Interview

Awesome City Clubがより輝く。バンドを上昇させるアルバム『Catch The One』完成

Awesome City Clubがより輝く。バンドを上昇させるアルバム『Catch The One』完成

2018年のAwesome City Clubは、1st EP「TORSO」(3月)、配信シングル「SUNNY GIRL」(6月)、「8月とモラトリー」(8月)、「君はグランデ」(10月)と、立て続けに作品を制作した。自分たちの“今”をタイムラグなしに届け続けた彼らが、12月19日に、デビューから3年半にして初めての1stフルアルバム『Catch The One』をリリースする。Awesome City Clubの2018年の集大成であり、2019年の自分たちに繋がる大切な架け橋となる今作について、このバンドのツインボーカルを担うatagi(vocal, guitar)とPORIN(vocal, synthesizer)に聞いた。

取材・文 / 松浦靖恵

よりバンドが輝くために、メンバーがさらに輝いていく

2018年は、ライヴ活動はもちろんですが、1st EP「TORSO」と配信シングル3作と、精力的にAwesome City Clubの音楽を発信しましたが、それらの楽曲が今回のフルアルバム『Catch The One』へと、どのように繋がっていったのか、その過程を教えてください。

atagi 僕らはデビューして3年半になるんですけど、最初の2年間は“Awesome City Tracks”と題したシリーズとして、自分たちにはどんな楽曲ができるんだろう、どんな自分たちを見せることができるだろうと、自分たちの手を伸ばせるところを、まるで“図鑑”のようアーカイブしていくというコンセプトで音源を作って、4枚のアルバムをコンスタントに発表してきました。それらを経て、2017年にベストアルバム『Awesome City Club BEST』を発表して。そこでひと区切りつきましたというところで、2018年3月に発表した1st EP「TORSO」から、新しいAwesome City Clubを構築していくために模索していたなかで、より内省的にバンドや自分たちのことを見つめるようになっていきましたね。

atagi

内省的に見つめていくと、暗くて深い方向に向かいがちになりそうですが、今作にはポジティブなメッセージが散りばめられていますし、新しい世界に踏み出そうとしている雰囲気や前向きな明るい気持ちを感じるのですが。

atagi バンドをやっていたら楽しいことばかりではないけれど、最終的にどうなっていきたいのかっていうと、いろいろあるけど頑張ろうよってなるし、頑張ろうねって言いたい相手がいる。しかも、自分に対してもそう言いたいんだなっていう気持ちにもなっていくから、明るい曲が自然と多くなりましたし、ポジティブなメッセージに向かっていったんだと思います。結局、いろんなものを内包しても、最終的にはポジティブなメッセージに落ち着くのが、僕ららしさなんだなってことを改めて思いました。

PORIN 今バンドが考えていること、自分たちが感じていることを、ひとりひとりが素直に自分たちの音楽にすることが多くなったんだと思います。

atagi 自分たちがよりバンドになるために、よりバンドが輝くために、それぞれのメンバーがさらに輝いていこうぜっていうメッセージが、『Catch The One』というアルバムタイトルには込められています。

PORIN

タイトルチューン「Catch The One」は、その想いを象徴するような楽曲になっていますもんね。

atagi 実は、この曲はアルバムタイトルとコンセプトが決まってから作り始めたんです。

PORIN この曲は、ほかの収録曲が出揃ったあとの、最後のピースだった。

atagi アルバムのタイトルとコンセプトをそれぞれのメンバーがどう受け止めて、どう楽曲を作っていったかというところをメンバー間で共有したうえで、「じゃあ、このアルバムにのっとったタイトルチューンを作ろう!」ってなりました。大切なメンバーと大切な仲間たちに何が歌えるだろうと思いながら書いた曲ですけど、自分の大切な人を思って聴いてくれると嬉しいです。

アルバムのコンセプトは早い段階からあったということですか?

atagi 前作「TORSO」を作っていた頃から、大事なものを掴むとか、人の背中を押してあげたいとか、メンバーに輝いて欲しいとか、そういった一貫した想いがあったんですよ。目線の角度は違うかもしれないけれど、このアルバムの中で一番古い曲の「ダンシングファイター」と「燃える星」を作っている頃から、すでに自分の中では次の新しいアルバムのコンセプトは見えていたような気がします。あと、例えば「Catch The One」のフォーマットは、2曲目「SUNNY GIRL」から得ていたりするので、作っていく過程で発見することもいくつもありましたね。この1年、いろいろと試行錯誤をしながらも、新しいAwesome City Clubのセオリーというものを、それぞれ勝ち取ってきたんじゃないかなって思っているし、そこは自分たちで評価していいんじゃないかと思ってます。それに、自分たちが見せたいこと、伝えたいことが明確に見えていたので、かなり純度の高いものができたとも思ってます。

