es執筆陣が独断で選ぶ2018年 BEST MUSIC  vol. 4

Column

変わらぬシーン活況の中、まさにベストライブと呼べる3ステージ

変わらぬシーン活況の中、まさにベストライブと呼べる3ステージ

あけましておめでとうございます。昨年もライブシーンの活況は相変わらずで、楽しいライブ、厳しいライブ、画期的なライブ、お手本のようなライブがたくさんあった。特にオーディエンスの変化が面白く、40~50代の大人の音楽ファンが明らかに増えたと思う。一方で、10代の音楽ファンがジャンルの壁をものともせずに、自由にライブを楽しんでいる姿も多く見かけた。
さて、その中からベスト3を上げてみよう。

文 / 平山雄一

20th ANNIVERSARY “THE SUPER TOUR OF MISIA Girls just wanna have fun”
2018年4月28日 横浜アリーナ

デビュー20周年を迎えたMISIAの“THE SUPER TOUR OF MISIA Girls just wanna have fun”のファイナルは、単なる集大成では終わらず、彼女の未来も感じられる力強いライブとなった。DJ、バンドセット、ダンサーと、MISIAが20年間で築き上げたライブのスタイルを、さらに磨きあげて次々と披露し、オーディエンスを圧倒する。一方で、大ヒット曲「陽のあたる場所」では、ニューヨークで活躍するトランぺッター黒田卓也の率いるブラス・セクションを起用して、世界最新のグルーヴをプレゼンする。そのアグレッシヴな姿勢が、実にMISIAらしかった。アンコールでは「私を歌手にしてくれて、ありがとう!」とファンに呼びかけて、感動を呼んだ。これが、2018年に聞いたライブMCの、最高のセリフだったと思う。

撮影 / Santin Aki

MISIAの作品を聴いてみる。

オフィシャルサイトhttp://www.misia.jp

寺岡呼人25周年presents
カーリングシトーンズ デビューライブ
2018年9月23日 Zepp Tokyo

Zepp Tokyoで観たウルトラ・スーパー・バンド“カーリング・シトーンズ”も最高のライブだった。寺岡呼人のソロ・デビュー25周年を記念して集まったメンバーは、寺岡シトーンをはじめ、奥田(民生)シトーン、斉藤(和義)シトーン、浜崎(貴司)シトーン、(ヨー)キングシトーン、トータス(松本)シトーンで、ライブのツワモノが勢ぞろい。6人全員が50代で、全員がリードボーカルを取れ、作詞作曲ができて、しかも様々な楽器の演奏ができる。ユニコーンやジュンスカ、ウルフルズなど、今のJ-ROCKやJ-POPの出発点となったバンド文化が生んだ宝物のような集団は、ほとんどが初めて披露する楽曲だったのにも関わらず、オーディエンスを巻き込んだライブを展開したのだった。

わかりやすい音楽性はもちろん、ジョークやアクションも含めて、一発勝負のライブに全力を傾け、見事に大成功を収めた。言ってみれば非常にハードルの高い実験的なライブでありながら、音楽と笑いを武器に、和やかなものになったのは奇跡に等しい。間違いなく、2019年に最もツアーをして欲しいバンドだ。

撮影 / 平野タカシ

カーリングシトーンズの作品を聴いてみる。

オフィシャルサイトhttp://curlingsitones.com

Hot Stuff Promotion 40th Anniversary MASAKA
岡村靖幸 vs YUKI
2018年10月27日 日本武道館

コンサート・プロモーター“ホット・スタッフ”の40周年を記念して、武道館で開催された3DAYSイベント“MASAKA”の2日目のキャスティングは、“岡村靖幸 vs YUKI”。文字通りマサカの対バンとなった。80年代の音楽シーンに歌詞とグルーヴの革命を起こした岡村と、90年代にJUDY AND MARYのボーカルとしてデビューし、ソロになってからも大活躍のYUKIは、同じレーベル“エピック・ソニー”にいながら、まったく接点がなかったという。この強烈な二つのキャラクターが一緒のステージに立つのは、ある意味、事件と言ってもいい。しかも誰もが望んだセッションが、実現。誰の予想をも上回る3曲を共に歌ったのだった。

真っ白なコスチュームのYUKIが大ヒット曲「JOY」をワンコーラス歌うと、岡村が真赤なスーツで登場。二人はハグを交わして、岡村がそのまま「JOY」の2コーラス目を歌い出したから、場内は爆発的にヒートアップ。終わってピアノの前に座った岡村にピンスポットが当たり、バラード「イケナイコトカイ」をムードたっぷりに弾き語り始めると、オーディエンスから嬉しい悲鳴が上がる。それをYUKIが引き継いで歌って、さらに盛り上げる。最後は岡村の代表曲「だいすき」をYUKIと岡村がホットにデュエット。オーディエンスもコラボに参加して、♪ヘポタイヤ♪というお約束のC&Rをする。武道館が大揺れした一夜になったのだった。

撮影 / 川田洋司

岡村靖幸の作品を聴いてみる。

YUKIの作品を聴いてみる。

オフィシャルサイト
http://okamurayasuyuki.info
http://www.yukiweb.net


2018年はその他にもプレミアムなライブが多かったように思う。荒井由実のデビューアルバム『ひこうき雲』をテーマにしたコンセプト・ライブ“PERFECT ONE presents SONGS & FRIENDS”(3月17日@武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ)は、久保田利伸などがユーミン・ナンバーをカバーしたり、『ひこうき雲』をライブで再現したり、参加アーティストとユーミンがコラボしたりの豪華なイベントとなった。

他にコラボで楽しかったのは、レジェンド・ドラマー村上“ポンタ”秀一の45周年を記念したイベント“音楽境地”(4月6日@中野サンプラザ)だった。ゲストに渡辺香津美、角松敏生などを迎え、村上と縁のあった松岡直也、深町純、大村憲司などの故人にリスペクトを捧げる意義深いライブとなり、とても感動的だった。

また村上と同じくフュージョン・シーンで活躍するベテラン向谷実が、アメリカの巨匠ドン・グルーシンらを招いて開催した『向谷実presents “East meets West 2018”』(11月16日@国際フォーラム ホールC)は、大人の音楽ファンが多く詰めかけて、ニュアンスに富んだサウンドを楽しんでいた。

若いバンドではGLIM SPANKYが初めて武道館に立ち(5月12日)、同じ武道館でチャットモンチーが最後のワンマン・ライブを行なった(7月4日)。

今年のライブ行脚でいちばん過酷だったのは、7月27日にブルーノート東京でMISIAのセッションを観て、翌28日はコニファーフォーレストでSPYAIRのビッグイベント“JUST LIKE THIS 2018”で豪雨に打たれ、29日はフジロックでノーベル賞受賞後、初来日したボブ・ディランを観たことだった。

20周年を迎えた「椎名林檎 (生)林檎博‘18 ―不惑の余裕―」(11月24日@さいたまスーパーアリーナ)のクオリティの高さ、The Birthdayのホールライブ(11月29日@中野サンプラザ)で筋金入りのロックバンドのグッド・メロディを堪能したのも記憶に新しい。

さて今年はどんなライブが待っているのか、楽しみでならない。

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