Interview

「この役の声やってたんだ?わからなかった!」と言われるのはうれしい。人気声優・羽多野渉が語った“何者にもなりたい”役者としての思いとは?

「この役の声やってたんだ?わからなかった!」と言われるのはうれしい。人気声優・羽多野渉が語った“何者にもなりたい”役者としての思いとは?

人気声優・羽多野 渉の4年ぶりとなるオリジナルフルアルバム『Futuristic』が12月12日にリリースされた。「未来」を意味するタイトルが示すものとは。過去、現在、未来。その全ての点が羽多野 渉という音楽になっていくその様を今作で感じて欲しい、という羽多野を直撃した。

取材・文 / えびさわなち
撮影 / Wataru Nishida(WATAROCK)


自分の中から無限に、いろいろな形状のものが出てくるということが、自分の音楽表現だなと思います

2016年を「デビュー5周年」のアニバーサリーイヤーとして様々な企画などでファンへの感謝の想いを音楽に乗せてきた羽多野 渉。そんな彼にとっての2018年は、7年目というあらたな時間へと踏み出した一年となった。その「7年目」という楔に向き合ったとき、彼が感じたのは、自身の未来。

羽多野 「さぁ今年はどうするか、ということで。初心に還るではないですが、これまでやってきて出した答えと、その先にある未来像みたいなものを考えつつ自分を見つめ直す時間だったんじゃないかと思います。ここ数年間は、作品のタイアップでの楽曲をやらせていただく機会が、ありがたいことにとても多かったので、その作品の色や匂いによって全然違う音楽に挑戦できるというのが、自分の中の音楽表現なんだな、という「答え」に行き着きました。

このジャンルこそが僕だ、ということではなくて、形に囚われないという部分でいろんな色であったり、固いモノのときもあれば柔らかいときもあったり。自分の中から無限に、いろいろな形状のものが出てくるということが自分の音楽表現だな、ということはすごく思いますね」

今年は作品のライブで大きな舞台を踏むこともあった羽多野。そんな体験の中で音楽的な刺激を感じることができたという彼は、キャラクターとしての音楽表現も含めて「羽多野 渉の音楽」にできることが自身の音楽の個性だと感じたのだと言う。その羽多野がオリジナルのフルアルバムとしては実に4年ぶりとなるアルバム『Futuristic』を完成させた。

羽多野 「全体を内包するテーマとしては、『Futuristic』=未来的、という意味はあるんです。自分の未来であったり、自分の未来だけではなくみんなの未来であったり。広い意味を持たせました。なので曲によって全然テーマ性は違うんですけども、どんな未来を想像するか、というのは曲ごとにあるし、その未来のためには過去がないといけないので過去をイメージした曲も収録しています」

作家さんがすごく楽しんでくれる、というのが自分の中でも幸せなことですね

そんな過去、そして現在の彼から脈々と繋がっていく未来像を見せるアルバムには、7周年に入ってから感じていた、「キャラクターとしての音楽表現も羽多野 渉である」という意識が大きく作用している。なぜならそれが今作の制作に声を掛けたクリエイターの顔ぶれにも如実に現れているから。

羽多野 「今回の『Futuristic』も、お願いしている作家さんは、僕がキャラクターとして歌っているときに出会った方が多いんです。僕からもお話させていただきましたし、作家さんからも「次は羽多野 渉さんの音楽を」とお声かけいただくこともありました。そういう意味ではどのキャラクターの収録でも、作家さんがすごく楽しんでくれる、というのが自分の中でも幸せなことですね」

4年ぶりとなる今作は、既発シングルのタイトル曲のほかに新曲5曲を制作。大ヒットしたTVアニメ『ユーリ!!! on ICE』のEDテーマになったシングル「You Only Live Once」のカップリング曲「Sing and Dance!」を作ったfu_mou、その「You Only Live Once」やTVアニメ『ひとりじめマイヒーロー』OPテーマ「ハートシグナル」の彦田元気、ゲーム「A3!」で「The Pride Of The Knights」を制作したミト(クラムボン)ら、これまで共に作品を作ってきた顔ぶれが揃っての制作となっている。

中でも新曲「realize」を作った飯田高広との制作に対しては、羽多野自身、並々ならぬ想いがあったのだとか。

羽多野 「飯田さんは僕に、歌うことの楽しさを教えてくれた方で。今から10年以上前にラジオの企画で声優の鈴木達央とCELL DIVISIONというユニットを組んで活動をしていたんですね。シングルも2枚出して、ライブも2回やらせてもらったんです。そのときに飯田さんと達央から、僕は音楽の楽しさを教えてもらったと思っているんです。そのときには明確ではなかったんですが、じわじわと、いつか自分も個人名義で音楽ができたらいいなとか、やってみたいな、という夢みたいなものを抱くきっかけになったユニット活動だったかなと思うんです。

だから過去と未来、それから自分の行く先をテーマに掲げたアルバムには、ぜひとも参加していただきたかったので、「realize」というとてもカッコいい楽曲をいただいたときにはうれしかったですし、不思議な感覚になりました。レコーディングをしながら「このサウンドって飯田さんのサウンドだなぁ」って。今の自分が過去の自分に対して「おまえがやりたかったことって、これだろ?」って問いかけをしながらのレコーディングでしたね。それは間違いなく飯田さんからいただいた刺激だと思います」