では、早い段階からアルバムタイトルも決まっていた?

atagi タイトルにした“Catch The One”というワードにはダブルミーニング的な意味合いを込めていて。僕の音楽ルーツにあるのはブラックミュージックなんですけど、ブラックミュージック、R&Bの巨匠・ジェームス・ブラウンの口癖が“The One”だったので、ブラックミュージックへのリスペクトという意味合いと、それぞれのメンバーがより輝くことでバンドがより素敵に、より大きくなっていく、そして、このアルバムを聴いてくれるあなたも大事なものを掴んで欲しいという意味合いを重ね合わせました。

マツザカタクミ

ドラムのユキエさんが「愛とからさわぎ」で真部脩一さん(集団行動)と共作詞していたり、「クリエイティブオールナイト」ではベースのマツザカタクミさんがラップをしていたり。

PORIN それぞれのメンバーがどういう曲を作りたいかっていうところで、それぞれが意見やアイデアを出す段階から、私はワクワクしてました。曲や歌詞から、今何を考えていて、何を表現したいのか、それぞれのモードを知ることができたいい機会でしたね。

atagi 心の奥にあるような人生観や深いところにある想いって、普段の日常会話では話さないから、意外と書いてきた歌詞から知るんだよね。

PORIN 「へぇー、こんなこと思ってたんだ。ふむふむ。なるほど~」って感じ?(笑)

atagi 俺はドキドキしてた。「どんなんがくるんやろ~」って(苦笑)。普段は自分が詞曲を作ることが多いから、(曲や歌詞)を待つ身になると、こんな心境になるんやなって。

PORIN ユキエが書いた歌詞は、私たちが普段歌詞に書かないような言葉があるし、atagiと私の新しい一面を引き出すような歌詞にしたいっていう、ボーカルふたりに対する愛情もすごく感じました。

ユキエ

atagi メンバーが作ってきた曲に対してひとつ決めていたのは、各メンバーが発起人になって作り始めたものは、できるだけお蔵入りにしたくないということ。なんかできそうな気がするという芽みたいなもの、そこから何か見えてくるかもしれないという可能性の最初の芽を摘みたくなかったので。そこは最後まで貫き通すことができました。

PORIN 今回の制作で私が一番感じたのは、メンバーが作った曲であっても、最終的にatagiのエッセンスやリズムのアプローチやアレンジベースが、Awesome City Clubの楽曲になっていくんだなってこと。そこが今まで以上に自分の中ではっきりしたし、それがこのバンドにとって大事なカラーになっているんだなって改めて思いました。

PORINさんがメインボーカルを取っている「ワンシーン」を聴いて思ったのは、PORINさんとatagiさんは声質も歌い方もこんなに違うのに、なぜかふたりが一緒に歌うとスッと重なるんですよね。そこがすごく不思議でした。

atagi ほんまに、僕もそう思います(笑)。このふたりってボーカリストとしての特徴が真逆なんですよ。僕はブラックミュージック的なアプローチをしがちだけど……。

PORIN そう、私は全然“黒く“ないですもん(笑)。

atagi 僕の歌は、平たく言うと、こぶしをきかせたがりみたいなところがあるけど、PORINの歌はさらっと歌いたいタイプで。こんなふたりの歌や声って、一見交わらないようですけど、お互いに歩み寄りすぎず、自分の個性を消さずに歌っていて、それがオリジナルの色になっているんですよね。

PORIN 去年までは、atagiのニュアンスに近づけて歌おうっていう意識が自分の中にはあったし、それが正解だと思っていたんです。でも、きっとそういうことではないのかなって思うようになってきたのは、「燃える星」くらいかな。自分の個性を大事にして歌うのが、このバンドの個性、Awesome City Clubにしかない色になるんだろうなってことを思うようになりました。

atagi Awesome City Clubって個性が強いヘンなメンバーが5人も集まっているバンドなんです(笑)。見た目も違うし、それぞれ音楽的な背景も違うけれど、そのぐちゃぐちゃした感じをうまいこと音楽を通して出したかった。だから、このアルバムを聴いた人がメンバーの顔が浮かんだら最高だなって思ってます。

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