LIVE SHUTTLE  vol. 313

Report

マオ from SID ちょっと早めのクリスマスプレゼントは、包み込むような歌声とファン待望のカヴァー曲

マオ from SID ちょっと早めのクリスマスプレゼントは、包み込むような歌声とファン待望のカヴァー曲

マオ from SID
X’mas Acoustic Live 2018
〈1st SHOW〉箸休め Silent Night
2018年12月11日 東京・日本橋三井ホール

約2ヵ月の間、ライブハウスツアー“SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR「いちばん好きな場所2018」”で、全国を駆け抜けてきたシド。その熱もまだ冷めやらぬなか、ヴォーカルのマオが、今度はソロプロジェクト“マオfrom SID”として12月11日、東京・日本橋三井ホールにて“X’mas Acoustic Live 2018”を開催した。当日は“箸休めSilent Night”と題した1st SHOW、“箸休めHoly Night”と題した2nd SHOW、2公演を行なったもののなかから、ここでは1st SHOWの模様をお届けする。

取材・文 / 東條祥恵 撮影 / 今元秀明

「今度はみんなをひとりずつ後ろに乗っけようか?」(マオ)

また、クリスマスの季節がやってきたーー。

会場は昨年と同じ場所。ステージには、大きなクリスマスツリーが飾られている。ヴァイオリンの門脇大輔、ギターの木島康夫、キーボードのnishi-ken。おなじみのサポートメンバーが登場したあと、「マオーっ!!」という声援を受けて、ロングコートを着たマオが客席に向けて控えめに手を振りながらオンステージ。そのまま「遠い恋のリフレイン」でライブは幕を開けた。オリジナル曲とカヴァー曲で構成されるソロライブ“箸休めNight”。今回のオープニングを飾ったのはT-BOLANのカヴァーだった。最初に驚いたのは、マオが椅子に座っての歌唱をやめて、マイクスタンドで歌っていたことだ。“箸休めNight”ならではの上品でリッチなステージ上の雰囲気はそのまま。だが、立ったことで、手や体、ロングコートの裾の動き一つひとつがいままでとはひと味違った表情を歌に加えていく。この曲では“アイツの記憶”だとか“ちっぽけな男さ”というフレーズをキザな男を演じるように少し俯きながら、ハスキーな声を使って歌っていったマオ。抑揚の効いたアレンジが、歌の表情を細部まで際立たせる。さらに、その男の10代の頃の記憶を回想するかのように尾崎豊の「OH MY LITTLE GIRL」を続けて披露したあと、マオは「こんばんは? 微妙だよね、4時30分って。こんにちは?」と挨拶をどちらにするのか悩んだ挙句「こんばんは、マオです。“箸休めSilent Night”へお越しいただきありがとうございます」といって軽く頭を下げた。そうして、昨年やって気持ちよかったので今年も同会場を選んだこと。ステージにある巨大ツリーも昨年と同じものを使っていることを伝えた。「(ツリーを見ながら)今年も雪降ってるね。これ(スタッフを見て)1回雪落としてから降らしてるの? へー。大変だね。裏も降らしてあるよ。見えないから来年はやらなくていいよ」とスタッフ思いの(?)発言で客席を沸かせたあとは、サザンオールスターズの「いとしのエリー」へ。昨年同場所で桑田佳祐のソロ曲「白い恋人達」を歌ったときもそうだが、言葉の切れ目を感じさせない、独自の間合いでねっとりレガートさせていく桑田の唱法とは対極にあるようななめらかで、やわらかな歌い方でマオは桑田楽曲をカヴァーする。そして最後「エッ、リィイー」と絶唱したところで、マオが天井からのスポットライトにすっぽり包まれると拍手喝采がおこる。深いリバーブのかかったキーボードの音から始まったのは竹内まりやの「告白」。「いとしのエリー」というピュアなラブソングの後にこの曲で、どっぷりと歌詞の世界へ浸らせていくところが、じつにマオらしい。ここで、マオから本日カヴァーした曲の解説が始まった。まず「告白」については「もう女の人は結婚しちゃったのかな。眠れない夜に、元カレから電話がきてという歌詞で。綺麗なメロディーなのに、複雑でドロドロな歌詞。……大好きです!」といってファンを喜ばせた。また「遠い恋のリフレイン」については「T-BOLANといえば「離したくはない」が有名ですけど、僕はこの歌が大好き」と“誰かの胸にすがりたくて独りアクセル吹かした夜”という歌い出しを再歌唱。いまは乗らないバイクも「昔は膝を(道路に)こすらせるぐらい上手かった」と自慢げに語り「今度はみんなをひとりずつ後ろに乗っけようか?」とタンデムデートを提案。観客が悲鳴をあげて喜ぶと「絶対NG出るわ」とバッサリ締めくくり(笑)、サポートメンバーを紹介。

「ここまでやってきて“メリークリスマス”言うの忘れてた~」(マオ)

