モリコメンド 一本釣り  vol. 97

Column

ネクライトーキー 純粋無垢な少女性と心地よい破壊力を共存させたボーカルと幅広い音楽性を融合させたハイブリッド感が癖になる

ネクライトーキー 純粋無垢な少女性と心地よい破壊力を共存させたボーカルと幅広い音楽性を融合させたハイブリッド感が癖になる

ネクライトーキーの「おしゃれ大作戦」は、個人的に2018年もっともリピートした楽曲のひとつ。不思議なアジア感があるイントロ、軽快でノリやすいビートと緻密に構築されたアレンジ、一度聞いたら耳から離れないメロディ、そして、“お金もない、努力もしない  二十五を過ぎたら死ぬしかない 形のない恐れだけが “という共感せざるを得ないリリック。メンバー個々の演奏能力の高さ、女の子ボーカルのフリーキーかつポップな歌声を含め、”いまどきのバンドだね“で片づけるわけにはいかない魅力がたっぷりと込められていて、やばいときは1日20回くらいMVを観ていた。

ポップな大衆性とマニアックな志向が絡み合うバンドサウンド、純粋無垢な少女性と心地よい破壊力を共存させたボーカル、ネガティブとポジティブが表裏一体となった歌詞の世界によって、結成からわずか1年半ほどで急激に知名度を上げている大阪発の4ピース・ポップ・バンド、ネクライトーキー。3ピースバンド<コンテンポラリーな生活>の朝日(Gt.)、藤田(Ba.)、サポートドラマーのカズマ・タケイ(Dr)にボーカルの“もっさ”(Vo/Gt.)を加えて活動をスタートさせたこのバンドが注目されたきっかけは、最初に紹介した「オシャレ大作戦」だった。“3rd デモシングル”としてリリースされた楽曲は、タワーレコード指定店内のネクスト・ブレイクアーティスト売上ランキング企画、「タワクル」で、大阪は6週連続1位、渋谷で5週連続1位、名古屋では7週連続1位を記録。MVの再生数も190万回を突破、各地のサーキットイベントでも入場規制となるなど、新人バンドとしては理想的な快進撃を見せている。

ネクライトーキーの魅力の中心は、幅広い音楽性を融合させたハイブリッド感だろう。70年代〜00年代までの洋邦のロックミュージック、さらにアニソン、J−POP、ボカロ系などのテイストを取り入れながら、独自のミクスチャー・サウンドへと昇華しているのだ。おもしろいのは、その組み合わせ方。1stフルアルバム『ONE!』の収録曲でいえば、「許せ!服部」は“もしユニコーンがblurの『Girls And Boys』をカバーしたら”というアイデアから生まれ、『タイフー!』はフジファブリックの『TAIFU』とはっぴいえんどの『颱風』を交互に聴きながら制作され、『レイニーレイニー』は<チャットモンチーがVampire Weekendをカバーしたら>という想像がもとになっているという。実際に楽曲を聴けば“なるほど!”と納得してもらえると思うだが、それが単なる“ネタ曲”みたいにならず、どこからどう聴いてもネクライトーキーの世界になっているところがすごい。メインソングライターの朝日はボカロP・石風呂としても知られているが、ブッとんだアイデアを誰もが楽しめるポップチューンに導く彼のセンスは、このバンドを結成したことでさらに開花していると思う。

サウンドのおもしろさをさらに増幅させているのが、ネガとポジが絶妙にネジれ合うリリック。“うまくやってるよ”などど自分を騙し騙し、だけど同窓会は避けて通る“僕ら”を歌った「こんがらがった!」、“価値も意味もないような かわいいだけの歌になればいいな”“と刹那的な感情を描いた「めっちゃかわいいうた」、現実と妄想の狭間で世界の終わりを夢想しつつ、最後に“光はいつでも明日へ向かう心の中にあったんだ”と呟く「だけじゃないBABY」。ネクライトーキーの歌は、ぼんやりとした暗闇のような現在を生きるすべての人——どう考えても未来に希望はない、なので、とにかく目の前のことに対処するしかない——の心に訴えかけ、つかの間の解放感を与えてくれるはずだ。

もうひとつ、ボーカリストの“もっさ”についても記しておきたい。以前、彼女がやっていたバンドのライブを朝日が見て、何も取り繕わず、“そのまま”でステージに上がっている姿に感動してバンドに誘ったというエピソードの通り、このアルバムでも彼女は、そのままの自分を奔放に表現している。どうでもいいことに落ち込み、楽しむときはとことん楽しんで、最終的には“よし、がんばろう”と思える根本的な強さもある。ネクライトーキーが表現する音楽世界はそのまま、もっさのキャラクターに直結しているのだと思う。

2019年はアルバム『ONE!』を引っ提げた全国ツアー「「ONE!」リリースツアー“オーキートーキー!全国編”」から始まる。いまどきのポップ感と音楽的なクオリティ、そして、切実な表現欲求を含んだネクライトーキーの音楽が、多くのリスナーの心を捉えることを心から願う。

文 / 森朋之

オフィシャルサイト
https://necrytalkie.jp

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