冒険Bリーグ  vol. 7

Column

存在そのものが戦術。京都のオールラウンダー、ジュリアン・マブンガは飛びぬけてタフだ

存在そのものが戦術。京都のオールラウンダー、ジュリアン・マブンガは飛びぬけてタフだ

『冒険Bリーグ』第7回は、京都ハンナリーズ(以下、京都)のジュリアン・マブンガを取り上げる。彼は全ポジションの仕事を一人でこなすようなオールラウンダーで、しかも飛び抜けてタフ――。そんな彼の凄みを今回はお伝えする。

12月15日にハンナリーズアリーナですごい試合を取材した。スコアは107-100。京都がダブルオーバータイム(二度の延長戦)にもつれ込む激闘の末、昨年度の中地区王者を上回った。マブンガだけでなくシーホース三河(以下、三河)のケネディ・ミークスも「トリプルダブル」を達成する、記録ずくめの試合だった。

バスケでは得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロックショットのうち3つのスタッツが2桁に届くと「トリプルダブル」と称される。一般的には得点、リバウンド、アシストの順で「2桁(ダブル)」を達成しやすい。2017-18シーズンのB1では3名、2018-19シーズンもここまで2名しか達成していない偉業だが、それが1試合で2名も誕生した。

マブンガは15日の三河戦だけで42得点、11リバウンド、16アシストを記録した。16アシストはB1史上最多タイ記録でもある。

【B1ハイライト】12/15 京都 vs 三河(18-19 B1第14節)

アフリカ・ジンバブエで生まれ、アメリカで教育を受けた28歳のマブンガ。「ミスター・トリプルダブル」と言うべき存在で、今季も10月12日の横浜ビー・コルセアーズ戦で既に達成していた。2017-18シーズンの1試合平均(12月16日現在)は21.4得点、9.1リバウンド、9.1アシストで、そもそも平均値が高い。アシストランキングはB1でもダントツのトップだ。

203センチ・106キロの体格は外国籍選手としてやや小柄だが、この男はスキルとスピードに絶対的な強みを持つ。ボールを運ぶポイントガードの仕事もするし、インサイドで身体を張ることもできるオールラウンダーだ。必然的に彼がボールを預かる時間は長くなり、半ば揶揄も込めて「戦術マブンガ」という言われ方もされる。

試合後に三河の鈴木貴美一ヘッドコーチはこう振り返っていた。
「マブンガ選手に振り回された。スピードのミスマッチでやられたところが上手くディフェンスできなくて、ズレを生じてしまった」

彼は誰を相手にしても「ミスマッチ」を作れる。小柄な選手にはパワーで、大柄な選手にはスピードで上回り、個で局面を打開してしまう。距離を取ってスペースを埋めると、3ポイントシュートが高確率で炸裂する。複数でトラップディフェンスを仕掛ければ、B1最高レベルのパス能力で空いた味方にイージーショットをプレゼントしてしまう。

チームメイトの岡田優介は、心強いチームメイトについてこう評する。
「スキルが高いのは誰が見ても分かるんですけど、それ以上にゲームに対しての『勝ちたい』という思いが強い。勝つためにどうしたらいいかをちゃんと考えられる選手なので、周りに声をかけて、こうしたいと自己表現ができる。彼は非常に強いものを持っていて、エゴも持っています。でもだからと言って、自分がやればいいとは考えていない。周りを活かしたいと思っていて、バランスは非常に取れている」

そんなスーパーマンにもピンチはある。15日の三河戦は4クォーター残り6分12秒で4つ目のファウルを犯し、あと1ファウルで退場の状況に追い込まれた。試合の終盤、勝負どころはどうしてもファウルが必要になるし、相手は4ファウルのマブンガを突いてくる。しかしこの男は16分以上をノーファウルでやり切った。

マブンガはこう説明する。
「スマートにプレーすることを一番心掛けてやりました。(桜木)ジェイアールとマッチアップするときはハードにしなければいけないと分かっているけれど、ハードにしつつスマートに、ファウルを取られないようにプレーした。周りのみんなも分かってくれたので、踏ん張れた」

京都の浜口炎HCは彼の起用についてこう述べていた。
「ファウル4つになって、一度下げる方法もあると思いますけれど、彼がいなくなった時点でウチは厳しい。あの時間帯でしたし、行けるところまで行こうと思いました」

この試合で「トリプルダブル」と同じくらい強烈だったのは、50分のプレータイムだ。京都は8日と9日に府内でホーム戦を戦い、12日は沖縄へ遠征していた。8日間で5試合という過密日程だが、それでもマブンガはチームメイトのデイヴィッド・サイモンと共に、トップレベルの試合では異例の「フル出場」を果たした。

浜口HCはこの1週間のシビアな“やり繰り”をこう明かす。
「本当に過酷だと思います。土日に(ホームで)秋田とゲームをしたあと月曜は休んで、火曜に移動して、沖縄ではシューティグしかしていない。身体を少し動かすだけです。水曜にゲームして木曜に戻ってきたんですけれど、木曜も練習していません。金曜にチーム練習をしましたけれど、シューティグと三河のプレーの確認で、コンタクトをしてない。ジュリアンは完全にケアだけしかしていない。いかにフレッシュな状態でゲームに入らせて、ゲームの中でチームをステップアップさせようかと考えた」

浜口HCによると、大活躍を見せた京都戦も、マブンガはギリギリまで出場が危ぶまれる状態だったという。
「ジュウ(マブンガ)はヒザの良いときと悪いときがあって、沖縄の往復で飛行機に乗ったせいもあってヒザが腫れていた。今日の試合も出られるか出られないか分からない状態だった。午前中に本人がOKだったので(出場した)」

ただ京都のオールラウンダーはとにかくタフだ。15日の試合後は「流石に明日は無理ではないか」とスタッフや記者陣は“楽屋裏トーク”をしたのだが、16日も39分18秒とほぼフル出場。12得点、9リバウンド、9アシストと「準トリプルダブル」のスタッツを残している。

彼に「50分はキャリア最長か」と確認すると、誇らしげにこう返してきた。
「大学時代にトリプルオーバータイムで55分やったよ。シニアカレッジ(4年制大学)で全米最長の年間プレータイムを記録したこともある」

この男は桁外れだ……。マブンガは速さ、技術、熱意、賢さ、タフネスのすべてで強烈なレベルを示し続けている。

取材・文 / 大島和人 写真提供 / B.LEAGUE

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著者プロフィール:大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。大学在学中にテレビ局の海外スポーツのリサーチャーとして報道の現場に足を踏み入れ、アメリカの四大スポーツに接していた。損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年から「球技ライター」として取材活動を開始。バスケの取材は2014年からと新参だが、試合はもちろんリーグの運営、クラブ経営といったディープな取材から、ファン目線のライトなネタまで、幅広い取材活動を行っている。

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