ここまですでに(「OH MY LITTLE GIRL」以外)3曲の新しいカヴァーを披露してきたマオは「このあとも2曲ともカヴァーです。2つとも新しいやつで、80年代のバンドブームをグイグイ引っ張っていった人たちの曲です」と説明して、まずはTHE BLUE HEARTSの「ラブレター」をパフォーマンス。シンプルなメロディー、シンプルな言葉しかない構成だからこそ、歌と想いがむき出しになる。この曲はきっと、いつも手紙やSNSを通して自分にメッセージを送ってくれるみんなに向けての、マオからのラブレターでありクリスマスプレゼントだと感じた。“あなたよあなたよしあわせになれ”……。この気持ちを集まってくれたみんなに届けたいと願う想いが伝わってきて、胸が熱くなった。次に届けられたREBECCAの「フレンズ」は、バラード調で始まった曲が、2番からアコギのカッティングを合図に躍動感を増していくというオリジナルを新解釈したアレンジが、見事に大人の「フレンズ」像を作り上げていて、こちらもまた大感動を呼び起こす。そして、マオからのプレゼントがもう1つあった。“箸休めNight”でカヴァーをやりだして以来、ファンからリクエストが絶えなかったのだが、「歌うのが難しくてひたすら他の曲で濁してきたんだけど、あまりにもみんなが言い続けるから」という、なんともマオとファンの親密なムードを感じさせるMCから、もう1つのプレゼント、中島美嘉の「雪の華」が贈られた。イントロが流れると短く悲鳴が上がり、場内の空気が一瞬にしていままでにない緊張感に包まれる。観客の集中力はマオのヴォーカル一点に注がれ、歌声のせつなさが増していくと同時に、凍えるような冬の凛とした空気が会場を覆っていった。静寂のなかに広がる真っ白い雪の世界、かけがえのない愛、後半になってさらに喉が開き、調子を上げてきたマオの歌声の素晴らしさに恍惚とさせられた瞬間だった。歌が終わったあと、客席のあちこちから鼻をすする音が聞こえるなか、“ふう”とため息をもらし「なんとか歌えてよかった~」と胸をなでおろすマオ。そして、この後は徳永英明の「カラオケではよく歌っている」という「壊れかけのRadio」はあえて外して、「みんなにはこの曲を届けたいなと思って持ってきました」と言って「夢を信じて」を歌い出すと、客席にはこの日初めて手拍子が沸き起こる。マオの包容力に満ちた歌で、場内は開放感あるムードに包まれていく。だが、歌い終えたあと「ここまでやってきて“メリークリスマス”言うの忘れてた~」とマオは大慌て。「ちょっと待って。このヒモ(マイクのケーブルのこと)がからまって」とボソリつぶやくと、すぐに客席が「“ヒモ”って」とひそひそざわめく。「“ヒモ”なんかに食いつくなよ! なんだよ。ケーブル。これでいい?」と半分笑いながらキレ気味のマオに観客はドヤ顔を浮かべる。そうして改めて「メリークリスマス」と伝えたあと、マオが「本当にこんなこと忘れて。おかしな“マオ君”」とお茶目マオを発動すると、客席は一気にメロメロ状態に。

「最初から最後まで“デート”してるようなロマンチックな感情で歌えました」(マオ)

いよいよライブは終盤戦。「違う果実」からオリジナル曲を続けてパフォーマンス。軽快なアコギのカッティングがハンドクラップを呼び込む「不埒な体温」で場内を盛り上げたあとは、マオの口から昨年と比べてセットリストを1曲増やしたことが伝えられる。「この調子で徐々に増やしていって、俺が70歳になったら40曲とかやってたら面白いよね」と語るマオ。「言っとくけど本気ですよ。見た目はもしかしたら“薄目限定”とかさ(笑)。すっげースモークたいてて、本人が見えづらいですって注意書きがしてあるかもしれないけど」というアイデアには、観客も大爆笑だった。そして「クリスマス、大切なファンのみんなと会えること、そこで歌えることが幸せです。今日は最初から最後まで“デート”してるようなロマンチックな感情で歌えました」と話し、最後はミラーボールが輝くなか、バラード「月」をたっぷり気持ちを込め、そのクライマックスとなる“約束するから”で渾身のロングトーンを披露してライブを締めくくった。

マオは2019年、バンドとして久々のアジアツアー、さらには初の横浜アリーナ公演が控えている。結成15周年、シドはまだまだ突っ走って、次の頂を目指すーー。

マオ from SID
X’mas Acoustic Live 2018
〈1st SHOW〉箸休め Silent Night
2018年12月11日 東京・日本橋三井ホール

SET LIST
01. 遠い恋のリフレイン
02. OH MY LITTLE GIRL
03. いとしのエリー
04. 告白
05. ラブレター
06. フレンズ
07. 雪の華
08. 夢を信じて
09. 違う果実
10. 不埒な体温
11. 月

ライブ情報

SID 15th Anniversary ASIA TOUR
“THE PLACE WHERE WE LOVE MOST 2019”

2019年2月15日(金) Legacy Taipei / Taipei
2019年2月20日(水) MacPherson Stadium, Mongkok, Kowloon / Hong Kong

SID 15th Anniversary GRAND FINAL at 横浜アリーナ ~その未来へ~

2019年3月10日(日) 横浜アリーナ
http://archive.sid-web.info/15th/

マオ from SID

マオ/福岡県出身。10月23日生まれ。2003年に結成されたロックバンド、シドのヴォーカリスト。
2008年10月「モノクロのキス」でメジャーデビュー。以降、「嘘」「S」「ANNIVERSARY」「螺旋のユメ」など、数多くの映画・アニメテーマ曲でヒットを放つ。2018年、バンド結成15周年を迎え、4月にはセレクションベストアルバム『SID Anime Best 2008-2017』をリリース。直後の5月から6月28日まで”SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 2018”と銘打った全国6都市14公演ツアーを開催。9月からはLIVE HOUSE TOUR”いちばん好きな場所”を展開、11月21日のマイナビBLITZ AKASAKAで全国31公演を無事に完走した。

オフィシャルサイト
http://www.maofromsid.com

フォトギャラリー
vol.312
vol.313
vol.314