そんな飯田をはじめすべてのクリエイターからそれぞれに違った刺激を受け取って完成した、という『Futuristic』。ビジュアルワークで印象的なのは、ジャケットだろう。階段を登っている途中の羽多野が、ふとこちらを振り返っている表情がやけに印象に残る。

羽多野 「限界なくこれからも歩んでいきますよ、ということで。階段の途中で立ち止まって後ろを振り返っている僕なんですが、それも「進んでいる」ということを皆さんに感じていただけたらうれしいな、という気持ちで。そのうえで、今までやってきた歩みをちらりと振り返っている、そんなジャケットです」

すべてを「タイアップ曲のような攻撃力のある曲」に!

新曲5曲に既発曲が5曲。しかしこのアルバム、実はこの4年のベストアルバムを聴くような感覚になる。あらたな曲もすべてがシングル曲なのでは、と感じるほどの個性とパワーとを宿しているのが印象に深く刻まれる様はまさに「ベストアルバム」的な輝きの一枚。

羽多野 「今回フルアルバムを制作させていただくということが決まってから、「新曲は5曲になります」ということになって、その5曲のテーマや方向性を自分で考えて(作家へ)お願いをしているんですけれども、それぞれの曲をシングルにしたいくらいに愛が強いんですよ。それぞれすべてを何かの作品のタイアップにしてもらいたいくらい!それくらいこの5曲共が違う魅力を持っていて、攻撃力が高めだと思います。

既発シングル曲も「Dance with Devils」という括りがあっても、全然方向性の違う曲になりましたし、そのほかの曲も個性がまるで違う。でもそれって、羽多野 渉というアーティスト像ともリンクしていて。どんな形、どんな形状にもなりたい、という欲が現れている曲たちなのかな、と思います。なので、そんな楽曲たちに新曲で立ち向かうには「すべてがタイアップ曲のような攻撃力のある曲をお願いします」と作家さんにはお話をしました」

みんながイメージする羽多野 渉像が全然統一されていなくていいかな

一曲一曲、トラックが進むたびに 「次の曲を聴くには俺を倒していけ」とラスボスさながら個性的でパワーのある楽曲がやってくる今作。しかも曲ごとに違う羽多野を感じさせ、驚かされるのは、先行試聴で証明済み。一枚を通して胸躍る、楽しめるアルバムとなっている。そんな羽多野がこのアルバムに込めた想いとは。

羽多野 「ジャケットでも表現していますが、常に進んでいたいんです。飯田さんとの楽曲の中に、僕のすごくお気に入りの歌詞があって。“変わらない自分でいるために 変わり続けていくんだ”というフレーズなんですが、それって役者として生きている自分の、指標みたいなものなんです。

羽多野くんって変わらないね、って褒め言葉として言われるときって、うれしいんですけど、でも自分としては常に変わっていたい。変わり続けていたい、と思うことで「変わらないね」と言われることのうれしさがこみ上げてくるんですよね。慢心しちゃいけないし天狗になってもいけない。つねにつねに階段を一歩ずつ一歩ずつ、二足飛び三足飛びなんてもう年齢的にもできないんです。下手したら一段超えるのに2,3歩使ってもいいかなくらいに思っているけれど、それが未来に向かうことに繋がっていく。それが役者としてもアーティストとしても生きていく目標なので、今回の『Futuristic』というタイトルにさせていただいたんですね。

羽多野 渉ひとりなんですけど、みんながイメージする羽多野 渉像が全然統一されていなくていいかな、と。そうなりたいのかもしれないですね。「この役、羽多野さんだったんだ!アニメを観ていて全然わからなかった!」って言われるのがうれしいんですよね。何者にもなりたい、役者としての自分で制作させていただいたアルバムなので、カッコいい自分っていうのもイメージしていただけたらうれしいですし、かわいらしい楽曲ではまた違う自分を想像してもらいたいですし、一枚のアルバムなんですけど、まるでいろんな人が歌っているかのような楽しみを感じていただけるのが、声優としても楽しいな、と思います」

バラバラなベクトルで発色しているけれど、そのどの世界も羽多野渉の音楽ワールド。彼の未来のビジョンを見せるこの『Futuristic』を聴き、その進化を全身で体感したい。来年3月に開催されるライブツアーでもきっと、そんな変幻自在な音楽でファンを楽しませてくれるはずだから。

フォトギャラリー

ライブ情報

Wataru Hatano Live Tour 2019 -Futuristic-

2019年3月3日(日)東京公演:大宮ソニックシティ
昼の部:開場14:00 開演15:00 予定
夜の部:開場18:00 開演19:00 予定

2019年3月10日(日)大阪公演:Zepp なんば大阪
昼の部:開場14:00 開演14:30 予定
夜の部:開場17:30 開演18:00 予定

チケット:7,200円(税込)
※全席指定 ※3歳以上有料。3歳未満入場不可。

羽多野渉オフィシャルサイト