくりとした助走ながらも、観客と同じ歩幅で進むような、心地よいテンポ感でライブは進んでいった。
今回のツアーメンバーは、皆川真人(Key)、鈴木正人(Ba)、あらきゆうこ(Dr)、初参戦の弓木英梨乃(Gt)という男女混合メンバー。新たなバンドメンバーによるアンサンブル力はライブの回を追うごとにダイナミックに、そしてリズムにはグルーブが生まれていた。特に、弓木の参加はバンドの起爆剤となり、秦の音楽の再現性も幅がさらに広がり、表現にさらなる可能性を感じた。
序盤で盛り上がりをみせる「花咲きポプラ」や「ROUTES」では、メインギターであるアコギのギブソンJ-45をストロークしながら歌う。初期の代表曲である2ndシングルの「鱗(うろこ)」ではアコギをエピフォンTexanに持ち替えて4カポのストロークでかき鳴らす。
秦のライブといえば、バンドスタイルだけではなく、1人弾き語りを主体とするGREEN MINDのようなライブもある。今回は、その弾き語りも披露。アルバム収録曲「美しい穢れ」は、J-45によるフィンガーピッキング。まさに秦のアコギの真骨頂ともいえるプレイで、より刹那な情感を強く創り出していた。続く「恋はやさし野辺の花よ」は、以前CMでも流れていたカバー曲。大正ロマンティシズムながら、秦の声によって現代へタイムスリップするノスタルジックな歌。ためて弾くフィンガーピッキングがゆったりと流れる時間と風景を見せてくれる弾き語りだった。この2曲だけで、秦基博の弾き語りの表現力の強さ、幅広さがこの10年でよりパワーアップしたことがわかる。
弾き語りが終わり、皆川(Key)と鈴木(Ba)を呼び込み、トリオ演奏の「休日」を披露。ウッドベースとエレピとアコギ、必要最低限の楽器でシンプルに歌を生かしたアレンジ。ベースソロやギターソロまでアットホームな世界感を感じた。
続いてあらき(Dr)と弓木(Gt)を呼んで、アコースティックバンドでファンキーな「Fast Life」へ。パーカッションのあらき、アコギカッティングの弓木、ローズの皆川、ハモンドの鈴木、ストロークとカッティングでアプローチする秦。スピーディーでグルーヴィー。ソロ回しも聴かせ、セッション的なパフォーマンスをみせる。
バンドスタイルから弾き語り、トリオ演奏、アコースティックセットと、様々なアプローチで観るものを飽きさせないアレンジは見事だった。

ls_hata_0641

秦のギタープレイスタイルで言えば、後半戦での疾走感溢れる「Q & A」が見所だった。メインプレイとなる16ビートのカッティングはもちろんのこと、サビ前のブラッシングやオクターブ奏法でのキメのカッティングフレーズなど、ギターフレーズが楽曲のフックとなって歌をサポートする。
後半戦で一番の盛り上がりを見せたのは最新シングル「スミレ」。ミュージックビデオでも秦自身が踊っているが、演奏前に観客に踊りの振り付けを指導。踊りから、最後のスミレの手話のところまで丁寧に教えてから、楽曲がスタート。サビでは観客全員で踊る光景が印象的だった。ライブ会場での演者と観客の共有は、より強く楽曲を印象づける。この曲は今後ますますライブで成長していく楽曲に感じた。

ls_hata_0380

そして秦基博の名前を一般に浸透させた名曲「ひまわりの約束」。もはやカラオケで聴かないとき、歌わないときはないほどメジャーな楽曲であり、もはやスタンダードナンバーである。メインのJ-45、5カポのFから始まる、あのイントロ…。フィンガーピッキングでやさしく奏でるアルペジオと温かさと強さをもった曲。静と動のような、そんなコントラストは秦自身の特徴ともいえる。
本編ラストとなった名曲「Sally」。ウエストコースト系のノスタルジックな楽曲であり、ゆったりとしたビート感。弓木のコーラスとバイオリンも効果的にアンサンブルに協調していく。
アンコールラストは「僕らをつなぐもの」を弾き語りで披露。歌に寄り添うフィンガーピッキングのアコギサウンドが美しい感涙のバラード。切ないメロディと温かみのあるコード感。人とのつながりと儚さのメッセージ、そして力強く突き抜ける声。アコギと歌だけで心象や情景を表現することが秦基博の音楽の本質であり、核である。この不動の核が多くのファンや一般リスナーの心をとらえて離さない彼の持ち味であり、その歌声に懐かしさと優しさ、温かいぬくもりを感じるのだろう。

ls_hata_5512

アンコールで“10th Anniversaryアリーナツアー”の開催決定を発表。11/1の横浜アリーナを皮切りに、大阪城ホールなどが発表された。その前の9月17日には“Augusta Camp 2016 ~produced by 秦基博~”も開催される。10周年のアニバーサリーイヤーの今年。秦基博の奏でるギターと歌で構築する音楽は、加速を止めずに、より多くの人たちへ浸透し、つながっていくのだろう。

Tour Member
秦基博:Vocal/Guitar
弓木英梨乃:Guitar/Violin
皆川真人:Keyboard
鈴木正人:Bass
あらきゆうこ:Drums

HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2016―青の光景―  2016年6月4日@東京国際フォーラム セットリスト

01.嘘
02.ダイアローグ・モノローグ
03.花咲きポプラ
04.ROUTES
05.鱗(うろこ)
06.美しい戯れ ※弾き語り
07.恋はやさし野辺の花よ ※弾き語り
08.休日
09.Fast Life
10.ディープブルー
11.水彩の月
12.デイドリーマー
13.Q & A
14.グッバイ・アイザック
15.あそぶおとな
16.スミレ
17.ひまわりの約束
18.Sally
EC1.聖なる夜の贈り物
EC2.トラノコ
EC3.僕らをつなぐもの ※弾き語り

リリース情報

ls_hata_blueJK

New Album 『青の光景』

AUCL-194 ¥3,000+税

【収録曲】
01.嘘
02.デイドリーマー
03.ひまわりの約束
04.ROUTES
05.美しい穢れ
06.Q & A
07.ディープブルー
08.ダイアローグ・モノローグ
09.あそぶおとな
10.Fast Life
11.聖なる夜の贈り物
12.水彩の月
13.Sally

ライブ情報

秦基博 10th Anniversaryアリーナツアー開催決定!

11月1日(火) 横浜アリーナ
11月4日(金)・ 5日(土) 大阪城ホール
11月15日(火) 名古屋日本ガイシホール
11月19日(土) 宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
11月27日(日) 北海きたえーる
※福岡公演:現在詳細を調整中

秦基博(ハタ・モトヒロ)

生年月日:1980年10月11日 天秤座
出身:宮崎県生まれ横浜育ち
血液型:A型
趣味:草野球、ボーリング、ビリヤード
1980年10月11日宮崎県日南市生まれ、神奈川県横浜市出身のシンガー・ソングライター。99年より弾き語りライヴを定期的に展開、2006年に“鋼とガラスでできた声”というキャッチフレーズでシングル「シンクロ」でメジャー・デビュー。その後、コンスタントに作品を発表し、2009年には単独としては自身初の日本武道館公演を実施。2014年には、映画「STAND BY ME ドラえもん」主題歌『ひまわりの約束』で大ブレイク。同年発売した弾き語りベスト『evergreen』は日本レコード大賞企画賞を受賞。2015年の『青の光景』まで5枚のオリジナル・アルバムを発表。2016年2月にシングル「スミレ」をリリース。

オフィシャルサイト http://www.office-augusta.com/hata/

vol.33
vol.34
vol.35